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第五章
第33話『近頃の事件』
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狩りが終わり、自宅にて体を休めている最中。
そんなタイミングで、受付嬢から渡された指輪が小刻みに震えた。
「うわ」
咄嗟の事で、体をビクッと跳ね上がらせて情けない声を上げる和昌。
つい数時間前に説明を受けたのにもかかわらず、完全に忘れてしまっていたため「なんだなんだ」と右薬指へ視線を向ける。
しかし、そこには指輪はない。
「え、なに、こわ」
手のひらを返しに返し、指先から付け根まで凝視するも視界に入ってくるのはタダの自分の指だけ。
しかし左手で触れてみると、ようやく記憶が蘇ってきた。
「あー」
完全に記憶が蘇り、合図があったら行うことを試す。
「こうだったかな」
左手で透明になっている指輪を左右にクイクイっと回した。
『お疲れ様です。今、お時間大丈夫ですか』
と、そこまで音量は大きくないものの、しっかりといつも通り淡々と話を進める受付嬢の声が指輪から聞こえてくる。
「はい、今は家に1人ですので大丈夫です」
『わかりました』
和昌が返事をすると、紙が擦れる音が聞こえてくる。
『まず、落ち着いてください。今回の内容は、緊急を要するものではありません』
「は、はい。そういえば、そうでしたね」
軽快な会話が繰り広げられる、とばかり思っていた和昌は、受付嬢の言葉で一気に話をした内容が鮮明に蘇ってきた。
『使用感のテスト、という名目でもありますが、今回は耳に入れておきたい情報が入ってきましたので、そちらを』
「どんなことですか」
『最近起きている事件についてです』
「ん……?」
和昌は事件について身に覚えがなかった。
自宅にはテレビは設置してないものの、寝る前やベッドの中でちらほらとネットニュースなどは観ていた。
流し目で読んでいるから、詳細な情報を把握しているわけではないが、探索者関連での事件は見掛けていない。
『そうですね、説明を加えます。この連絡方法で話す内容は、基本的に世間へ出るのはまだまだ先のものばかりです。時間の問題ではありますが、基本的にはメディアも情報を遅らせるようになっています』
「な、なるほど?」
『では本題に入ります』
終始、淡々と話を進められるものだから、心構えをいつすればいいのか迷ってしまう和昌。
『ここ最近、何者かが探索者を襲撃する事件が起きております』
「ダンジョンでですか?」
『いえ、地上です』
「え……?」
あまりにも非現実的な内容に理解が追いつかない。
「でも、基本的には探索者って地上で武器携帯は許可されていませんよね? ――あ」
『そういうことです。いろいろと可能性はありますが、ほぼ確定だと思います』
和昌が……いや、探索者は例外なく『地上で装備を携帯することはできない』というのは規定となっている。
だから、探索者同士が認識し合っていたとしても、襲撃されるとすれば地上にある道具になる。
しかし探索者というのは、普通に生活している人達に比べたら身体能力は高い。そんな人間を襲うとなれば、やはり相手は探索者となる。
だが、探索者が探索者を一方的に攻撃できる手段もある。
「モータル・インデックスに載っている人間……ということですか」
『そうだと、我々も睨んでおります』
和昌もつい本日リストインしたモータル・インデックス。
このリストに載っている人間は、例外なくレア装備を所有している。
そして、全員が地上で装備を許可されている。
「でもそうだったとしたら、事件現場の痕跡や被害者の情報から該当する人物を特定することができたりするんじゃないですか?」
新米探索者である和昌だが、ゲームなどで培った知識から分析する。
『素晴らしい考察力ではありますが、割り出すのはなかなかに厳しい状況になっております』
「え……?」
『まず、葭谷様の装備を思い出してください』
「あぁ……なるほど」
『基本的に、瓜二つの装備はありません。中にはありますが、葭谷様の装備が既出済みという報告はありません。ですが、似ている能力を有している装備は珍しくありません』
「そんなことは初めて聞きましたが?」という疑問をぶつけたい和昌であったが、話を遮ってしまわないよう心の中に収めておく。
『ですので、未だ断定できないのです。そして、確定している悲報もあります』
「え、かなり急ですね。オブラートに包むとかないんですか」
『回りくどい説明は、無駄に時間を費やすだけですので』
「それはそうですけれども」
『ではさっそく。現在、モータル・インデックスに登録されているメンバーでこの区域に居る人間は葭谷様だけです』
「え」
『ですので、もしも今回の事件が緊急を要するような内容であった場合、葭谷様に対応してもらうことが確定しております』
「えぇええええええええええ」
『一応ですが、もう一度だけ説明しておきます。この指輪で連絡を取っている内容は、緊急を要するものです。当然、地上では通常の探索者はあてにすることができません』
それはつまり、誰にも頼ることができないということ。加えて、もしも誰かに頼ってしまえば、その人間は必ず危険な状況に晒される可能性が出てしまう。
