3年F組クラス転移 帝国VS28人のユニークスキル~召喚された高校生は人類の危機に団結チートで国を相手に無双する~

代々木夜々一

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13-2話 喜多絵麻 「菩提樹の精霊」

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 妖精さんは、まだプリンスの服を引っ張っていた。

「どうも、どこかへ連れていきたいみたいね」

 そう言ったのはヒメちゃん。

「ああ。ひつこくてな。ちょっと行ってきていいか?」
「それなら全員で行こうぜ。おれら、行くあてもないし」

 いつのまにか帰ってきたキングくんが、プリンスとヒメちゃんに言った。

「そうねぇ。村長さんご夫婦は、これからどうされます?」
「わしらも行くあてがない。ご迷惑でなければ、ご一緒させてくれんか」

 反対する人はいなかった。

 村長さんの許可をもらい、村に残っていた食料や鍋、毛布などを集める。それをみんなで分担して持ち、出発した。


 妖精さんの案内で深い森を抜け、谷へ下りていく。

 谷底は迷路のようになっていて、案内がなければ迷うだろう。

「このあたりは、わしらでも来たことがないの」

 横を歩いていた村長さんが言う。地元の人がそう言うのだから、人が歩くような場所ではないんだと思う。

 途中で日が暮れて、野宿をした。次の朝にまた出発。しばらくすると川に出た。川に沿って上流へ登る。

 やがて、小さな滝に着いた。

 妖精さんはプリンスの服を引っ張り、滝の中へ導こうとしている。

「これって……」
「ああ、童話なんかじゃ、滝の先は桃源郷ってパターンだな」

 私の言葉にプリンスが応えた。思わず目を背ける。妖精を連れたキラキラのプリンスは、萌えすぎて直視できない。

 キングを筆頭に、数名が先に入る。

 しばらくして戻ってきた。滝の先に行けるようだ。

 濡れるのを我慢して滝に入った。その裏は洞窟になっていた。長い直線で、向こうに出口の明かりが見える。

 暗い洞窟を手探りで進み反対側へ出た。思わず、ぽかんと口を開けて周りを見る。

 そこは桃源郷ではなかった。山に囲まれた土地。草木は、どれもみんな枯れていた。

「なんか、とてつもない気配がするんだけどなぁ」
「ああ、殺気や敵意ではないがな」

 キングくんとプリンスが、そんな会話をしている。私には、わからなかった。ただ、枯れ果てた風景が広がるけど、薄気味悪さはない。

 妖精さんは、ここのさらに奥へ案内したいようだった。みんなで慎重に進んでいく。

「おい、あれ」

 誰かが言って、みんなが木の上を見ている。ところどころに背は低いが太い木があり、そこに小さな家があった。誰かが住んでいる気配はない。

 大きな道があり、そこを進んでいく。

 四角に区画された土地もあった。たぶん畑だったんだろうと思う。今は枯れた雑草が茂っていた。

 これは村だ。かつて、何かの村があった場所。

 さらに村の奥に進み、私は、キングとプリンスの言葉がわかった。

「とてつもない気配」とは巨大な樹だった。

 私が両手を広げても届かないほど、樹の幹は太い。その巨大な幹に、違う木が絡まっていた。私は近づこうとしたが、プリンスに止められた。

「グリーンマンだ」
「グリーンマン?」
「ケルト神話なんかで出てくるやつ。『葉の頭』とも言うかな」

 ほんとだ。よく見ると、絡まった木には男性の顔のような窪みがあった。

「うっ」と声がして、誰かが倒れた。

 花ちゃん、花森千香ちゃんだ。あわてて駆け寄って抱き起こすと、目を閉じたまま声を発した。

「わらわは菩提樹の精霊。人の子らよ、わらわの話を聞いて欲しい」

 うわっ! これ「口寄せ」だ。この樹の精霊が話しかけてる!

「聞けんな」
「えっ?」
「とりあえず、花森を離せ」

 そう言ったのはキングだ。

「おれの拳は物を粉砕する力を持っている。花森を離さないなら、お前を壊す!」

 えー! キングくん! ほんとに拳を引いて、樹を殴る構えだ。

「ちょっ、ちょっと待ちなさい。この子はわらわと親和性が高いのです。媒介がなければ、話すことはできません」
「知らんな。花森の体を使って、どんな影響が出るかわかんない。おれは、お前なんかより花森のほうが大事だ」

 菩提樹があせってる。精霊って、すごい存在じゃなかったっけ。

 誰かが以前に言った言葉を思い出した。

「誰にも屈せず膝を折らない、王様ってそうだろ? 有馬はキングだよ」

 聞いた時は何も思わなかったけど、ほんと、有馬くんってキングなんだね。

 あっ、それよりさっきの言葉、あっちの世界なら録画できたのになぁ。

「おれは、お前なんかより花森のほうが大事だ」

 花ちゃん喜んでるだろうなぁ。ちゃんと聞けたかなぁ。私もフライパンの神様にでも乗っ取られて、プリンスが言ってくれないかなぁ。

「お前より、喜多のほうが大事だ」

 なんてやばい。妖精つれてるプリンスに言われたら……は、鼻血出ちゃう!
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