異世界ボーナスを引き当ててしまったようです。

SAIKAI

文字の大きさ
32 / 120

第31話 女性は秘密が多い方が良いって言ったの誰だよ!

しおりを挟む
「…キョウヤ様、キョウヤ様」
 
 ううん
 
 なんだよ、うっせぇなぁ
 
 ガンガンガンガン
 
 ん?
 
「…キョウヤ様っ」
 
 自身の名前を呼ぶ声と、何かを叩く音が交差している
 
 ガンガン…
 
 ああ、わーったよ
 今起きるよ、まったく…
 
「って、この声は…アプリか!?」
 
 がばっと質素なベッドから身を起こし、鉄格子の方を見る
 
「ええ、私(わたくし)ですわ♪」
 
 鉄格子の向こう側に立っている彼女の傍らには、同じように白いローブを纏っている男が2人、彼女の両サイドに傅(かしず)いていた
 同じようなローブだが、装飾が施されていないところをみるに、アプリよりも階級が低いんだろうか、階級ってのがあればだけど
 
「なぁ、俺は一体どうなっちまったんだ? 気がついたらこんな所にいるし」
 
 アプリはフフっと笑い
 
「私、キョウヤ様を愛していますの」
 
「へ?」
 
 想定外の回答だった、というか回答にすらなっていない
 アプリは、にこにこしてそれ以上の事を言う気配はないので、とりあえず言葉を続ける
 
「あ、ありがとう、それはまぁ、う、嬉しいんだが、とりあえず状況をだな」
 
 何で急に告られてるんだ、俺は
 
 こういうのって攻めるのはノリで行けるんだが…攻められると拍子抜けというか…
 調子が狂うな…つか恥ずい
 
「キョウヤ様はどうですの?」
 
「は?」
 
 今はこんな話をしている場合ではないだろう
 こいつは何を考えてるんだ…
 
「いや、俺は…てかまだ会ってそんなに経ってないだろ? こういうのはもっとこう、時間を掛けてだな…あ、いや嫌いって訳じゃなくてだな…」
 
 凶夜がおずおずと言うが、その間(あいだ)
 アプリは自身の身を抱きしめ、しかし瞳は真っ直ぐに凶夜を見据えていた
 
 凶夜が言い終わった後、少し間をおき、アプリがぽつりと言った
 
「…キョウヤ様は愛を、私の愛を受けられないと言うのですね」
 
 その刹那、アプリの両サイドにいた男の一人がピクリと肩を震わせる
 
 一体なんなんだ、何が起きているんだ…明らかにアプリの様子が変だ
 なんというか、会話が通じていない気がする
 
 凶夜がその思考に至った時
 
「何を、貴方、貴方、勝手に動いてるんじゃありませぇぇぇぇんぅぅぅぅ!!」
 
 アプリが先ほど震えた男を無造作に殴り付ける
 何処にそんな力があったんだとばかりに男は吹っ飛び、地べたに倒れ、ピクリともしない
 
「貴方ぁぁぁ、貴方は私の愛の信徒でしょう? 愛を、私からの愛を受けておいて、それを蔑ろにするなんてぇぇぇ、あぁ…蔑ろにするなんて、蔑ろにされる私ぃ、あぁ…心が濡れますわぁ」
 
 アプリは、自身を抱く様な仕草をし蕩けた表情で、尚も倒れた男に馬乗りになり、殴り続ける
 
「……は?」
 
 何が起こったんだ、状況についていけず、思わず声が漏れる
 
 その間もガスガスと、男が殴られる音が牢獄に響く
 
「あぁ、あぁああああ、これこそ愛、私からの愛を受け取るのですわぁあああ、ねぇ?嬉しいでしょう?」
 
 アプリの拳は真っ赤に染まり、それが男のものなのか、彼女のものなのかも判別が出来ない
 
 男はピクリとも動かない、もう一人の男もこの状況に微塵も動じていないように見える
 
 
 なんだ、なんなんだよ…!
 
 
 アプリのあの変わり様はなんだ?
 
 とてもあんな事をする奴には見えなかった、そうは言っても出会ってそんなに経っていないのも事実…そんな簡単に人の本性を見抜けるはずってのは驕りってもんかもしれない、元々ああいうテンションの人かもしれないし…うん、ないな、それはない
 
 人を見かけで判断しないってのは、今後の教訓にしようと心の中で固く誓う、…最も今後があればだが
 
「貴方の声が、肉が、骨がっ聞こえますわぁ、愛される喜びを!」
 
 あれは、ダメだ、ダメなやつだ…メンヘラ?アレが流行りのメンヘラってやつなのか?

   お父さんお母さん、異世界に来て初めて会えたと思った美少女がメンヘラでしたよ、もうほんとヤダこの異世界
 
 暫し茫然自失とする俺だったが、この状況を見て何となく分かった事もある、恐らくこの牢屋に俺を入れたのはアプリだろう

 つーか、この状況で他に黒幕がいたら脳の処理が追いつかない
 
 しかしまぁ、どちらにせよ牢獄に閉じ込められている俺にとっては何が分かったところでこの状況が絶望的な事に変わりは無い
 
 そんな事を思案していると、唐突に男を殴る音が止み、アプリが首だけをぐるりと動かしてこちらを見る

 その顔は、先程の蕩けた顔とは打って変わり酒場で会った時と同じ綺麗な笑顔だった
 
 殴った男の返り血で髪が顔にへばりついている事を除けばだが
 
「キョウヤ様?お顔の色が優れないようですが、大丈夫ですよ? 直ぐに出して差し上げますからね♪」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

処理中です...