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声劇用台本 占の報告書 №2~鬼女~  

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この~鬼女~台本は長編です。
分割希望の人は、鬼女【上】、【中】、【下】をお使いください。

鬼女きじょ
声劇用記載文字説明

N(ナレーション)
〇M(マインド、心の中で思っていること、及び独り言)

登場人物 

(占)占竜せんりゅう
年代:40代イメージ
職業:占術師せんじゅつし(お祓い、祈祷もする占い師)

(和)佐藤和美さとうかずみ
20代前半イメージ
職業:OL 

(光)加藤光一かとうこういち
25歳くらいイメージ
居酒屋の店主になろうとしている、チャラ男系

(鬼)鬼女きじょ
若い女性イメージ…光一の居酒屋に住み着く鬼…怨みを持って死んだ女性が鬼になった。

(登)加藤登かとうのぼる
50代前半イメージ・光一の父親で建設会社社長

(久)加藤久恵かとうひさえ
40代後半イメージ・光一の母親・専業主婦

(雄)加藤和雄かとうかずお
70代後半イメージ・光一の祖父

(道)加藤道代かとうみちよ
70代前半イメージ・光一の祖父

(オ)近所のおばちゃん
噂話、野次馬大好き、40代後半イメージ

(幼鬼)登美子とみこ
鬼女の正体、小学校低学年の頃の年代

(母)登美子の母親
優しくも、娘の為なら命をかけるほどの愛を持っている



【開幕】



占M「さてと…
今日の予定はっと…」

…………

占M「新しく開店する居酒屋店主いざかやてんしゅの占いかぁ…
佐藤さんから商売繁盛しょうばいはんじょうするように見て欲しいとの頼みだが…
店主は占いを信じないと言っていたしなぁ…
いくら佐藤さんの友達だからと言っても…
気が重いなぁ…
占いを信じないなら、来るなよなぁ…」


N〖ブチブチと愚痴ぐちりながら占竜は準備をしていた…〗


占M「待ち合わせ時間はっと…
15時かぁ…
そろそろ行くかな…」



N〖愛車に乗り込み、占竜は現場に向かう…
居酒屋に到着したのはいいが
鍵が閉まって誰もいない…
店に電話しても誰もでない…〗

占M「ドタキャンかぁ?
それなら、それでかまわない♪
店を外から霊眼れいししてみたら嫌な気を出しているし…
厄介そうだし…触らぬ客にトラブルなし♪
30分待って帰ってこなかったら帰ろうっと♪」


コンコンッ【車の窓をたたく音】


和「占竜さん
こんにちは♪」


占「こんにちは
お友達はお店にいませんでしたよ?」

N〖占竜は佐藤さんに見つかってしまったと
内心ガックリしているが表情は笑顔だった〗


和「えっ?
光一こういちさん
いないんですか?」


占M「いないも何も、15時15分になっているのにも関わらず、
車で待機しているのだから、わかりそうなもんなのだが…
佐藤さんは、ちょっと天然入っているのかな?…

だが、それがいいっ」

N〖と、占竜はどこかで聞いたセリフを思い
ひとりでクスクス笑ってしまった…〗


和「えっ?
何かおかしいことでもありました?」

占「なっ何でもないですよっ
それより、光一さん、いないみたいだから
帰ろうかなと思っていたとこなんです」


N〖和美は顔をくもらせ
かばんの中に手を突っ込み
ゴソゴソと携帯電話をとりだした…〗


和「ちょっと待ってください
今、携帯鳴らしてみますから」


N〖あっ余計なことを…と思ったが、
言う訳にはいかない占竜は
苦笑いをしていた…〗


【和美が携帯を鳴らす電話音】


占M「佐藤さんが携帯をならしているが、でないみたいだ…
しめた♪
とっつぁ~んから逃げられそうだ!」

N〖と、これまた、どこかの三世が言うセリフを思い浮かべて
占竜は一人クスクス笑っていた〗


光「和美ちゃ~ん♪」【遠くの方から声をかける感じ】


和「あっ!
光一さん!
どこに行っていたのよ~!
占竜さん、ずっと待っていてくれたのよ!」


光「ごめん、ごめん♪
確変かくへんが終わらなくて!」


占M「あぁ~あ…
帰ってきちゃたよ…」

占「こんにちは、
占いは今日の15時で良かったんですよね?」


N〖占竜はイヤミをこめて言っているのだが、
うん、そうだよ、よろしくっと光一に笑顔で返されてしまっていた…〗


占M「経営者になろうというのに…先が思いやられるなぁ…」


和「ちゃんと占竜さんに謝りなさい!」


光「占竜さん、ごめ~ん、
お詫びにこれっ」

N〖光一は缶コーヒーを占竜に渡して
さあどうぞと店内に入って行った…〗


和「占竜さん、本当にごめんなさい
後で締め上げておきますから…」


【占竜、和美も店に入って行く】

占「では、占いの準備をさせてもらいますね」

光「そこのテーブル使ってちょうだい♪」


【準備しているので、ちょっと間をあける】


占「準備ができましたから
こちらにお願いします」


N〖店のすみで、佐藤さんにこってり絞られていた
光一さんを呼んで占竜の占いがはじまった…〗


占「さて、何を占いましょうか?」

光「もうかるか占って♪」

占M「ストレートな質問できたな…」

N〖まあ、いいかと、占竜は秘文ひもんをとなえ水晶玉をのぞきこんだ…〗


占M「えっ?
死?……………」


N〖占術師が死期しきを見るのはタブーとされている…
しかし、光一の死相しそうがあまりに濃い為
質問内容と関係なく水晶にうつしだされていた…〗


占M「近いぞ…
いつだ…」

N〖占竜はあまりの展開に冷や汗をかきながら
水晶を凝視ぎょうししていた…

かなりヤバそうなので、
光一に告げずに死期しきを占った〗

占M「1ヶ月以内…
絞り込めば、まだ細かくだせるか?…」

N〖唖然あぜんとしている占竜に、光一はニコニコと話しかけてきた〗


光「どう?儲かる?」

占「あっ…
ええっと…
そうですね…
今のままだと不味まずいですね…
つぶれてしまいますよ…」


光「え~!
そんな訳ないよ~!
店の資金は親父おやじが出しているから
どんなに赤字でも、つぶれることはないよ!
やっぱり、占いって適当だなぁ♪」


N〖光一は笑いながら占竜を小馬鹿にしていた。
占竜は店主てんしゅがいなくなれば、
お金があっても店はつぶれるよ、とは言えずに顔をふせていた…〗


占「店に問題がありそうなので
ちょっと調べてもいいですか?」


N〖光一は、どうぞ、どうぞと、
たかが占い師が何を調べるんだ?
占い外れたなっと言いたそうな表情で、ニヤニヤと笑っている…

占竜がペンデュラムを取り出したとたん
店の中がうす暗くなっていく気がした…〗

占M「なんだ?
急に邪気じゃきが強くなってきやがった…
これではペンデュラムが狂ってしまう…
チィッ
今の装備で原因を見つけるのは難しい…
ここまでの邪気を放つとは…
かなりヤバイな…
この店は…」


N〖仕方なく占竜は光一に
ここはまずい…
違う場所で店をした方がいいと
アドバイスをしてみたが、
何バカなことを言っているんだと
一蹴いっしゅうされてしまった…

それならお祓いをした方がとすすめてみた…〗

光「そうやって客から金を盗るんだろ?
俺は騙されないからな!」

和「なっ…
何、失礼なことを言っているの!
占竜さんは私の命の恩人よ!」


光「和美ちゃんも騙されているんだよ
占い師なんて、詐欺師サギしとかわらないさ♪」

占「そうですねぇ…
占術師せんじゅつし詐欺師さぎしみたいなもんですよ…
良き道に導けなければね…」


N〖占竜は昔を思い出したのか
寂しそうにポツリとつぶやいた〗


占「今日の占い代は結構です
あまりアドバイスできませんでしたので…」


N〖占竜が寂しそうに言うと
光一はラッキーと喜んでいた…

その時、光一をにらんで佐藤さんが怒鳴どなる!〗


和「そんな、わざわざお店まで来ていただき
待たせたに占い代まで…
光一さん!」


N〖占竜の寂しそうな顔を見て言っているんだろうが
待たされたとか、占い代が欲しいなどではない…
危険な場所にいる光一を救ってやれない
占竜は油断しまくっていたおのれを恥じているだけだった。
今回は引き下がり
様子を見ながらリベンジだと占竜は考えていた〗

【占竜自宅に帰る】

N〖自宅に帰った占竜は強力な結界を占術部屋に張りめぐらし
光一さんの店を遠視えんししようと試みる…

嫌な邪気じゃきの奥底に凄まじい怨念おんねんが見えた瞬間しゅんかん

パァーン!!!

