幼馴染な魔剣ちゃんと契約した聖剣ちゃんたちと行く追放ライフ~聖剣と契約できたのに、魔剣と関りが発覚して追放されたが、冒険者人生を謳歌する~

椿紅颯

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第五章

第33話『あまりにも緊張感のない激闘』

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「さて、フローラ。心の準備はできているか?」
「正直に言うと、怖い」

 大型モンスターが攻めてくるのは、ほぼ確定している。
 それが1体なら、連携に自信がある冒険者を数人集めれば討伐は可能。
 しかし事前の悪い方での期待感により、どの冒険者も足が重くなってしまっていた。
 フローラも俺たちと一緒に居るとはいえ、不透明な規模の敵に不安を拭えないのも無理はない。

 それにしても静かだ。
 肌を撫でる風が心地良く、さっきまでの騒ぎがなかったかの錯覚を起こしてしまう。

「アレン、数日前にやったみたいに跳べば全体を把握できるわよ」
「え」
「私だけでも確認できるけど、それほど高くは跳べないし魔法を使うことになるから避けた方がいいと思って」
「それはたしかに避けた方がいいと思うけど……仕方がない、やろう」

 こんなことが、そう何回もあってたまるか、と思うけど慣れておいた方が後々に役立つだろうからやった方がいいだろう。
 人の目を気にするのなら避けた方がいいんだろうけど、まあ上空を見ている人なんて居ないだろうし、そもそも距離があったら認識することはできないはず。

「前回同様に、跳んでなのか飛んでなのか後、急降下に合わせて2人が盾になって衝撃を相殺する――って感じで大丈夫か?」
「そうね」
「お任せください主様!」

 そう言い終えた2人は人の姿を解除し、俺とフローラだけになる。

「本当に凄いわね」
「俺も慣れる日が来るのか疑問だ」
「わたしは少しだけ離れていた方がいいのかしら」
「ああそっか。フローラはちゃんと見ていなかったか」
「何が起きるのかわからないけど、ある程度は予想がつくわ」
「大体合ってると思う。衝撃を消せるとはいえ、地面に穴ぐらいは開くから」
「わかったわ」

 フローラは少しどころか、結構距離をとり、それを確認して――。

「ふんっ!」

 膝を曲げ、跳ぶ。
 もはや飛んでいると言える状況だが、そこまで時間がかからずフローラは粒のように小さくなり、街全体を把握できてしまうほどの高さまで辿り着くも、すぐに落下が始まる。

「なるほど、たしかにこれは緊急事態だな」

 遠方ではあるが、たしかに大型個体の大群が街を目指して一直線に向かってきている。

「見ていた方向が違ったか。しかし、たしかに多いな」

 小型や中型の個体は確認できないが、大型個体だけで20体は居る。
 あれだけの数が街に入り込んだら、討伐し終わるころには街は大損害を被ってしまう。
 犠牲者となる人だって少なくない。
 いくら冒険者が奮闘したとしても、暴走する個体は出てくるだろうし、そうなってしまえば戦う術を持たない住民は最悪の結末を辿ってしまう。

『主様、そろそろです!』
「わかった」

 両腰に携える剣を引き抜き、地面の方向へ向ける。
 遅れて体の向きを変えるが、姿勢を変える頃には白と黒が形成されていた。

「2人共、頼む」
『ええ』

 そして着地。
 2回目だが慣れるはずがなく。
 しかし精度は上がったようで、前回は巨大な穴を生成してしまったが、今回は地面を蹴った場所に追加で土を掘った程度に収まった。

「ありがとう。ここまでできるなんて凄いな」
「ありがとうございます!」
「地形を変え続けては怒られちゃうからね」
「さて、と」

 フローラが驚愕を露にしながら駆け戻ってくるのを確認し、事実を伝える。

「あっちの方角から、間違いなく大型個体の群れが街に向かって突き進んできている」
「わかったわ。では移動しながら続きを話しましょう」

 思っていた以上に冷静で、こちらが驚く。

「正確な数ではないかもしれないが、数は20」
「20……かなりの数ね」
「でもやるしかない。あの数が街の中に入ったら、大災害となるし、最悪は街が崩壊して再建不能になって廃墟と化す可能性もある」
「ええ、そうね。わたしたちで数を減らすか進行を遅らせないと」
「いいや、1体でも通したらダメだ」
「わかっているけど……本当にできるの?」
「少し前の俺だったら、ほんの少しだけ足止めできるかぐらいだった。でも今は違う」

 後衛として防衛についてくれている冒険者が居るのはわかっている。
 そして市街地戦となればモンスターが動きにくく、冒険社側は地形を活かした戦い方ができるから有利だ。
 だが、問題はそこじゃない。
 どれだけの戦力を有していようとも、不安が伝染して戦意の削がれている状況で大型個体が街に侵入したら、混乱と恐怖が一気に拡散していき勝機が遠退いてしまう。
 ましてや勝てる戦いに負け、逃走を図る人だって出てくるはずだ。

 そんな未来は絶対に避けなければならない。

「こんな状況でいい話ではないけど、一応」
「主様、わたくしからも」
「どうした」
「契約について。私は人間の姿でも魔剣の力を扱えるし、魔法も扱える。でも、元々の力から半減しているの」
「隣に同じです。わたくしも聖剣の力を扱え、聖法も常人以上に扱えます。ですが、元の半分以上は力を発揮できません」
「なるほど……」
「それに、この状況はアレンにも影響しているの」
「聖剣と魔剣、聖法と魔法を扱えるが本来の半分までしか力を発揮できない、と」

