カースト最底辺からの成り上がり

けんもも

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第一章 アルンガルト王国編

異世界転移

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マトタ学院。ここは世界にその名の知れた大企業の御膝元の都市に作られた、マトタ企業に関わる者たちが学ぶ、小・中・高の一貫教育を理念とした学院である。

名目はいろいろ立派であるが、要はマトタの企業内の力学がこの学院に半強制的に通わされている子供達の力関係にそのまま反映されている。
この学園でのトップは勿論、マトタ一族、そしてそれに連なるものがその下に来て、本社勤務者、子会社勤務者、孫会社勤務者などの子供達がこの学院内でカーストを形成する。そして、このカーストの最下層にいるのがマトタ関連企業以外でこの学院に通っている者たちだ。なぜそこまでして通うのかと言えば、成績上位者には学費や校納金などの一切の免除が受けられ、しかも国内だけでなく海外への大学への推薦入学もできるために、マトタ市に住み、社会の底辺で暮らしている者達のうち優秀な者達が集まってくるのだ。

俺、龍崎拓哉もそうしたマトタ以外の奨学特待生の一人だ。中学からこの学院に入り常にベスト3をキープし特待生となっている。親は父親はかつてマトタの子会社に働いていたが物心つくころにはすでに死んでおり、母親も中学2年の時に過労が元で死んでしまった。特待生で学生寮の寮費も全額無料でなければ、母親がなくなった時点で児童相談所に送られてどこかの養護施設にでも入れられたと思う。

学園内では公然とまかり通っているマトタによるカースト制度は、特待生には一定の配慮がされていて、中1までは俺もそう言うものを気にせずに中学生活を送っていた。しかし、俺の母親が死んでから遠慮がなくなったのかクラス内でも学生寮でも、完全にカーストの最下層に置かれてしまった。俺が元からカースト制度など気にもせず、ボッチでいることを気にしなかったので集団によるハブリが過熱したのだろう。

最下層者には人権はない。現在この層にいるのは俺一人だ。一時的にカースト外の立場にいたようだが、カースト外にいたやつらも自分達の下が欲しかったのか俺をカーストのさらに最下層に置いたようだ。中学時代はあらゆるいじめを経験した。物を取られる、落書き、用具の破損などなど。さすがに殴る蹴るなどの直接的なものはなかった。しかし、いじめを受けているのを知りながら先生も見て見ぬふりをし、破損して使えなくなった学用品の購入の為の手続きを何も言わず行っていた。先生とは言えこのマトタの中で生きている人間だ仕方ないことだ。

高校に入り、子供じみたいじめはなくなったものの、精神的ないじめ特に見た目だけはかわいい女子からのいじめは毎日受けるようになった。きっかけはカーストのトップにいるマトタ一族の同級生に気に触ったのがいけなかったのだろうと思う。しかし俺はその時の状況を覚えていない。いつものように俺の容姿や性格を貶す女子の一団の謂れなき非難を受けながら英単語の勉強をしていたんだけど、どうもマトタ一族のお嬢様の御好意を無視したらしい。何の御好意だったのか少し気になったけど今さら聞く訳にもいかない。いずれにせよそれ以降、お嬢様のどうたらこうたらという非難を受けることが加わったのでそうなんだろう。

いつものように朝の集中砲火が終わって、朝のSHRの時間が近くなり女子とそいつらの取り巻きの男子がそれぞれの席に散った時に、それは突然に起きた。黒板に突然魔法陣みたいな幾何学文様が浮かび上がって、眩い光を発したかと思ったらその魔法陣に向かって教室の生徒飲み込まれ始めた。丁度、強力な掃除機で吸い取られるような感じだ。一番後ろの席にいた俺はそんなあり得ない状況を目の当たりにして、自分が魔法陣に吸い込まれるところで自分の意識が朦朧としたが、全てを知りたいと願い何とか意識を繋ぎとめた。それでも身体はグランドを全力で何周も入った後のように重く、意識は少し混濁していた。


「成功じゃ、禁書の記載通りの黒髪の少年少女達じゃ。」

「では、この後は予定通りに。」

冷たい石の床の上に横たわり半分覚醒した意識のまま、そんな話し声を聞いた。俺は情報を収集するために周りのやつらと同じように意識を失った振りをして様子を伺った。俺達はかなりの人数の人に囲まれているようだけど、敵意みたいなものは向けられていない。むしろこっちが意識を取り戻すのをじっと待っている感じだ。

これは、なんだ?さっきみた魔法陣みたいなやつに吸い込まれたけど夢じゃないよ?
薄眼を開けてみる。ちょうど席が隣だったやつ、確か宮部彩という俺と同じ特待生だったやつが俺に倒れ掛かっている。お陰で俺が目を開けても周りに気付かれない。
自分の身体の感覚を確かめてみる。特に痛みや違和感はない。強いてあげれば俺の上に倒れ掛かっている宮部彩の柔らかい部分が当たっているのが気になるくらいだ。
ともかく、どうなんてんだって思いながら目の前にある自分の手を見つめると、

氏名 龍崎拓哉
年齢 17歳
性別 男性
種族 人族
職業 異世界転移者
レベル 1
経験値 0
体力  250
魔力  250
筋力  250
敏捷  100
回避  100
防御  200
知恵  500
精神  300
幸運  300
固有スキル 賢者
スキル なし
補正  異世界転移者(自動翻訳、能力値上昇)、習熟

な、なんだこれは。RPGみたいじゃねえか。尤も俺はゲームとかやったことはなく、暇つぶしと俺の唯一の娯楽である読書で読んだことのあるライトノベルの知識だけど。
異世界転移ってやつか。
上に乗ってる宮部を見ながら同じように念じてみると、


氏名 宮部彩
年齢 17歳
性別 女性
種族 人族
職業 勇者(仮)
レベル 1
経験値 0
体力  100
魔力  150
筋力  60
敏捷  60
回避  60
防御  80
知恵  90
精神  60
幸運  50
スキル 火魔法(LV1)、水魔法(LV1)、風魔法(LV1)
補正  異世界転移者(自動翻訳、能力値上昇)

俺のとは随分と違うな。他のやつらのを見てみたいけど、今はまだ誰も起き上がってないからな。動くのは拙いか。


「この者たちは生きているのだろうな。」

「はい。息はしています。しかし目覚める前に我々が身体に触れますと、この後の説得が難航するかもしれません。」

「気を失っている間に、隷属の首輪を嵌めればよかろう。」

「いえ、本人の意思で嵌めることを承諾しなければ意味がありません。」

「それはそうだが。」

「大丈夫でございます。見たところ年端もいかぬ少年少女。それぞれの好みの者に世話係を与えれば、籠絡は簡単でございましょう。」

「それにしても、本当にこ奴らは勇者なのか?」

「その辺り、本人達が起きてから確かめさせなければなりませんが、伝承の通り召喚出来たのですから間違いないでしょう。」


俺が周囲の気配を探って聞き耳を立てているとそんな物騒な会話が聞こえてきた。耳元で話しているように聞こえるってことは、これも異世界補正の何らかのスキルが働いているんだろうか。もう一度自分のステイタスを確認してみると、索敵、気配遮断、超聴覚の3つのスキルが増えていた
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