と占竜の念珠ねんじゅが弾け飛んだ!〗


占「クソッ気づいていやがる…
俺とやる気か?
来るなら来い!
来てくれたなら光一さんは救うことができる…
何者かは知らんが相手になるぞ!」


占M「しかし、光一の店でペンデュラムをなおした瞬間に
邪気じゃきうすめるくらいかしこいやつだ…
相手はそこまでバカではないだろう…

わざわざ俺を殺りにくるより
光一さんを殺った方が…
俺が苦しむのをわかっているハズだ…

俺はその後でもかまわないだろうからな…」

占「くっ…」


占M「修行が足らないな…
怒りや憎しみでは何も解決できない…
初心を取り戻さなければ…
光一さんが殺られる前になんとかしなければ…〗

N〖切なる思いをあざけ笑うかのように
時は無情にも流れ…
占竜の占いまでもが外れてしまう…〗


【少し間をとる】


N〖悲報を聞いたのは光一さんを占って3日目だった…〗


【電話がかかってくる】

占「はい、占竜です」


和「占竜さん…
光一さんが…」

N〖和美が、ワラにもすがりつくような声で電話をかけてきた…
占竜の顔から血の気が引いていく・・・
光一の状況を確認することも忘れ、最悪の状況を
思い浮かべてしまう…〗

占M「そっ…
そんな…
早すぎるっ!」

N〖泣きながら話す和美の声は聞き取りづらく
何を喋っているのかわからない…〗

占「佐藤さん!
落ち着いて!
光一さんがどうした?」

占M「死相がでていた光一さんだ…
最悪のケースも考えなければ…
話の続きを聞きたくはないが
そうもいくまい…」


和「光一さんが倒れちゃた…
原因不明で意識がないんですぅ…」

占「死んではいないんですね?
生きているんですね?」


和「死っ?…
死ぬわけないじゃないですか!
えっ?…
光一死んじゃうの?
占竜さん、何か原因知っているの?」


占M「しまった…
口がすべってしまった…」

占「いや、占いした時にちょっと…」


占M「マズいな佐藤さんに話すと
佐藤さんまで狙われてしまうかもしれない…
店には近づかない方がいいと佐藤さんに警告をしたいのだが…
隠しとおせるか…?」

和「占いした時に何を見たんですか?
あの店に何があるのですか?」


N〖隠すのは無理だなと腹をくくり
占竜は和美に真実を告げようと重い口を開いた…〗

占「………わからない…
でも、ヤバいってことだけはわかります…
この件にはかかわらない方がいいです…
巻き込まれる可能性もありますし…」

和「そんな…
なんとかできないんですかっ!?
光一さんは、私の大事な友達なんです…
お願いです…

お願いですから…
助けてください…」


N〖和美は泣きながら懇願こんがんしてきたが
あの店と因縁いんねんを持ってしまった光一本人から頼まれないと
手が出せない…〗


和「ダメですか?
光一さんが占竜さんの悪口を言ったからですか?
怒っているのはわかります…
わかりますが…
お願いです…
お願いです…
助けてください…」

占M「どうする…
誤解ごかいされてしまっている…
自分だって何とかしてあげたい…
だが…

店の中で原因を探さないと…
詐欺師さぎしと思われている自分を光一さんは店に入れてくれるか?
因縁いんねんを断ち切るのには、どうやっても光一さんの
承諾しょうだくがいる…
佐藤さんに光一さんを口説くどき落としてもらうか…
しかし…
下手をすると佐藤さんまで・・・
いや、そんな弱気でどうする…
もし、光一さんが殺されてしまえば
佐藤さんは一生苦しむことになるだろう…〗


N〖占竜は意を決すると佐藤さんの想いを試した…〗


占「佐藤さんまで巻き込まれるかもしれませんよ?
命の保証はしません!
かまいませんか?」

和「かまいません!」


占M「即答そくとうか…
女性は強いな…」

占「では、護符ごふを一枚、光一さんに届けてください…
自分は原因と思われる店の方にむかいます!
護符ごふをかざせば、光一さんは意識を取り戻せるハズです!
それと光一さんにお祓いをする許可をとってもらいたい…
お願いできますか?」

和「はい!
やってみます!」


占「では、護符を準備しておきますから
とりにきてください」

和「ありがとうございます…
本当にありがとうございます…」


N〖泣きながら御礼おれいを言われたが
まだ助かるかわからないし佐藤さんの命も危ない…
御礼は全部終わってからにしてください…
と佐藤さんに話したが
それでもありがとうございますと何回も言っていた…〗

占M「まずは今日のお客様を断わらなければ…」

N〖占竜は今日、予約を入れてくれていたお客様に
日にちをずらして欲しいと謝りの電話をかけた…

占M「さあ、戦闘準備だ…
占竜よ…
考えろ…
光一さんの店に何がいるんだ…
何が目的だ…
どの系統けいとうの護符を出せばいい…
俺に気づき、一か月はかかるであろう事を3日に短縮たんしゅくできる相手だぞ…」

N〖占竜は考え抜いたあげく
みそぎをすませ護符ごふを書き始めた…〗

占M「これで守護できるはずだ…」

N〖書き終えると同時に佐藤さんが占竜の店についた…〗

和「占竜さん!」

N〖和美は泣き通しだったのだろう
目が真っ赤にれている…〗

N〖占竜は挨拶あいさつもせずに二枚の護符を差し出した…〗

占「こっちの護符は佐藤さんのです…
肌身離はだみはなさずに持っていてください…
こっちの護符は光一さんのです…
光一さんも肌身離はだみはなさずに持っていてくれたら嬉しいのですが…」


N〖和美は、わかりましたと護符を受け取ると
光一のもとにむかった…〗

占M「さあ、俺は俺の戦いを始めるか…
占竜はおはらい道具を車に積み込み
光一さんの店へとむかった…

N〖店の近くに行くと救急車のサイレンが聞こえる…〗

占M「おかしいな…
光一さんは病院のはずだし…
近所の人かな?」

N〖占竜は安易に考えてむかったが
光一の店の前に救急車が止まっている…〗

占M「何故?
光一さんは一人暮らしのはずだぞ…」

N〖救急車にかけよると、一人の老人が
光一の店から救急車にのせられている…
それに付きう50~55歳くらいの夫婦…〗

占M「誰だ?」

N〖近所の人が救急車を見にきていたので聞いてみた…〗

占「すみません…
今、居酒屋からおじいちゃんが救急車にのせられていましたが
あの店は休みのはずですよね?
店主は一人暮らしのハズだと…」

N〖占竜は光一の友達と名乗り
近所のおばさんに教えてもらった…〗

オ「あら、知らないの?
光一さんが急に倒れて…
ご両親とおじいちゃんが病院に来たみたいなんだけどぉ~…
田舎からでてきたみたいで…

今日は光一さんの部屋に泊まることになっていたみたいよぉ~…
それで、今度はおじいちゃんが倒れたみたいね~…
いやぁ~ね…

あの店、絶対呪われているわよ!

知ってる?

光一さんが引っ越してくる前に居酒屋経営していた人!

店を開けて一ヵ月も経たないうちに心筋梗塞しんきんこうそく
亡くなったらしいわよ~

怖いわね~」

占M「なにっ!?
前にも犠牲者がいたのか!
ムチャクチャ、ヤバい場所じゃないか!
光一さんのやつ…
下調べもせずに借りやがったな!」

N〖占竜はおばさんにありがとうございますと御礼を言って車に戻った…〗


占M「どうする…
店の外からでもいぶりだしてやろうかと思っていたが…
前にもらっていやがったか…
外からいぶりだすなんて無理な相手みたいだな…」

N〖占竜が精神を集中させ考えを巡らせていた時…
携帯に電話がかかってきた…〗

【電話が鳴る音】

N〖携帯の着信を見ると佐藤さんからだった…〗

占「はい、占竜です」

和「占竜さぁ~ん!」

N〖大泣きの和美からの電話だった…〗

占M「まさか間に合わなかったのか?
護符が効かなかったのか?」

占「どっ…
どうしました!
護符はっ?
光一さんはっ!」

N〖急に電話からガタガタと聴こえたかと思うと
男性が話してきた…〗


光「占竜さん…
電話変わりました…
俺は占竜さんの護符のおかげで意識を取り戻しました…
ありがとうございます…」


占M「良かった…
でも光一さんも泣いているようだ…
泣いているのを隠してはいるみたいだが…
声がかすれているな…」

占「光一さん!

