3 / 10
第一章 記憶の断片
第一章 記憶の断片 #3
しおりを挟む
「……信じられないよ、そんなの」
澪は呟いた。けれど、その言葉とは裏腹に、心の奥ではすでに知っていた。
魂の記憶、ノエル、カイン。そして、千の魂の話――全部が、現実と同じ温度で息づいている。
「君の中に、記憶は残ってる。断片でも、きっと呼び起こせるはずだ」
カインは、ポケットから小さな金属片のようなものを取り出した。手のひらにのせると、それは柔らかく光を帯びる。
「これ……なに?」
「“魂の鍵”。君の前世の記録のひとつだ。手に取ってごらん。触れるだけで思い出すはずだよ、澪」
澪はゆっくりと手を伸ばした。
指先が光に触れた瞬間、視界が白く染まる。
***
青く霞んだ空。二つの太陽が沈みかける砂漠の地平線。
そこにいたのは、自分だった。けれど地球の澪ではない。異なる姿、異なる名前、異なる星の民。けれど確かに“自分”だとわかった。
「いつか、また会えるよね?」
異星の少女が、誰かに微笑んで言った。砂の風が吹き抜けて、二人の姿をかき消していく。
***
「……見えた」
澪は、ゆっくりと目を開けた。涙が一筋、頬を伝う。
「これが……私の、魂の記憶」
「そうだ。千の魂は、それぞれ無数の人生を生きてきた。けれど、君の魂は特別なんだ。最初に生まれ、最も多くの星を巡った。だから、君の記憶は宇宙そのものの記録でもある」
「私が、そんな大層なものだなんて……」
カインは静かにうなずいた。
「でも、澪。その記憶が狙われてる。君の中にある“起源”が、世界の均衡を変える鍵になるんだ」
「……どうすればいいの?」
澪は問うた。もう逃げる気はなかった。
「一緒に来てほしい。僕と。千の魂の記録を守る旅に」
夕暮れの空に、星がひとつ、淡く瞬いていた。
それは澪にとって、ただの星ではなかった。
遠い記憶のどこかで、彼女が命を終え、また生まれ変わった星。
何千、何万の命が繋がったその光が、今、再び彼女を導いていた。
「……うん、行くよ」
その一言で、澪の世界は静かに終わり、新しい世界が始まった。
澪は呟いた。けれど、その言葉とは裏腹に、心の奥ではすでに知っていた。
魂の記憶、ノエル、カイン。そして、千の魂の話――全部が、現実と同じ温度で息づいている。
「君の中に、記憶は残ってる。断片でも、きっと呼び起こせるはずだ」
カインは、ポケットから小さな金属片のようなものを取り出した。手のひらにのせると、それは柔らかく光を帯びる。
「これ……なに?」
「“魂の鍵”。君の前世の記録のひとつだ。手に取ってごらん。触れるだけで思い出すはずだよ、澪」
澪はゆっくりと手を伸ばした。
指先が光に触れた瞬間、視界が白く染まる。
***
青く霞んだ空。二つの太陽が沈みかける砂漠の地平線。
そこにいたのは、自分だった。けれど地球の澪ではない。異なる姿、異なる名前、異なる星の民。けれど確かに“自分”だとわかった。
「いつか、また会えるよね?」
異星の少女が、誰かに微笑んで言った。砂の風が吹き抜けて、二人の姿をかき消していく。
***
「……見えた」
澪は、ゆっくりと目を開けた。涙が一筋、頬を伝う。
「これが……私の、魂の記憶」
「そうだ。千の魂は、それぞれ無数の人生を生きてきた。けれど、君の魂は特別なんだ。最初に生まれ、最も多くの星を巡った。だから、君の記憶は宇宙そのものの記録でもある」
「私が、そんな大層なものだなんて……」
カインは静かにうなずいた。
「でも、澪。その記憶が狙われてる。君の中にある“起源”が、世界の均衡を変える鍵になるんだ」
「……どうすればいいの?」
澪は問うた。もう逃げる気はなかった。
「一緒に来てほしい。僕と。千の魂の記録を守る旅に」
夕暮れの空に、星がひとつ、淡く瞬いていた。
それは澪にとって、ただの星ではなかった。
遠い記憶のどこかで、彼女が命を終え、また生まれ変わった星。
何千、何万の命が繋がったその光が、今、再び彼女を導いていた。
「……うん、行くよ」
その一言で、澪の世界は静かに終わり、新しい世界が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる