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第74話 タルバンの思い
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「テレシアが気に入ったのか?」
聞かれたアラーナ(タルバン)が言葉に詰まる。
「ああ、そうですね。素敵な令嬢だなあ、と」
「そうか!」
カルトメリが感心するとともに、アラーナもパルマもアラーナ(タルバン)を見た。
領地にいた時も含めて、そんな反応を見たのは初めてだったからだ。
「伯爵家の当主と子爵令嬢、十分に釣り合うな」
乗り気なカルトメリに対して、アラーナ(タルバン)はゆっくり首を振った。
「閣下、正確には貧乏伯爵家ですよ」
「まあ、そうだな」
「ご存じでしょう。あのボロ家を。公爵家の馬屋の方が立派なのではありませんか?」
「…むぅ」
「あのような家に貴族令嬢を迎え入れるのは無理ですよ」
カルトメリは何も言えなくなる。
アラーナは悲しそうな顔をみせ、パルマは目を伏せた。
「もう少し具体的な話をしましょう」
「うん?」
「この前に公爵夫人付となる使用人の報酬について話しをしましたよね」
「うむ、年間2000リーグルと」
「あの時に我が家の使用人の給金を300リーグルと伝えました」
「そうだったな」
「あれは、1人につき、ではなく、4人合わせての金額です」
「そうなのか?」
カルトメリが顔を向けると、パルマがうなずいた。
「そんな報酬で良く仕えてくれています」
「そうだったのか」
「おそらくワーレンバーグ公爵家の若い人よりも低いのではありませんか?」
「確かにな。新入りでも年400リーグルを支払っている」
「そうですよね。ただし一家4人で300リーグルでも、クリスパ領ではそこそこの収入なのです」
「…そうか」
アラーナ(タルバン)は重い雰囲気を壊すつもりで、ポンと手を叩く。
「そんなクリスパ領を栄えさせるのが、当面の私の望みです。伴侶を迎えるのは、その先、となりますね」
「しかし1年や2年では…、5年10年とかかるだろう」
「それも承知の上です」
「テレシアが行き遅れてしまうぞ」
アラーナ(タルバン)はテレシア・リフォリア子爵令嬢と対面した時のことを思い出す。
豪華な金髪は軽くウェーブがかかっており、雲間から降りる陽の光を思い出させる。
青い2つの瞳に見上げられた際には、心臓をわしづかみにされたように感じた。
ほんの一瞬、見つめ合っただけにも関わらず、今でも脳裏に焼き付いている。
「閣下、テレシア様にこだわりますね」
「テレシアも満更ではないように思えたが…」
「先ほどテレシア様が見ていたのは、アラーナ・クリスパ伯爵令嬢ですよ」
「ああ、それもそうか…」
「いずれにしても、テレシア様であれば、お似合いの方が見つかるでしょう」
「うーむ」
アラーナ(タルバン)は話題を変える。
「それに素敵な令嬢と言うには、別な意味もあります」
「別の意味?」
「アラーナも伯爵令嬢です」
「そうだな」
カルトメリがうなずくと同時に、アラーナもパルマもうなずいた。
「しかし野原を駆け回ったり、木登りをしたり…」
「ほぅ」
「ウサギを罠にかけたり、魚をつかみ取ったり…」
「ほぅほぅ」
「そんな貴族令嬢です」
アラーナは【魚取りは得意でした】と微笑んだ。
カルトメリも「そうか」と笑顔をみせる。
「もちろん、それが悪いわけではありませんが、テレシア様とは違うと思いまして」
「そうだなあ」
「こう…雰囲気と言うか…空気と言うか、はっきり説明できませんが」
「ふむ、それで?」
「その辺りを見習って行けたらなと。アラーナも、ね」
【私もぜひお願いしたいです】
カルトメリは何度もうなずく。
「分かった。そう言うことにしておこう」
その時、パルマが立ち上がって唇に人差し指を当てる。
「お静かに!」
カルトメリとアラーナ(タルバン)が口を閉じる。