無事で良かった!」

N〖占竜が喜びを伝えたのが、光一の心を揺さぶってしまったのだろう…
光一は泣き崩れてしまった…」

光「…くっ…そっそれがぁ…
良くな…いんですよぉ…
俺は…
俺は…
助かったんですがぁ…
じいちゃん…がぁ」

【泣いている声で会話が途切れる】

光「じいちゃんと両親…
俺が倒れ…たがら…
ぎで…ぐれだんでずよぉ…
意識のない…俺に…
じいちゃんがぁ~
俺が光一のがわりに行ぐがらぁ…
光一を返せぇ~って!

光一死ぬなぁって!

手を握ってぐれだんですよぉ…

意識がなくでもわかったんですぅ…」



…  








占「おじいさんは?…」


光「いっ今…
心筋梗塞しんきんこうそくでぇ…」



占「話はわかりました…
もう…話さなくていいですよ…
今から俺も病院に行きます…

光一さん…
かたきをとりましょうね…」


N〖占竜は夜にもかかわらず
サングラスをかけ病院にむかった…】




占M「おじいさん・・・
自己犠牲か…」

N〖占竜はポツリとつぶやき…
病院へと向かう…〗

占M「死者をだしてしまった…
救えなかった…
1ヶ月位は猶予ゆうよがあるとタカをくくっていた…
その間に光一さんを口説くどき落とすかなと…
甘い考えを…
それを読まれたか!
だからヤツは早くに手を打ってきたのか!
では、おじいちゃんを殺してしまったのは誰だ…
俺じゃないのか?
俺が…
安易あんいにタブーの死期しきを占って判断をあやまってしまった…
死期しきを早めたのは俺じゃないか…








おじいさんは死なずにすんだかもしれない…

俺のせいだな…」

N〖やりきれない思いが心の中をめぐる…〗

占M「このままではダメだ…
負の感情を持つと相手の思うつぼだ…
冷静になれ!…
さらなる犠牲者をだすわけにはいかない…」

N〖そう考えて落ち着こうとはするが…
心が悲鳴をあげ現実から逃げ出したくなる…
死にたくなる…

病院まではまだかかる…
占竜はコンビニにより
缶コーヒーを買うと煙草たばこに火をつけ病院に向かう…

占竜の心が悲鳴をあげ続けているのを
何かが元気づけようとしてくれたのか
ラジオから占竜が苦しい時によく聴いていた唄が流れ出した…〗

【ステイドリーム】
※著作権問題がありますので、飛ばしてかまいません。
できるのであれば、ジャスラックに申請出してかけてください。

歌《死んじまいたいほどの苦しみ悲しみ…
そんなものの
ひとつやふたつ
誰もがここ、あそこに、ほら、しょい込んでるもの
腰をおろし、ふさぎ込んでも答えはNothing
ぶっ飛ばしたいほどの怒りや悔しさ
そんなものの
ひとつやふたつ
殴られた痛みはTRYへのワンステップ
尽きせぬ自由は
がんじがらめの不自由さの中にある》


N〖占竜は唄に心を清めてもらっているかのように感じた…〗


歌《ひねくれかけた瞳のずっとずっと奥にもがいてる
もう一人の俺がいる
一番怖いものは
勇気だと知った時
自分の弱さに思わず鼻をつまんだ
もうこれ以上先へは進めない…

 …

 …
 
たとえば
挫折が目の前に立ちはだかる
そんな夜は心で命の音を聞け!
たかがこんな自分は!と
一度だけからかってみなよ…》


歌《くよくよするなよ
あきらめないで
Just Like a Boy
その痩せこけた頬のままで
果てしない迷路の中を
人はみんな手探りしてでも
Stay Stay Dream
そう
Stay Stay Dream
Stay Stay Dream》


N〖病院に着き、車を駐車場にとめ
光一の病室は何号室かを確かめる為、
占竜は受付に向かう…

そこには光一と和美が待っていた…〗

光「占竜さん!

来てくれたのですね

ありがとうございます」

N〖光一は冷静を取り戻してはいたが
かなり泣いたのだろう…
目が真っ赤に腫れあがっていた…

愁傷様しゅうしょうさまでしたと占竜は
言葉につまりながら頭を下げた…

しかし、次の言葉がでない…

頭をあげられない…

そんな占龍に光一がボソボソと問いかけてきた…〗

光「占竜さん…
占竜さんが言ってくれたように引っ越していれば
おじいちゃん死なずにすんだのかなぁ?…」

N〖占竜にとっては凄まじくキツイ質問だった…
自分がもっと真剣に光一さんを説得していたら…

自分が死期を占わずに
強硬手段きょうこうしゅだんでもかまわないから
すぐに行動していれば…

色んな考えが頭の中をめぐった
心の中で光一さん…

すまない…

すまない…

と何回も謝り…

頭をあげた…

頭をあげた占竜は次なる戦いの為にそな
表情を変えず…
びの言葉も言わず…
光一に返答した…〗


占「それはわからないですよ…
過去は変えられないんです…
あの時にこうしていたらって考える時間があるなら
これから自分に何ができるかを考えるべきですよ…

でも光一さんは無事でよかった…
もう歩けるんですね…」

N〖占竜は表情を変えずに話している…
それを聞いた光一は凄まじい表情で占竜に食ってかかってきた…〗


光「何が良かったんだ!
じいちゃんは苦しんで死んだんだ!」

N〖光一が占竜につかみかかってきた…
だが占竜はどうなるか予想して話していたのだろう…
顔色を変えずに黙って光一に殴られるのを待っていた…〗

和「光一さん落ち着いて!」

N〖和美が止めに入ってくれたお陰で
占竜は殴られずにすんだ…

占竜は殴られた方がスッキリするのだがな…
と思いながら、ここでお話するのも何だし
場所を変えましょうと光一さんの病室に向かった…


病室に向かう途中、光一は占竜に話かける…〗


光「すいません…
俺が全部悪いのはわかっているんです…
占竜さんの言うことを聞いていたらと思うと…
すいませんでした…
詐欺師呼ばわりして…
俺がじいちゃんの変わりに死ねばよかっ…」


ドガッ!
【光一が占竜に殴られる】


N〖占竜に殴られ、倒れこむ光一…
 その光一にむかって、感情をおさえられなくなった
 占竜が叫ぶ〗

占「それ以上言うなぁ!

おじいさんは我が身を犠牲にして、孫を守ったんだろうがぁ!

その行為を無にするような言動は許さない!

俺は詐欺師さぎしだよ!

何もできなかったんだ!

悪い道に向かっているのをわかっていながら止められなかったんだ!

俺なんか詐欺師さぎしで十分なんだよ!

だがなぁ!

俺はこのまま泣き寝入りするつもりはないぞ!

光一!

てめえぇ…

このまま泣き寝入りするつもりかぁ!

