3年F組クラス転移 帝国VS28人のユニークスキル~召喚された高校生は人類の危機に団結チートで国を相手に無双する~

代々木夜々一

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6-2話 ジャムザウール 「牢屋」

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「我が名は無音鬼むおんき。音も立てず忍び寄る」

 アヤの後ろ、いつの間にか男がいる。ずんぐりむっくりな体型に、目の光が異様に鋭い。

「なんだその、中二病みたいな名前は」
「じゃあ、おれは蓄音機」
「キング、それ何も例えれてないぞ」

 キングとプリンスが起きていた。こちらに向かって構えている。

 周囲から兵士がわいた。

「しまった! 壊し忘れた! 忘れないようにメモしたのに」

 横でヒメノがつぶやいた。壊し忘れた? ああ、首の鉄輪か!

「無音鬼だったか、誰か一人でもケガさしたら、おれが全員殺す。誰もケガしないのなら、おとなしく捕まる」

 キングがそう言い、彼の殺気が高まった。

「こちらも捕まえるのが仕事。縄をかけさせてもらえば手出しはせぬ」
「それはできない。おれとプリンス、ジャムさんの腕はそのまま。あとは人質とすれば充分だろう? これで五分だ」

 なるほど。ヒメノが言うだけある。キングは正に王の資質。今も交渉に見えて、交渉ではない。命令だ。

「面倒くせーな。もう、誰が生き残るか、やりあおうぜ」

 プリンスが殺気立った。兵士が身構える。

 これは何気に、考えを二つに絞らせた。キングの案か、やりあうかの二択。プリンスは、年に似合わぬしたたかさを持つのか。

 そして、三人以外の皆が捕縛された。

 昨日に逃げた都に戻る。兵舎の中にある牢屋に、別々に分かれて入れられた。

「とんだ恥をかかされたわ」

 若者たちの牢に誰かが話しかけた。

 俺はひとり、離れた牢屋になった。柵まで出てキングたちの牢を見る。ローブを着た老人。あれがキングらを召喚した者か。

「どうやって逃げおおせたか、明日に尋問する。そののち闘技場で処刑となろう」

 俺は牢の柵を掴んだ。

「逃げた手法は俺の秘密だ。俺を尋問すれば良かろう」

 俺は自らを恥じた。守ると約束しておきながら、このざまだ。

「ほう、では、明日はそなたから尋問しよう」

 そう言ってローブを着た老人は帰って行った。

「みんな、いるかぁ!」

 キングことアリマの声だ。口々に返事が返る。

「わかんね。出席番号いっていい? 1!」
「2・3・4・5・6……」

 点呼のことか。事前に番号を振っていたようだ。

「25・26・27」
「ニハチ~」
「ソバ!」
「ヤマダのやつ~、じゃあ先生も!」
「古っ!」
「えー、なにそれ?」
「ユーチューブであるじゃん、昔のCM」

 何か盛り上がっている。これも符牒だろうか?

「姫野、もうこれ、ブースト解禁するぞ?」
「ええっ! 奥の手よ!」
「時間かけないほうがいい。もしバラバラな場所になるとメンドイ」
「あー、うん。そうね。ゲスオは?」
「キングの隣でござる!」
「じゃあ、お願い」

 ブースト? 何をするのか。ごん! という音が聞こえた。その後に、ぎぃと柵が開く音。施錠を壊したのか?

 ごん! ごん! ごん! と何回も音が鳴る。

「ジャムさん、おまたせ」

 キングが俺の牢屋の前に来た。

「ちょっと下がって」

 小さな扉の鍵穴を拳で軽く叩く。ごん! と音がして砕けた。

 中に入ってきて、俺の首に裏拳を当てる。鉄の首輪まで割れた。

「これは……」
「おれの特殊スキル『砕く拳』なんです」
「しかし、鉄まで……」

 これは人外の力だ。軽く叩いたようにしか見えなかった。
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