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王都にて
119.
そこでダンが少し声を落とした。
「なんでも、一年前から組んでた連中にいきなりパーティを追い出されたらしいぞ」
おっと、なんだか前世で聞いたことがあるような展開だぞ。俺は思わず楽しくなってしまった。勿論、俺の前世に冒険者なんかいなかったけれど、冒険者を主人公にしたラノベは五万とあったからな。
「私も聞いたよ、イアンさん以外は新人ばっかりだったのに、一年で一気にAランクにまで駆け上がったって、でもイアンさんがリーダーだったおかげじゃないの?」
「ああ、王都の冒険者たちもイアンさんが新人を育ててやったようなもんだって言ってる、だがその新人どもがすっかり勘違いしちまって、オッサンは足手まといだからいらねーって追い出したらしいぞ」
「なんだそりゃ、恩を仇で返したのかよ」
「新人の実力は見抜けても、人間性は見抜けなかったのね」
本当にそんなことあるんだ~。なんだか感動してしまった。タイトルを付けるなら『パーティを追い出されたオッサン冒険者、魔王討伐隊の参謀に転職します』とかか。地味なモブ顔と思ってたら主役級の設定があった。モブとか思っててすまんオッサン。
しかし、もしも、あのオッサンが主人公だったら、魔王討伐隊は美少女ばっかりになるだろうが、今のところ合格しそうなのはイケメンのリオと濃い顔のアラスターくらいだから、ここがあのオッサンが主人公のラノベ世界なんてことはないだろう。受験生の中にツインテールの美少女やメイド服の美女はいなかったしな。
そう考えると、今の今まで受験生たちの外見には大して注目していなかったが、改めて思い返しても、うん、美少女も美少年もいなかった。リオみたいなイケメンか、凛々しい女はいたけど、セクシー系はいなかったと思う。
万が一そうゆうやつがいたら、俺も魔王城にエロトラップなどを組み込むことを検討しなければいけなかったが、必要なさそうだ。よかったよかった。魔界のやつらに「エッチなことに特化した触手生物の育成方法を考えろ」とか、どんな顔して命令すればいいかわからないもんな。
「そう言えば、選抜試験にゾルニオッティの人間が参加してるって噂があったな」
俺がバカなことを考えているところで、セイラが思い出したように言い出した。さっきから蒸留酒をボトルで何度か追加しているけれど、然して酔った様子が無くて恐い。
「ゾル、ニーテ?」
「ゾルニオッティ家、東の国の名家だね、代々城付き魔術師を輩出してる家だよね」
言い慣れない家名にダンやニコルは首を傾げるが、ミラは知っていた。魔術師の名家らしい。
しかし、国の中枢にいるからこそ目立つことはしない。魔術なんて特に国家機密に関わるから、ミラやセイラも詳しいことは知らないという。
「そんな名家のやつが、なんでまた他国の、しかも民兵に毛が生えたような部隊に入ろうとしてんだよ」
魔王討伐隊ってそんなイメージなんだ。魔王に失礼じゃね? と思ったけど、ほぼ誰でも応募できるという募集要項ならば、烏合の衆と思われても仕方がないか。
「知らねーよ、なんか落ちこぼれの末っ子が家出してきたって噂だけど」
「それは本当にいるかどうかも怪しいね」
本当にいたら、これまたラノベの主人公級の設定だ。『落ちこぼれ魔術師の成り上がり冒険譚』だ。
魔法使いで際立っていたと言えば、あの赤毛のやつだ。わざと目立たないように行動していた節もあるし、実力を見せる試験なのに実力を隠していた。
「うーん、魔法使いで目立つ人はいなかったけど」
リオですらあの赤毛の実力には気付いていない。尚のこと怪しい。
魔王討伐隊、リオ以外はモブだと思っていたけど、もしかすると、主人公級の連中がごろごろいる面白いパーティになるかもしれない。
ただ、目立つリオやアラスター以外は、実力のわかりづらい実力者だ。おそらく性格の悪い試験管に見る目があることを祈る。
密かに高みの見物を決め込む俺だが、実際は黙々と食うことに専念している。
なにせ、魔法で王都全体を観察したとか、試験を覗き見したとか、ここで話すわけにもいかないことばかりしているから、耳を傍たてながらも興味ない顔で口を一杯にしておかなければならない。
オリバーの王都での気に入りだという店は、程よく古めかしくて賑やかだが煩過ぎることもなく良い雰囲気だ。
料理も美味しい。大皿にてんこ盛りに乗せられた小魚の香草焼きは気に入ったから、店員に使っている香草を聞いておく。ピーパーティンも夢中で食べているから、そのうち魔界で再現できるかもしれない。
しかし、いつまでも飯を食ってもいられない。食べようと思えば俺の胃袋は底無しだが、ここはオリバーの奢りなのだ。爺さんは奢りだと言えばいくらでも食わせてくれそうだから、俺が加減してやらないといけない。
テーブルの上がそこそこ落ち着くと、俺は説教の気配を感じ取った。
魔王討伐隊の噂話は終わったし、みんなの今後の予定も話し尽くした。残るは俺だけだ。別に説教される謂れはないのだが、世間的には俺は碌に仕事も探していない浮浪児だから、大変不本意だが説教される要素は多分にあるのだ。
