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第四章
第23話『人間の領域から逸脱した存在』
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さて、次は中型個体。
結果は既にわかっているが、今回は討伐できるかではなく能力を把握し合うことが目的だ。
前回の大型個体と戦闘して盾になってたことから、超跳躍していた俺自身を含め、まだまだ把握できていない能力があると思う。
「2人は剣と盾に変身できるみたいだけど、それ以外はどうなんだ?」
「こうやって自分で剣を出すこともできます」
「そうね、盾もこうやって」
メノウの前に光が出現したと思えば、身に覚えのある白い剣が具現化。
セシルの前に黒い炎みたいなのが出現したと思えば、黒い盾が具現化。
メノウとセシルは「え、そうなの」と目線を合わせて驚き合ったと思えば「じゃあこれは」、とメノウは盾を、セシルは剣を具現化させた。
互いに言いたいことはわかる。
俺だって同じことを思ったし、驚いているから。
「そこまでできるなら、俺って本当に後方で待機しているだけでいいってこと?」
「そんなことはありませんよ主様。わたくしは契約者である主様に使ってもらえないと本気を出せません」
「私も同じ。そもそも人間の姿で力を使うのが初めてでもあるし、『棲み分け』とも言えるかしらね」
「剣は剣として本領発揮する、というわけか――じゃあ、ますます俺の出番は少なければ少ないだけいいことになるって話だな」
聖剣と魔剣を使うのが嫌というわけじゃない。
先日の大型個体と戦闘して、あの威力が力の一部だったと直感で悟ってしまった。
そうじゃなくても、他の聖剣所持者が残した逸話を参考にしたら予想がつく。
神が創造した武器なのだから、人間の想像をはるかに超えているのは当然と言えば当然だ。
「ちなみに主様が剣を使っているときも、わたくしは武器を扱えます」
「私も同じ。なんだったら、私が扱えているようにアレンも魔力を扱えるわよ」
「え、何それ」
「こう、剣がパッと現れる想像をしてみてください」
催促されるがまま、腰に鞘に納められた聖剣と魔剣を想像してみる。
「これ、あまりにも異質すぎないか……?」
だってそうだろう?
神が創造した剣が想像したら出現させられるって軽く考えても、あってはならないことだと思うんだが。
「お試しに、小さな炎を手に出す想像してみて」
「こ、こうか?」
「そう」
「信じられない……」
「でも事実だから、試しにそこの木に小石を指で弾くように飛ばしてみて」
種火ぐらいの小さな黒い炎だが、間違いなく手の上に出現した。
完全に自分が人間ではなくなってしまったのだな、と落胆すると同時に、これはこれで未知との遭遇で楽しい気持ちも芽生えてきてしまう。
言われた通りに指で弾くと――。
「お、おぉ……じゃなくて、あれどうするんだ!」
「大丈夫大丈夫」
軽い気持ちで実行して成功したものの、火が当たった木が想像以上の火力で燃え上がり、動揺を隠せない。
セリナは平静を保ったまま、水らしきもので鎮火させてくれたが。
「魔力って、本当にわからないな」
「基本的に人間が使用できないから、その反応が正常とも言えるけど。でも、フローラが使っていたよう回復の聖法とそこまで変わらないよ」
「そうなのか?」
「逆に聖法の仕組みをそこまで知らないけど。今言えるのは、魔法は漂っている魔力を扱うもので、聖法は内に蓄えて扱うもの、かな」
「それならわたしが教えられそうね。アレンは不得意だから、全てが感覚でやっていたんでしょ?」
「はい、その通りです」
俺よりフローラが聖騎士に成れる素質があると思っていた要因の一つが、聖法だ。
指摘されたように「まあ、こんなもんだろう」程度でしか扱えなかった俺は、何度も練習したけど、いつまでたっても上達はしなかった。
