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1mmのつながり
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ある男は、小説にハマっていた。名前は圭吾。都内に住む40代男性。
「白石まこと」というショートストーリー作家の本を探しに家の近くの木村書店へ立ち寄った。作家の白石まことという人物、顔も生い立ちも解らない。しかし、なぜか、この白石まことの書く物語に惹かれていた。何冊か手に取り、会計しようと思った時、本を1冊落としてしまった。
そしてまたある男は、小説に興味がない。
その男は、都内から少し離れた場所に住む、直助。40代男性。
圭吾が落とした本を拾った男だ。
直助は、たまたま見つけた都内の書店に立ち寄った。その書店は、木村書店だった。
直助は、いつも買っている雑誌を手に取り、店内をウロついていると、ある男が落とした本を拾った。
「白石まこと」の本だった。
小説にまったく興味がなかったはずだが、その本になぜか引き寄せられた。
「白石まこと……ねぇ…。」と、本を渡した。
「すみません!ありがとうございます!」と、圭吾は言った。
直助は、白石まことの本を探し、手に取り、パラパラと読んでみた。
その本は、短編小説がいくつも詰め込まれ、読んでみると実に面白い。
直助はいつしか夢中になって本を読んでいた。そしていつしか、白石まことのファンになっていた。
この 白石まこと という人物、小説作家でありながら、30分間のラジオ放送もしている。
圭吾は、白石まことの小説とラジオ放送を楽しみにしている。ラジオから聞こえる声は、どう聞いても男性の声だ。白石まことは、男性なのだろうと思っていた。
そして、またある男は次の小説を書くため、題材を探しに都内の公園やカフェを散策していた。そしてある書店に立ち寄った。そこは木村書店だった。
この「白石まこと」という人物、詳細は不明だが、解っているのはどうやら40代男性、遅咲きの作家のようだ。
一方、直助は白石まことの本にすっかり引き寄せられ、いつしか愛読書になっていた。
直助は思った。小説に興味のなかった自分が、いつしか本を読む事の楽しさを。もともと、雑誌にしか興味のなかった自分が小説好きになっていた事を。
そして直助は、たまたま聴いていたラジオで白石まことの放送を知った。
ラジオ放送の内容は、本を朗読する放送だった。直助は朗読に興味を持ち始めた。もっと聴きたい、もっと読みたい。と。
少しの日々が経ち、白石まことの新作が発売される事になった。その情報は、圭吾、直助の聴いているラジオ放送で発表されたのだった。
圭吾と直助は、白石まことの新作を求めて、二人が出会った木村書店へ向かった。
そこには、書店の片隅ではあるが、白石まことの新作コーナーがあり、本が山積みになっている。
そして、そのコーナーに座りながら手売りをしている人物、白石まこと自身だった。
圭吾、直助、白石まことの3人は、この小さな書店、木村書店で初めて顔を合わせる事となった。
白石まことのコーナーには、長蛇ではないが、何人か列を作っている。
圭吾と直助は新作の本を手に取り、白石まことへ近づくと、「いつも私の本を読んでくれてありがとう。」と、まるで自分達の事を知っているかのように話しかけ、本にサインをし、握手を交わした。
不思議な感覚だった。
本を受け取るまでのたった1mmの距離、痺れるような、それでいて懐かしいような感覚だった。この感覚は忘れる事はないだろう。
これが3人の男の初めての出会いだった。
圭吾、直助は、この白石まことという人物の本を読み続け、ラジオで朗読を聴き続けるのであろう。
3人のクロスストーリー 「1mmのつながり」でした。
おしまい
「白石まこと」というショートストーリー作家の本を探しに家の近くの木村書店へ立ち寄った。作家の白石まことという人物、顔も生い立ちも解らない。しかし、なぜか、この白石まことの書く物語に惹かれていた。何冊か手に取り、会計しようと思った時、本を1冊落としてしまった。
そしてまたある男は、小説に興味がない。
その男は、都内から少し離れた場所に住む、直助。40代男性。
圭吾が落とした本を拾った男だ。
直助は、たまたま見つけた都内の書店に立ち寄った。その書店は、木村書店だった。
直助は、いつも買っている雑誌を手に取り、店内をウロついていると、ある男が落とした本を拾った。
「白石まこと」の本だった。
小説にまったく興味がなかったはずだが、その本になぜか引き寄せられた。
「白石まこと……ねぇ…。」と、本を渡した。
「すみません!ありがとうございます!」と、圭吾は言った。
直助は、白石まことの本を探し、手に取り、パラパラと読んでみた。
その本は、短編小説がいくつも詰め込まれ、読んでみると実に面白い。
直助はいつしか夢中になって本を読んでいた。そしていつしか、白石まことのファンになっていた。
この 白石まこと という人物、小説作家でありながら、30分間のラジオ放送もしている。
圭吾は、白石まことの小説とラジオ放送を楽しみにしている。ラジオから聞こえる声は、どう聞いても男性の声だ。白石まことは、男性なのだろうと思っていた。
そして、またある男は次の小説を書くため、題材を探しに都内の公園やカフェを散策していた。そしてある書店に立ち寄った。そこは木村書店だった。
この「白石まこと」という人物、詳細は不明だが、解っているのはどうやら40代男性、遅咲きの作家のようだ。
一方、直助は白石まことの本にすっかり引き寄せられ、いつしか愛読書になっていた。
直助は思った。小説に興味のなかった自分が、いつしか本を読む事の楽しさを。もともと、雑誌にしか興味のなかった自分が小説好きになっていた事を。
そして直助は、たまたま聴いていたラジオで白石まことの放送を知った。
ラジオ放送の内容は、本を朗読する放送だった。直助は朗読に興味を持ち始めた。もっと聴きたい、もっと読みたい。と。
少しの日々が経ち、白石まことの新作が発売される事になった。その情報は、圭吾、直助の聴いているラジオ放送で発表されたのだった。
圭吾と直助は、白石まことの新作を求めて、二人が出会った木村書店へ向かった。
そこには、書店の片隅ではあるが、白石まことの新作コーナーがあり、本が山積みになっている。
そして、そのコーナーに座りながら手売りをしている人物、白石まこと自身だった。
圭吾、直助、白石まことの3人は、この小さな書店、木村書店で初めて顔を合わせる事となった。
白石まことのコーナーには、長蛇ではないが、何人か列を作っている。
圭吾と直助は新作の本を手に取り、白石まことへ近づくと、「いつも私の本を読んでくれてありがとう。」と、まるで自分達の事を知っているかのように話しかけ、本にサインをし、握手を交わした。
不思議な感覚だった。
本を受け取るまでのたった1mmの距離、痺れるような、それでいて懐かしいような感覚だった。この感覚は忘れる事はないだろう。
これが3人の男の初めての出会いだった。
圭吾、直助は、この白石まことという人物の本を読み続け、ラジオで朗読を聴き続けるのであろう。
3人のクロスストーリー 「1mmのつながり」でした。
おしまい
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