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状況把握をしてみました 1
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ガヤガヤ…
ドア越しに賑やかな声が聞こえる。
あれから場所を変え、一階受付の奥の部屋へ連れてこられた。
ここに来たときにガロスさんと話をしていた『おねえさん』、ガロスさんレイシスさん、俺とソファに向かい合って座る。
どうもここはギルドという施設らしい。昼はいわばバイトの斡旋所、夜になると簡単な酒場になるようだ。
窓の外はいつの間にかとっぷり暗くなっており星が瞬いている。
ドアの向こうから聴こえるガヤガヤした気配に、バイト先の居酒屋を思い出した。
「解呪についてはちゃんと終わったということで手続きを進めるわ。ただ、あなたの身元についてだけど…」
そういうと筋肉マッチョな『おねえさん』は申し訳なさそうにため息をついた。
ちなみに先ほどガロスさん達に聞いたところによると、彼女はけして女装家なわけじゃなく、文字通りお姉さんということらしい。
この世界に来て、バケモノや魔法、人種的な違いや文明の違いなど、いろいろ驚くことは多かったけど、コレはさらに衝撃だった。
そう、女性なのだ!俺より背が高く逞しく声が野太いんだけど!
勘違いに気づいた時、頭が真っ白になった。
直後に顔色は真ッ青に。だってそれなら俺は女性に対して女の格好が好きな男の人なんだなって態度でいたわけで…ハッキリ言って失礼過ぎる!
気づいてすぐ全力で謝り、俺の事情を含めて説明したら笑って許してくれた。…いい人だ。
思い返してみれば、正気を失っていたとはいえ街で女の人を見かけないなとはぼんやり思っていたのだ。
でも実際はそんなことはなくて、街の中もこのギルドの中も半分は女の人がいたらしい。
ただ女の人は俺がイメージするような小柄でふっくらして、おっぱいがあって、といった感じではなく、こう…皆さん逞しかった。俺よりも。
そう、ガロスさん達にあってからずーっと俺を女扱いしていて、謎だったんだが、どうもこの世界は男性ホルモンが異様に高い世界みたいなのだ。
つまり目の前のお姉さんも同様なわけで…。
顔立ちは整っているなぁとは思うんだけど、どう見ても女装した凛々しいイケメンにしか見えない。
申し訳ないけど、正直言って俺には男女の区別がつかなかった。
明らかに違う世界観に、助けてくれた二人に正直に全部話して今に至る。
トンデモ話ではあるが俺の体が明らかにこの世界では浮いていたことが動かない証拠となったのか、3人ともこの話を信じてくれた。
「あの、そういう別の世界から来たって人は外にいたりしないんでしょうか?」
「うーん…、聞かないわねえ。
ギルドにはいろんな案件も入るし、冒険者はあちこちに移動するから情報には自信があるのだけど…ごめんなさい。力になれなくて」
「あっ、いえ。気にしないでください。大丈夫ですから」
がっかりしたのは本音だが、俺のせいで申し訳ない顔をさせていると思うといたたまれなくなる。
俺が無理に笑顔を作ると、お姉さんも俺に向けて慰めるような苦笑を向けてくれた。
「キリハナ・サクヤ君、18歳、ね…」
先ほど告げた俺のプロフィールを書き留めた書類をじっと見ていたかと思うと、お姉さんは勢いよく顔を上げた。
「っていうか、サクヤ君。改めて確認したいのだけど…あなた、本当に男の子なの?」
「は、はい」
「くどいっつーの!何回聞けば気がすむんだよ!」
「ごめんごめん。だってぇ、こんなきれいな子、女の子でも驚きなのに男だなんて信じられなくって!
