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第二章
28. お茶会
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フローラはお茶会に呼ばれていた。
主催者は縦ロールの公爵令嬢、エリザベスである。
彼女の一派と一緒にお茶をすることになり、フローラは今、学院内にある庭園でお茶をしていた。
オホホホっと高笑いするエリザベスはいつも通りである。
しかし、彼女は内心で、
――お友達とのお茶会ですわ! フローラ様に楽しんで頂けるでしょうか?
と、わくわくドキドキしていた。
今までのエリザベスは取り巻きとのお茶会ばかりであり、好き勝手に振る舞えていた。
しかし、フローラとはお友達であり対等な関係なのだ。
そのためエリザベスはいつものお茶会以上に気合を入れていた。
「聞きましたわよ、フローラ様。剣術部に入られたようですわね」
そうエリザベスが切り出すと、
「あら、まあ。剣術部ですこと?」
「随分と活動的ですわね」
と、周りの令嬢がクスクスと笑い始めた。
フローラとエリザベスは友達である。
しかし、それは2人の間のものであって、エリザベスの取り巻きたちはフローラを未だに敵対視している。
というのも、取り巻きたちは基本的にエリザベスの駒であり。
フローラはエリザベスの敵。
そう認識している彼女らはエリザベスのために、フローラを貶しているのだ。
「剣術部は良い部活ですよ」
「まあまあ、平民の男たちとお戯れですか? それはまた、面白いことをやっておりますわね」
そう言ったのは取り巻きの一人。
彼女の名はセリーヌ・ド・アルノー。
アルノー伯爵家の令嬢である。
おかっぱ黒髪の少女だ。
気の弱そうな外見とは裏腹に、結構な毒舌である。
「はい。いつもは楽しく、しかし、ときに厳しく。剣術を学び、体を動かしております」
「剣術とは、また野蛮ですこと。刺繍部のほうが繊細で美しくてよ」
と、セリーヌは言った。
彼女は刺繍部であり、女性の価値とは刺繍をいかに上手くできるか、と考える少女であった。
いかにも貴族らしい令嬢だ。
セリーヌはエリザベスを見て、言ってやりましたわ、と得意げになる。
だが、しかし。
「セリーヌ様。あなたが刺繍の腕前に自信がおありなのは、私も存じております。しかし、フローラ様を貶すのはよしてくださいな」
そうエリザベスが言うと、セリーヌは目を見開いた。
彼女だけでなく、取り巻きたちは一様に驚いた顔をしている。
「あ、あの……エリザベス様?」
セリーヌが呆然となる。
彼女はエリザベスのためを思って言ったのだ。
まさか、自分が注意されるとは思ってもいなかった。
「はい、どうしました?」
「それは……どういう意味でしょう?」
「フローラ様を貶める発言は聞き捨てなりません。と私は述べたのです」
エリザベスはきっぱりと言った。
――今日こそは、私とフローラ様との関係を伝えるときです。これ以上、私のお友達を馬鹿にされるのは許せませんもの。
彼女はそう決意をして、取り巻きをお茶会に誘ったのだ。
エリザベスがフローラを嫌っている、という空気を払拭し、仲良しアピールをしたかったのだ。
「私とフローラ様はお友達です、なので彼女を貶めることは、私を貶めることにも繋がります。その覚悟はおありで?」
と、エリザベスが言うものだから取り巻きたちは萎縮してしまった。
それもそうだ。
公爵令嬢であるエリザベス。
そして聖女と名高いフローラ。
第1学年のツートップとも言える彼女らを敵にすることなど、取り巻き令嬢たちができるとは思えない。
セリーヌは苦々しく思いながらも、エリザベスに謝罪する。
「も、申し訳ありません」
「私は構いませんわ」
エリザベスは鷹揚に頷いた。
「しかし、謝る相手が違うのではありませんか?」
と、彼女は言った。
すると、セリーヌは逡巡を見せたあとに、フローラを見て、
「分を弁えずに、失礼なことを申しました。どうか、ご容赦をお願います」
と、謝ったのだ。
セリーヌからすると屈辱である。
しかし、当のフローラは、そもそも自分が貶されていたことに気づいておらず。
――んん? 状況が理解できんが、まあ良いや。
と、呑気なものだった。
彼女は他人からの視線に疎いのだ。
賞賛も批判もフローラには通じない。
他人の視線が気にならないのは、ある意味とても幸せなことだろう。
とりあえず、フローラは、
「いえ、気にしておりませんわ」
と微笑んだ。
そんなフローラを見て、エリザベスは、
――フローラ様は心が広いですわ。
と、感心していた。
そして、ようやくフローラとお友達であることを周囲に知らせることができ、エリザベスは大変満足であった。
取り巻きたちもエリザベスとフローラの仲が良いのなら、そのように振る舞えば良いだけのこと。
彼女らは、臨機応変に行動できるのだ。
そもそも、フローラに対して嫌な気持ちを持っている令嬢のほうが稀だ。
令嬢たちは基本的に美しいものが好きなのだ。
フローラほどの美貌の前では、嫉妬の気持ちすら抱かない。
アイドルに嫉妬しないのと同じような原理である。
それほどまでに、彼女の容姿は現実離れしていた。
エリザベスのお友達発言を機に、お茶会は和やかになったのだった。
主催者は縦ロールの公爵令嬢、エリザベスである。
彼女の一派と一緒にお茶をすることになり、フローラは今、学院内にある庭園でお茶をしていた。
オホホホっと高笑いするエリザベスはいつも通りである。
しかし、彼女は内心で、
――お友達とのお茶会ですわ! フローラ様に楽しんで頂けるでしょうか?
