格闘王子〜技で魅せます我が戦〜

シャン

文字の大きさ
2 / 11

第1話 憧れ

しおりを挟む
グラハ王国。かつて大戦で「鉄壁の不敗国」と恐れられた世界最強と名高い国の名前である
その理由は、様々な武器や武術、果ては魔術にも精通する人間がこの国には数多く居たためである

大戦がなくなった現代でもそういった達人たちは存在しており、今では16歳以上の様々な武器や武術の代表者が王都レオニアに集結して戦い、優勝した者はその1年「神王(しんおう)」と呼ばれる王国最強の称号を得ることが出来る武術祭「ゴッドファイト」が行われるようになった

今この国で1番強い男。もちろん神王である。名前は「ルミエール・マルコシアス」
彼はゴッドファイトが始まって以来の伝説である「5年連続神王」の記録保持者である
剣、銃、斧や槍などの武器だけでなく、炎や氷と言った属性魔法や傷を癒す回復魔法なども使えるぶっ壊れ性能の持ち主なのだ
噂では「人間じゃない」と言われているが、それもそうだ。あの人は多分とっくの昔に人間を辞めている。そうに違いない。会ったことはないし知らないけど

「良いよなぁゴッドファイト。1回で良いから俺も出てみたいよ」
俺こと「アル・アリシア」は、今日の号外を見ながら口を開く
「お前の場合、物珍しさで出場は出来そうだけどな」
俺の言葉を聞いて皮肉混じりな言葉を発するこの男は「キラ・アンダルシア」
俺の数少ない友人だ
「今どき居ねぇよ。武器も無しに格闘で出場しようとするなんて」
「世の中魔法だ武器だって便利にもなってきたけど、男はやっぱ己の手と足使って戦わねえと」
「こんな脳筋が王族って世の中分かんねえなぁ」

俺とキラは古くから交友関係にある「アリシア家」と「アンダルシア家」という王族の三男同士である
時には家族の愚痴、夢や目標についての話もするくらいお互い遠慮なく話せる関係だ
もちろん親同士が仲良いためこういう関係になったというのもあるが、俺たちはどっちが上とか下とかも関係ないと思っているため気にしたこともない

「そういえば今日ハル兄が悲しがってたぞ。お前が武器も魔法も習うつもりないって聞いた時「アルには色々と教えたかったんだがなぁ」って」
「ハル兄さんが?」
「昔から俺たちの面倒を1番見てくれた兄さんだし、俺らもうちょっとでゴッドファイトに参加出来る年齢じゃん」
「そうは言っても、俺は昔からプロレスに惚れ込んでるから今更他にも行けないしなぁ」
「意外と使えるものもあるんじゃないか?魔法だったら飛行魔法使ってのムーンサルトプレスとか、重力魔法でホールドするとか」
「お前…詳しいな!!」
「アホ。何年も技の名前聞かされたり見せられたら嫌でも覚えるわ」
「考えた事も無いわけじゃないが、やっぱり自分の力でどれだけ出来るかなんだよプロレスっつーのは」
「お前ってそういうとこは頑固だよなぁ」

そんな話をしていると、ドアのノックする音が聞こえた
「はーい」
「私だ。ハルだ。大丈夫かな?」
「大丈夫だよハル兄」
ガチャ
「失礼するよ」
「こんにちはハル兄。お邪魔してるよ」
「なんだアルも来てたのか。そんな時にすまないね」
「大丈夫だよ。お邪魔してるのは俺の方だし」
入ってきたのはさっきまで話してたハル兄こと「ハルネス・アンダルシア」兄さんだ
昔から優しく、どこか落ち着いていて、何よりモテる
頭脳明晰で成績優秀。オマケに銀髪で女性のようなぱっちりお目目。そして白い肌
これでモテないはずがないのだ
「それよりどうしたのハル兄。なんか用事?」
「そうだ。コーラル兄さんがキラを呼んでいたんだ」
「俺を?」
「稽古の時間って言えば分かるって言ってたけど」
「もうそんな時間!?すまないアル!!兄さんとの稽古の時間だ!」
「なんだお前。稽古なんてしてるのか」
「コーラル兄さんが俺がゴッドファイトに出れるように稽古をしてくれてるんだ。まあ実戦形式だから結構きついけど…」
「なんだそれ。俺も連れてけ」
「良いけど、コーラル兄さんがなんて言うか…」

コーラル兄こと「コーラル・アンダルシア」は「アンダルシア家」の長男であり、次期跡取り候補である
優しいハル兄とは真逆で、厳しい言動が目立つ。まさに王様のような人だ
幼い頃から何かと「王族のくせに」や「無礼者」と言われ続け、しまいには3年前に「プロレスなんて過去の産物に囚われた大馬鹿者」と言われたので、怒りに任せてアルゼンチン・バックブリーカー(肩の上に相手を仰向けに乗せ、顎と腿を掴んで自分の首を支点とし、相手の背中を反らせる技)とドロップキックを食らわせてしまったことがある為、唯一コーラル兄とは仲が悪い

「大丈夫だよ。コーラル兄さんには私が連れてきたって言うから」
「そういうことだ。よし!行こうぜ~」
「なんでお前がやる気なんだ…」
部屋を出てからしばらく歩くと、庭の真ん中に剣を持った1人の男がいた
黒いマッシュの髪型、身長は高く程よい筋肉がついた体型の目の前の男。これがコーラル兄だ

「遅い!!貴様この兄との稽古に遅れるとは偉くなったものだな」
「ごめんなさい兄さん…」
「ふん…んっ?」
コーラル兄がこちらに気づく
「誰かと思えば、そこに居るのは時代遅れの大馬鹿者ではないか。なぜ貴様がここに居る」
「挨拶もなしに第一声がそれかよ…客をもてなす言葉も言えずに王様気取りとは片腹痛ぇわ」
「貴様!!次期跡取りに何を申すか!!」
「まあまあコーラル兄さん。私が連れてきたんだ」
「ハルよ。こんな馬鹿の相手をしていると、貴様も格下の王族と見られてしまうぞ」
「私は別に…昔から家族同然で付き合ってきたし…」
「何が家族同然だ。こいつがただ腰巾着の如くキラにくっついているだけではないか」
「言ってろよ薄馬鹿下郎(ウスバカゲロウ)。悪いがてめぇよりハル兄の方が跡取りにはふさわしいぜ」
「言うではないか小僧…そこになおれ!!叩き斬ってやるわ!!」
「やめてよ兄さん!!アルも興奮しすぎだ!!」
「止めるなキラ!!前からこやつはここで斬っておかねばと思っていたのだ!!」
「嬉しいねぇ!!嫌ってるのはお互い様ってか!!」
「あはは…これはもう止められないね…」
「笑ってる場合じゃないよハル兄!!」

「もうよい…稽古は終わりだ…今からこいつを殺して、その首を家畜の餌にしてやる!!」
「そっちの稽古が終わったならこっからは俺の稽古に付き合ってもらうぜ…ちょうど試したい技がいっぱいあるんだ」
「ほざけ餓鬼が。剣と無手ではもはや勝敗など見えておるわ」
「今度は頭にパイルドライバー(前屈みになった相手の頭を両足で挟み、相手の胴体を両腕で抱えて持ち上げながら後ろに倒れ込み、相手の頭部を打ちつける技)叩き込んで、その王様気取りを出来ないようにしてやるよ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...