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プロローグ

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数万年の昔から幾百、幾千の戦いがあった。

 その戦いの中、何人もの英雄達が生まれた。

 彼等の英雄譚は歴史に埋もれる筈だった。

 しかし、人々に忘れられた彼等の物語を甦らせた者達がいた。

 一人は勇者や英雄達が強敵と相対して手に汗握る展開に人々を興奮させた男、ハルフ=シュケル。

 一人は想像を越える美しさの妖精や王女と勇者の純愛や豪華絢爛の結婚式に人々を魅了した女、レトラ=シュケル。

 この二人のシュケルによって世界の英雄達が絵本の中に甦った。







 かつて勇者が召喚され魔王を倒し王位をついだローズル王国。

 ここはその王都の一角。



「おばーちゃん、次これ読んで!」



「次はこれだよー!」



「ズルいぞ!バアちゃんこっち読んでくれよ!」



 街の大通の教会の入口で小さな子供達が階段に座る老婆を囲んで揉めている。



「ハイハイ、オババは一人しかいないから幾つもはムリだよ」



 老婆は子供達の様子を微笑ましそうに見ている。



「じゃあ、魔王のがいい!」



「ドラゴンだよ!」



「違うよ妖精が出てくるのがいいの!」



「王女様との結婚式のがいい!」



 子供達がバラバラの絵本を老婆に差し出す。



「………まだ見たこと無いのがいい……」



 一人の男の子が後ろの方で言う。



「あー、僕もそれがいいー!」

「僕も!」

「私も!」

「うん!」



「おばあちゃん!そんなのある~?」



 子供達が期待した目で老婆を見る。



「そうさねー、みんなが一生懸命に本を読んで、お勉強を頑張ったから知らないのはないねー、ごめんよ」



 子供達は絵本で文字の勉強をしている。

 老婆は笑顔を向けながら子供達の頭を撫でる。



「じゃあさじゃあさ!どこにいけば新しい絵本があるの?」



 一人の女の子が首を傾げながら笑顔で老婆に聞く。



「そうさねー、・・・・どこかにあるのかね」



 老婆は苦笑いをしながら遠い空を見ていた。

 老婆が読んでいた絵本は王都の教会の書庫にはこの世界の全ての本が置かれていた。



「新しい物語なんて無いんだよ」



 一人の青年が子供達の声を聞きながら間借りしている酒場の屋根裏でベッドに寝転がりながら独り言のように呟く。



 夜になり狩に出ていた者達が街に戻り活気が出始めると酒場の女主人の声が屋根裏まで届く声で青年を呼ぶ。



「レター!そろそろお客が増えるから手伝いな!」



 青年はその声に布団を頭から被り狸寝入りをする。

 すると再び声が響く。

 しかも今度は怒気の混じった声が。



「レター!ただ飯食らいのレター!路地裏で寝たいのかい!」



 その声に青年は追い出されてはたまらないと急いで階段を降りていく。



「まったく!少しはやる気を出しな。ほれ、これを奥のテーブルね」



 女主人は青年にジョッキを渡す。



「ハイハーイ」



 青年はテキパキではなくどこかヤル気なさげに自分に渡された配膳をこなしていく。



「レターよー、金を稼ぐならハンターになったらどうだ?」



 カウンダーで飲んでいた酔っ払ったレザーアーマーで体を包んだ男がジョッキで青年をさしながらがら言う。



「ハハハ、なんだお前はレターに死ねってか?」



 テーブルに座っている男がそんな男の言葉に笑う。



「そうだぜ、レターじゃあ街から出た瞬間に死んじまうよ。ワハハハ!」



 違うテーブルの男もそう言って笑い出すと店中が笑い出す。



「そうだぜオッサン、俺は簡単に死ねる自信がある。それに、面倒なのは嫌いなんだ」