アラーナも立ち上がると、侍女らしくアラーナ(タルバン)の後ろに移動する。
しばらくしてノックの音が聞こえた。
パルマが「どうぞ」と扉を開けると、侍女が「お食事の用意が整いました」と知らせてきた。
カルトメリが「すぐに向かう」と答えたのを聞いて侍女は去っていった。
聞かれたアラーナ(タルバン)が言葉に詰まる。
「ああ、そうですね。素敵な令嬢だなあ、と」
「そうか!」
カルトメリが感心するとともに、アラーナもパルマもアラーナ(タルバン)を見た。
領地にいた時も含めて、そんな反応を見たのは初めてだったからだ。
「伯爵家の当主と子爵令嬢、十分に釣り合うな」
乗り気なカルトメリに対して、アラーナ(タルバン)はゆっくり首を振った。
「閣下、正確には貧乏伯爵家ですよ」
「まあ、そうだな」
「ご存じでしょう。あのボロ家を。公爵家の馬屋の方が立派なのではありませんか?」
「…むぅ」
「あのような家に貴族令嬢を迎え入れるのは無理ですよ」
カルトメリは何も言えなくなる。
アラーナは悲しそうな顔をみせ、パルマは目を伏せた。
「もう少し具体的な話をしましょう」
「うん?」
「この前に公爵夫人付となる使用人の報酬について話しをしましたよね」
「うむ、年間2000リーグルと」
「あの時に我が家の使用人の給金を300リーグルと伝えました」
「そうだったな」
「あれは、1人につき、ではなく、4人合わせての金額です」
「そうなのか?」
カルトメリが顔を向けると、パルマがうなずいた。
「そんな報酬で良く仕えてくれています」
「そうだったのか」
「おそらくワーレンバーグ公爵家の若い人よりも低いのではありませんか?」
「確かにな。新入りでも年400リーグルを支払っている」
「そうですよね。ただし一家4人で300リーグルでも、クリスパ領ではそこそこの収入なのです」
「…そうか」
アラーナ(タルバン)は重い雰囲気を壊すつもりで、ポンと手を叩く。
「そんなクリスパ領を栄えさせるのが、当面の私の望みです。伴侶を迎えるのは、その先、となりますね」
「しかし1年や2年では…、5年10年とかかるだろう」
「それも承知の上です」
「テレシアが行き遅れてしまうぞ」
アラーナ(タルバン)はテレシア・リフォリア子爵令嬢と対面した時のことを思い出す。
豪華な金髪は軽くウェーブがかかっており、雲間から降りる陽の光を思い出させる。
青い2つの瞳に見上げられた際には、心臓をわしづかみにされたように感じた。
ほんの一瞬、見つめ合っただけにも関わらず、今でも脳裏に焼き付いている。
「閣下、テレシア様にこだわりますね」
「テレシアも満更ではないように思えたが…」
「先ほどテレシア様が見ていたのは、アラーナ・クリスパ伯爵令嬢ですよ」
「ああ、それもそうか…」
「いずれにしても、テレシア様であれば、お似合いの方が見つかるでしょう」
「うーむ」
アラーナ(タルバン)は話題を変える。
「それに素敵な令嬢と言うには、別な意味もあります」
「別の意味?」
「アラーナも伯爵令嬢です」
「そうだな」
カルトメリがうなずくと同時に、アラーナもパルマもうなずいた。
「しかし野原を駆け回ったり、木登りをしたり…」
「ほぅ」
「ウサギを罠にかけたり、魚をつかみ取ったり…」
「ほぅほぅ」
「そんな貴族令嬢です」
アラーナは【魚取りは得意でした】と微笑んだ。
カルトメリも「そうか」と笑顔をみせる。
「もちろん、それが悪いわけではありませんが、テレシア様とは違うと思いまして」
「そうだなあ」
「こう…雰囲気と言うか…空気と言うか、はっきり説明できませんが」
「ふむ、それで?」
「その辺りを見習って行けたらなと。アラーナも、ね」
【私もぜひお願いしたいです】
カルトメリは何度もうなずく。
「分かった。そう言うことにしておこう」
その時、パルマが立ち上がって唇に人差し指を当てる。
「お静かに!」
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