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置き土産
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置き土産
例えばあれは10歳くらいの頃だっただろうか。クラスメイトの間で匂いのついた消しゴムがブームになっていた。俺は友達が多い方だったからいくつか見せてもらったことはある。いちごやぶどう、ポピュラーな果物の匂いが多かった気がするがこれに興味を持った俺は自ら変わり種を作って披露した。甘いものをあまり好まなかったのでソースの匂いや味噌の匂いなどを用意したため食欲をそそり過ぎて消しゴムには向いていないと言われたがそのリアルさ、そして自ら手作りといった点は注目を浴びた。ちなみにシュールストレミングの匂いバージョンを用意した時は職員会議の議題となり、三者面談も開かれた。それはさておき、これを機に俺は流行りのものを自ら製作、アレンジして学校に持っていくのがマイブームとなりクラスの中では天才発明家と呼ばれたものだ。趣味程度で作ったものがもてはやされ優越感と共に物足りなさを感じた。俺はこの程度ではない、もっとすごい研究をしている、とはいえ物事には需要というものがあるというのは子どもながらわかっていた。だからむやみやたらに宣伝するのではなく俺に興味を持ってくれた人に明かそうと思っていた。
ある時クラスの中でも仲の良かった子が何かとっておきの発明はないかと尋ねてきた。
「みずきくん、いつも簡単そうな顔で発明品を作ってくるんだもん。きっとこんなの、あさめしまえってやつなんだよね?」
「うん。俺がやり遂げようと思っている計画に比べればね。」
「えっ、なにそれなにそれ!ねぇねぇ、教えてよそのすごい計画ってやつ!」
「いいよ。別に秘密にすることでもないし。」
俺は事細かく計画を話した。水生生物の生態研究も保護も理研特区では前代未聞の研究だ。仮に技術的に可能だとしてもそれをやろうとする者はいないだろう。そう教育されているのだから。だからこそわかるように丁寧に説明したが返ってきた言葉は思いもよらないものだった。
「なにそれ、よくわかんない。いつものみずきくんの発明の方がすごいよ。」
後日彼女が教師に密告したのか、純粋に俺がしようとしていることがわからず大人に聞こうと思ったのかはわからないが俺は担任と教頭の2人に呼び出され人格を否定するかのような言葉を散々浴びせられた。俺のような考えを持つ者のことを自然保護思想派と言うらしいが、彼らは開発・発展を進める我ら人類の敵となり得る、今ならこのような異常者になる前に更生できる、などと言われたが人間以外の生き物のための研究をして何が悪いのかはさっぱりわからなかったし、生態研究科など名ばかりの存在だと思った。
もちろんクラスメイトは俺のことを警戒し始めた。運が良かったことにこの辺りには小学校が少ない反面、人口はやたらに多いためクラス替えをしてしまえばしばらくの間は問題が起こることは無かったが噂を止めることもできなかったし、それ以上に俺が諦めきれなかったのであの日のようなことが繰り返された。だが不思議なことに俺が異端だとわかっていながらも人々は寄ってきた。俺の頭脳、容姿、人当たりの良さは例え俺が異端児であっても利用価値があると思われていたのだろう。
「…よし。お待たせ。」
「急にうちの資料室を覗きたいと言われた時には驚きましたよ。何をするつもりなのかは聞きませんけれど。」
「うんうん。君は無条件に協力してくれるから好きだよ。そんないい子には特別にヒントをあげよう。俺はかなり昔の資料に用があったんだよ。」
これで1人目の後継者は確保できたはずだ。彼女は賢いし馬鹿だからきっと頑張ってくれる。ほんのお礼として彼女の好きな生き物をモデルにしてあげたしね。
「瑞希さん?何かいいことでもありました?」
「うん。そりゃ生態研究科本部の資料室に入ることができれば誰だって上機嫌になるよ。生まれた時からその権利を持っていた君にはわからない喜びだけど。」
例えばあれは10歳くらいの頃だっただろうか。クラスメイトの間で匂いのついた消しゴムがブームになっていた。俺は友達が多い方だったからいくつか見せてもらったことはある。いちごやぶどう、ポピュラーな果物の匂いが多かった気がするがこれに興味を持った俺は自ら変わり種を作って披露した。甘いものをあまり好まなかったのでソースの匂いや味噌の匂いなどを用意したため食欲をそそり過ぎて消しゴムには向いていないと言われたがそのリアルさ、そして自ら手作りといった点は注目を浴びた。ちなみにシュールストレミングの匂いバージョンを用意した時は職員会議の議題となり、三者面談も開かれた。それはさておき、これを機に俺は流行りのものを自ら製作、アレンジして学校に持っていくのがマイブームとなりクラスの中では天才発明家と呼ばれたものだ。趣味程度で作ったものがもてはやされ優越感と共に物足りなさを感じた。俺はこの程度ではない、もっとすごい研究をしている、とはいえ物事には需要というものがあるというのは子どもながらわかっていた。だからむやみやたらに宣伝するのではなく俺に興味を持ってくれた人に明かそうと思っていた。
ある時クラスの中でも仲の良かった子が何かとっておきの発明はないかと尋ねてきた。
「みずきくん、いつも簡単そうな顔で発明品を作ってくるんだもん。きっとこんなの、あさめしまえってやつなんだよね?」
「うん。俺がやり遂げようと思っている計画に比べればね。」
「えっ、なにそれなにそれ!ねぇねぇ、教えてよそのすごい計画ってやつ!」
「いいよ。別に秘密にすることでもないし。」
俺は事細かく計画を話した。水生生物の生態研究も保護も理研特区では前代未聞の研究だ。仮に技術的に可能だとしてもそれをやろうとする者はいないだろう。そう教育されているのだから。だからこそわかるように丁寧に説明したが返ってきた言葉は思いもよらないものだった。
「なにそれ、よくわかんない。いつものみずきくんの発明の方がすごいよ。」
後日彼女が教師に密告したのか、純粋に俺がしようとしていることがわからず大人に聞こうと思ったのかはわからないが俺は担任と教頭の2人に呼び出され人格を否定するかのような言葉を散々浴びせられた。俺のような考えを持つ者のことを自然保護思想派と言うらしいが、彼らは開発・発展を進める我ら人類の敵となり得る、今ならこのような異常者になる前に更生できる、などと言われたが人間以外の生き物のための研究をして何が悪いのかはさっぱりわからなかったし、生態研究科など名ばかりの存在だと思った。
もちろんクラスメイトは俺のことを警戒し始めた。運が良かったことにこの辺りには小学校が少ない反面、人口はやたらに多いためクラス替えをしてしまえばしばらくの間は問題が起こることは無かったが噂を止めることもできなかったし、それ以上に俺が諦めきれなかったのであの日のようなことが繰り返された。だが不思議なことに俺が異端だとわかっていながらも人々は寄ってきた。俺の頭脳、容姿、人当たりの良さは例え俺が異端児であっても利用価値があると思われていたのだろう。
「…よし。お待たせ。」
「急にうちの資料室を覗きたいと言われた時には驚きましたよ。何をするつもりなのかは聞きませんけれど。」
「うんうん。君は無条件に協力してくれるから好きだよ。そんないい子には特別にヒントをあげよう。俺はかなり昔の資料に用があったんだよ。」
これで1人目の後継者は確保できたはずだ。彼女は賢いし馬鹿だからきっと頑張ってくれる。ほんのお礼として彼女の好きな生き物をモデルにしてあげたしね。
「瑞希さん?何かいいことでもありました?」
「うん。そりゃ生態研究科本部の資料室に入ることができれば誰だって上機嫌になるよ。生まれた時からその権利を持っていた君にはわからない喜びだけど。」
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