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プロローグ
出逢い
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その年は春の訪れが早く、まだ4月にならないのに祇園甲部歌舞練場の庭では遅咲きの枝垂れ桜すら咲いていた。
幽玄の滝を通り抜け、茶室も書院もすり抜ける。枝垂れ桜に導かれるように進んでいく。
小高い丘の先。不思議な高さに菊の紋が入っている扉が見える。塔子は誰にも見つからない場所で泣くために来たのに、もう涙は出そうになかった。
「珍しいね、迷子かな」
ふわりと白檀の香が薫る。誰もいなかったはずなのに、と塔子は怪訝に振り返る。五重の石塔と枝垂れ桜の間から現れたのは見知らぬ男性だった。
今までみたどんな男の人とも違う。長い髪は白銀色で、陽の光に煌めいている。鬢を垂らした前髪は風に靡き、白い玉紬の着物を鼠色の燕帯で涼しげに着流している。彼は踊りのお師匠さん方より優美な足取りで音もなく近づいてくる。
手を伸ばせば触れる距離に来た時、長いまつ毛の奥の瞳はギラリと光り、塔子は鷹下の雀のように身を凍らせた。
一瞬が永遠に感じた。
「大丈夫?顔色が悪いよ」
白い肌がほんのり色付いただけの薄桃色の唇の端をあげると綺麗に並んだ白い歯の間から、生々しくも赤い舌をのぞかせる。
チラつく口腔内の鮮やかな赤に目を奪われた。生きてると感じた。それがなければ、幽霊だと言われてもきっと信じただろう。生き物にしては美しすぎる。きっと人間じゃない。
それが塔子と吹雪の出逢いだった。
幽玄の滝を通り抜け、茶室も書院もすり抜ける。枝垂れ桜に導かれるように進んでいく。
小高い丘の先。不思議な高さに菊の紋が入っている扉が見える。塔子は誰にも見つからない場所で泣くために来たのに、もう涙は出そうになかった。
「珍しいね、迷子かな」
ふわりと白檀の香が薫る。誰もいなかったはずなのに、と塔子は怪訝に振り返る。五重の石塔と枝垂れ桜の間から現れたのは見知らぬ男性だった。
今までみたどんな男の人とも違う。長い髪は白銀色で、陽の光に煌めいている。鬢を垂らした前髪は風に靡き、白い玉紬の着物を鼠色の燕帯で涼しげに着流している。彼は踊りのお師匠さん方より優美な足取りで音もなく近づいてくる。
手を伸ばせば触れる距離に来た時、長いまつ毛の奥の瞳はギラリと光り、塔子は鷹下の雀のように身を凍らせた。
一瞬が永遠に感じた。
「大丈夫?顔色が悪いよ」
白い肌がほんのり色付いただけの薄桃色の唇の端をあげると綺麗に並んだ白い歯の間から、生々しくも赤い舌をのぞかせる。
チラつく口腔内の鮮やかな赤に目を奪われた。生きてると感じた。それがなければ、幽霊だと言われてもきっと信じただろう。生き物にしては美しすぎる。きっと人間じゃない。
それが塔子と吹雪の出逢いだった。
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