「なんでも、一年前から組んでた連中にいきなりパーティを追い出されたらしいぞ」
おっと、なんだか前世で聞いたことがあるような展開だぞ。俺は思わず楽しくなってしまった。勿論、俺の前世に冒険者なんかいなかったけれど、冒険者を主人公にしたラノベは五万とあったからな。
「私も聞いたよ、イアンさん以外は新人ばっかりだったのに、一年で一気にAランクにまで駆け上がったって、でもイアンさんがリーダーだったおかげじゃないの?」
「ああ、王都の冒険者たちもイアンさんが新人を育ててやったようなもんだって言ってる、だがその新人どもがすっかり勘違いしちまって、オッサンは足手まといだからいらねーって追い出したらしいぞ」
「なんだそりゃ、恩を仇で返したのかよ」
「新人の実力は見抜けても、人間性は見抜けなかったのね」
本当にそんなことあるんだ~。なんだか感動してしまった。タイトルを付けるなら『パーティを追い出されたオッサン冒険者、魔王討伐隊の参謀に転職します』とかか。地味なモブ顔と思ってたら主役級の設定があった。モブとか思っててすまんオッサン。
しかし、もしも、あのオッサンが主人公だったら、魔王討伐隊は美少女ばっかりになるだろうが、今のところ合格しそうなのはイケメンのリオと濃い顔のアラスターくらいだから、ここがあのオッサンが主人公のラノベ世界なんてことはないだろう。受験生の中にツインテールの美少女やメイド服の美女はいなかったしな。
そう考えると、今の今まで受験生たちの外見には大して注目していなかったが、改めて思い返しても、うん、美少女も美少年もいなかった。リオみたいなイケメンか、凛々しい女はいたけど、セクシー系はいなかったと思う。
万が一そうゆうやつがいたら、俺も魔王城にエロトラップなどを組み込むことを検討しなければいけなかったが、必要なさそうだ。よかったよかった。魔界のやつらに「エッチなことに特化した触手生物の育成方法を考えろ」とか、どんな顔して命令すればいいかわからないもんな。
「そう言えば、選抜試験にゾルニオッティの人間が参加してるって噂があったな」
俺がバカなことを考えているところで、セイラが思い出したように言い出した。さっきから蒸留酒をボトルで何度か追加しているけれど、然して酔った様子が無くて恐い。
「ゾル、ニーテ?」
「ゾルニオッティ家、東の国の名家だね、代々城付き魔術師を輩出してる家だよね」
言い慣れない家名にダンやニコルは首を傾げるが、ミラは知っていた。魔術師の名家らしい。
しかし、国の中枢にいるからこそ目立つことはしない。魔術なんて特に国家機密に関わるから、ミラやセイラも詳しいことは知らないという。
「そんな名家のやつが、なんでまた他国の、しかも民兵に毛が生えたような部隊に入ろうとしてんだよ」
魔王討伐隊ってそんなイメージなんだ。魔王に失礼じゃね? と思ったけど、ほぼ誰でも応募できるという募集要項ならば、烏合の衆と思われても仕方がないか。
「知らねーよ、なんか落ちこぼれの末っ子が家出してきたって噂だけど」
「それは本当にいるかどうかも怪しいね」
本当にいたら、これまたラノベの主人公級の設定だ。『落ちこぼれ魔術師の成り上がり冒険譚』だ。
魔法使いで際立っていたと言えば、あの赤毛のやつだ。わざと目立たないように行動していた節もあるし、実力を見せる試験なのに実力を隠していた。
「うーん、魔法使いで目立つ人はいなかったけど」
リオですらあの赤毛の実力には気付いていない。尚のこと怪しい。
魔王討伐隊、リオ以外はモブだと思っていたけど、もしかすると、主人公級の連中がごろごろいる面白いパーティになるかもしれない。
ただ、目立つリオやアラスター以外は、実力のわかりづらい実力者だ。おそらく性格の悪い試験管に見る目があることを祈る。
密かに高みの見物を決め込む俺だが、実際は黙々と食うことに専念している。
なにせ、魔法で王都全体を観察したとか、試験を覗き見したとか、ここで話すわけにもいかないことばかりしているから、耳を傍たてながらも興味ない顔で口を一杯にしておかなければならない。
オリバーの王都での気に入りだという店は、程よく古めかしくて賑やかだが煩過ぎることもなく良い雰囲気だ。
料理も美味しい。大皿にてんこ盛りに乗せられた小魚の香草焼きは気に入ったから、店員に使っている香草を聞いておく。ピーパーティンも夢中で食べているから、そのうち魔界で再現できるかもしれない。
しかし、いつまでも飯を食ってもいられない。食べようと思えば俺の胃袋は底無しだが、ここはオリバーの奢りなのだ。爺さんは奢りだと言えばいくらでも食わせてくれそうだから、俺が加減してやらないといけない。
テーブルの上がそこそこ落ち着くと、俺は説教の気配を感じ取った。
魔王討伐隊の噂話は終わったし、みんなの今後の予定も話し尽くした。残るは俺だけだ。別に説教される謂れはないのだが、世間的には俺は碌に仕事も探していない浮浪児だから、大変不本意だが説教される要素は多分にあるのだ。
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