おじいさんが切り開いてくれた運命うんめい

死ぬ気で幸せをつかみ取るのが
命をかけて守ってくれた…

おじいさんに対する礼儀だろうがぁ!」


N〖ハァハァと占竜は息を切らし光一を見つめる…
いきなりの出来事で和美も止めにはいれず、唖然あぜんとしていた…

占竜は頭を激しくふり
唖然あぜんと見ている光一に話かけた…〗


占「すまない…
だがな光一さん…
今、この時…
命があることに感謝し…
おじいさんの勇気にも感謝しようや!」


N〖占竜は殴った時に倒れこんだ光一に
笑いかけ手を差し伸べる…〗

光「はい…」

N〖光一は占竜の手を掴んで立ち上がった…

占「光一さん…
すまない、病室で話をする前に
おじいさんに会わせてもらえないかな?」

光「はい、じいちゃんはこっちの霊安室れいあんしつにいますので…」

N〖光一は占竜に殴られ気合いが入ったのだろう…
病院についた時は死んだような目をしていたが
今は生き抜いてやると目に生気せいきが感じられる…

おじいさんのいる霊安室れいあんしつに入ろうとドアに手をかけると
男性と女性の鳴き声が聞こえる…〗

登「親父ぃ~…」

N「その声を聞いた光一は
つらそうな表情をしている…
その様子を見た占竜は光一の父親だなと気づいた・・・」

占「やっぱり光一さんの病室で
先に話をしようか?」

光「すいません…
そうしてくれたら助かります…
あっ占竜さん…
それと俺のことは光一って呼び捨てにしてください!
かなり年上ですし…
その方が、気合いが入るっていうかなんていうか…」

N〖占竜は、「わかったよ、光一」っと言うと
背中をポンって叩いて光一の病室に向かった…

病室につくと椅子に座り
今まで何があったかを聞いた…〗


占「倒れるちょっと前から教えてもらえるかな?」

光「はいっ
俺が倒れたのは居酒屋の二階…

俺の部屋です…

テレビを見ていたら、急にノイズが走り
おかしいなって立ち上がった時に
心臓を何かに掴まれた感じがして…
脂汗あぶらあせがでてきたんですよ…

スッゴク苦しくなってきたので救急車を呼んだんです…
救急隊員が駆けつけてくれた時には意識がなくて…

気が付いたら病室でした…
じいちゃんの声は聞こえていたんですが
他はわからなかった…

目が覚めた時は和美ちゃんが側にいて
俺の胸に占竜さんの護符をあててくれていたんだ…

両親とじいちゃんは俺の家に泊まるからと、帰って行ったって
和美ちゃんに後から聞かされたんです…

その時、親父もお袋もじいちゃんも
お見舞いに来てくれていたんだなって…」

占「そっか…
光一は意識不明なのに
なんで両親とじいちゃんは光一の家に行ったんだろな?
医者が大丈夫って言ったのかな?」


N〖そのことは私がと和美が話してくれた…〗

和「私が占竜さんの護符を持って来た時には
ご両親もおじいちゃんもいなかったから
看護婦さんに聞いたんです…

おじいちゃんが、どうしても光一さんの
家に行くって両親ともめていたみたい…

仕方なくお医者さんに相談してみたら
意識はないけど安定しているから
大丈夫ですよって言われたみたいで
光一さんの家に行ったみたいです」

N〖光一もそのことは知らなかったのだろう
疑問ぎもんが浮かび占竜に問いかけた…〗

光「そうなんだ…
占竜さん…
なんで爺ちゃんはそんなに家に行こうとしたんだろ…」

占「おじいさんは、俺が行くから光一を返せって言っていたんだろ?
光一が倒れた原因…
おじいさんには…
わかったんだろうな…
光一を助ける為にはあの家に行かないと無理だって…

俺も佐藤さんに護符を預けて光一の店に行ったよ…
俺が店についた時には人だかりができていて…」

光「爺ちゃん…」


トントン…
【光一の両親が病室をノックする】


N〖病室のドアをノックして
光一のご両親が入ってきた…
占竜はご両親に挨拶をすると
父親がどなたですかと訪ねてきた…〗


占「占術師せんじゅつしをしている占竜という者です…
光一さんを占ったことがありまして…」

N〖話の途中なのに父親は占竜の手を握りしめた…〗

登「あなたが光一を救ってくれた占竜さんですか!

ありがとうございます!

正直…信じられないですが
和美ちゃんから占竜さんの護符で光一の
意識が戻ったんだよって聞いています!

申し遅れました…
私は光一の父親で加藤登かとうのぼると申します…
こっちは家内の久恵ひさえです…」


占「自分はたいしたことはしていません…
お爺さんが光一さんを救ってくれたんですよ…
この度はご愁傷様しゅうしょうさまでした…」

登「親父が亡くなって気が動転どうてんしているからかも知れません…
自分で見たことを信じられない…
親父が倒れた時の話を…
聞いてもらえませんか?」


N〖占竜はぜひ聞かせてくださいとお願いした…
和美が看護婦さんに椅子を借りに行き、
みんなは腰をおろして登の話を聞こうとしたが
久恵さんだけは、おばあちゃんに連絡入れてきますと
話を聞きたくないのか病室を出て行った…

登は目をせながら淡々たんたんと話し出した…〗


登「親父が光一に会った直後…
すぐ光一の自宅に連れて行けって言い出したんです…
今はもう少し光一の側にいてやりたい…
どうせ今日は光一の自宅に泊まるからっ待ってくれよ…
先生にも話を聞かないといけないからて言ったのですが
早くしろの一点張りでした…

今思えば…

あんなに真剣な目をした親父見たことなかったなぁ…」


N〖病室の気が重くなってきた…
占竜の表情がくもる・・・〗

占「登さん…
少し待ってください」

N〖占竜は登の話を中断させると
並みの結界けっかいでは無理だなとボソッと言い捨て
病室の四隅よすみに水晶を置いた…

水晶にはそれぞれ文字が彫り込まれている…

占竜は水晶一つ、一つに何か秘文ひもんつぶやいている


占「すみません…
お待たせしました…」

N〖占竜は登に頭を下げると椅子に座った…〗

登「仕方なく医者に相談して
光一の自宅に行ったんです…

光一の自宅に近づくにつれて
親父の様子がおかしくなってきました…
汗をかき、震えだしたんです…

親父大丈夫か?って言うと
武者震むしゃぶるいだ!』と言っていました…

その時は言っている意味がわからなかった…」

N〖登は涙を見せたくないんだろう…
ずっとうつむきながら話していた…〗

登「光一の店につくと親父は何があっても下で待っていてくれと言って
一人で二階に上がっていったんだ…

一時いっときすると、『ドンッドンッ』って凄い音がしたから
親父の言いつけを守らずに慌てて二階にあがりました…

二階では親父が壁にむかって…

『光一を返せぇぇぇ!』って…
壁を殴っていた…

血だらけのこぶしを見た時…
親父が狂ったと思いました…

久恵と親父を止めに入ろうとした時…
俺は見たんだ…

壁から女の手が出てきて
親父の胸に手を突っ込んだんだ!

親父は壁から出た手をつかみ…

凄い形相で『俺はくれてやる!』

だから光一を離せって叫んでいた…

壁からでた手は親父の体から白い何かを抜き取ったんだ…

その後、オヤジは倒れたんだ…

親父に駆け寄り…

大丈夫かって話かけたら親父は苦しそうに…

すまない…光一…との道は切れな…かった…

奴…に対…抗しようとしている人が…

光一の…側にいるは…ずだ!

探し出して助け…を求め…ろ…

すまない…

情け…ない…

親父だった…な…

道代みちよに今まであり…が…とう…と伝え…


これが親父の最後の言葉に…」


N〖登の足元の床が濡れていく…


ときは少し前に戻る…
病室からでた久恵は電話をかける為
病院の外にでた…

病院の外で携帯からお婆さんに連絡をとろうとしていたら
タクシーが目の前にとまった…

タクシーが気になり見ていると
中からお婆さんがおりてきた…〗

久M「えっ?
お義母さんには
まだ連絡入れてないのに…」

久「お義母さん!」

N〖お婆さんに駆け寄り泣き出す久恵…
お婆さんは
光一は無事?と久恵を抱きしめながら聞いた…〗

久「光一は…

光一は…

無事なのですが…」

N〖言葉をつまらせる久恵を見たおばあさんはうなずいた〗

道「和雄かずおさん…
やっぱりってしまったんだね…」

N〖と久恵さんの頭をなでながらつぶやいた…

久恵はお義父さんが亡くなったのを
連絡もしてないのに何故知っているかを疑問ぎもんに思い
聞こうと思ったが言葉がでなかった…

すると道代みちよの方が先に久恵ひさえにお願いしてきた…〗

道「久恵さん…
先におじいちゃんのところに連れて行ってもらってもらえるかしら?