と、わくわくドキドキしていた。
今までのエリザベスは取り巻きとのお茶会ばかりであり、好き勝手に振る舞えていた。
しかし、フローラとはお友達であり対等な関係なのだ。
そのためエリザベスはいつものお茶会以上に気合を入れていた。
「聞きましたわよ、フローラ様。剣術部に入られたようですわね」
そうエリザベスが切り出すと、
「あら、まあ。剣術部ですこと?」
「随分と活動的ですわね」
と、周りの令嬢がクスクスと笑い始めた。
フローラとエリザベスは友達である。
しかし、それは2人の間のものであって、エリザベスの取り巻きたちはフローラを未だに敵対視している。
というのも、取り巻きたちは基本的にエリザベスの駒であり。
フローラはエリザベスの敵。
そう認識している彼女らはエリザベスのために、フローラを貶しているのだ。
「剣術部は良い部活ですよ」
「まあまあ、平民の男たちとお戯れですか? それはまた、面白いことをやっておりますわね」
そう言ったのは取り巻きの一人。
彼女の名はセリーヌ・ド・アルノー。
アルノー伯爵家の令嬢である。
おかっぱ黒髪の少女だ。
気の弱そうな外見とは裏腹に、結構な毒舌である。
「はい。いつもは楽しく、しかし、ときに厳しく。剣術を学び、体を動かしております」
「剣術とは、また野蛮ですこと。刺繍部のほうが繊細で美しくてよ」
と、セリーヌは言った。
彼女は刺繍部であり、女性の価値とは刺繍をいかに上手くできるか、と考える少女であった。
いかにも貴族らしい令嬢だ。
セリーヌはエリザベスを見て、言ってやりましたわ、と得意げになる。
だが、しかし。
「セリーヌ様。あなたが刺繍の腕前に自信がおありなのは、私も存じております。しかし、フローラ様を貶すのはよしてくださいな」
そうエリザベスが言うと、セリーヌは目を見開いた。
彼女だけでなく、取り巻きたちは一様に驚いた顔をしている。
「あ、あの……エリザベス様?」
セリーヌが呆然となる。
彼女はエリザベスのためを思って言ったのだ。
まさか、自分が注意されるとは思ってもいなかった。
「はい、どうしました?」
「それは……どういう意味でしょう?」
「フローラ様を貶める発言は聞き捨てなりません。と私は述べたのです」
エリザベスはきっぱりと言った。
――今日こそは、私とフローラ様との関係を伝えるときです。これ以上、私のお友達を馬鹿にされるのは許せませんもの。
彼女はそう決意をして、取り巻きをお茶会に誘ったのだ。
エリザベスがフローラを嫌っている、という空気を払拭し、仲良しアピールをしたかったのだ。
「私とフローラ様はお友達です、なので彼女を貶めることは、私を貶めることにも繋がります。その覚悟はおありで?」
と、エリザベスが言うものだから取り巻きたちは萎縮してしまった。
それもそうだ。
公爵令嬢であるエリザベス。
そして聖女と名高いフローラ。
第1学年のツートップとも言える彼女らを敵にすることなど、取り巻き令嬢たちができるとは思えない。
セリーヌは苦々しく思いながらも、エリザベスに謝罪する。
「も、申し訳ありません」
「私は構いませんわ」
エリザベスは鷹揚に頷いた。
「しかし、謝る相手が違うのではありませんか?」
と、彼女は言った。
すると、セリーヌは逡巡を見せたあとに、フローラを見て、
「分を弁えずに、失礼なことを申しました。どうか、ご容赦をお願います」
と、謝ったのだ。
セリーヌからすると屈辱である。
しかし、当のフローラは、そもそも自分が貶されていたことに気づいておらず。
――んん? 状況が理解できんが、まあ良いや。
と、呑気なものだった。
彼女は他人からの視線に疎いのだ。
賞賛も批判もフローラには通じない。
他人の視線が気にならないのは、ある意味とても幸せなことだろう。
とりあえず、フローラは、
「いえ、気にしておりませんわ」
と微笑んだ。
そんなフローラを見て、エリザベスは、
――フローラ様は心が広いですわ。
と、感心していた。
そして、ようやくフローラとお友達であることを周囲に知らせることができ、エリザベスは大変満足であった。
取り巻きたちもエリザベスとフローラの仲が良いのなら、そのように振る舞えば良いだけのこと。
彼女らは、臨機応変に行動できるのだ。
そもそも、フローラに対して嫌な気持ちを持っている令嬢のほうが稀だ。
令嬢たちは基本的に美しいものが好きなのだ。
フローラほどの美貌の前では、嫉妬の気持ちすら抱かない。
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