「でも否定できないのは、感覚的にやることね。こう、お腹の中心に意識を集中して内から湧き上がらせるものを蓄えるの」
「なるほど、わからん」
「さっきの魔法を参考に考えるとわかりやすいかも。漂っている魔力を1点に集める要領で、それを体の中でやる感じ」
「踏ん張る感じ?」
「それでも聖力を蓄えることはできるけど、非効率ね。できるだけ自然体で、瞑想をしたり体の力が入っていない状態で行うのが理想」
「たぶん頭では理解できたつもりになっているが、とりあえず聖力って気持ちを維持していないと消えるのか?」
「いいえ、少しずつ薄れていくけど基本的には蓄え続けることが可能よ。でも鍛錬不足だと少量で――そう、少しずつコップが大きくなるにつれて蓄えることができる聖力量が増えて、扱える聖法の威力なんかがわかってくるの」
「おぉ、後半の説明だとわかりやすい」
冗談抜きで、騎士団の中で一番下手だったと自負している。
基本的には他の騎士団員たちも戦闘向けだから、後方支援の人たちに任せきりだったが、かすり傷程度はみんな自分で治していた。
だから不得意な俺は戦場での危険性は誰よりも高かったし、みんなから「やれやれ」「これだからアレンは」と呆れられながら傷を治してもらっていた記憶が、今でも鮮明に蘇ってくる。
「ということは今の俺って、やろうと思えば2つ同時に扱えるってこと?」
「流れ的にはそうなるけど、魔力を扱えるようになったばかりということは忘れないでね」
「騎士団で活動していたときから、聖力の扱いが得意じゃなかったことも忘れないでね」
「あ、主様ならできるようになります!」
「お、おう」
まさかのメノウに同情してもらっているなんて、本当に情けない。
ここで言い返すことができない自分の不甲斐なさ……言い訳の1つも思い浮かばないから悲しいな……。
だが一つだけ言えるのは、もはや人間を逸脱した存在になってしまった、ということ。
「それで言うと、セリナは聖剣なんだから聖法ってお手のものじゃないの?」
セリナからの問いに、メノウは両手を腰に当てて胸を張りながら得意気に答え始める。
「それはもう! 人間は聖法を回復を主に扱っているようだけど、身体的強化や防御にも長けているんだよ」
「じゃあ魔法とは少し違うのね。攻撃と防御が主で、加えるなら物体的強化だもの」
「なるほど、だからメノウと契約したら身体能力が向上したのか。拳で殴って痛くないのも、2人と契約したからってことだよな?」
「その通りです主様! もはや今の状態ですと、大体のことで傷付かないですよ!」
「本当に普通の人間から、かけ離れた存在になってしまったんだな」
じゃあ、こうやって中型個体を探していたが、小型個体と同様で相手にならないということになる。
「なあフローラ」
「ん?」
「条件を鑑みると、相手になりそうなのが大型個体を探す必要があるみたいだ。大丈夫か?」
「……正直に言うと少し怖い。でも、3人と一緒に居て危ない状況で命の危機に直面する状況もまた、想像できないというか逆に安心するというか」
「言いたいことは凄くわかる」
「ふふっ、アレンもそのうちの1人なのだけど」
「今だけは他人事でいさせてくれ」
いや本当に、切実に。
それにしても懐かしいな。
こんな他愛のない会話をして笑い合う――……俺は笑えない状況だが。
今となっては笑う状況に合わせて揺れる、緑色の髪は王族を象徴するものと理解してしまった。
だが、だからといってフローラと過ごした時間が全て嘘だったみたいに消えるわけじゃない。
年月が経って大人びた容姿に未だ違和感は拭えないけど、この胸が温かくなって安心できる懐かしさを感じられるのは、間違いなくフローラだからだ。
いつまでも懐かしがってちゃダメないよな。
会えなかった月日や過去を思い出すより、今フローラは目の前に居るのだから。