のぼるや光一に会う前に会っておきたいから…」


N〖道代は久恵に微笑ほほえむと
おじいちゃんがいる霊安室へとむかった…

霊安室に入ると道代はおじいちゃんの手を握り…

涙を流した…〗


道「和雄かずおさん、頑張りましたね…

あなたと共に歩いてきた人生…

私はとっても…

とっても…

幸せでしたよ…」


N〖そうおじいちゃんに言うとおばあちゃんは肩を震わせていた…



病室では登さんが話を続けていた…〗

登「親父と一緒に救急車で病院に運ばれ
親父が亡くなり打ちひしがれている時に
光一の意識が戻ったことを医者に聞かされたんだ…

その後に光一の病室で和美ちゃんに護符をあてたら意識が
戻ったんだよって聞かされました…

正直、神様や霊なんぞは信じていなかった…

親父やお袋は信心しんじん深かったけど…

正直馬鹿にしていたよ…

占竜さん…

親父は奴に対抗たいこうしている人を探しだせと言っていた!
護符の話を聞いて確信しましたよ!
親父が言っていたのは占竜さんのことなんだって!
親父の遺言ゆいごんなんです!
占竜さん力をかしてください…」

占「未熟者みじゅくものですが…
命に変えても奴だけは自分が何とかします…」

N〖占竜はおじいさんが亡くなったのは自分の責任だと感じていた…〗

登「占竜さん…
ありがとうございます…」

N〖登は占竜の手を握り締め
何回も頭を下げた…〗

登「占竜さん、親父は何故、色々わかったんだろう…
光一が倒れた原因…
占竜さんがいること…」

占「人はみんな第六感だいろっかんって言うか…
不思議な力を持っているんです…

今は科学が発展して
その力はおとろえる一方ですが…

死期しきが近い人や純粋じゅんすいな子供…
動物などは不思議なものが見えるんですよ…

お爺さんは先祖せんぞに教えてもらったんじゃないかなと思います…
登さん…
お爺さんにあわせてもらえませんか?」


N〖登はぜひ会ってくださいと言うと霊安室にむかった …
霊安室につくとは人の気配がした…
登がかけよる!〗

登「おふくろぉ!」

N〖霊安室には登の母親である道代と、妻の久恵がいた…
登は母親に駆け寄ると『親父がぁ~!』と泣き出していた…
占竜はお婆さんに挨拶するのを後回しにして
おじいさんに手を合わせ…

心の中で…
すいません…
俺の力不足のせいでと謝った…
そして、失礼しますとおじいさんの胸に手をあてた…〗














占「くっ…」

N〖占竜は肉体を通して霊視れいしするが…
魂が闇に捕らわれている…
やはり喰われている…
占竜の辛そうな表情にお婆さんが話しかけてきた…〗

道「占竜さん…」

N〖占竜はお婆さんに頭を下げる〗

占竜「このたびはご愁傷様しゅうしょうさまでした」

道「色々とお世話になったみたいで…
ありがとうございます…
占竜さん…
和雄かずおさんを見て何か気づきましたか?」

占「大変言いづらいのですが…
その…魂が…闇に捕らわれています…」

道「そうですか…
和雄かずおさんの魂…
取り戻してくれませんか…
せめて安らかに眠ってもらいたい…」

占「勿論もちろんそのつもりです!
必ず魂を取り戻します!」

登さん…
光一さんの自宅の鍵をかしてください…
魂を取り戻しに行ってきます!」

N〖登から鍵を借りると
占竜はおじいさんの胸に手をあて…

少しでかまいませんから
和雄かずおさんの勇気を自分にかしてください…
つぶやいた…

その時、話を盗み聞きしていた光一が霊安室に入ってきた…〗


光「占竜さん!
俺も連れて行ってください!」


占「何を言っているんだ!
危険すぎる!
ダメだ!」

光「そんな…
ダメって言われてもついて行きます!」

登「…
連れて行ってあげてください…」

占「登さん!
何を言っているんですか!
危なすぎます!
止めてくださいよ!」

光「占竜さん!

一緒にかたきをとろうなって言ってくれたのは嘘ですか?」

占M「うっ!
光一の奴…
痛いとこをついてくる…

占「でもな…
もしものことがあったら…」

N〖登も覚悟を決めたのだろう…
真っ直ぐに占竜を見つめ頼みこんできた…〗

登「自分もついて行きます…

このまま…

このまま…

俺は泣き寝入りをしたくない!」


占M「いやいや、登さんまで何を言い出すんだ…」

N〖占竜は助けを求めるように奥さんとお婆さんを見たが
奥さんは頑張ってと登と光一を応援している…
おばあちゃんはかたきつんだよと息巻いきまいている!
占竜はため息をつき最後のおどしをかけた…〗

占「命の保証はできませんよ!」

N〖脅しは逆効果で登と光一に望むところだ!
と興奮されてしまっていた…

占竜は仕方なく登と光一に念珠ねんじゅとヒトガタを渡した…〗

説明【ヒトガタとは、紙を人の形に切り作っている物
自分の身代みがわりにわざわいをうけさせたり
使い方は様々である
布バージョン
木バージョン等がある】


占「念珠は手につけていてください…

ヒトガタは服の中…

心臓の位置に入れてください

守護してくれます!」


N〖占竜は登と光一を自分の車にのせると
光一の自宅にむかった…

光一の自宅についた時には夜中だった…
占竜は自宅に入る前に登と光一に注意をした…〗

占「手をこの形にしてください…
何があっても
この形をくずさないでください」


光「何ですか?
 これ?」

占「この手の形は摩利支天まりしてんいんです…

陽炎かげろう化身けしんである摩利支天の力をかり
わざわいをもたらそうとしてくるモノから
その身を見えなくして攻撃を防いでくれます…

印が崩れると見えるようになりますから
絶対に崩してはダメです!

気合を入れてください!
何があろうと弱気にならないように!

闇に飲まれますから…

では行きますよ!」

N〖登と光一はわかりましたと印を組んだ…
それを確認した占竜は目をとじ、真言しんごんを唱え始めた…〗

占「陽炎かげろう化身けしん
摩利支天まりしてんよ…
我が身…
我が仲間…
守りたまえ…
オン! アニチヤ マリシエイ ソワカ…」


N〖占竜を先頭に、自宅の二階へとむかった…
二階はきりがかかっているかのような状態になっていた…
邪気じゃきが濃く息もしづらい…〗

占M「こんなにキツい邪気を発するとは…
はたして俺で何とかできるのだろうか…
いや、何とかできるとか悩んでどうする!
命をおとすことになってもやるんだ!!!」

N〖占竜は心の中で自分に言い聞かせている…〗

占M「どこにいやがる…」

N〖占竜はペンデュラムを取り出すが
訳のわからない動きしかしない…〗

占M「クソッ!
場所すら特定できねぇ…」

雄「占…竜…

 …占…竜…

占竜ぅ!」


!?


占M「誰だ!
俺の心に直接語りかけてくるのは…」

雄「こっ…ちだ!」

N〖占竜は謎の声に導かれ壁の前に立った…〗

占M「壁に血の後?」

N〖登が叫ぶ!〗

登「占竜さん!
そこが親父の倒れた場所です!」


!?

占M「さっきの声はおじいさんか…
この壁…」

N〖占竜が壁を調べようと手をだした瞬間!

占竜の腕を、壁からでてきた青白い女性の手がつかんだ!
占竜は調べる為に摩利支天まりしてんいんいている…
その方が敵の正体がわかるだろうと我が身をおとりにしていた…
光一にも青白い手が見えるのだろう…
青ざめ叫ぶ!〗

光「占竜さん!!!」

N〖光一が駆け寄ろうとするが
占竜が一喝いっかつする!〗

占「近づくなぁ!!!
印を絶対に崩すんじゃないぞ!」

N〖占竜は逆に壁からでてる手をつかみ返し
秘文ひもんを唱えだした…〗

占「さぁ、捕まえたぞ!
正体を教えてもらおうか!

貴様は何者だぁ!
我が占術せんじゅつの力…
今こそ見せてやろう!」

N〖占竜は意識を集中し、敵の心を読みとろうとしていた…
地面の底からひびくようなうめき声がこえてくる…〗


鬼「ヴェェェェェェェェェェェ…

エェェ…」


N〖占竜は女性の心に入り込む…〗


鬼「お願いっ!

ダシてぇ…!

苦し…いょお~…


寂し…いよぉ…


ゴホッ!

ゴホッ!