 青年がそう答えると更に笑いが大きくなる。



「そうかなー、俺にはそんなことを無いと思うんだけどな」



 最初に喋った男のそんな呟きは笑い声で誰にも届かなかった。



「まったく、男なら少しはシャキッとしてほしいもんだよ」



 女主人は客と一緒に笑っている青年を見て片手で顔を抑えるように言う。

 そんな何時も通り楽しい時間が続き暫くたった頃に酒場の扉が開く。



「いらっしゃい………」



 女主人が客と思い声をかけるとそこにはお揃いの金属の鎧に身を包み胸にはこの国の紋章を付けた騎士が五人立っていた。



「えーッと、騎士様がこんな店に何かご用でしょうか?」



 女主人が答えると五人の中で一番歳をとっている40代後半程の男が前に出る。

 その一人の騎士の胸の紋章は他の者は銀色なのに対して金色に輝いていた。

 紋章を付けた鎧を着るものは王宮に仕える騎士で、その中でも金色の紋章は国王直属の20人しかいない近衛騎士団だけが付けることを許されている。



「営業中に申し訳ない。ここにレターと言う者が居ると思うのだが」



 その騎士の言葉に店中の視線が青年に向く。



「レターってのなら・・・・」



 女主人は困惑した顔で青年を見る。

 王宮騎士がワザワザ自分の元で働く普通の青年を名指しで探していることに女主人が困惑する。

 その騎士は青年の方に向かう。



「貴殿がレターか?私はダガード=マイナイルと言う。現在、陛下より男爵の位を頂いているものだ。これを」



 騎士は青年に丸めて封蝋がされた紙を渡す。

 ダガード=マイナイル男爵とは近衛騎士団副団長として有名な人物である。

 そんな有名な人物とわかると店内にざわめきが広がる。



「……貴族様がご丁寧にどうも、・・・・拒否権はあるのですか?」



 青年が軽く会釈して封を解き手紙を見て答える。

 騎士は首を横に振る。



「申し訳ありませんが、陛下よりの直接の召喚状ですのでご一緒に登城お願い致します」



 騎士は頭を下げる。



「……はぁ、わかりました。今からですか?」



 青年は目立ち過ぎたことにため息をついて陛下直々の呼び出しを逃げる訳にもいかず頷く。



「はい。今から共にお願い致します。レターの身をこちらで預かる」



 騎士は青年に頷いた後に女主人に言う。



「え、ええ、えええ、どうぞ」



 女主人は驚いてぎこちなく頷くことしか出来なかった。

 青年は店を見て申し訳ないことをしたと思いながら騎士に連れられて綺麗な馬車で王城へと向かっていく。



 青年が連れていかれると店内では



「何やらかしたんだ?」

「まさか、他国の諜報か?」

「いやいや、まさか、」

「打ち首かな」

「若いのに可哀想に」



 そんな後ろ向きな意見が飛び交っていた。







 騎士達は馬車の外を前後左右に一人ずつ騎馬で囲み進んでいて、馬車の中には騎士とは違う御者が御者台に一人と青年と向き合うように副団長が座っている。



「レター殿は覚えては居ないだろうが昔に貴殿にお会いしているのだ」



 副団長が沈黙を破るように不意に青年に話を振る。



「え?」



 沈黙に耐えられず手を組んで下を向いていた青年は不意に話しかけられ驚いたような声をあげる。



「私は貴殿の父親に剣を習っていたことがあるのだ。近衛騎士になる前の話だが」



 青年の父親は危険な世界を回れる程の実力者だった。



「はぁ~、」



 青年は急に言われたことに呆けていた。



「ふっ、貴殿がまだ小さい頃にしばらくこの王都に滞在していたことがあってな、陛下があの方々が書く物語をいたく気に入っていた事もあり貴賓として城に滞在して頂き、その織り我等騎士に稽古をつけて頂いたのだ。その頃の私はまだ騎士見習いだったが筋が良いと熱心に色々と教えて頂いたのだ」



