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第九話 そのアイテムは!③
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キュロットは私の指摘に、心底驚いているように目を瞠った。
「そんなことまでご存知なのですか? ええ、シエザの仰る通りですわ。この魔法は我が侯爵家に代々伝わる精神魔法の一つで、元は大規模な魔法儀式を行う際、足りない魔力を臣下から吸い上げて用いるために使われたものですの。
ですから、他者から吸い上げた魔力は伝統として、侯爵家の人間の魔力回復にのみ使うよう定められていますわ」
「それじゃあ、私たちの回復に使ったのってマズかったんじゃあ……」
「とんでもない! シエザの苦しみを和らげるためにやったのですもの。本望ですわ。
それに、クラスメイトの魔力を吸い上げたわけでもございませんし、道義的にも問題ありませんわ。
自分の魔力を吸い上げるためにこの魔法を使うなんて初めての試みでしたけれど、上手くいってよかったですわ」
キュロットが放った何気ない言葉に、ルフォートがすぐさま食いついた。
「ち、ちょっと待ってくれ。初めてのことって、それじゃ今の魔法、自分の魔力を分けるようには組まれてなかったってことかい?」
「ええ、そうですわよ」
即座の肯定に、今度はブラドが身を乗り出してくる。
「ということは、即席で魔法回路を組み替えたってこと!?」
「そういうことになりますかしら」
ルフォートとブラドが声も出せないほど慄然となっている様子を見て、どうやらキュロットの才覚はチートレベルにあるらしいと理解できた。
それと同時に、私のゲーマー魂が疼きはじめる。
(『王立学園の聖女』って、育成ゲームの要素もあるのよね。キャラの能力値によってルートも変化するし、キュロットを上手く育て上げれば、原作超えもありえるかも!)
それはキュロットの取り巻きにとっても、きっとプラスに働くはず。
そうと決まれば行動あるのみ。私はすぐさまキュロットに告げた。
「キュロット、明日からあなたの髪のセット、今日みたいに私たち三人でやるから! 魔力回復の方は任せるわね!」
格式の高い侯爵家だからこそ、扱う魔法も伝統的な、悪く言えば応用力の乏しいものとなっていたはず。
けれど今回のような、柔軟性のある魔法の扱い方に慣れておけば、キュロットはきっと化けるに違いない。
「まあ! シエザが毎日わたくしの髪をセットしてくださるの? それは素敵ですわ。ではわたくしも、もっと効率のいい魔力回復の魔法回路を組みますわ!」
キュロットは乗り気だが、巻き込まれる形のルフォートとブラドが、うっと呻いた。
「ま、待ってくれよハニー。確かにお美しい淑女の髪に触れられるのは光栄だが、毎日この魔力操作をするのはハードすぎるような……」
「文句言わない! だいたいルフォートは魔力の持続力が乏しいんだからいい訓練になるじゃない。
それにブラド。あなたゲームでは派手な火炎魔法ばかり使ってたし、繊細な魔力操作は不得手よね? 苦手克服になるでしょ」
「ゲーム……?」
二人は困惑の表情を浮かべるが、私の正鵠を射た指摘に頷ける部分もあったのだろう。やがて諦めたように、二人して肩を竦めてみせた。
「そんなことまでご存知なのですか? ええ、シエザの仰る通りですわ。この魔法は我が侯爵家に代々伝わる精神魔法の一つで、元は大規模な魔法儀式を行う際、足りない魔力を臣下から吸い上げて用いるために使われたものですの。
ですから、他者から吸い上げた魔力は伝統として、侯爵家の人間の魔力回復にのみ使うよう定められていますわ」
「それじゃあ、私たちの回復に使ったのってマズかったんじゃあ……」
「とんでもない! シエザの苦しみを和らげるためにやったのですもの。本望ですわ。
それに、クラスメイトの魔力を吸い上げたわけでもございませんし、道義的にも問題ありませんわ。
自分の魔力を吸い上げるためにこの魔法を使うなんて初めての試みでしたけれど、上手くいってよかったですわ」
キュロットが放った何気ない言葉に、ルフォートがすぐさま食いついた。
「ち、ちょっと待ってくれ。初めてのことって、それじゃ今の魔法、自分の魔力を分けるようには組まれてなかったってことかい?」
「ええ、そうですわよ」
即座の肯定に、今度はブラドが身を乗り出してくる。
「ということは、即席で魔法回路を組み替えたってこと!?」
「そういうことになりますかしら」
ルフォートとブラドが声も出せないほど慄然となっている様子を見て、どうやらキュロットの才覚はチートレベルにあるらしいと理解できた。
それと同時に、私のゲーマー魂が疼きはじめる。
(『王立学園の聖女』って、育成ゲームの要素もあるのよね。キャラの能力値によってルートも変化するし、キュロットを上手く育て上げれば、原作超えもありえるかも!)
それはキュロットの取り巻きにとっても、きっとプラスに働くはず。
そうと決まれば行動あるのみ。私はすぐさまキュロットに告げた。
「キュロット、明日からあなたの髪のセット、今日みたいに私たち三人でやるから! 魔力回復の方は任せるわね!」
格式の高い侯爵家だからこそ、扱う魔法も伝統的な、悪く言えば応用力の乏しいものとなっていたはず。
けれど今回のような、柔軟性のある魔法の扱い方に慣れておけば、キュロットはきっと化けるに違いない。
「まあ! シエザが毎日わたくしの髪をセットしてくださるの? それは素敵ですわ。ではわたくしも、もっと効率のいい魔力回復の魔法回路を組みますわ!」
キュロットは乗り気だが、巻き込まれる形のルフォートとブラドが、うっと呻いた。
「ま、待ってくれよハニー。確かにお美しい淑女の髪に触れられるのは光栄だが、毎日この魔力操作をするのはハードすぎるような……」
「文句言わない! だいたいルフォートは魔力の持続力が乏しいんだからいい訓練になるじゃない。
それにブラド。あなたゲームでは派手な火炎魔法ばかり使ってたし、繊細な魔力操作は不得手よね? 苦手克服になるでしょ」
「ゲーム……?」
二人は困惑の表情を浮かべるが、私の正鵠を射た指摘に頷ける部分もあったのだろう。やがて諦めたように、二人して肩を竦めてみせた。
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