ほら、ほっぺもすべすべよ~。
私なんてカミソリ負けで肌荒れがひどいっていうのに…ぶつぶつ」
そう言って、お姉さんは自分の顎を撫でる。ひげ、生えるんだ…。
それにしてもファンタジーな世界観だから自分みたいな人間もちらほらいるのかと思ったのに、そうした事件は起こらないらしい。
これじゃ元の世界に戻る手がかりすら掴めない。どうしよう…。
…
ん?気づくと会話が止まっている。
周りを見ると3人とも真剣な面持ちで考え込んでいた。
まずい、これはいけない。
「あの!じゃあ、身元が分からない人がとりあえず泊まれる場所とかあったりしませんか?働いて必ず宿代は返すので」
助けてもらった恩もあるのに、これ以上迷惑を掛ける訳にはいかない。
「あるわよ。ギルドはそういった人を保護する役目もあるの。ここに簡易宿場もあるわ。
でもまさか、あなた一人で暮らすつもり!?危ないわよ!」
「そうだぞ、サクヤ!オオカミの群れにウサギを放り込むようなもんだ!
俺らが守ってやるから、一緒について来いよ」
「いや、そんな。助けてもらった上にこれ以上迷惑かけられません」
「迷惑なもんか!お前の顔見れたらそれだけで毎日幸せになれるぜ。ついでに夜の相手もしてくれりゃ…」
「はい、アウトー!サクヤ君、家に来たらいいわよ。ちょうど家の手伝いに来てた人がいなくなっちゃって、掃除でもしてくれたら助かるわ」
「やめとけやめとけ!優しいねーちゃん気取ってるけど、コイツこれでここを回してる所長だぜ?
人を馬車馬みてえに使うって有名なんだから。そんなとこで暮らしてみろ、サクヤなんてすぐにぶっ倒れちまうぜ」
そうしてわあわあ盛り上がっている二人とは対照的に、レイシスさんはブツブツ考え込んでいる。
「っていうか、レイシスも何とかいえよ!」
「…」
レイシスさんはメガネをくいっと持ち上げ俺に顔を向けた。
「別世界から人がやってくる…。実際にそうした人がいたという話は聞かない。
…だが、昔話でなら聞き覚えがある。
たしか北方の山間部での言い伝えだったと思う。
魔女が悪さをしその付近の村々は作物が実らず、家畜も減り困り果てていた。そんな時に神の国から美しい女神が降り立った。彼女は色々な知恵をその地の人々に施しその地に平和をもたらしたとか」
「あー?そういう作り話なら他にも聞くぜ?
前に砂漠の町で吟遊詩人が歌ってた歌もそんなんだったし。確か、魔女のいたずらでお姫様が攫われてきた。お姫様は誰も知らない国から攫われてきて毎日泣いて過ごしてた。でもその国の王様がその姫様に惚れて結ばれて幸せに暮らしましたってやつ」
「そういうおとぎ話ならうちの故郷にもあるわよ。お姫様じゃなくて普通の女の子だったけど…魔女ってところは同じかしら」
「魔女…」
レイシスさんがこちらに目を向ける。
「サクヤ。これはあくまで推測だ。
だが、こうした話がもしただの創作ではなく、実際にあった出来事を元にしていたとしたら?
