上 下
6 / 11

第5話 約束

しおりを挟む
「さーて…その包帯の中身を見せてもらおうかな」
倒れている襲撃者の顔の包帯を強引に引き裂く。すると包帯の中から出てきた顔はとても知った顔だった
「こっコーラル兄…!!」
「くっ…」

「なんでこんな事…あんたそこまで堕ちたのかよ…!」
「そういう訳ではない」
「じゃあどうしてこんな暗殺みたいな…」
「私なりの別れとケジメだ」
意味が分からない。別れ?ケジメ?一体コーラル兄は何を言っているんだ
「どういうことだ…?」
するとコーラル兄が理由を説明しだす
「はぁ…今日貴様にあんな負け方した事で私は父から勘当を言い渡された。父の友人の子供を個人的感情で悪く言い、その者の戦闘スタイルをバカにするなどあってはならない。今のお前は人の上に立つに値する人間ではないとな」
パパさんが言ってた話というのはこの事だったのか
「けどなぜ襲撃を」
「こうでないと貴様の本気が見れないからだ」
「えっ…?」
「貴様…今日といいこの何年かの私との戦いといい、本気を出していなかっただろ」
「なんの事だ」
「とぼけるな。貴様のことだ。どうせなんだかんだハルやキラの兄貴という事で私では本気を出さなかったのだろう。だからこう言った形で貴様と最後に戦うことを選んだのだ」
「コーラル兄…」
「もはや貴様に兄と呼ばれる事も無い…ここに居るのは…何十年と否定し続けた相手に完膚なきまでに叩き潰された…ただの負け犬だ」

フラフラになりながらもコーラル兄はどこかへ歩いていく
「一体どこへ…」
「さあな…もうアンダルシア家の人間でもなければ王族でもない…どこか遠く知らない国か、街にでも行こうかな」
「……俺は…!」
「何も言うな。最後くらい…後腐れなく終わらせてくれ」
そういうとコーラル兄は、まっすぐ、ただまっすぐに俺の姿を見ることも振り返ることも無く歩いていった
「コーラル兄…またどこかで会ったら今度は俺も本気であんたとやるよ。これは別れなんかじゃない。生きてればまたどこかで会える。だからさよならなんて言わねえよ。ただ一言だけ言わせてくれ。また会おうぜ。兄貴」
コーラル兄の背中を見ながら1人そう呟いた俺は、アンダルシア邸に戻って眠りについた

翌朝
キラがコーラル兄が家に居ない事で戸惑っていたが、しばらくしたら落ち着いた
「お前…コーラル兄さんと会ったのか」
「ああ。会ったぜ」
「なぜ早く言わないんだお前は…」
「言ったところであのコーラル兄は止まらないだろうな」
「全く…見送りくらいさせてくれても良かったのに…」
「あの人にそういうのは似合わねえよ。黙って見送ってやるのさ」
そんな話をしていると、外からハル兄の声が聞こえた
「すまない2人とも。ちょっといいかい?」
何やら慌てた様子だ。外が騒がしい
「どうしたのハル兄。そんなに慌てて」
「2人宛に手紙が来てるんだ。アルの分はさっきご両親がこの手紙を見て1回家に取りに行って来てた」
「俺たちに手紙?まさかラブレター?」
「それは無いな。またどこかの王族のパーティーの招待状?」
ハル兄が首を横に振った。そして1回深呼吸をし、差出人の名前を口に出す

「落ち着いて聞いて欲しい…差出人は…ルミエール・マルコシアス…神王マルコシアスだ」
しおりを挟む

処理中です...