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第一冊 赤い服の少女

第三話 「こんにちは、おばあちゃん」

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 その瞬間私が目にしたのは、腹部から血を流すおばあさんだった。

 「逃げ......て」

 膝が震えて動くことができない。

 「君はいったん離れなさい。どれ......ナイフのような物で刺された痕跡があるな。すぐに止血しなくては......」

 狼さんは近くにあったおばあさんの膝掛けを引きちぎり、それを患部に巻きつけ強く縛る。

 「幸い軽症みたいですね......傷は浅い。しかしこれはあくまで応急措置に過ぎないので、早いうちに病院にでも連れていかなくては......」

 「そ、そんな......おばあさん大丈夫?」

 腹部が痛み、声が出ないようだけれど、歪んだ笑顔でコクリと頷く。

 「裏口が空いてる......おそらく犯人はあそこから出た可能性が高いですね」

 「鍵、閉めておきます。」

 私は二つの扉の鍵を閉める。

 その間に狼さんはおばあさんをベッドに寝かせた。

 「それにしてもいったい誰がこんなことを......」

 「少なくともわかることは二つ。わざわざナイフで刺されていることから人間である可能性が高いですね。二つ目は、おばあさんが軽症であることから僕たちが来るすぐ前にやられたかもしれないということです」

 おばあさんはコクリと頷く。

 「とりあえず病院に向かうしかないみたいだけれど......」

 「今出れば、犯人と鉢合わせするかもしれない。むしろ、目的がわからない以上森の中に潜み待ち構えてるなんてこともなくないですね」

 「それじゃあどうしたら......」

 「とりあえず、作戦を立てるしかないですね」

 「はい......それじゃあこの森について教えてください」

 「おばあさんの家はこの森の東側で外とは遠くない。そして、東側には村がありますが、病院はありません。行くなら西側の街でしょう」

 「で、でもそれって森を横断するってことじゃ......」

 「だからそうはしません。一旦西側の村に行き、そこから森を迂回した道で送ってもらうのが無難でしょう」

 そうして、私達は森を出る作戦を練った。

 (狼さんがおばあさんを抱えるなら......私の身は私で守るしかない......)

 「そう力まなくてもピンチの時は僕が助けます。安心してください」

 私達が扉に手をかけたその時だった。

 ガタッ、部屋から大きな物音がする。

 「こんにちは、おばあちゃん」



 

 
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