もしかしたら君と同じように不思議な出来事を体験した者が、かつてこの地にいたのかもしれない。
そしてその原因に絡んでいるのは『魔女』の可能性がある。
この地で一から暮らしていくのもいいが、まずは俺たちと共に行動しその『魔女』について調べてからでも遅くはないのではないか?」
「え……でも」
どうして、この世界に来たのか。もちろんすごく気になるし、帰れるものなら帰りたい。
でも、この人たちは偶然通りかかっただけの他人だ。そんなに迷惑を掛ける訳には…。
「いいじゃん。魔女なら完全に伝説ってわけでもないし。
確か迷いの渓谷の辺にいるって噂を聞いたことあるぜ?」
「迷惑などといったことは考えなくていい。保護者としては市民を無事に送り届けるのも義務の内だ。
君の場合、帰る場所を一緒に探してやることも保護者の役目の内になる。
それにどのみち拠点を別の町に変える予定だったしな。迷いの渓谷なら目的の街の方向になるし私達にとって何の問題もない」
「んー、そうねぇ。かわいい子を間近に見れなくなっちゃうのは残念だけど、何も分からず新しい生活を始めるよりはいいかもしれないわね。
こいつらに迷惑かけるからって遠慮してるなら、それは考える必要ないわよ。
腐ってもB級冒険者だからそれなりに稼いでるし、あなた一人増えたって大した負担にはならないから。
もちろん旅をやめたくなって落ち着いた暮らしをしたくなったら、いつでも帰ってきたらいいわ!家はいつでも大歓迎よ」
散々な目にあったけど、どうもこの世界のこと嫌いになり切れない。
だって、会う人がみんな優しいんだよな…。
日本にいた時だって優しい人はたくさんいたんだと思う。
でも両親をいきなり事故で亡くした俺は、いつも遠巻きに同情を受けることがほとんどだった。
かわいそうだからっていつも距離を置かれて、それが心をいつも重くしていた。
そんな中おじさん夫婦は俺に直接ぶつかってくれてどれだけ嬉しかったか。
その感動が忘れられなくて、俺は人の役に立てそうな介護士を目指すようになったんだよな。
この世界に来てあった人達には壁を少しも感じない。
なんの躊躇もなく手を差し出してくれて、…俺は驚いてばかりだ。
そんな優しい人たちの迷惑にはなりたくない。
だけど…
「ガロスさん、レイシスさん。
本当に申し訳ないんですが、旅に付いて行ってもいいでしょうか?
もちろん俺にできるお手伝いがあればどんな仕事でもやりますので!」
そう言ってがばっとお辞儀をする。
二人の申し出には遠慮より、本当の気持ちをぶつけるべきだと思ったのだ。
その後そろりと視線を上げると、その先に見えた二人の顔は嬉しそうな笑顔だった。
「もちろんだ。保護者としてしっかりと面倒を見るから不安になる必要はない」
「そうこなくっちゃ!それにどんな仕事でもってそりゃやっぱり…」
ドカッ ドカッ
「サクヤ君、あなたみたいな子が軽々しく何でもしますなんて言っちゃダメ!こういう馬鹿がつけあがるんだから!」
「君の貞操は守るから安心しろ」
「ぐ、ぐは…みぞおち…」
「はは…」
ドア越しに賑やかな声が聞こえる。
あれから場所を変え、一階受付の奥の部屋へ連れてこられた。
ここに来たときにガロスさんと話をしていた『おねえさん』、ガロスさんレイシスさん、俺とソファに向かい合って座る。
どうもここはギルドという施設らしい。昼はいわばバイトの斡旋所、夜になると簡単な酒場になるようだ。
窓の外はいつの間にかとっぷり暗くなっており星が瞬いている。
ドアの向こうから聴こえるガヤガヤした気配に、バイト先の居酒屋を思い出した。
「解呪についてはちゃんと終わったということで手続きを進めるわ。ただ、あなたの身元についてだけど…」
そういうと筋肉マッチョな『おねえさん』は申し訳なさそうにため息をついた。
ちなみに先ほどガロスさん達に聞いたところによると、彼女はけして女装家なわけじゃなく、文字通りお姉さんということらしい。
この世界に来て、バケモノや魔法、人種的な違いや文明の違いなど、いろいろ驚くことは多かったけど、コレはさらに衝撃だった。
そう、女性なのだ!俺より背が高く逞しく声が野太いんだけど!
勘違いに気づいた時、頭が真っ白になった。
直後に顔色は真ッ青に。だってそれなら俺は女性に対して女の格好が好きな男の人なんだなって態度でいたわけで…ハッキリ言って失礼過ぎる!
