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夢………じゃない!?

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「暑い」
俺こと降魔翼ごうまたすくは1人、終業式が終わった事に安堵しつつ
高校教室の窓辺でたそがれていた。
夕焼けが眩しいくも美しい、これは世界共通の美なのだろう…などと考えながら学校指定のバックを担ぐ
「帰りますか」
誰に言っているのか解らない独り言を呟きつつ、下駄箱で靴を履き替え、帰り道を行く
今年高校に入って一ヶ月もたっていない
しかも
田舎の高校
=山道
+徒歩通
=帰り道を間違えたらどうしようかなぁ。
などとと思っている今日このごろである。
高校には大の親友と一緒に入ったから退屈はしていない、まぁモテないということは小、中から変わっていないので毎日男臭い学校生活を送っているが……
「あ~明日から夏休みか……暇だなぁ~なんか面白いことねぇかなぁ」
独り言が多いのがモテない理由の一つか……などと考えながら面白いことがないか模索する。
「そーいや還也と話し合ってたことあったな……」
フルネームは世門還也よかどかんや、というのはさっきも出てきた大親友だ。
俺も還也も馬鹿ではないが勉強を全くしないから馬鹿扱いされている。
そして
どちらも変人である。自分で言ってて嫌になる。
その還也と今日学校で少し厨二な話をしていた、自分に異能の力が使えるなら何がいい?と、還也は「エネルギー吸収&エネルギー変換だなっ!!!!」
と言っていた
還也曰く
「だって歩いてたら栄養補給できるんだぜッ!!」
らしい、まぁ歩いて足に来る衝撃を生体エネルギーに変えられるということを言いたいのだろうが……だったら重力で良くね?などと思ってしまった。
まぁ俺の回答はというと
「メタモルフォーゼ意外ないっしょ」
である、だって何にでもなれるし全身硬化ッ!!みたいなことも出来るんだぜいぇ~いッ!!などとはしゃいで力説していた。まぁ周りの人どころか還也にも少し引かれたが……フフフ…
「でもいいと思うんだけどなぁ~……待てよ…?触った物質も変えられるとかッ!!最高じゃねぇ!?でも強すぎるのも考えもんだよなぁ……あとビジュアルがなぁ…あ、俺のなまえとって翼ついてるとか!!!!いいなぁそれ!!欲っs───
───────────────────────────────―――ーーーーーー\\\…………ッ!?」

頬が冷たい……冷たい!?何か……粒状のものが頬に当たっている……なんだこれ……土?土かッ!!なぜ土が……倒れてるからか。ならなんで倒れてる!?
目を開けてみる……開く、見える……山道、いつもの帰り道の中腹に倒れている。どうやら気絶していたらしい。まだ周りがほんのりと明るいから気絶してから時間はあまりたっていないようだ。
「立ち上がれるか?」
両手をつき腕立て伏せの体制で立ち上がろうとした時
「ッ!!!?」

何かがおかしい。

「軽い……?」

体が軽かった。風が吹けば流されていきそうな程に軽かった。
完全に立ち上がる。その時
バサッ
変な音がした、乾いたタオルをはたくような空気を叩く音が聞こえた。
どうやら背中から聞こえているらしい
後ろを振り向く、そして二つの意味で驚いた。
1つ、後ろには何も無かったこと。
そして2つめ、背中に何かが付いている。
そんな気がした。まるでもう1組腕がついたような。
まさか
「まさ…か……」
首を回し、背中を見る。すると
「なんだよ…何だよこれ…は………?」
信じられない光景だった。
ありえなかった。
「つ…ばさ……!!!?!!??!!!!?」
生えていた、願いが叶った。
が、
「は…っはははっ、はははははッ!!!!!!
夢でも見てんのか?だよなぁ、現実なわけねぇよなぁッ!!」
そう、そんなこと有るわけはないのだ。
現実はそこまでファンタジーではない。
「でも夢ならいい夢だ、少し飛ばなきゃ損ってやつでしょ!!!!」
1回羽ばたく、3mは浮いた。
2回羽ばたく、7m。
3回、15m。
あっという間に20mは空へ飛んだ。
「うっわぁッ!!たっけぇ~高所恐怖症じゃなくてよかった~!!!!」
体が軽かったのは飛びやすくするためだろう。大空を優雅に飛ぶ鳥達も骨などを最低限軽くしている。
風を切る感触が地肌で感じられる。
とてつもなく気持ちいい。飛ぶにつれて段々風や上昇気流などの乗り方がわかってくる。山の上なので風や上昇気流が多かったのも関与しているのだろうが、
10分もたてば風景を楽しむことができるレベルには慣れた。
「街まで行ってみるか」
山から出て30kmほど行くとちょっとした街に出る、ショッピングモールとコンビニ位はある、逆にいえば高校にがあるところにはコンビニは1件あるがスーパーなどはないほどの山奥だ。
「飛んでると早いなぁ~……ん?何か聞こえる……?」
地上から誰かが自分をよんでいるような気がして急停止した。
下を見ても誰もいない
「気のせいか……」
と思い、また飛ぼうとした時、
「おいおいおいおいおいおいッ!!!!!何でまた飛ぼうとしてんだバカッ!!」
後ろの方から声が聞こえた。
振り向くと還也がいた。
「おぉ還也~どうした?夢にまでお前が出てくるか~、やっぱり親友っていいなぁ………」
「何ブツブツ言ってんだ?いいから降りてこいよ~」
はいはい、
「おっけぇ~」
やはり20m位から降りるのは怖いものだ。翼で速度を落としつつゆっくりと降下する。爪先からゆっくりと……
「あと1m……50cm…20…10、5ぐあッ!!」
グキっ!!!!
という鈍い音が足首から響いた。
ヒビが入るような鋭い痛みが足首から全身に走り抜ける。
「がぁぁあッ!!いってぇ……」
足首を抱え、うずくまるように唸る。
ただそこで異変にきずく。
「い……たい……?痛い!?」
そう、夢なら痛いはずはないのだ
そして悟る、大きな間違いにきずく。
「これは夢じゃない!?おいッ!!還也!!」
急いで前を見据える、そこには驚愕で埋め尽くされた還也の顔があった。
「嘘…だろ……!?」
「え……知らなかったの……?」
うん、と還也は頷いて
「俺の能力はエネルギー変換だから痛みを味わってない、だからずっと夢だと思ってた……」
考えてみれば当たり前のことだが、衝撃がない=痛みを感じない、という事だ。
「待て還也、どうやって能力を手にいれた?」
「あ~欲しいなぁって思ってたら突然意識が飛んで」
「俺もだ、同じだよ」
「「ってことは!!!!」」
二人同時に叫んだ。いらねぇハモリだなぁなどと思いながら
「俺達だけじゃない可能性が高い」
1回町に出てみた方がいいかもな。
高校の周りにも家はあるが、やはり町の方が人口が多いので状況確認には適しているだろう。
そしてふたりは町へ向かう、何もしらないまま………
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