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第二十二話 ルフォート・サリバン①
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ルフォート・サリバンは幼少期のことを思い返していた。
あの頃の自分は極度の人見知りで、他人と目を合わせて話すことさえままならなかった。すれ違う人が不意に笑い声を上げようものなら、きっと自分のことを笑っているに違いないと、その場から逃げるようにして立ち去っていたものだ。
あの頃の自分とはとうに決別したと思っていたのに、まさか再び同じような恐怖に怯えることになるなんて。
ルフォートは深いため息をついたあと、傍にいた風の精霊に呼びかけた。
シルフの容姿は一見すれば人間の女性を思わせるが、半透明の身体をしており、手のひらほどの大きさしかない。
シエザが危惧していた通り、幼少の頃はもっとはっきり見えていたのだが、今では少し遠い存在になった気がする。
そんな寂しさをシルフも感じていたのだろうか。シルフは嬉しそうにすぐさま寄ってきた。
「悪いけど、一つお願いできるかな? お茶会での会話を聞きたいんだ」
シルフはすぐさま頷き、ルフォートの傍から飛び去っていった。
これはリグル洞窟で使った手法と同じものだ。シルフが操る風を介して、離れた相手の声を拾ったり、自分の声を届けたりすることができる。
(きっと皆、さっきのことで大笑いしているに違いない……)
死刑宣告を待つような気分で、シルフが風を届けてくるのを待つ。
やがてルフォートの耳に、お茶会が開かれている教室の物音が響いてきた。
緊張に身を強張らせたルフォートだったが、それはすぐさま困惑に変わった。耳元に飛び込んできたのは嘲るような笑い声ではなく、穏やかな旋律だったのだ。
(これは……歌声?)
何という曲だろうか。これまで聴いたことのない、まるでどこか全く違う世界から流れ着いたような、エキゾチックで味わいのある曲調。
それを独唱する歌声は、時に掠れ、わずかに音を外したりと、決して上手なわけではない。しかし、一生懸命に心を込めて歌っているのがうかがえ、ルフォートは思わず聞き惚れる。
歌っているのはどうやらシエザらしい。きっと台無しになったお茶会の雰囲気を立て直そうと、自ら歌を披露したのだろう。
申し訳なくなるのと同時に、何だかとても暖かい気持ちになった。いつも突拍子もない提案をして皆を巻き込んでいく彼女だが、その行動原理は思いやりに満ちている。
そんなことを考えているうちに、シエザが歌い終わった。盛大な拍手が起こり、シエザを称える声が満ちる。
(よかった。お茶会はどうにかなったみたいだ)
これで思い残すことはない。荷物をまとめて学園を去ろう。しばらくどこかを旅するのも悪くない。とにかく、ぱおん事件の傷が癒えるまで、一人静かに暮らそう……。
その時、ひとしきり歓声を受けたシエザが口を開いた。
「みんなありがとう。でもまあ、私の下手な歌なんてもちろん前座だから。これからルフォート呼びに行って歌ってもらうから、期待して待ってて」
嫌な汗がブワッと噴き出してきた。ぱおんした直後だというのに、あの場に連れ戻そうというのか?
あの頃の自分は極度の人見知りで、他人と目を合わせて話すことさえままならなかった。すれ違う人が不意に笑い声を上げようものなら、きっと自分のことを笑っているに違いないと、その場から逃げるようにして立ち去っていたものだ。
あの頃の自分とはとうに決別したと思っていたのに、まさか再び同じような恐怖に怯えることになるなんて。
ルフォートは深いため息をついたあと、傍にいた風の精霊に呼びかけた。
シルフの容姿は一見すれば人間の女性を思わせるが、半透明の身体をしており、手のひらほどの大きさしかない。
シエザが危惧していた通り、幼少の頃はもっとはっきり見えていたのだが、今では少し遠い存在になった気がする。
そんな寂しさをシルフも感じていたのだろうか。シルフは嬉しそうにすぐさま寄ってきた。
「悪いけど、一つお願いできるかな? お茶会での会話を聞きたいんだ」
シルフはすぐさま頷き、ルフォートの傍から飛び去っていった。
これはリグル洞窟で使った手法と同じものだ。シルフが操る風を介して、離れた相手の声を拾ったり、自分の声を届けたりすることができる。
(きっと皆、さっきのことで大笑いしているに違いない……)
死刑宣告を待つような気分で、シルフが風を届けてくるのを待つ。
やがてルフォートの耳に、お茶会が開かれている教室の物音が響いてきた。
緊張に身を強張らせたルフォートだったが、それはすぐさま困惑に変わった。耳元に飛び込んできたのは嘲るような笑い声ではなく、穏やかな旋律だったのだ。
(これは……歌声?)
何という曲だろうか。これまで聴いたことのない、まるでどこか全く違う世界から流れ着いたような、エキゾチックで味わいのある曲調。
それを独唱する歌声は、時に掠れ、わずかに音を外したりと、決して上手なわけではない。しかし、一生懸命に心を込めて歌っているのがうかがえ、ルフォートは思わず聞き惚れる。
歌っているのはどうやらシエザらしい。きっと台無しになったお茶会の雰囲気を立て直そうと、自ら歌を披露したのだろう。
申し訳なくなるのと同時に、何だかとても暖かい気持ちになった。いつも突拍子もない提案をして皆を巻き込んでいく彼女だが、その行動原理は思いやりに満ちている。
そんなことを考えているうちに、シエザが歌い終わった。盛大な拍手が起こり、シエザを称える声が満ちる。
(よかった。お茶会はどうにかなったみたいだ)
これで思い残すことはない。荷物をまとめて学園を去ろう。しばらくどこかを旅するのも悪くない。とにかく、ぱおん事件の傷が癒えるまで、一人静かに暮らそう……。
その時、ひとしきり歓声を受けたシエザが口を開いた。
「みんなありがとう。でもまあ、私の下手な歌なんてもちろん前座だから。これからルフォート呼びに行って歌ってもらうから、期待して待ってて」
嫌な汗がブワッと噴き出してきた。ぱおんした直後だというのに、あの場に連れ戻そうというのか?
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