「よし、じゃあ大型個体を探しに行くか。メノウ、セリナ、フローラを頼むぞ」
「お任せください!」
「ええ、余裕よ」
「2人とも、よろしくね」
結果は既にわかっているが、今回は討伐できるかではなく能力を把握し合うことが目的だ。
前回の大型個体と戦闘して盾になってたことから、超跳躍していた俺自身を含め、まだまだ把握できていない能力があると思う。
「2人は剣と盾に変身できるみたいだけど、それ以外はどうなんだ?」
「こうやって自分で剣を出すこともできます」
「そうね、盾もこうやって」
メノウの前に光が出現したと思えば、身に覚えのある白い剣が具現化。
セシルの前に黒い炎みたいなのが出現したと思えば、黒い盾が具現化。
メノウとセシルは「え、そうなの」と目線を合わせて驚き合ったと思えば「じゃあこれは」、とメノウは盾を、セシルは剣を具現化させた。
互いに言いたいことはわかる。
俺だって同じことを思ったし、驚いているから。
「そこまでできるなら、俺って本当に後方で待機しているだけでいいってこと?」
「そんなことはありませんよ主様。わたくしは契約者である主様に使ってもらえないと本気を出せません」
「私も同じ。そもそも人間の姿で力を使うのが初めてでもあるし、『棲み分け』とも言えるかしらね」
「剣は剣として本領発揮する、というわけか――じゃあ、ますます俺の出番は少なければ少ないだけいいことになるって話だな」
聖剣と魔剣を使うのが嫌というわけじゃない。
先日の大型個体と戦闘して、あの威力が力の一部だったと直感で悟ってしまった。
そうじゃなくても、他の聖剣所持者が残した逸話を参考にしたら予想がつく。
神が創造した武器なのだから、人間の想像をはるかに超えているのは当然と言えば当然だ。
「ちなみに主様が剣を使っているときも、わたくしは武器を扱えます」
「私も同じ。なんだったら、私が扱えているようにアレンも魔力を扱えるわよ」
「え、何それ」
「こう、剣がパッと現れる想像をしてみてください」
催促されるがまま、腰に鞘に納められた聖剣と魔剣を想像してみる。
「これ、あまりにも異質すぎないか……?」
だってそうだろう?
神が創造した剣が想像したら出現させられるって軽く考えても、あってはならないことだと思うんだが。
「お試しに、小さな炎を手に出す想像してみて」
「こ、こうか?」
「そう」
「信じられない……」
「でも事実だから、試しにそこの木に小石を指で弾くように飛ばしてみて」
種火ぐらいの小さな黒い炎だが、間違いなく手の上に出現した。
完全に自分が人間ではなくなってしまったのだな、と落胆すると同時に、これはこれで未知との遭遇で楽しい気持ちも芽生えてきてしまう。
言われた通りに指で弾くと――。
「お、おぉ……じゃなくて、あれどうするんだ!」
「大丈夫大丈夫」
軽い気持ちで実行して成功したものの、火が当たった木が想像以上の火力で燃え上がり、動揺を隠せない。
セリナは平静を保ったまま、水らしきもので鎮火させてくれたが。
「魔力って、本当にわからないな」
「基本的に人間が使用できないから、その反応が正常とも言えるけど。でも、フローラが使っていたよう回復の聖法とそこまで変わらないよ」
「そうなのか?」
「逆に聖法の仕組みをそこまで知らないけど。今言えるのは、魔法は漂っている魔力を扱うもので、聖法は内に蓄えて扱うもの、かな」
「それならわたしが教えられそうね。アレンは不得意だから、全てが感覚でやっていたんでしょ?」
「はい、その通りです」
俺よりフローラが聖騎士に成れる素質があると思っていた要因の一つが、聖法だ。
指摘されたように「まあ、こんなもんだろう」程度でしか扱えなかった俺は、何度も練習したけど、いつまでたっても上達はしなかった。
「でも否定できないのは、感覚的にやることね。こう、お腹の中心に意識を集中して内から湧き上がらせるものを蓄えるの」