ブハッ!」


N〖占竜の心に敵の過去が写し出される…
若い女性…
着物を着ている…
かなり昔だな…
監禁かんきんされているのか?…

病か?
血を吐いているぞ!
女性は部屋で監禁され
部屋には食事だけを入れる小さな穴がある…

ドアは頑丈で
女性は何度もドアを破ろうといどむが、全く歯が立たない…

苦しそうにき込みながら
吐血とけつり返している…〗


鬼「ワタ…シヲ…
トジコ…メ…
サベツ…シ…
オソレ…ル…
ヨワキ…
ニンゲ…ンヨ…

イツノ…ヒ…カ…
クロウ…テヤル…

ジブン…タチダケ…
シアワセ…ニ…ナリ…

ワタ…シハ…

ノロッ…テヤル…
ニンゲ…ン……スベ…テヲ…
ノロ…イ…
クロ…ウ…テ…
ヤル…ワ…」


N〖女性は呪いの言霊ことだまを吐き…
着物のオビで首をった…〗

占M〖このやまいは…
結核けっかくか!
伝染しないように隔離かくりされた女性か…」

N〖占竜は登や光一にもわかるように
念珠にその心を通じさせていた…
お爺さんを殺った奴が
どんな奴かを知ってもらいたかったのと…
占竜がもしやられた時には
どうしたら良いのかを
わかってもらう為に…〗


鬼「ヴエェェェエェェ…」

N〖うめき声は鳴り止まない…
占竜は更に女性の心を探った…

女性の怨念おんねんはこの家に住む者を
何人も喰い殺していた…

占M「これほどの怨念とは…
凄まじい…
魂を喰らい…
人を怨み…
鬼となりはてたのか…
哀れな…」

N〖当時の大家はたまらずに
はらいを頼んでいた…
部屋に護符等で結界を貼り封じ込めている…〗

占M「では何故…
今頃でてきた…」

N〖占竜は集中し更に読み取る…〗

占M「光一の前の住人…
エアコンを設置する為に…
壁に穴を…
開けたのかぁ!

封印はとかれた…
今はまだ少し封印力が残っている…
まっ!
マズイ!
これほどの魂を喰らっている奴だ!
今のままでは勝てない!」

N〖そう思った瞬間!
占竜の腕を掴んでいた女性の手が変貌へんぼうをはじめた!
青白かった細い手が太く赤黒くなっていく…
メキメキッっと占竜の腕がきしみはじめた!

占竜が叫ぶ!〗

占「登さん!
光一! 
逃げろぉ!!!」

N〖登と光一は、心に写し出されたものを見て震え泣いていた…
占竜の声に二人ともビクッっとなり我にかえる…
光一と登は占竜をつかんでいる手が変貌へんぼう
占竜が苦しそうにもがいているのを見て慌てて逃げだした!

家の外まで逃げると、もう安全だなと登さんは確信して
光一の肩に手をおいた…〗

登「光一…
母さんと婆ちゃんを頼むな…」

N〖光一に別れをつげると
登はそのまま、占竜のもとに向かおうとした…〗


光「イヤだ!
父さん何で行くんだよ!
あんな奴にかなう訳ないじゃないかぁ!
占竜さんだってやられたんだ!
行ったって何ができるっていうんだよぉ~!
無駄死にするだけじゃないかぁ!!!」

N「登さんは光一の方を向き…
ニッコリと笑うと
そのまま鬼女きじょがいる二階へとむかった…

光一はその場にふさぎこんで泣いていた…〗


光「チクショウオォ~!」

N〖光一はどうしてよいかわからずに、
地面を殴りつける…〗


光「占竜さん…
俺はどうしたら…」

N〖登が二階に戻ると
占竜はぐったりと倒れていた…〗

登「占竜さん!」

N〖登は占竜に駆け寄りほほを叩くが反応がない…〗

登M「占竜さんまで魂をとられてしまったのか…」

N〖登は壁を睨みつけ鬼女に語りかける!〗

登「もういいだろう!
貴女あなたが苦しんだのは十分にわかった!
ちゃんと供養するから…
もうやめてくれぇ~!!!」

N〖登は土下座をしながら叫んでいる!〗

鬼「ヴエェェェエェェ…」

N〖女性の顔とは思えないモノが壁からでてきた…
髪が燃えているように真っ赤で…
頭には二本の角が生えている…
目からは黒い血を流し…
吐く息は悪臭あくしゅうを放っていた…〗

鬼「クルシ…ムガイ…イ…
ナキ…サケ…ブガイ…イ…
ワ…レガ…アジワッ…タ…
クルシ…ミ…
オマ…エ…ニ…モ…
アジア…ワセ…テ…
ヤロ…ウ…」

N〖登はくそぉ~っと叫び
占竜を引きずり一緒に逃げだそうとしていた…

それをあざ笑うかのように鬼女は登をつか
魂をえぐり出そうと胸に手を突っ込んだ!

その時っ!〗

光「父さんを離せぇ~‼‼」

N〖登は声のする方を見ると
光一が震えながら立っていた〗

登「光一!
何故戻ってきたぁ!
逃げろぉ~!
お前だけは生き残るんだぁ!」

N〖光一はくそぉ~!と叫び
占竜からかりていた念珠を鬼女に投げつけた!〗

パァーン!!!【念珠がはじけ飛ぶ音】

N〖投げつけた念珠が弾け飛び鬼女の体にめり込む!〗

鬼「ヴエェェエェェ!?」

N〖鬼女は登を離し苦しみもだえている!
怒り狂った鬼女は標的を光一にかえ、つかみかかった!
その時、まばゆい光が鬼女の体から飛び出し
鬼女の手をはじく!〗

雄「孫に手を出すなぁ!!!」

N〖念珠をその身受けたショックで
おじいさんの魂が解放され鬼女の攻撃を防いでいる!〗

鬼「コザカシイ…ワァ…」

N〖鬼女はニヤリと笑うと
おじいさんの魂を壁に叩きつけた!〗

占「ノウマク サンマンダ バザラダン センダ
マカロシャダ ソワタヤ ウンタラタ カンマン!!!」

N〖鬼女の体が赤く燃え上がり苦しみだす!
それを見た登は
息を吹き返している占竜に気づいた…〗

登「占竜さん!」

N〖占竜は、淡々たんたん不動明王ふどうみょうおう真言しんごん
唱えていた…

占竜は鬼女が苦しんでいるのを見て水晶玉を取り出し
おじいさんの魂に近づけた…

魂は水晶玉へと吸い込まれる…
水晶をふところにしまうと占竜は息を切らしながら叫んだ!!〗

占「登さ…ん…
ひとまず逃げるぞ!…」

N〖占竜は登にそう伝えると
|真言を唱えながら家の外にむかった…

外に逃げ出した占竜達はその場に倒れ込む…

占竜は笑っていた…〗

占「登さん、光一、助かったよ…

光一が投げた念珠が俺とおじいさんの魂を
鬼女の体内から助け出してくれた…

魂を抜かれた時は…
流石にもうダメかと思いましたよ…
まさか鬼女とは…」

N〖占竜は登と光一に御礼を言いった…
登は震えながら笑っていた…〗

登「一旦いったんは怖くて逃げ出しましたけどね…」

占「息子さんを逃がす為でしょ?」

N〖占竜は大笑いした…〗

占「おっと忘れるところだった!
ヒトガタをだしてもらえますか?」

N〖占竜から言われて
登さんと光一は胸にしまっていたヒトガタをだし占竜に渡す…
白い紙で作っていたヒトガタが真っ黒になっている…〗

占「すさまじい邪気だな…」

N〖そう言うと占竜はヒトガタにライターで火をつけ
秘文ひもんを唱えてその場を清めた…
ヒトガタも燃え尽き占竜は二人を見てニッコリと笑う」

占「とりあえず…
おじいさんの魂だけは取り戻せたよ」

N〖そう言うと占竜はふところから水晶玉を取り出した…〗

占「水晶玉をおじいさんの胸にあててください…」

N〖占竜は水晶玉を登に渡す…
水晶を受け取った登は占竜にたずねた…〗

登「占竜さんはきてくれないのですか?」

占「自分は鬼女を調伏ちょうふくする為に
身を清めて準備をします…
とりあえず病院におくりますよ…」

N〖登はわかりましたと言うと
光一と一緒に占竜の車に乗り込んだ…

車の中で登が鬼女をやる時は必ず連れて行ってくださいと頼んできた…〗

占「もちろん、そのつもりですが
再戦は今日の夜中になります…
あまり間をおくと今残っている封印がとかれてしまう…
そうなると、まず、今の家の主…
光一がマズい…
でも今日はおじいさんの通夜つやになると思いますが…」