 たしかに、いざ決戦――の前に言われるには、もっと早くしてほしかった話だ。
 でもなんとなく、そんな気はしていた。
 俺が聖法と魔法を、本気で使える状態で扱っていたら今頃森の1つは燃やし尽くしていたかもしれない。
 それは剣の力もそうだ。
 何かを試そうと考えなしに能力を発揮させようとしていたら、一帯を消滅させていたかもしれないし、最悪はフローラを傷つけていたかもしれない。

「じゃあ、剣だけの状態が俺の本気を出せる条件ということか」
「はい。それで、今回はどちらで戦いますか?」
「どっちがいいんだろうな。自分の力を把握するには、ちょうどいい舞台と言ってしまえる状況が、意図せず整ってしまったわけだ」
「個人的な意見としては、またとない機会だから試してみるのがいいと思う」
「わたくしも同意見です。主様がご活躍するお姿を特等席で拝見したいです!」

 これはたぶん、失礼な考えなのだろう。
 覚悟を決め、決意を改め緊張感を漂わせているフローラに対し、「それらが無駄になってしまってもいいのか」と考えてしまった。
 だから口に出せないんだが、非常に気まずい。

「アレンが考えていることはわかっているわよ」
「……」
「どうせ、わたしのことを気遣って質問しにくいのでしょ? 出番がなくなってもいいかって」
「それは……」
「それでもいいじゃない。わたしもアレンの本気を見てみたい。それに、一緒にパーティで活動していくのなら把握しておいて損はないでしょ」
「逆に気を遣わせてごめん」
「いいのよ。でも、わたしの仕事がなくなったわけじゃない。最後方で待機して、迂回してきたやつを足止めすることぐらいできるわ」

 俺は、昔も今もフローラに気を遣わせてばかりだ。

「じゃあ、このまま先に行く。2人共、索敵とかは頼んだ」
「お任せください!」
「ええ、しっかりと」
「アレン、無理だけはしないで――という言葉が合っているのかわからないわね」
「できるだけやってみるさ」

 2人の姿が消えたのを確認し、俺は地面を抉って駆け出す。

 じゃあそもそも、これ以上の速度でも走ることができるのか。
 と思って試してみたら、もはや風を切って突き進んでいる状況になり――あっという間にモンスター群前へと到着。

「さあいくぞ」

 純白と漆黒の剣を鞘から抜き――正面で交差し、振り払って光と黒い光の刃を前方へ飛ばす。
 わざわざモンスターの到着を待つ必要はない、先制攻撃で数を減ら――。

『主様、今ので10体ほど消滅しました』
「え」
『ちなみに凄い先の木々も薙ぎ倒しまくっているわね』
「え」

 顔を正面に向けると、たしかにギリギリ見えそうな緑が少しだけ消えた気がする。

『もう1撃で終わりそうだけど、どうする?』
『主様、心配なら盾で殴りに行くのもありです!』
「う、うわあ……」

 自分の力が信じられない。
 人間離れしすぎている自分が怖いし、これは王様が俺の処罰に頭を抱えていたのも理解できる。
 しかも下手に刺激すると大惨事になるだろうし、それがさらに魔の力を有しているのなら警戒はするものの、放任しておいた方が国を守ることができるというもの。
 後は俺自身の良心に賭けるのみ――という流れになるのは致し方ないだろう。

 自分事なのに、現実逃避したくて他人事としか捉えられない。

「これ、マズいよな」
『でも相手は足を止めなかったから、いい感じに近づいてきてくれたわよ』
『主様、この状況でしたら一振りで終わります!』
「あの10体を倒すだけの力に納めてくれないか」
『お任せください!』

 メノウを信じ、右に握る純白の剣で宙をスッと斬る。

「ありがとう」

 自分でやっているのに感謝するとか、もはや意味がわからなくなってきている。

『どうやら終わりみたいね』

 ここまでの流れが全て無意味だったと思ってしまうほど、大型個体の群れは意図も簡単に討伐することができてしまった。
 もはやこの際、細かいことを気にしている方が頭痛の原因となると悟り、剣を収めてフローラの元へ戻る。

「――終わっちゃった」
「え、え? 本当に?」
「ああ、本当に」
「う、嘘でしょ……」

 フローラの覚悟を無下にしてしまうようで申し訳ないと思いつつ、これぐらいの程度で収まったのなら良しとしたい。
 ギルド関係者は、別の意味で大混乱を巻き起こしているだろうけど……被害を最小限に抑えて役割を果たしたのだから大目に見てくれるだろう。

 でも本当に、先ほどまで大型個体の群れが攻めてきたのか疑問なほど静けさが漂っている。
 いや、もはやそんなことがあったのかさえわからないほど、か。

「いろいろと報告することもあるし、戻るか」
「ええそうね。ねえ、本当に終わったのよね」
「ああ。20体全て討伐完了だ」
「アレン……本当に人間を辞めてしまったのね」
「おいやめてくれ。自分でもそう思っているけど、俺は人間だ。信じたいし信じてくれ」
「善処するわ」
「とりあえず、行こう」

 言い訳したいことや納得してもらいたいことは多々あれど、今は事態の収拾に努めるために戻らなくちゃいけない。
 ギルド側は俺をどう思い、どう扱ってくれるのか緊張してきた。
 悪くは扱わないだろけど、逆に怖いのは称賛の嵐になったときだ。
 通常なら心地良いものだろうが、今はそれをされると街を去らなくちゃいけなくなるから。

 先が思いやられるとはまさにこのことだな。
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