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一件落着。

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「「…過…蓮……!?」」

あの還也ですら無効化出来なかった次元切断が消し飛ばされた。
「な……に…?」
驚きの声を出したのは
還也、ではなく。
翼、でもなく。
「なんで能力が消された……!?」
切断野郎。
でもなく。
「なんで私の能力が消えたの!?」
過蓮だった。
だが
過蓮の声色がやわらかくなっていた。
まるで普通の少女のように……
「なんで…なんで…何故……能力は…まだ使える……ちぃ…まぁいい…保護対象の能力は私に有効。という事だな……」
声色が元に戻る。
その時思わず翼は叫んでいた。
「ちょっと待て!!能力が消えたってどういう事だ!?消えたのは次元切断だろ!?」
すると過蓮は
「次元切断……いや…違う…この能力は……まぁいい。お前らに勝ち目がないのは目に見えて/「いや」
還也が遮った。
「わかったぜ…お前の能力……!!」
だが過蓮は驚くほど冷静に
「あっそう。だから何?分かったところでお前らに勝ち目は無い。」
それはどうかな……と還也は呟き。
還也の体が……消えた。
そして過蓮の背後から声が聞こえる。
「おい厨二バカ!!さっきの切断当たってねぇぞぉ~!!」
最強にウザく叫ぶ。
あそこまで蹴られておいてここまで元気とは……還也のタフさを再確認した。
すると切断野郎は
「ッ!!!がぁぁああ!!!!」
右腕を振り上げる。
還也の声が聞こえた過蓮に向って。
一秒のタイムラグの後。
ぎ…ガギバグギギ!!!!
空間が切断される。

バギぃぃいい!!!!
過蓮に当たった瞬間に消し飛ばされる。
それと同時に
光エネルギーを吸収、体を視認不可能にした上で過蓮の後ろに回っていた還也が叫ぶ。
「今だぁぁああ!!!!」
ゴン!!
掛け声と共に鈍い音をたてながら過蓮の頭が揺れた。
「な……っ!!」
「能力が消えた。なんて口に出さなきゃ良かったなぁ!!!!」
ばぎぃ……!!
顔面へ回し蹴り。
過蓮が地面へ叩きつけられる。
女子でも容赦ない?当たり前だ。容赦してどうする。
叩きつけられたと同時に受身を取り距離を置いた過蓮が叫ぶ。
「く……そ…!!その被害者の使い方は予想外だった……が。2度目は食らわない!!!!もう手加減はしない。お前をぶっ殺す!!」
般若のような形相で過蓮は叫んだ。

「あ、そう。じゃぁ後ろに右手上げてる人がいるから気をつけた方がいいと思うよ?」
爽やかに還也が言った言葉を確認する間もなく過蓮に切断が襲いかかる。
ミシミシ…ビギg/バギぃぃぃいい!!
過蓮の体に当たった切断が消し飛ばされる。
能力を再度発動する前に還也は過蓮の懐に飛び込み胸ぐらを掴んだまま顔面を殴り飛ばす。
「切断野郎が!!」
次こそは能力を使う間を与えずに殴り続ける。
「どうせ俺らに協力しないと思って安心してたんだろう!!!!」
腹パン。(正拳突き)
「それはそうだ!!!!」
顔面エルボー
「だけどなぁ!!!!」
過蓮の顔面へ全体重を乗せ殴り飛ばす。
1mほど吹き飛んだ過蓮はもう動かない。
「それなら利用すればいい。」
念のため首を締めながら
「相手の特性を活かせばいい。」
完全に落ちたのを確認し。
「そこを考慮しなかった。それがお前の敗因だ。」

決着が付いた。

やはり還也が戦うと緊張感が無いのだと今回のバトルで痛感する。
あ~あぁ。と過蓮を担いだ還也がため息を付きながらこちらに歩いてくる。
俺の横に過蓮をゆっくりと下ろすと切断野郎の方を振り向き言う。
「後はあいつだなぁ……出血多量で死んでなきゃいいけど…」
近くまで行く。
足で頭をこずいて意識があるか確認する。
「あ~……」
還也は少し考えると
……バギィ!!グチャ…
切断野郎の後頭部に踵落としをぶち込んだ。
最後の音に不安と疑問が残る音を立てて
切断野郎が1度大きく痙攣し
「な……ぜ…」
という台詞と共に完全に動かなくなる。
「……やり過ぎた…死んだかもしれない……翼…大丈夫かなぁ……?」
少し涙目(震えながら)になりながら還也が問いかけてきた。
ここは真顔で冷静に……
「うん、やりずぎだね。ムショ行き、お疲れ様です。」
右手のひらを上に伸ばし顔の中心に持っていく。
俺達の中で「昇天」の合図だ。

のぉぉおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!

ワンテンポ遅れて還也の絶叫が瓦礫の中に響いた。
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