38 / 60
(2)
しおりを挟む◇◆◇
「……ラティ」
「っ!」
聞き慣れた優しい声に、僕はパッと目を開けました。目を開けた先には、キラキラの星のような金髪を連れるケインの姿があります。もちろん、此方は人間のケインです。
「ケイン……っあ!」
嬉しさの余り、僕が勢いよく体を起こそうとした瞬間シャラリと僕の体に巻き付いていた鎖のケインが僕の体を引っ張りました。そのせいで、僕の体は起き上がる事なくベッドの中に再び沈み込みます。どうやら、余りにも体に巻き付け過ぎたせいで起き上がれなくなっているみたいです。
「おい、ラティ。なんだよその格好」
「えっと……」
「よくそんな状態で寝れるよな。鎖なんて体に巻き付いてたら痛くて眠れねぇだろ」
「そんな事ないよ。ケインが体に巻き付いてると、ひんやりして気持ちが良いから凄く良くねむれるの……ありがとう。ケイン」
僕は鎖のケインをスルスルと撫でながらお礼を言いました。ケインのお陰で、今日もスティーブから鞭を振るわれる夢を見ずに済みました。
「……はぁ」
そんな、僕の様子にケインは何故か酷く不機嫌そうに眉間に皺を寄せると、疲れたように前髪をかき上げました。金色の髪の隙間から覗いていた、エメラルドグリーンの瞳がハッキリと僕の姿を映します。とてもキレイです。
「ラティ、ジッとしてろよ」
「ん」
ただ、髪をかきあげた拍子に袖の隙間から見えた、古い傷跡に、僕の心に冷たい風がひゅうと吹きます。あれは、鞭打ちの痕です。物覚えの悪い僕ですが、ケインの体に付いている傷だけは、全部覚えています。いつどのタイミングで付いたモノか。それだけどんなに僕が出来損ないでも忘れません。
そう、僕がベッドの上でケインの傷に目を奪われていると、いつの間にかケインが僕の体に巻き付いていた鎖のケインを解いてくれました。
「ほら、これで動けるだろ」
「首輪、取るの?」
「あぁ、今から風呂に入るぞ」
「はーい」
首輪ごと外された鎖のケインはシャラシャラと音を立て、僕の体から離れていきます。少し寂しい気持ちです。
「ケイン、お風呂に入って来るから。ここで待っててね」
「はぁ」
ケインはとても疲れている様子で、今日はずっと深く息を吐いています。今やスピルの金軍の総大将になったので、やる事が多いのでしょう。一日中寝ている僕からすると、少し申し訳ない気持ちになります。でも、今の僕にはどうする事もできません。なにせ、僕はただのラティなので。
「ケイン、脱いだよ」
「ああ」
僕は脱いだ服を畳み、鎖のケインをの隣へと並べて置きました。そして、肌着も何も纏っていない裸の状態で、ケインに向き直ります。
「よし、ラティ。体をよく見せろ。背中」
「はい」
コレはケインとの決まり事です。お風呂の前は、部屋で服を脱ぎ、明るい部屋でケインに体のチェックをして貰うのです。きっと、何かあった時にいつでも人質にやれるように、傷が増えていないかチェックしたいんだと思います。
「ケイン、どう?」
「あぁ、やっぱり。鎖の痕がこんなに……」
「平気だよ。こんなのすぐに消えるから」
ケインのゴツゴツした指が僕の体を上から下へと優しく触れていきます。少し、くすぐったい。最初は傷だらけの肌をケインに見せるのは恥ずかしかったんですけど、今はもう慣れました。むしろ、こうしてケインに傷を触って貰えるのが嬉しいくらいです。
「ふふ、ケインの付けた痕を、ケインが触ってる。ふふ、ふふふ」
「……はぁ」
「どうしたの。ケイン、疲れてるの?」
「いや。……ラティ、風呂に行くぞ」
「はーい」
ケインはそう言うと僕の体をひょいと向かい合わせに抱え上げました。僕が逃げないようにです。子供の頃は同じ位の体の大きさだったのに、何をどうしたらここまで体の大きさに差が出るのでしょうか。
「っぁ、ん」
そんな事を考えていると、ケインの大きな掌がギュッと僕のお尻を掴みました。思わず声が出ます。ケインが何て事ない顔で「どうした?」なんて尋ねてきます。これはいつもの事です。
「だって、ケインがお尻を触るから」
「嫌なのか?」
「ううん」
このやり取りもいつもの事。その後、ケインは何回も何回も僕のお尻を撫でたり揉んだりしながら、耳元で再び「はぁ」と、何度も息を吐きました。ケインは疲れているようです。
僕は首輪と鎖のなくなった、どこか物足りない首をケインの肩に乗せ、両手でその頭を撫でてあげました。
早くお風呂に入って休まないと。
92
あなたにおすすめの小説
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。
零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。
鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。
ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。
「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、
「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。
互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。
他にも幼馴染み達の一抹の寂寥を切り取った短篇や、
両想いなのに攻めの鈍感さで拗れる二人の恋を含む全四篇。
フッと笑えて、ギュッと胸が詰まる。
丁寧に読みたい、大人のためのファンタジーBL。
他サイトでも公開しております。
表紙ロゴは零壱の著作物です。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる