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未熟者ですが、私にも独り立ちの時は来るようでございます

18:想定外の新年会

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そして、現在。


「24歳!?甘木と同い年!?」
「38歳!?宮野さんと同い年!?」

太宰府と甘木は宮野が予約していた個室に共に居た。
奥に太宰府と宮野が隣同士になり、太宰府の正面に春日、宮野の正面に甘木が座っている。
元々4人席だったそこは、少し手狭感は拭えないが丁度いい人数配分となっていた。

そして、互いにそこに居合わせた全員が顔見知りという事が発覚し、それと同時に。

太宰府と春日はここに来てやっと、互いの本当の年齢を知ったのだった。

「「俺はてっきり、同い年くらいかなぁと」」

そう互いの顔を見合わせて見事ハモった二人に、それを見ていた宮野と甘木は「ブハッ!」と勢いよく吹き出していた。

「同い年くらいかなぁと思って生じる14歳差とか奇跡だぜ!ウケるこいつら!!」
「春ちゃん、38歳は見間違われ方としては最長なんじゃない?」

そう言って大爆笑の中繰り広げられる外野のゴチャゴチャしたリアクションの中、未だに太宰府と春日は互いの顔をまじまじと見合っていた。
そこには互いに様々な想いがあるだろうが、只一つ共通している想いは「14差なんて信じられない」である。
その後に続くのが、「こんなに若いのに」「こんなに老けてるのに」のどちらかという違いだけだ。

「つーか、太宰府!お前こないだ言ってたクリスマスに会った尊敬できる人ってコイツかよ!」
「ああ」
「確かあの時お前、初心を忘れず部下と接してどうのとか言ってたよなぁ!初心を忘れてるわけねぇよ!だってこいつ絶賛初心中だもんなぁ!」
「…………」

そう言ってやはり大爆笑する宮野の言葉など太宰府には耳に入ってきていなかった。
ただ、照れたように「そんな事思って頂けてたんですね」と笑う春日の姿に、とにかく胸を高鳴らせていた。
そして、やっと時折感じていた春日の若さや幼さの正体に合点が言った。
何故なら、春日は本当にまだ幼く、若いのだ。

そんな太宰府の視線の先にある春日、その隣に座る甘木。二人は大学の同級生らしく、互いの呼び名が“春ちゃん”と“五郎丸くん”だ。
大の大人がどんな呼びあい方だよ、と突っ込みたくなるが、大学では皆がそう呼びあっていたらしい。
ちなみに、五郎丸というのは甘木の下の名前だ。彼の軟弱さに似合わず古風で凛とした名前である。所以、聞いた誰もが「名前負けしてるな」と思う。

「まさか、太宰府さんが五郎丸くんの先輩だったなんて。ほんとに若くて格好いいから、同い年くらいだと思ってました」
「ぶははっ!太宰府!お前もう24歳になちゃえよ!行けるって!今度合コンで24歳って言い張れ!」

「できるか馬鹿!バレたら俺、どんだけ赤っ恥だよ!見栄っ張りもいいとこだぞ!」

そう言って宮野に向かって怒鳴る太宰府に、春日は泣き腫らした目のままいつもののんびりとした雰囲気を取り戻していた。
そして、やはりのほほんと言い放つ。

「じゃあ、俺は合コンで38歳独身で、太宰府さんの上司という設定で合コンに参加しようと思います」

その、余りにも突拍子もない割にのんびりとした言葉に、それを聞いた宮野の腹はよじれ、甘木は目を瞬かせた。
しかし、ただ一人太宰府だけはその瞬間、頬を染め目を輝かせていた。

「是非!その設定で二人で飲みに行きましょう!」
「あれ?合コンじゃ」
「いや、是非二人で!」
「そうですね。合コンは余り得意じゃないので、その方がいいかもしれません」
「よっしゃ!俺が部下で春日さんが上司ですよ!」

それだと上司部下の設定は必要なのかと甘木がポカンとしていると、最早腹筋崩壊とばかりに息を切らせていた宮野が同じように息絶え絶えで叫んでいた。

「なっ、何なのお前ら……!それ天然なのか!?面白いので是非その設定で飲みに行っちゃってください!!!是非俺も影から見守りますので!!ぶぶぶっ!」
「っじゃあ!お、俺も一緒に行きたいです!み、み、み、宮野さん!」
「おお!来い来い!俺達は通常の上司部下の設定で!!」

ちゃっかりと自分もと宮野に乗っかる甘木の顔は、その瞬間歓喜の色に染められていた。
それは、「仕事を辞めます」と思い悩んでいる人間の顔では、一切なかった。
そんな、甘木の表情に宮野は笑いながら前に座る甘木の頭を撫でてやった。

「お前、こんな太宰府に迷惑かける事に引け目を感じるなよ。さっきも言ったように人は誰かに面倒をかけた分は誰かの面倒を見てやる事で返して行くんだ。コイツは普段俺に面倒をかけてる分を、お前で清算してるだけだから、気にせず毎日迷惑かけろ!」
「っっっっは、はっいっ!」

宮野の言葉に甘木は首がちぎれんばかりブンブンと縦に振った。
その言葉に太宰府は「はぁ!?」と隣に座る宮野に食ってかかる。なにやら先程、とてつもなく納得いかない事を言われたような気がする。

「いつ俺がお前に迷惑をかけた!宮野!」
「いつも迷惑かけっぱなしのお前がよく言うぜ!まずお前が歩くとモノが壊れる!そして、新人にどう接していいかわかんねぇって半泣きで毎日電話してきてた4月の事を、俺は忘れたとは言わせねぇ!」
「何言ってんだよ!?お前場所と人間考えてからそう言う事は言え!?威厳とかなくなったらどうすんだ!殴るぞ!」
「それこそ威厳を無くすと思いますがねぇ、太宰府さん」

そう言ってうすら笑いを浮かべられた太宰府は拳を握りしめながら眉間をヒクつかせた。
そんな表情豊かな太宰府の姿を初めて目にする甘木は、ただただ驚くばかりだった。

「お前こそ、店出す為の資金繰りとかその他諸々手伝ってやった恩を忘れたとは言わせない!俺がお前に世話かけた分は、残りの時間春日さんの下僕のように過ごす事で返していけ!」
「なんでそうなる!?」

そう、何気なく二人の間で交わされた“出店”“資金繰り”という言葉に、それまでニコニコと笑っていた春日は刮目した。
そういえば、春日は宮野の退職について詳しい事を一切聞いていない。
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