登「鬼女を放置して通夜にでていたら
親父に臆病者おくびょうものがぁって怒られてしまいますよ!
鬼女を倒して葬式の時に胸を張って親父を見送ります!」

N〖占竜はニッコリと笑いうなずいた…〗

占「わかりました…
では再戦まで壁を壊す道具を準備しておいてください…
それと、鬼女をなんとかする前に
あの店には絶対に近づかないように!
後はご飯を食べて睡眠を取り体力をつけていてください!」

N〖登はわかりましたと笑った
登と光一を病院に送り届けた時にはすっかり夜が明けていた…〗

占「朝日がまぶしいな…」

N〖占竜は身を清め精神集中の為に滝を目指す…

その頃、登と光一はお婆ちゃんと久恵さんに一部始終を話し
みんなで霊安室れいあんしつのおじいちゃんのところにむかった…

登は占竜に言われた通りに
水晶玉をお爺さんの胸につけると水晶玉が光り出し
お爺さんの胸に光が吸い込まれていく…

苦悶くもんの表情をしていたおじいちゃんは穏やかな表情になる…
それを見ていたお婆ちゃんはお爺さんに話しかける…〗

道「お帰りなさい…
今日はお通夜ですぐにお別れになるけど…
また会えて良かった…」

N〖お婆さんはおじいちゃんの手を握り締めて泣いた…
登はちょっと申し訳なさそうに久恵に話しかけた…〗

登「久恵、通夜と葬儀の方は頼むな…
俺は占竜さんとけりをつけに行くよ…
最後まで見届けたいんだ…」

久「はい、気をつけてくださいね」

N〖久恵は登に優しい笑顔を見せ
それ以上は追求しなかった…

その様子を見ていた光一が登に言った…〗

光「父さん俺も行くよ!」

登「ダメだ!
あんなに危険だとは思わなかったからな…
お前は通夜にでなさい…」

光「なんでだよ!
俺が行かなきゃみんな死んでいたんだぞ!
俺が借りた家のせいでこんなことになったんだ!
ケジメつけさせてくれよ!」

登「ふぅ…
わかった…
でも、危険と感じたら
今度は一人でも逃げろよ!」

N〖登は光一と約束して一緒に行くことを承諾しょうだくした…

色々ありすぎてみんな疲れ果てていたので
久恵がとったホテルに行き
食事をとってから、みんなで爆睡ばくすいした…



滝についた占竜は服を脱ぎ捨てフンドシ一枚になり滝の中へと入って行った…〗

占「我が身を清めたまえ…」

N〖占竜は滝にあたりながら気を高めていく…
一時間くらい滝を浴びた占竜は
自宅に車を走らせ鬼女調伏きじょちょうふくの準備にとりかかった…

準備が整った頃には23時になっていた…〗

占M「鬼女よ…
待っていろよ…
苦しみの因縁いんねんを断ち切ってやるからな…」

N〖占竜はそうつぶやくと、登と光一を迎えに車を走らせた…

葬儀社そうぎしゃに到着した時には、お通夜にきた人が沢山いた…
コッソリと携帯で登と光一を呼び出し車に乗せた…〗

占「さあ、気合いをいれてくださいよ!
今日でけりをつけます!」

登&光「はいっ!」

N〖車を発進させようとした占竜は
ふと、葬儀社の入り口を見ると
おばあちゃんと久恵が深々と頭を下げて
見送っているのがわかった…

占竜も頭を下げて、絶対に負けられないなと
再度気合いを入れ直した…


光一の自宅の前につき
二人に新しいヒトガタを渡し
光一には新しい念珠も渡した…


その後、占竜は家の外を周り
水晶玉に秘文ひもんを唱え、家の東西南北に設置した…

病院で結界を張る時に使用していた
何かが彫り込まれた水晶玉を…〗

占「では…
行くぞ!」

N〖占竜は大きなかばんを持ち
登と光一は大きな金槌かなづちを持って鬼女の待つ二階へと進んだ…

二階につくと、「ヴェェェエェ」っとうめき声が聞こえはじめた…

登と光一は大きな金槌をかまえて震えている!

占竜は鞄を開け
水晶玉を取り出し二階の中心に
立つと秘文ひぶんを唱えた…〗

占「太極たいきょく陰陽いんようとなり
陰陽いんよう五行ごぎょうとなる!

東方青龍とうほうせいりゅう
来臨守護急急如律令らいりんしゅごきゅうきゅうにょりつりょう

南方朱雀なんぽうすざく
来臨守護急急如律令らいりんしゅごきゅうきゅうにょりつりょう

中央黄龍ちゅうおうこうりゅう
来臨守護急急如律令らいりんしゅごきゅうきゅうにょりつりょう

西方白虎せいほうびゃっこ
来臨守護急急如律令らいりんしゅごきゅうきゅうにょりつりょう

北方玄武ほっぽうげんぶ
来臨守護急急如律令らいりんしゅごきゅうきゅうにょりつりょう


五神獣ごしんじゅうそろいて木火土金水もっかどこんすいの五行をしめす!

五行の神獣しんじゅうよ!

鬼女を封じ込めよ!」

N〖占竜が秘文ひぶんを唱え終わると手に持っていた水晶玉が光り出し
黄金色おうごんしょくの龍が現れ壁に向かって飛んでいった!

鬼女はたまらず壁からみにくき姿で現れた!

その瞬間、青き龍や、紅き鳥、白き虎に尻尾が蛇の亀が
鬼女の四方を取り囲む!〗

占「登さん、光一、今です!
鬼女がいる近くの壁を壊してください!
鬼女は動けません!」

N〖登と光一はあまりの出来事に唖然あぜんとして見ていたが
占竜の叫びにハッとし大きな金槌かなずちで壁を壊しはじめた!

鬼女は登や光一を攻撃しようとしているが
ことごとく神獣しんじゅうに邪魔をされて手が出せない!

そうこうしているうちに壁が壊れてドアが現れた!》

占「そのドアも叩き壊してください!」

N〖占竜の声を聞いた登と光一は汗だくになりながらドアを叩き壊した!〗

占「さあ、行きますよ!」

N〖占竜が叫ぶと隠された部屋の中へと入って行った…
占竜は部屋に入ると周りを見渡す…〗

占M「壁に護符が七枚…
天井からぶら下がっているおびは…
首を吊った時の帯がそのままか…
机に翡翠ひすい勾玉まがたま
勾玉に鬼女の封印をほどこしたのか?」

N〖占竜は勾玉に近づいた…〗


バシュッ!

N〖勾玉から鬼の手が出てきて占竜が持っていた水晶玉を叩き割った!〗

占「しっしまっ…」

N〖占竜が喋るより先に鬼の手が占竜の首を掴んだ!〗

占「ちぃ…」

N〖水晶玉を一つ壊され五行の神獣が消え去る…〗

占「まっマズい…」

N〖メキメキと占竜の首を締め上げる鬼女…〗

占M「おかしい!
鬼女はそこに…」

N〖今まで鬼女がいた場所を見ると
ニヤリと笑っている鬼女がいる…〗

占M〖何っ?
一体ではなかったのか?〗

N〖翡翠ひすいの勾玉から出てきた鬼女は…
さっきまで神獣しんじゅうが戦っていた鬼女よりも一回り大きく
より禍々まがまがしい…〗

占M〖本体はこっち?
では奴は…〗

鬼「ヴェェェエェ…」

N〖翡翠ひすい勾玉まがたまからでた鬼女は嬉しそうに語りかけてきた…

鬼「ワレガ…クライ…シ…
モノノ…シュウゴウタイ…ジャ…
イタブリ…クルシメ…クラッ…テ…ヤッタラ…
ワレト…オナジク…
ヒトヲ…ウラミシ…オニヘト…ナッタノジャ…」

N〖登と光一は
もう一体の鬼女に捕まってしまった…〗

鬼「ワレノ…フウイン…ヲ…
トイテクレタコト…
レイヲ…イウ…
マタ…タラフク…
ヒトヲ…
クロウテ…ヤロウ…」


鬼「ヴェェェエエェ」

N〖勝利の雄叫おたけびをあげる二体の鬼女…
登と光一は首を絞められ白目をむき、泡をふいている…〗

占M「くそぉ…
ここまでか…

いや…

ここで、あきらめる訳にはいかない!」

N〖占竜は鞄をとろうと手をのばしたが届かない…〗

占M「仕方ない…
うまく鳴ってくれよ…」

N〖占竜は足で思いっきり鞄をり飛ばした!〗


チリリ~ン!【鈴の音】

N〖鞄の中の金銅五鈷鈴こんどうごこれいが鳴り響いた!
鬼女達は鈴の音を聞くと
苦しみ占竜達を離した!〗

占M「しめたっ!」

N〖占竜は鬼女から離れて鞄の中の金銅五鈷鈴こんどうごこれい
を取り出し鳴らした!
鬼女達はヤメロォ~っともがき苦しんでいる!
光一の意識が戻り、後退あとずさりをしているのに気づいた占竜が叫ぶ!〗

占「光一ぃ~!
翡翠ひすい勾玉まがたまを叩き壊せぇ~!」

N〖光一はビクッとなり一瞬考えたが
大きな金槌を拾い上げると
そのまま翡翠ひすい勾玉まがたまに振り下ろした!〗

パキーン!