 騎士は腕を組んで満足そうに目を閉じている。

 そんな過去があるため貴族でもない青年に対して貴族騎士は丁寧な対応をしていた。



「・・・・・フッ」



 青年は両親と旅をしていた頃に訓練だと言われて行われた地獄の日々を思い出して遠い目で前に居る御者隙間から見える空を眺める。



 青年が嫌な過去を思い出した頃、御者が声をかける。



「まもなく城に着きます」



「わかった。この話の続きはまた今度機会があれば」



 騎士は御者に頷き青年に声をかける。



「…あぁ、…はい……」



 青年は苦笑いを浮かべながら頷く。






 その後、御者の言う通りに数分で王城に着き城の中を騎士達の後について歩いていく。


 青年はとても豪華な城の中の一室で一晩をすごした。


 コンコンコンコン



「失礼します」


 次の日の昼前に若い騎士がレターの部屋に入ってくる。


「では、参ります」


 レターは連れられるままに迎えに来た若い騎士について歩いていく。
 しばらく歩き大きな扉の前で副団長が待っていた。


「昨日はよく寝れましたか?」


「この状態で良くは寝れないよ」


 副団長は気さくにレターに声をかける。


「では、行きましょう」


 そう一言レターに声をかけると副団長が深く息を吸い声を上げる。


「レター殿をお連れ致しました!!」



 副団長が深く息を吸い声を上げる。



「入れ!」



 中から声が掛かると内開きの扉が開く。



「こちらへ」



 副団長に促され中に入ると鎧を着た騎士達が扉の近くに左右に立ち、奥に綺麗な服を着た貴族らしき人々が左右に立っていた。

 副団長以外の四人が並んでいる騎士達の列へと行き青年は副団長の後に続きは真ん中の赤い絨毯の上を歩いていく。



 副団長は正面の数段上になった位置で椅子に座る初老の男の少し前で止まり片膝を着く。

 青年もそれにならい副団長の少し後ろで同じように片膝を着く。



「国王陛下、レター殿をお連れ致しました」



 副団長は頭を下げたまま報告をする。



「うむ。ご苦労であった。下がってよいぞ」



「はっ!」



 国王は青年を一瞥して頷き副団長を下がらせる。



「そちが我が国の最強の作家ハルフ=シュケルとレトラ=シュケルの子息レターにそういないな!」



 国王は威厳の籠った声で青年に問いかける。

 青年は数多の英雄達を甦らせた最も新しい英雄シュケル夫妻の一人息子だ。



 シュケル夫妻は危険な地にまで逸話や伝承を探したり真意を調べに行くため力も強く世界最強と言われる程だった。

 そのため国王だけでなく世界の常識としてシュケル夫妻は最高の作家ではなく最強の作家と呼ばれていた。



「……はい」



 青年は頭を下げたまま答える。



「レターよ面をあげるがよい。ハルフとレトラは残念であった。世界の損失といっても良い」



 国王は青年の顔を見て優しく微笑みそして、少し声を落として心から残念そうに言う。



 シュケル夫妻は魔人に殺された。

 かつてある町を襲った魔人から人々を守るために戦い、何とかその魔人に致命傷を負わせ撃退には成功したがその戦いで二人は命を落とした。

 普通の魔人ならば二人が遅れをとることは無かったがその町に現れた魔人はその昔、魔王と共に勇者と戦った程の実力を持つ魔王の側近だった。

 いくら最強と言われる二人でもお伽噺になるほどの相手から命をとして人々を守ることしか出来なかった。



「国王陛下にそこまでいって頂きありがとうごさいます。父と母も喜んでいると思います。二人の誇り高い最後は私にとっても誉れです」



 青年は再び頭を下げ答える。



「うむ。それでそちにハルフとレトラと同じように勇者の伝説を書いて貰いたい」



