悠遠の誓い

angel

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11章

side 渉 ②

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「これ 可愛かいらしな~」

本棚の奥に隠れるようにあったチンアナゴのオモチャを手にしてそう言うと、風呂から戻ってきたショタにあっという間に奪われた。


「こっ、これはダメだ!」

派手なアルパカ柄のパジャマを着たショタが、チンアナゴを抱きしめベッドで背を向けた。
乾ききっていない後ろ髪がかかったうなじが桜のように色づいてて。耳たぶがゆでだこみたいに真っ赤になってて、パジャマのズボンの裾から覗く足首が思いのほか細くって変な気分になる。


「触ったらあかんかったんか?ゴメンやで」

後ろを向きショタを見ないようにして布団に座る。
ドキドキする…なんや?オモチャ触っただけやん?なんであんな反応するんや。
まるで…女の子がスカートめくりでもされたみたいな、あんな反応されたら…。


こんな、こんな感情はアカ―――――ン



ピコン



狙ったかのように携帯の通知音が鳴った。
有難い。空気を変えないととんでもないことになりそうだった。スライドして確認すると孝之はんからのLINEだった。






うちのと同じ高級ドライヤーを母親の誕生日にプレゼントしたらしく、それ以来自分でも使ってるんだそうだ。

ショタの髪に天使の輪っかが出来ている。けどコイツは悪魔のようなことを言う。

「美幸ちゃんにフラれたってかーザマァねぇな」
「わっるい顔なってんでー」
「あんなにノロけてたのにな …っぷぷぷ」

こらえきれないとばかりに腹を抱えて笑ってる。神様ここに悪魔がいます。


「だから『合コンしよーぜ』やって」

傷ついた心を癒すには新しい恋をするしかないってことか。
どうする?と聞くと 

「いい 行かない」

「なんでや?……彼女、ほしないんか?」


ベッドの上で膝を抱えてたショタが指でパジャマの模様のアルパカをなぞる。


「オレ…好きな人がいるんだ」

「なんや。初耳やな」

「好きなって言うか、とっくに振られてんだけどね」

「振られてんのかいっ!」

強めに突っ込んでしまった。ならいいじゃないか、尚更 合コンに行かない意味が分からない。



「振られても好きがやめらんないんだ」


膝に頭を乗せ笑うショタ。


「こないだもさ…アイツの誕生日におめでとってLINEしたんだけど既読にもならなくってさ」

伏せた目がわずかに湿ってるような気がして

「既読スルーかブロックされてんのかわかんないけどさ」

細い肩が頼りなく見えて抱きしめてやりたくなる。




アカ―――――ン!!






アルパカのライトだけを残して部屋の電気を消す。これは『もう寝よう』の合図だ。
布団をかぶりショタのベッドを見上げる。

え……。まだ3分くらいやで?嘘やろ。


こいつは驚くほど寝つきがいい。電池が切れたかのように一瞬で眠ってしまうんだ。その代わりなのか寝起きが恐ろしく悪い。機嫌が悪いしちょっとやそっとじゃ起きやしないんだ。

アルパカのぬいぐるみを抱きしめる手をチュッチュと吸うのがコイツのクセだ。
乱れた前髪から普段は見えない白い額が見えてて触りたくなる。



アカンて―――――!!




俺は布団をかぶり寝ようと努力したが、結局朝まで眠れず。ショタの寝顔を見ながら夜を明かした。




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