「なるほど、わからん」
「さっきの魔法を参考に考えるとわかりやすいかも。漂っている魔力を1点に集める要領で、それを体の中でやる感じ」
「踏ん張る感じ?」
「それでも聖力を蓄えることはできるけど、非効率ね。できるだけ自然体で、瞑想をしたり体の力が入っていない状態で行うのが理想」
「たぶん頭では理解できたつもりになっているが、とりあえず聖力って気持ちを維持していないと消えるのか?」
「いいえ、少しずつ薄れていくけど基本的には蓄え続けることが可能よ。でも鍛錬不足だと少量で――そう、少しずつコップが大きくなるにつれて蓄えることができる聖力量が増えて、扱える聖法の威力なんかがわかってくるの」
「おぉ、後半の説明だとわかりやすい」
冗談抜きで、騎士団の中で一番下手だったと自負している。
基本的には他の騎士団員たちも戦闘向けだから、後方支援の人たちに任せきりだったが、かすり傷程度はみんな自分で治していた。
だから不得意な俺は戦場での危険性は誰よりも高かったし、みんなから「やれやれ」「これだからアレンは」と呆れられながら傷を治してもらっていた記憶が、今でも鮮明に蘇ってくる。
「ということは今の俺って、やろうと思えば2つ同時に扱えるってこと?」
「流れ的にはそうなるけど、魔力を扱えるようになったばかりということは忘れないでね」
「騎士団で活動していたときから、聖力の扱いが得意じゃなかったことも忘れないでね」
「あ、主様ならできるようになります!」
「お、おう」
まさかのメノウに同情してもらっているなんて、本当に情けない。
ここで言い返すことができない自分の不甲斐なさ……言い訳の1つも思い浮かばないから悲しいな……。
だが一つだけ言えるのは、もはや人間を逸脱した存在になってしまった、ということ。
「それで言うと、セリナは聖剣なんだから聖法ってお手のものじゃないの?」
セリナからの問いに、メノウは両手を腰に当てて胸を張りながら得意気に答え始める。
「それはもう! 人間は聖法を回復を主に扱っているようだけど、身体的強化や防御にも長けているんだよ」
「じゃあ魔法とは少し違うのね。攻撃と防御が主で、加えるなら物体的強化だもの」
「なるほど、だからメノウと契約したら身体能力が向上したのか。拳で殴って痛くないのも、2人と契約したからってことだよな?」
「その通りです主様! もはや今の状態ですと、大体のことで傷付かないですよ!」
「本当に普通の人間から、かけ離れた存在になってしまったんだな」
じゃあ、こうやって中型個体を探していたが、小型個体と同様で相手にならないということになる。
「なあフローラ」
「ん?」
「条件を鑑みると、相手になりそうなのが大型個体を探す必要があるみたいだ。大丈夫か?」
「……正直に言うと少し怖い。でも、3人と一緒に居て危ない状況で命の危機に直面する状況もまた、想像できないというか逆に安心するというか」
「言いたいことは凄くわかる」
「ふふっ、アレンもそのうちの1人なのだけど」
「今だけは他人事でいさせてくれ」
いや本当に、切実に。
それにしても懐かしいな。
こんな他愛のない会話をして笑い合う――……俺は笑えない状況だが。
今となっては笑う状況に合わせて揺れる、緑色の髪は王族を象徴するものと理解してしまった。
だが、だからといってフローラと過ごした時間が全て嘘だったみたいに消えるわけじゃない。
年月が経って大人びた容姿に未だ違和感は拭えないけど、この胸が温かくなって安心できる懐かしさを感じられるのは、間違いなくフローラだからだ。
いつまでも懐かしがってちゃダメないよな。
会えなかった月日や過去を思い出すより、今フローラは目の前に居るのだから。
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