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人間界へ
83.
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俺の狼の毛皮は金貨一枚と銀貨三十枚になった。リオはもっとたくさんで数えるのが大変そうだ。
一つ一つの査定結果も全部紙に書き出してもらっている。自分で獲ったものと、家族の作った革製品の外に、他の村人が獲ったものの買取も代行しているから、村に帰ってからきっちりと儲けを分けなければならないのだ。
俺はそれよりも金貨と銀貨と紙に興味津々だ。
銀貨は銅貨と同じく純銀ではなく色々混ざっているが、成分がだいたい揃っているから全部本物で間違いないだろう。鑑定結果をよく見て覚えておく。
金貨は一枚しかもらえなかったから比較できない。オバサンの手元にある金庫をじろじろ見ていたら睨まれたので、金貨の鑑定は今は諦める。リオがいっぱい貰えそうだから後で見せてもらおう。
それよりも紙だ。オッサンが査定結果を書き込んでいる紙は、薄っぺらいけど、たぶん獣の革だろう。前世の羊皮紙と同じようなものだろうが、こっちの世界では羊よりも魔物の革の方が多そうだから名前は違うはずだ。
前世の羊皮紙は綺麗に加工されていたが、オッサンが使っているのはほぼ革の切れ端そのままだ。色も黒茶色だから白いクレヨンみたいなもので字を書いている。
「字の勉強するなら他を当たりなよ、この人の字は下手くそなんだから」
ジーっと見ていたらオバサンに笑われた。オッサンの書いているのは別の言語の文字かと思っていたが、下手くそなだけだったらしい。
どっちにしろこの国の文字は知らないので読めない。文字よりも今は紙の方だ。
「これは何の革だ?」
「ん、これは大ガエルの革だ、薄くて水を弾くから、他の革に貼り付けて防水加工に使うんだが、こう黒ずんじまったやつは貼ってもすぐに剥がれちまうから、クズ紙として使ってんだ」
オッサンはわざわざ棚から蛙革を引っ張り出して解説してくれる。教えるのが好きなのかもしれない。
見せられたのは確かに蛙から剥いだとわかる形をしている。表はつるつるしていてビニールみたいな手触りで、見るからに水を弾きそうだ。裏はさらさらしていて、藁半紙みたいな手触りだから紙として使える。
色は薄茶色で少し透けて見えるけど、厚みがないというわけではなく、普通の布と同じくらいの強度はありそうだ。
他の革に貼り付ける時は長持ちするように加工するが、貼り付ける前は加工できない。蛙革のまま放置していると黒ずんで革としては使えなくなるから、こうしてメモ紙として使うしかないという。
「これだけデカいのはなかなか手に入らないんだぞ、小さいのを張り合わせると、下手なやつがやれば隙間から水が滲みっちまう、まあ俺はそんな下手なこたぁしねえがな」
オッサンは自慢げだ。腕は確かなのだろう。
一枚が蛙一匹分だというなら、一番大きくても一メートルくらいの蛙だろう。そんな大きいのは何枚もなく、たくさんある小さいのは前世のウシガエルくらいだ。
蛙革は需要があるし、大ガエルの大量発生する季節もあるから、子供の小遣い稼ぎに小さいのがいっぱい狩られるのだそうだ。
「ここらへんで手に入るのはこんな色ばかりだが、西の方では硝子みたいに透明な蛙革があるそうだ、一度は加工してみてえもんだよな」
小さいオッさんはうっとりした顔で蛙革を撫でている。とにかく革が大好きな職人らしい。プロフェッショナルと思えばいいのだろうが、ちょっと気持ち悪い。
「他の革に貼っちまえば色なんて関係ないだろ」
大きなオバサンは、また始まったと言いたげな呆れ顔で溜息を吐いた。
「革の色がそのまま活かせるだろうが、蛇革に透明な蛙革貼った鎧がつやっつやで、そりゃあもう綺麗でな」
「蛇革はそもそも水に強いんだから蛙革を貼る意味がないだろう」
「こんの実用一辺倒の効率馬鹿がよお! おまえには革の美しさがわかんねのか」
「実用的なものこそ美しいんだよ、装飾にばかり手をかけるのは革が勿体ないよ」
喧嘩が始まってしまった。革職人の夫婦はオッサンの方が見た目にロマンを求めるタイプで、オバサンの方は効率と実用性が第一というタイプらしい。
俺はどっちでもいいけど、透明でつやつやした素材なんてただのビニールだし、ツヤツヤした蛇革模様なんてエナメル製品みたいでちょっと安っぽく感じる。この世界ではまだ科学素材などはなさそうだから、柔らかく透明な素材は珍しいのだろう。
そんなことよりも、大きな蛙革には需要があるという方が大事だ。
一メートルくらいですごく大きいと言われているが、魔界になら二メートルも三メートルもある大ガエルはざらにいた。
それに薄茶色のやつが多いけど、他の色の大ガエルも結構いたから、大きくてカラーバリエーション豊富な蛙革は人間界で売れるのではないか。蛙は肉も結構美味しい。
俺が蛙も家畜候補に入れることを考えていると、リオの方の精算が終わった。