 国王は青年の答えに満足そうに笑顔で頷き本題に入る。



「…………失礼ながら申し上げます。既に書くべき物語がありません」



 この世界に残る物語は全てシュケル夫妻が書いていた。

 青年が申し立てると国王は真面目なニヤリと不適な笑みをこぼす。



「そちも知っていると思うが勇者召喚には決まりがあり、その中でも星の配列が最も大きく関係している」



 勇者を召喚する魔方陣に空の星を組み込む為に数百年に一度しか儀式を行うことが出来ない。

 星を魔方陣に組み込むのは天上にいる神の力を借りて行うためだとされている。

 儀式には神の力を借りるゆえ私利私欲の為に儀式を行えば必ず失敗する。

 神が人々が境地にたち勇者という存在が必要だと判断した時のみ人と神の利害が一致して始めて勇者召喚の儀式が成功するとされている。



「はい、それは昔、父に聞いたことがあるので知っています」



 青年の答えに国王は静かに頷く。



「今年がその年なのだ。そして、魔人達が魔王を蘇らせようとしている。召喚の大義がある。星の配列も問題ない。なので失敗することはなかろう。そちにはその勇者の後を追い記録し新たなる勇者の物語を書いてもらいたい」



「え?・・・・」



 青年は急に言われたことに意味がわからず無作法にも口を開けたまま固まってしまう。

 国王はそんな青年を見て少し口角を上げて言葉を続ける。



「そちには両親にも負けぬ人々を魅了する素晴らしい物語を期待する」



 国王はそこで言葉を止め誰が見てもわかるほど口元を緩めニヤリと笑いう。



「そこで、そちの行動を邪魔されないためにそれ相応の権限を与える。そちの両親ハルフとレトラと同じく名誉子爵位を授与する。家名は両親のシュケルを名乗るがよい。これは今回の報酬の先払いだと思え」



 青年が何も言えず固まっていると周りの貴族や騎士達が騒ぎだす。

 名誉貴族とは一代限りで子供に爵位を継がせることは出来ない貴族のこと。

 いくら一代限りとわ言え今は一般人である青年に貴族の位を、しかも一番下の騎士爵では無く、上級貴族の末端とは言え国王と直接会話を交わすことが出来る貴族会議に出席を許されている子爵位を授与されたことに周りの貴族達は驚きが隠せない。



「静まらんか!これは、正式な貴族会議で決まったことだ!」



 貴族会議とは国王と上級の貴族でおこなう会議で、その殆どは貴族達が議題を出して唯一決定権を持つ国王が決めている。

 最初から国王一人で決めれば早いが、それでは貴族達の不満が溜まり国に亀裂が入り何時か崩壊してしまう。

 そうならないように面倒な会議をおこなって貴族達の不満や要望を聞いている。





 下級の貴族達が貴族会議の決定を聞き自分達が上級の貴族を見ると、青年を笑顔で見て頷く者と忌々しく睨み付けている者がいた。



 この度の会議で今までと違い国王が青年に貴族位を渡すことを提案した。

 その後、話し合いを進めたが国王の意見に賛同する者と異議を申し立てる者とで平行線をたどっていた。

 国王はいつまでも進展の無いまま続く話に早くその者を呼び寄せたい気持ちから苛立ち強引に認めさせた。



(貴族達に強引な態度で決めたのは始めてだったな。何か問題が起こらなければ良いのだが。あやつの話が本当であればレターの実力を知れば誰も文句を言わぬだろう)



 国王は強引に決めたことの不安よりも青年に対しての期待の方が大きかった。

 いくらこの依頼に横槍を入れられ無いために地位が必要でも普通は良くて準男爵位だ。



「ワシが決定したことだ!異論のあるものはおるのか!?」



 今まで貴族会議で殆ど意見を言わず貴族達が纏めたことに目を通し許可を出すだけの国王は周りから昼行灯と呼ばれていたが、今の国王の体が大きく見えるほどの威厳を見たものは二度と国王を昼行灯とは思うことすら無くなった。



