ルーン・マスター~地味な女が美女になって世界を育成しちゃいます!(モテてはいるがこんなの望んでるのと違う)

桐一葉

文字の大きさ
59 / 77

58

しおりを挟む












 ――――――あれから、口喧嘩をしながらなんだかんだで、広場に到着した。エミリエンヌが足を止めず、道を進んだのが理由の一つだろう。

 二人が後を追ったので、あのまま道の真ん中で、立ち止まらずに済んだのだ。喧嘩をし続けた二人は、ブッスーと不機嫌な顔で、お互いにそっぽを向いている。その間に挟まれたエミリエンヌは、何度かわからないため息をこぼした。



「広場に着いたんだから、いい加減に喧嘩はやめてよね!」
「あたしはやめたいのよ?それなのに、この底なしの粘着質男が、絡んでくるのをやめようとしないのが悪い」
「よく言うよねー?俺がエミーに話しかけようとする度に、邪魔しやがって。この性悪女が!」
「あたしが性悪なら、あんたは救いようがない悪玉じゃないの。幼子に手を出そうとしてんじゃない!」
「ブス!」
「クズ!」
「子供みたいな喧嘩はやめて!!人が見てるでしょうがっ」



 美男美女が、子供を挟んで大喧嘩。人目もはばからずに、子供を巡って言い争っている夫婦に見えないこともない。不本意ながら、そう見られていると確信している。道を行き交う人々が、ヒソヒソと耳に囁きあっているのを、大人組が傍目で気づく。仕方がないと、大人しく離れた。だけど、エミリエンヌからは離れない。離れたら、敗けだと思っているからだ。



「さーて!早速買い物しましょう?」
「やっとなのね」
「何を買いましょうか?なんでも買ってあげるし、あたしも買い物しまくるわよ!!」
「……可愛がってる孫娘に、なんでも買ってあげてる婆さんかよ」
「好きな子に、プレゼントの一つも贈れないような甲斐性なしのくせに」
「なんだよ」
「なによ」



 しつこく喧嘩をし続ける大人たちに、子供の自分が仲裁をするしかないなんて。情けないというか……なんとも言えず。とりあえず、二人の間に割って入った。



「ジュースが飲みたい」
「わかった買ってくる!!」



 どこからそんなスピードが出るのか。目にも止まらぬ速さで、ジュースを探しに旅立って行った。



「それじゃ、元々の予定通り女同士の買い物といきましょうか!」
「そうね、うるさいのがいなくなったことだし。……何を見るの?」
「ブラブラ巡って、市を回って見たい」
「たくさんあるものね」



 まだ市の入り口だけど、店数に終わりが見えない。人々の活気ある声や、店頭に並んでいる美術品の多さに、期待に溢れる気持ちを留めてはおけなかった。



「あそこの店見てみたいわ!」
「行ってみましょうか」



 綺麗な女たちが、楽しそうに笑う。仲良く手を繋いで、お目当ての店に向かった。



「良い品ばかりね。これなんか素敵」
「お目が高い!これは純銀製で、不純物は一切入っておりません」
「その分、軟らかくて扱いづらいんでしょう?」
「うっ!……ですがっ、この細やかな飾り模様は、まさに芸術作品なんですよ!!」



 店主の男が言った通り、確かに目を引く一品だった。それは銀製のネックレスで、全体的に唐草が生い茂り、花が咲いた模様が刻まれている。そして表には、ストーンカメオがはめ込まれていた。

 そのカメオには、聖母と布にくるまれた赤ん坊が彫られていて。慈愛に満ち溢れた優しげな目元に、見ている者の心まで穏やかになるようで。ディーヴァは一目で気に入ったようだ。



「趣味がいいわね、気に入ったわ。これをちょうだい」
「ありがとうございます!!!」



 店主は、一番高価な品が早々に売れたことを分かりやすく喜んだ。ペコペコと頭を下げて、品物を受け取る。エミリエンヌは、並べられている商品を一通り見て言った。



「……そういうのが、好きなの?」
「好きね。特にこのストーンカメオが」
「身に付けないの?わざわざ包装させるなんて」



 店主にお願いして、きちんとした箱に入れてもらう。それらしくラッピングまでしてもらって、小さな袋にそれは入った。お金を渡してそれを受けとると、やけにニヤニヤしてエミリエンヌを見る。



「何?」
「いいえ?何も」



だけど別に、嫌な感じはしなかった。



「さ、次に行くわよ~!」



 この場所には数百を数える店がある、まだ一軒目の店だ。これからどれだけの店を回るのか、想像も出来ない。だけど、楽しそうに笑うディーヴァを見て。付き合えるだけ付き合おうと、嬉しそうに笑いながら後を追いかけた。
























 ――――――同時刻。
朝を迎え、早速ディーヴァを捜しに出かけようとしていた、男たち三人に。マクシミリアンは、無言でホウキやモップを差し出し、部屋の掃除をお願いした。

 明らかに、怒っている。あれほど言ったのに、部屋の中は所々汚れたりヒビが増えていたり。綺麗にしていた真っ白なシーツも、薄汚れて破れている。これでは家主が怒るのも、無理はない。やはり責任は感じたので、黙ってそれを受け取り黙々と掃除を始めた。



「お前らは掃除してろ。俺はマクシミリアンの分も合わせて、朝食を買ってくる」
「えーっ!?まぁ君逃げんのかよ!!」
「誰の話を聞かなかったフリしてんだよ、あぁ?朝食買ってくるっつってんだろうが!」