オッサンとオバサンが途中から革談義に熱くなってしまったから、他の職人が代わりに査定結果を書いてくれたらしい。黒ずんだ蛙革に書かれた文字は、確かに途中から見やすくなっている。
一つ一つの査定結果も全部紙に書き出してもらっている。自分で獲ったものと、家族の作った革製品の外に、他の村人が獲ったものの買取も代行しているから、村に帰ってからきっちりと儲けを分けなければならないのだ。
俺はそれよりも金貨と銀貨と紙に興味津々だ。
銀貨は銅貨と同じく純銀ではなく色々混ざっているが、成分がだいたい揃っているから全部本物で間違いないだろう。鑑定結果をよく見て覚えておく。
金貨は一枚しかもらえなかったから比較できない。オバサンの手元にある金庫をじろじろ見ていたら睨まれたので、金貨の鑑定は今は諦める。リオがいっぱい貰えそうだから後で見せてもらおう。
それよりも紙だ。オッサンが査定結果を書き込んでいる紙は、薄っぺらいけど、たぶん獣の革だろう。前世の羊皮紙と同じようなものだろうが、こっちの世界では羊よりも魔物の革の方が多そうだから名前は違うはずだ。
前世の羊皮紙は綺麗に加工されていたが、オッサンが使っているのはほぼ革の切れ端そのままだ。色も黒茶色だから白いクレヨンみたいなもので字を書いている。
「字の勉強するなら他を当たりなよ、この人の字は下手くそなんだから」
ジーっと見ていたらオバサンに笑われた。オッサンの書いているのは別の言語の文字かと思っていたが、下手くそなだけだったらしい。
どっちにしろこの国の文字は知らないので読めない。文字よりも今は紙の方だ。
「これは何の革だ?」
「ん、これは大ガエルの革だ、薄くて水を弾くから、他の革に貼り付けて防水加工に使うんだが、こう黒ずんじまったやつは貼ってもすぐに剥がれちまうから、クズ紙として使ってんだ」
オッサンはわざわざ棚から蛙革を引っ張り出して解説してくれる。教えるのが好きなのかもしれない。
見せられたのは確かに蛙から剥いだとわかる形をしている。表はつるつるしていてビニールみたいな手触りで、見るからに水を弾きそうだ。裏はさらさらしていて、藁半紙みたいな手触りだから紙として使える。
色は薄茶色で少し透けて見えるけど、厚みがないというわけではなく、普通の布と同じくらいの強度はありそうだ。
他の革に貼り付ける時は長持ちするように加工するが、貼り付ける前は加工できない。蛙革のまま放置していると黒ずんで革としては使えなくなるから、こうしてメモ紙として使うしかないという。
「これだけデカいのはなかなか手に入らないんだぞ、小さいのを張り合わせると、下手なやつがやれば隙間から水が滲みっちまう、まあ俺はそんな下手なこたぁしねえがな」
オッサンは自慢げだ。腕は確かなのだろう。
一枚が蛙一匹分だというなら、一番大きくても一メートルくらいの蛙だろう。そんな大きいのは何枚もなく、たくさんある小さいのは前世のウシガエルくらいだ。
蛙革は需要があるし、大ガエルの大量発生する季節もあるから、子供の小遣い稼ぎに小さいのがいっぱい狩られるのだそうだ。
「ここらへんで手に入るのはこんな色ばかりだが、西の方では硝子みたいに透明な蛙革があるそうだ、一度は加工してみてえもんだよな」
小さいオッさんはうっとりした顔で蛙革を撫でている。とにかく革が大好きな職人らしい。プロフェッショナルと思えばいいのだろうが、ちょっと気持ち悪い。
「他の革に貼っちまえば色なんて関係ないだろ」
大きなオバサンは、また始まったと言いたげな呆れ顔で溜息を吐いた。
「革の色がそのまま活かせるだろうが、蛇革に透明な蛙革貼った鎧がつやっつやで、そりゃあもう綺麗でな」
「蛇革はそもそも水に強いんだから蛙革を貼る意味がないだろう」
「こんの実用一辺倒の効率馬鹿がよお! おまえには革の美しさがわかんねのか」
「実用的なものこそ美しいんだよ、装飾にばかり手をかけるのは革が勿体ないよ」
喧嘩が始まってしまった。革職人の夫婦はオッサンの方が見た目にロマンを求めるタイプで、オバサンの方は効率と実用性が第一というタイプらしい。
俺はどっちでもいいけど、透明でつやつやした素材なんてただのビニールだし、ツヤツヤした蛇革模様なんてエナメル製品みたいでちょっと安っぽく感じる。この世界ではまだ科学素材などはなさそうだから、柔らかく透明な素材は珍しいのだろう。
そんなことよりも、大きな蛙革には需要があるという方が大事だ。
一メートルくらいですごく大きいと言われているが、魔界になら二メートルも三メートルもある大ガエルはざらにいた。
それに薄茶色のやつが多いけど、他の色の大ガエルも結構いたから、大きくてカラーバリエーション豊富な蛙革は人間界で売れるのではないか。蛙は肉も結構美味しい。
俺が蛙も家畜候補に入れることを考えていると、リオの方の精算が終わった。
オッサンとオバサンが途中から革談義に熱くなってしまったから、他の職人が代わりに査定結果を書いてくれたらしい。黒ずんだ蛙革に書かれた文字は、確かに途中から見やすくなっている。
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