N〖翡翠《ひすい》の勾玉まがたまくだけ散った!〗

鬼「ヴェェェエエェ!」

鬼「バカナ…ニンゲンメ…
オカゲデ…フウインガ…
カンペキニ…トケタワァ…」

N〖鬼女達は言うが早いか
そのまま、光一には目もくれずに
占竜に襲いかかった!

光一は、えっ!?

俺は間違えたのかと
占竜を不安そうに見つめて叫んだ!〗

光「占竜さぁ~ん!」

N〖鬼女達は笑いながら占竜へとつかみかかる!〗



バシュ!


ゴトン…



鬼「ヴェェェエ…」

鬼「ギャアオァァア~!」

N〖占竜は鞄から出した桃剣ももけん
鬼女達の片腕かたうでを切り落とした!〗

占「封印はとけていいんだよ!
もとから封印するつもりは
サラサラないんだからな!」

N〖占竜は桃剣を鬼女達に向けて言い放つ!
鬼女達はたまらず逃げ出そうとするが
占竜はニヤリと笑うと鞄から水晶玉を取り出した…〗

占「悪いな…
神獣の水晶玉…
予備があるんだよっ!」

N〖そう言い放った瞬間に
神獣を降臨こうりんさせ
鬼女達を取り囲ませた!

鬼女達は神獣達に襲いかかったが
片腕かたうでの鬼女達に
神獣の結界けっかいはとても破れない!〗

占「…

あわれ…
うらみにまみれ…
鬼女に落ちし者達よ…

過去を思い出せ…

苦しい思い出だけではあるまいに…」

N〖占竜は鬼女達に語りかける…
鬼女達は…
そんな占竜をうらめしそうに…
にらんだ…〗

鬼「ヴェェェエ…」

鬼「ワレハ…ヒトヲ…
ノ…ロウ…
コノヨニ…
ヒトガ…
イルカギリ…」

N〖占竜は遠くを見て真言しんごんを唱えはじめた…〗

観世音菩薩かんぜおんぼさつよ…

大慈悲だいじひを持って…
あらゆる苦しみをやし
鬼女にちたる…
あわれなる者達を救いたまえ…

オン アロリキャ ソワカ…


鬼女達よ…

この世に生まれきた時…

両親は喜びの涙を流したはずだ…

幸せだった頃を思い出せ…

オン アロリキャ ソワカ…」


N〖真言の効果だろうか…
鬼女はどこか遠く見ているようだった…〗

鬼「ヴェェェエ…」

【鬼女過去回想】
※鬼女設定【小学生低学年の女の子(幼鬼)表記】




母「登美子とみこ~」

幼鬼「あっ!

お母さん♪」

母「早く帰っておいで~
晩御飯できたよ~」

幼鬼「はぁ~い!

母「登美子とみこ
大丈夫かい?
苦しいのかい?」

幼鬼「お母さん…

ゴホッゴホッ…

お母さんだしてぇ~!

苦しいよぉ~!

ここから出してぇ~!」


母「すぐに出してあげるから…
すぐに…

ゴホッゴホッ…」



N〖登美子とみこの母親は、
病気平癒びょうきへいゆを神々に祈願すべく、
|真冬にも関わらず、井戸の水をかぶり必死に祈った・・・〗

バシャ


母「神様…

登美子とみこを救ってください…

我が身がどうなろうと構いません…


バシャ

私の…

命を代わりに…

捧げます…

何卒なにとぞ

登美子とみこを…

救ってください…

バシャ


お願いです…

神様…


かみさ…ま…」




幼鬼「お母さぁ~ん…

お母さぁ~ん…

どこにいるのぉ~

苦しいよぉ…

お母さん…


側に来てよ…

苦しいよ…

寂しいよ…

お母さん…」


N〖遠くを見ている鬼女に…
再び占竜は語りかけた…〗


占「鬼女よ…

登美子とみこよ…

母親はお前を救うため…

毎晩…

極寒ごっかんの中…

水をかぶり…
 
登美子とみこ病気平癒びょうきへいゆを祈願していたんだ…

その祈願きがんかなわず…

母親もやまいになり…

お前を残して先にったんだ…

お前を閉じ込めたくて
閉じ込めたのではない!!!!!!!

疫病えきびょうを食い止める為…

村の人々を守る為…

やむを得ず…


登美子とみこよ…

苦しかったろう…

寂しかったろう…


だがな…



だがな…



母親は…

登美子とみこ

お前を愛していた…

やまいを恐れた人をうらむのはもうやめて…

母親の元に帰るがいい…

お前を嫌った人もいるが…

愛してくれた人もいる…」


N〖鬼女のひとみから一滴いってきの涙がこぼれおちた…〗


鬼「オカア…サ…ン…

アイタ…イ… ヨ…

オカ…アサ…ン……」


N〖占竜は悲しそうな表情を見せた鬼女を見ると天をあおいだ…
なぜか天井がけて見え…
空には星々が輝いている…〗

占「地蔵菩薩じぞうぼさつ御力おちからにより…
哀れなる魂を浄土じょうどへと導きたまえ…
オン カカカ ビサンマヤ エイ ソワカ…」

N〖鬼女に喰われていた魂が、ほたるのような光を放ちながら
天にあがっていく…〗

占「オン カカカ ビサンマヤ エイ ソワカ…」

N〖占竜は真言しんごんを唱え続けている…〗

登と光一は
鬼女から魂が成仏じょうぶつしていくたびに
美しい女性に変り…
幼くなっていくのを…
涙を流しながらながめていた…〗


占「オン カカカ ビサンマヤ エイ ソワカ…

地蔵菩薩よ…

ねがわくば…

登美子とみこの母親の魂をこの場に連れてきたまえ…

オン カカカ ビサンマヤ エイ ソワカ…」


N〖まばゆい光がそそぎ…
地蔵菩薩じぞうぼさつ
その手に錫杖しゃくじょうを持って降臨こうりんしてきた…〗

占「オン カカカ ビサンマヤ エイ ソワカ…」


幼鬼「お母さぁ~ん!!!!!」

N〖幼く変わった鬼女の母親をしたい叫ぶ声を聴いて
地蔵菩薩はニッコリと笑い錫杖しゃくじょうを鳴らす…


地蔵菩薩は占竜の願いを聞き届け
登美子とみこの母親を連れてきてくれた…〗

母「登美子とみこぉ~!」


N〖鬼女は占竜の真言により、登美子の姿を取り戻していた…
登美子は地蔵菩薩が連れてきてくれた母親に抱きつくと…
幸せそうな笑顔を占竜達に見せてくれた…〗

母「さあ、お家に帰ろ…
今日は登美子とみこの大好きな里芋さといものお味噌汁を作るからね…」

N〖登美子は綺麗な笑顔で泣きながら
母親と地蔵菩薩と共に天界へと上がってった…



その時…

天からかすかに…




登美子とみこの声が聴こえたような気がした…〗






登美子「ありがとう…」





っと

【閉幕】





~あとがき~

説明してなかった物がありますので、ここで説明したいと思います♪


桃剣ももけん

桃の木から削り作り出した木でできた剣♪

桃は昔から禍をさける物として、使われてきました…

桃の木は鬼門封じにも使われたりします♪

目に見えない悪しき者に絶大なる威力を発揮します♪


金銅五鈷鈴こんどうごこりん

聖なる音を出す鈴♪


五神獣ごしんじゅう

四神獣は有名で、安倍晴明も使役していた…

東の青龍、南の朱雀、西の白虎、北の玄武が有名♪

それにリーダーで中央の黄龍こうりゅう



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