 文句を垂れるヴォルフに、思いきりアッパーを食らわしてやった。自分の方に倒れこんできたのを、カダルはこれまた静かに避ける。つぶれたヒキガエルのようなうめき声を上げ、ヴォルフは床に沈んだ。



「……あぁ、そんなに気を使ってもらわなくてもいい」
「ここで気を使わなかったら、いつ使えってんだよ。心配するな、金ならある」
「あなたのお仕事は、羽振りが良さそうですからねぇ」
「人聞きの悪いことを言うな!……今までの給料を、使う機会に恵まれなかっただけだ」



 忙しさで使う暇がなく、貯金は増えていく一方なのだ。たかが四人分の朝食代で、その貯金を崩せるはずもない。
それを理解した上で、カダルは遠慮の欠片もなく要求した。



「では私は、野菜のみの食事でよろしくお願いします」
「あぁ。……お前に頼まれたら、なんか釈然としないというか。納得がいかないというか……」
「そんなことは知りません」
「俺は肉!干し肉とかは邪道だからな?!」



 倒れたまま、そう叫ぶヴォルフにマオヤの額に青筋が浮かぶ。要求を聞く気はあるのだが。どうにもこの、ヘラヘラ笑っている男がどこまでいっても、気にくわないのだった。



「お前は純粋に腹が立つ……っ!!」



 蹴りたい殴りたい。その衝動を無理やり抑え込み、扉を壊す勢いで閉めて部屋を出ていった。



「……そういえば、あなたは何か食べたい物を言わなくてもよろしかったのですか?」



 ただ一人、朝食の要求を述べなかった男。マクシミリアンは、自身も掃除しながら真顔で答えた。



「私は、特に食事を必要としない」
「は?飯食わねーの?」
「食べれないことはないが」



 壁を拭いていた手が、動きを止める。考え込む仕草を見せると、重たげな口を開く。



「……食物を口にすると、涙が止まらなくなる」



 それが困る。と、大して困っていないような表情で、彼は言った。なんでも、物心ついた頃からこうだったらしい。育ての親も大層困り果て、食べなくても平気なのかと調べたところ。陽の光を浴びれば、特に問題ないことが分かった。

 後はなるべく、自然が多い空気の綺麗な場所で、一定の時間を過ごすこと。これらの条件を守って、マクシミリアンの体は大きく成長し、どこにも障害は見当たらなかった。



「と、いうことはー……」
「人、ではありませんよね?」
「必然と、そうなるな」



 かなり、衝撃的な告白をしたにも関わらず。またまた平然と、平淡に言葉を返すマクシミリアンに。二人は唖然としながらも、手だけは動かし掃除を続けた。



「……何か、困ることはないのですか?」
「特にないな」
「えー?こんな人間ばっかがいる国で、特に困らないとかありえねー!」



 この世界に人外は多い。うまく溶け合い、折り合いを付け調和を成し生きている。だけど、寿命や生活習慣などが違うため。同じ土地で暮らす場合は、めったにない。大概、同じ種族同士で暮らしている。それでも、特に他種族が珍しい訳ではないので、隠す必要はなかった。



「力とか、出しづらくね?」
「こんな国の外れにある、古いだけとはもはや言えない教会で……出しづらいも何もないだろう?」



 確かに、男たちが教会に入った途端に激しい攻撃を繰り出してきたほどだ。あの容赦のなさ。もしかして、教会がここまでボロボロなのはこの男のせいなのでは?そんな意味も込めて、二人揃ってマクシミリアンを見つめてみたが。熱い視線に気づくことなく、黙々と掃除を続ける。



「なぁ、種族はなんなんだ?」
「さぁ……」
「わからないのですか?」
「私は、赤ん坊の時に捨てられていた。それを私の主が拾い、育ててくれた。だから私は、自分がなんなのかは知らない。主も、わからないと言っていた」
「ディーヴァなら……」
「ん?」



 ディーヴァなら、わかるかもしれない。そう続けたかったのだが、どうしてか言葉が続かなかった。なぜだか、嫌な予感がしたのだ。綺麗過ぎる男を、ディーヴァに会わせたくないという理由からじゃない。もっと根本的なところ、第六感が働いたとでも言えばいいのか。とにかく、この男と会わせてはいけない。それはヴォルフも同じだったようで、互いに無言で頷いた。



「ま、不自由なく暮らせてんなら、別に気にしなくてもいいんじゃね?」
「そうですね。住めば都と言いますし、慣れればここも住みやすい場所なのでしょう。――――たとえ、人でなくとも」
「あぁ。現に私は、この教会で暮らして二百年になる。どんどん朽ちていく場所ではあるが、私にとっては思い出深い“我が家”だ」
「はぁ、……………………はぁ?」
「え、二百……年?嘘だろ!!?」



 強い力の持ち主だとか、人間じゃなかったことなんかよりもよっぽど驚く事実だと。カダルとヴォルフは、目を見開き驚いた。

 人外は長寿。それは代名詞と言っても過言ではない。だが、千年生きられれば神と崇められるほど長生きと言える方で。五百年生きられるだけでも、充分凄いことだ。しかし、こんな人間しかいないような国で二百年も平穏無事に、暮らせている事実。まさに、めったにない珍しい現象だった。















しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...