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第16話 キャラメルアイスとチョコアイス
しおりを挟む「姉さん。これあげる」
「ん~?」
夜、リビングでくつろいでいると妹がそう言って二枚の紙を差し出してきた。なにこれ。
「13アイスクリームの半額券…?」
皆大好き『13アイスクリーム』。豊富なフレーバーと可愛く鮮やかな見た目で愛され続けているアイス専門店である。味もさることながら、数多くの種類の中から好きなフレーバーを選ぶのも楽しい。舌で味わえて、目で楽しめて、種類を選ぶことさえも楽しめる、そんな完璧なアイスクリーム屋さんなのだ。
強欲の魔人と名高い妹が、何故こんな希少なものを私に…?
(まさか罠か、罠なのか…!?)
使用済みではないか、裏面に書かれた有効期限が切れていないかなど、考え得るありとあらゆる罠を警戒し、慎重に確認しながら妹に問いかける。
「こ、こんなお宝、一体どこで…?」
「我らが母君より賜りました」
成程、お母様からであったか。納得である。
「なんて慈悲深いお方なんだ。感動で涙が止まらねぇよ…。」
「計四枚貰ったので、二枚ずつです」
「おっけー」
二枚か…。明日、竜胆さんを誘ってみようかな。
━━━━━━━━━━━━━━━
アイスのクーポン券を貰った翌日の放課後のこと。帰り支度を済ませた私は、竜胆さんと一緒に昇降口へと向かっている。
「竜胆さん、この後って暇?」
「えぇ、暇だけれど。どうかしたの?」
「アイス食べに行かない?半額券あるんだよね」
二枚のクーポン券を見せながら誘ってみた。
「二枚あるから良かったら、どう?」
「私は全然良いけれど。でも券、貰っていいの?」
「もちろんだよ。一緒に行こ~!」
「なら、お言葉に甘えさせてもらうわ。ありがとう」
「いえいえ!」
という訳で、私たちは自宅近く(歩いて十分くらい)のショッピングモールに来ていた。
憧れの放課後デートに私のテンションは爆上がりである。
「じゃあ、どうする?先にアイス食べちゃう…?」
「そうね、遅い時間にして夕飯が食べれなくなったら困るし、先に食べてしまうのが良いと思うわ」
めちゃくちゃ説得力がある理由だ。私は論争している訳でもないのに論破された気分である。これが、敗北…?
「確かに!じゃあ先に行こう!」
13アイスクリームのお店は、二階のフードコートにある。
今、私たちはそのお店の前で何を頼むか選んでいた。
「ん~、どうしよっかな~」
「私は決まったわ」
「何にするの?」
「シンプルにチョコアイスを頼むわ」
「お、良いね~!」
このお店のチョコアイス、濃厚で美味しいんだよな~。
「…決めた。私はキャラメルにする!」
きっとこれが最適解のはず…!私の優秀な脳細胞が導き出したのだから間違いない。
「チョコとキャラメルを一つずつお願いします。このクーポン使用で」
クーポン券を出しながら、まとめて注文する。
その後、お会計を済ませてアイスの乗ったカップを受け取った。美味しそう…!
近くの二人席が空いていたので、そこに座って早速いただく。
「美味しぃ~!!!」
全体的に甘さが支配する中で、程よく主張するキャラメルの苦味。これが滑らかなアイスの口溶けとマッチしていて、非常に美味である。また、後味は苦味がやや強く残り、味に深みを出している。キャラメルの良さが全て凝縮されていて、いくらでも食べれそうなくらい絶品である。
キャラメルフレーバーを選んで正解だった!
…でも少しチョコも気になる。
「竜胆さん、一口交換しよ?」
「もちろん良いわよ。どうぞ」
「ありがとう!こっちも取っていいよ!」
そう言って互いのアイスを差し出し合う。
どうもどうも、いただきます。
「うん、チョコも濃くて美味しいね!」
「キャラメルも美味しいわね。初めて食べたわ」
「そうなの?私キャラメル味、結構好きなんだよね。ポップコーンとかクッキーとか!」
「そうなのね。今度試してみるわ」
「うん!美味しいよ!」
そうやってお喋りしながらアイスを食べ進める。
今感じているこの甘さはキャラメルアイスの味なのだろうか。それとも幸せという名のスパイスの味なのだろうか。ふと、そんな疑問が頭をよぎった。
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