気づいてすぐ全力で謝り、俺の事情を含めて説明したら笑って許してくれた。…いい人だ。
思い返してみれば、正気を失っていたとはいえ街で女の人を見かけないなとはぼんやり思っていたのだ。
でも実際はそんなことはなくて、街の中もこのギルドの中も半分は女の人がいたらしい。
ただ女の人は俺がイメージするような小柄でふっくらして、おっぱいがあって、といった感じではなく、こう…皆さん逞しかった。俺よりも。
そう、ガロスさん達にあってからずーっと俺を女扱いしていて、謎だったんだが、どうもこの世界は男性ホルモンが異様に高い世界みたいなのだ。
つまり目の前のお姉さんも同様なわけで…。
顔立ちは整っているなぁとは思うんだけど、どう見ても女装した凛々しいイケメンにしか見えない。
申し訳ないけど、正直言って俺には男女の区別がつかなかった。
明らかに違う世界観に、助けてくれた二人に正直に全部話して今に至る。
トンデモ話ではあるが俺の体が明らかにこの世界では浮いていたことが動かない証拠となったのか、3人ともこの話を信じてくれた。
「あの、そういう別の世界から来たって人は外にいたりしないんでしょうか?」
「うーん…、聞かないわねえ。
ギルドにはいろんな案件も入るし、冒険者はあちこちに移動するから情報には自信があるのだけど…ごめんなさい。力になれなくて」
「あっ、いえ。気にしないでください。大丈夫ですから」
がっかりしたのは本音だが、俺のせいで申し訳ない顔をさせていると思うといたたまれなくなる。
俺が無理に笑顔を作ると、お姉さんも俺に向けて慰めるような苦笑を向けてくれた。
「キリハナ・サクヤ君、18歳、ね…」
先ほど告げた俺のプロフィールを書き留めた書類をじっと見ていたかと思うと、お姉さんは勢いよく顔を上げた。
「っていうか、サクヤ君。改めて確認したいのだけど…あなた、本当に男の子なの?」
「は、はい」
「くどいっつーの!何回聞けば気がすむんだよ!」
「ごめんごめん。だってぇ、こんなきれいな子、女の子でも驚きなのに男だなんて信じられなくって!
ほら、ほっぺもすべすべよ~。
私なんてカミソリ負けで肌荒れがひどいっていうのに…ぶつぶつ」
そう言って、お姉さんは自分の顎を撫でる。ひげ、生えるんだ…。
それにしてもファンタジーな世界観だから自分みたいな人間もちらほらいるのかと思ったのに、そうした事件は起こらないらしい。
これじゃ元の世界に戻る手がかりすら掴めない。どうしよう…。
…
ん?気づくと会話が止まっている。
周りを見ると3人とも真剣な面持ちで考え込んでいた。
まずい、これはいけない。
「あの!じゃあ、身元が分からない人がとりあえず泊まれる場所とかあったりしませんか?働いて必ず宿代は返すので」
助けてもらった恩もあるのに、これ以上迷惑を掛ける訳にはいかない。
「あるわよ。ギルドはそういった人を保護する役目もあるの。ここに簡易宿場もあるわ。
でもまさか、あなた一人で暮らすつもり!?危ないわよ!」
「そうだぞ、サクヤ!オオカミの群れにウサギを放り込むようなもんだ!
俺らが守ってやるから、一緒について来いよ」
「いや、そんな。助けてもらった上にこれ以上迷惑かけられません」
「迷惑なもんか!お前の顔見れたらそれだけで毎日幸せになれるぜ。ついでに夜の相手もしてくれりゃ…」
「はい、アウトー!サクヤ君、家に来たらいいわよ。ちょうど家の手伝いに来てた人がいなくなっちゃって、掃除でもしてくれたら助かるわ」
「やめとけやめとけ!優しいねーちゃん気取ってるけど、コイツこれでここを回してる所長だぜ?
人を馬車馬みてえに使うって有名なんだから。そんなとこで暮らしてみろ、サクヤなんてすぐにぶっ倒れちまうぜ」
そうしてわあわあ盛り上がっている二人とは対照的に、レイシスさんはブツブツ考え込んでいる。
「っていうか、レイシスも何とかいえよ!」
「…」
レイシスさんはメガネをくいっと持ち上げ俺に顔を向けた。
「別世界から人がやってくる…。実際にそうした人がいたという話は聞かない。
…だが、昔話でなら聞き覚えがある。
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「あー?そういう作り話なら他にも聞くぜ?