 下級貴族達はその姿に驚きを隠せずにいたが、上級貴族達はそれほど衝撃を受けてはいなかった。

 それは、先の貴族会議で同じような光景を既に見ていたためだった。



「レターよ!そちもよいな!」



 国王は青年に顔を向ける。

 青年は国王の決意に満ちた目を見て断ることは不可能だと悟り頭を下げる。



「慎んでお受けいたします」



「うむ」



 国王は満足そうに笑顔を見せる。



 その後色々な話が青年の意見を聞くことはなく決定事項として告げられた。

 その中でも重要なところは二つだった。



 一つ目は領地の話だった。

 貴族は(騎士爵は除く)大なり小なり国から領地を預りその領地の経営をしていて、そこで得られた物の中から国に税を納めている。

 名誉貴族の青年には領地は無い代わりに納税の免除になった。



 二つ目は給金の話だった。

 貴族(騎士爵を除く)は毎月国から給金が支給されることになっている。

 子爵になった青年は毎月金貨十枚が支給される琴似なった。

 金貨は一枚で普通に暮らすだけならば三、四年暮らせる額だ。



 普通の感覚の青年は多いと考えるが、普通貴族はそのお金の中から自分が雇っている使用人や兵士達の給金を出したり、領地の整備をするために使うのでそれほど手元には残らない。



 しかし、それは下級貴族の話で上級貴族ともなると領地は広く街も都市と呼ばれてもいいほどの物で、そこで得られる収益も大きく国からの給金は小遣い程度にしか思っていない。



 騎士爵がどちらも除外されているのは、騎士爵は国王だけでなく公爵や侯爵、辺境伯にも任命することが出来る。

 そのため騎士爵は任命した貴族から他の騎士より少し多い額の給金を貰う。

 騎士爵は簡単に言うと平社員から中間管理職になったようなものだ。



 それから別室で王女を紹介された。



「レターよ、これが、カナリア=フランツ=ローズル第三王女だ」



 国王は名前を紹介しながら隣にいる女性を前に出す。

 カナリア王女は均等の取れたて体に見目麗しい容姿をしていて、そして少し茶色の入った黒髪をサイドで纏めている。

 そんな女性がいかにも姫様という服を着ている。



「よろしくお願いしますわレター=シュケル子爵様私のことはカナリアとお呼びください」



 カナリア王女はスカート端を軽く摘まみ上げ優雅に挨拶をする。



「はい、カナリア様よろしくお願いいたします?」



 青年はなぜ今王女を紹介されたのかわからず首を捻りながら答える。



「わからぬか、カナリアは勇者のパーティーに入り共に旅に出るのだ。それとなこのじゃじゃ馬は昔から勇者の結婚式の絵本にあこがれているのだ」



 カナリア王女はちまたで戦姫という二つ名で呼ばれるほど戦い好きだった。

 それとその戦姫は勇者とのドキドキする恋愛と結婚式の話に魅了された乙女だった。



「はぁ、なるほど」



 青年が納得したと言うように頷く。



「お、お父様!……ムムム………もう知りませんわ!」



 カナリア王女は顔を真っ赤にして部屋を出ていった。



 それから王城に用意された部屋に通されベッドに横になる。



「面倒なことになったなー、…………はぁ、後で荷物取りにいかないとな…………とりあえず最後の話は勇者とカナリア王女の結婚ってことにしておくか」



 ベッドから起き上がり机に用意された紙に最後の締めだけを書いた。





 それから何事もなく勇者召喚の日になった。



 謁見の間に白と黒のローブを着た数人の男女で魔方陣を作る。



 一瞬のまばゆい光の後に魔方陣の真ん中に一人の人間が座っていた。



 カナリア王女が目を輝かせながらその人物を見て一瞬で落胆の表情をする。

 勇者との恋を夢見ていた乙女心を持ったカナリア王女には仕方ないことだった。

 何せそこに現れたのは黒い綺麗な長い髪を後ろで纏めたポニーテールにしている女性だった。



「性別はどっちが来るかわからないのか。王女は残念だな、ああ、最後の話を変えないと」



 青年はそんなことを呟きながら自分の髪を嬉しそうにいじっている魔方陣の中の女性を見ていた。









後書き
 誤字脱字が多いかもしれません。 
 すいません。
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