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魔法使いバトル編

46 これが公開プロポーズというものですか

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「プロポーズの答えをいう前に少しいい?」


私は真顔でレイに訊ねた。


「な、なんだ?」


レイはビクッとして私にすがるような目を向けてきた。


「俺の秘めた思いって何?全然秘めてませんでしたけど?それにまさかずっとそわそわしたり緊張してたのってプロポーズのことを考えてたから?」


急に何言ってるんだろう。
自分でも何故こんなにどうでもいいことを、プロポーズされた直後に聞いているのか分からない。
でも多分そうでもしないと嬉しさで顔が緩んだり、赤くなったりしてしまいそうで……。


「なんだ、ばれてたのか。そうだよ。俺は一世一代のこのプロポーズ大作戦のために夜も眠れなかった。」

「ええっ、そんなに?」


ちょっと大袈裟に言ってるだけじゃないのかな?
だってあのレイがプロポーズに緊張するなんて信じられない。


「そ、それで?プロポーズの答えはどうなんだ?!」


どうって言われても……。

そんなのだいぶ前から私の中で答えは決まっていた。
自分より年下のレイが勇気を振り絞って?プロポーズしてくれたのに誠実に答えないのは流石にいけないと思う。

でもいざってなると恥ずかしいんだよ~!!!!

私は心の中で葛藤したがはっきり答えを言う覚悟を決めてレイに向き合った。



「レイモンド・ミュラー様。貴方は学院で再会したときからこんな私のことを好きだと言って大切にしてくださいました。……私でよければ結婚して下さい。」



よしっ!
言い切ったぞ!!

今ならレイの緊張が分かるよ。
少しだけ緊張から解放されて改めてレイを見ると……



えっ!!
な、泣いてる?!


そう、何故かレイはあの美しい顔から涙を流していた。
私なにか酷いこと言っちゃった?

すかさずグリードさんがレイにハンカチを差し出す。

ナイスフォロー!
っていうかグリードさん、いつからそこに?


いろんな意味で訳かわからず呆然としていると、グリードさん自身も涙ぐみながら説明を始めた。


「レイモンド様は5歳の頃よりアイリーン様をお慕いしておりました。その長きにわたる片思いがやっと実ったかと思うと私もレイモンドも涙なくしては今日の日を迎えられなかったのです!」

「なんだかよく分からないけど、泣くほど私がプロポーズに答えたことが嬉しかったって受け取っていいんだよね?」

「はいっ、勿論でございます!そうだ。レイモンド様、あれを。」


あれって何のことだろう。


私が不思議に思って見ていると、グリードさんは何やら重そうな箱を取り出して蓋を開けてレイに差し出した。

レイは箱からその何かを取り出して私に見せた。



その正体は……なんと美しいデザインのティアラだった。


この国の習慣として、結婚相手に男性はティアラを贈ることがしきたりだ。
逆に女性はティアラのお返しとして、魔力のこもった
刺繍を施したスカーフを渡す。

それぞれどちらも結婚式の時に身につけることになっている。




改めてじっくりそのティアラを見ると……。



綺麗、の一言しかでないほど精巧に作られていた。
植物の蔓をモチーフに作られた作品で所々に葡萄が入っていてそこにはサファイアが埋め込まれている。



私がうっとりと眺めているとレイが説明を始めた。


「プロポーズの時に渡すティアラを何にしようか悩んでいたときに、グリードにはミュラー家に代々伝わるものにしたらどうかと言われたんだが、どこの誰とも知れんやつが作った物をアイリーンが身につけるかと思ったら渡せなくて……。あれこれ悩んで結局自分で作ることにしたんだ。あっ、ちなみにデザインはアイリーンの魔法属性の植物にした。」


……どこの誰とも知れないって、自分のご先祖様でしょ?
でもレイは私のことを考えてデザインしてくれたんだ。


「そうなんだ……。作るのにどれくらいの期間かかったの?」


何となく聞いてみたくなって訊ねた。


「3年だ。」

「さ、3年?!」


「まず図柄を考えるのに一年半。それと製作に残りの時間がかかった。」


そんなにかかったの?!


「それとこの図柄の蔓と葡萄は豊穣の象徴であり、子宝に恵まれるという意味もある。子供は五人くらい欲しいよなぁ。あと、この葡萄のサファイアは俺の瞳の色と同じ色味の物を探してきて着けたんだ。因みに同じデザインの髪飾りとネックレスも作ってあるからそっちは普段身につけてくれ。これでアイリーンは俺の物だと人目で分かるな。」



どうやらレイは物凄く色々な事を考えてそのデザインを決めてくれたみたいだ。
今はその事が素直に嬉しい。
なんだか顔が更に熱いような……。


「あ、ありがとう、レイ。とても素敵なデザインで、それをレイが色々考えながら作ってくれたって考えると凄く胸が温かくなるよ。私も頑張ってお返しのスカーフを作るね?」


「ああっ、アイリーン。遂にお前が俺のものになったのか。それに手作りのスカーフまで貰えるなんて!それに照れた顔も可愛い!!」


そんなに可愛いとか言われると照れるんどけどな。

私にはあとひとつ確認したいことがあった。


「あのー、それで私たちは卒業するまでは恋人同士ってことでいいんだよね……?」

「こ、ここここ恋人?!確かにそうだ。もう俺の片思いじゃなく両思いなんだ。これまでストーカーと言われていたことも合法化されたわけだ。ストーカー解禁だ!素晴らしい!!」



レイモンド君?動揺の余り余計なことを口走ってますよ? 
本当にストーカーしてたの?!




天国のお母様、何はともあれ私たちは無事に恋人になれたようです。


私はそう空に向けて報告した。



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