前に砂漠の町で吟遊詩人が歌ってた歌もそんなんだったし。確か、魔女のいたずらでお姫様が攫われてきた。お姫様は誰も知らない国から攫われてきて毎日泣いて過ごしてた。でもその国の王様がその姫様に惚れて結ばれて幸せに暮らしましたってやつ」
「そういうおとぎ話ならうちの故郷にもあるわよ。お姫様じゃなくて普通の女の子だったけど…魔女ってところは同じかしら」
「魔女…」
レイシスさんがこちらに目を向ける。
「サクヤ。これはあくまで推測だ。
だが、こうした話がもしただの創作ではなく、実際にあった出来事を元にしていたとしたら?
もしかしたら君と同じように不思議な出来事を体験した者が、かつてこの地にいたのかもしれない。
そしてその原因に絡んでいるのは『魔女』の可能性がある。
この地で一から暮らしていくのもいいが、まずは俺たちと共に行動しその『魔女』について調べてからでも遅くはないのではないか?」
「え……でも」
どうして、この世界に来たのか。もちろんすごく気になるし、帰れるものなら帰りたい。
でも、この人たちは偶然通りかかっただけの他人だ。そんなに迷惑を掛ける訳には…。
「いいじゃん。魔女なら完全に伝説ってわけでもないし。
確か迷いの渓谷の辺にいるって噂を聞いたことあるぜ?」
「迷惑などといったことは考えなくていい。保護者としては市民を無事に送り届けるのも義務の内だ。
君の場合、帰る場所を一緒に探してやることも保護者の役目の内になる。
それにどのみち拠点を別の町に変える予定だったしな。迷いの渓谷なら目的の街の方向になるし私達にとって何の問題もない」
「んー、そうねぇ。かわいい子を間近に見れなくなっちゃうのは残念だけど、何も分からず新しい生活を始めるよりはいいかもしれないわね。
こいつらに迷惑かけるからって遠慮してるなら、それは考える必要ないわよ。
腐ってもB級冒険者だからそれなりに稼いでるし、あなた一人増えたって大した負担にはならないから。
もちろん旅をやめたくなって落ち着いた暮らしをしたくなったら、いつでも帰ってきたらいいわ!家はいつでも大歓迎よ」
散々な目にあったけど、どうもこの世界のこと嫌いになり切れない。
だって、会う人がみんな優しいんだよな…。
日本にいた時だって優しい人はたくさんいたんだと思う。
でも両親をいきなり事故で亡くした俺は、いつも遠巻きに同情を受けることがほとんどだった。
かわいそうだからっていつも距離を置かれて、それが心をいつも重くしていた。
そんな中おじさん夫婦は俺に直接ぶつかってくれてどれだけ嬉しかったか。
その感動が忘れられなくて、俺は人の役に立てそうな介護士を目指すようになったんだよな。
この世界に来てあった人達には壁を少しも感じない。
なんの躊躇もなく手を差し出してくれて、…俺は驚いてばかりだ。
そんな優しい人たちの迷惑にはなりたくない。
だけど…
「ガロスさん、レイシスさん。
本当に申し訳ないんですが、旅に付いて行ってもいいでしょうか?
もちろん俺にできるお手伝いがあればどんな仕事でもやりますので!」
そう言ってがばっとお辞儀をする。
二人の申し出には遠慮より、本当の気持ちをぶつけるべきだと思ったのだ。
その後そろりと視線を上げると、その先に見えた二人の顔は嬉しそうな笑顔だった。
「もちろんだ。保護者としてしっかりと面倒を見るから不安になる必要はない」
「そうこなくっちゃ!それにどんな仕事でもってそりゃやっぱり…」
ドカッ ドカッ
「サクヤ君、あなたみたいな子が軽々しく何でもしますなんて言っちゃダメ!こういう馬鹿がつけあがるんだから!」
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「ぐ、ぐは…みぞおち…」
「はは…」
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