そして、現状況で『逃げる』選択をすれば、間違いなく犠牲者が増えるということでもある。
『厳しい条件ではありますが、忘れないでください。葭谷様の装備は、他の装備所有者より圧倒的に強力です。それはもう、ご自身が想像している以上に』
「でも、相手は人間なんですよね……」
『はい。それだけは確実です』
逆に、このオブラートに包まず直球ストレートで言ってくれることに感謝の念を抱き始めている和昌。
『情報は追って連絡しますので、気構えだけはしておいてください』
「……わかりました。あ」
『何かありましたか?』
「確認なんですけど、今回のような件に普通の探索者へ協力を仰ぐことは避けた方がいいですよね?」
『いえ、そこは問題ありません。ですがお薦めはできません。言ってしまえば、装備所有者からすれば、いくら探索者といえど一般人と大差ありませんから。協力者を危機的状況に晒す覚悟があるのなら、私は止めませんし、こちら側からお咎めすることもありません』
「……ですよね」
『1から10まで説明しなければ、監視対象になることもありませんので、そこら辺は安心してください』
「わかりました」
『偶然にもその場所に遭遇してしまった、という場合でも変わりないです』
直球ストレートでも、不安要素がなくなる程度に事細かい説明を加えてくれる受付嬢へ感謝する。
「わかりました。いろいろとありがとうございました」
『いえ、質問したいことがあれば直接起こしになってもらって構いませんので。後、この連絡方法はダンジョン内でも可能ですのでお忘れなきようお願いします』
「ちなみに、この声は外部に聴こえているんですか?」
『いえ、こちらからの声は葭谷様以外には聴こえておりません。ですが、葭谷様の声は周りに筒抜けです』
「な、なるほど」
『それでは以上になりますので、失礼します』
「ありがとうございました」
きつくなったり緩んだりしていた緊張から解放され、ベッドへ大の字で寝転がる。
「はぁ……ちょっとだけ寝よ」
そんなタイミングで、受付嬢から渡された指輪が小刻みに震えた。
「うわ」
咄嗟の事で、体をビクッと跳ね上がらせて情けない声を上げる和昌。
つい数時間前に説明を受けたのにもかかわらず、完全に忘れてしまっていたため「なんだなんだ」と右薬指へ視線を向ける。
しかし、そこには指輪はない。
「え、なに、こわ」
手のひらを返しに返し、指先から付け根まで凝視するも視界に入ってくるのはタダの自分の指だけ。
しかし左手で触れてみると、ようやく記憶が蘇ってきた。
「あー」
完全に記憶が蘇り、合図があったら行うことを試す。
「こうだったかな」
左手で透明になっている指輪を左右にクイクイっと回した。
『お疲れ様です。今、お時間大丈夫ですか』
と、そこまで音量は大きくないものの、しっかりといつも通り淡々と話を進める受付嬢の声が指輪から聞こえてくる。
「はい、今は家に1人ですので大丈夫です」
『わかりました』
和昌が返事をすると、紙が擦れる音が聞こえてくる。
『まず、落ち着いてください。今回の内容は、緊急を要するものではありません』
「は、はい。そういえば、そうでしたね」
軽快な会話が繰り広げられる、とばかり思っていた和昌は、受付嬢の言葉で一気に話をした内容が鮮明に蘇ってきた。
『使用感のテスト、という名目でもありますが、今回は耳に入れておきたい情報が入ってきましたので、そちらを』
「どんなことですか」
『最近起きている事件についてです』
「ん……?」
和昌は事件について身に覚えがなかった。
自宅にはテレビは設置してないものの、寝る前やベッドの中でちらほらとネットニュースなどは観ていた。
流し目で読んでいるから、詳細な情報を把握しているわけではないが、探索者関連での事件は見掛けていない。
『そうですね、説明を加えます。この連絡方法で話す内容は、基本的に世間へ出るのはまだまだ先のものばかりです。時間の問題ではありますが、基本的にはメディアも情報を遅らせるようになっています』
「な、なるほど?」
『では本題に入ります』
終始、淡々と話を進められるものだから、心構えをいつすればいいのか迷ってしまう和昌。
『ここ最近、何者かが探索者を襲撃する事件が起きております』
「ダンジョンでですか?」
『いえ、地上です』
「え……?」
あまりにも非現実的な内容に理解が追いつかない。
「でも、基本的には探索者って地上で武器携帯は許可されていませんよね? ――あ」
『そういうことです。いろいろと可能性はありますが、ほぼ確定だと思います』
和昌が……いや、探索者は例外なく『地上で装備を携帯することはできない』というのは規定となっている。
だから、探索者同士が認識し合っていたとしても、襲撃されるとすれば地上にある道具になる。
しかし探索者というのは、普通に生活している人達に比べたら身体能力は高い。そんな人間を襲うとなれば、やはり相手は探索者となる。
だが、探索者が探索者を一方的に攻撃できる手段もある。
「モータル・インデックスに載っている人間……ということですか」
『そうだと、我々も睨んでおります』
和昌もつい本日リストインしたモータル・インデックス。
このリストに載っている人間は、例外なくレア装備を所有している。
そして、全員が地上で装備を許可されている。
「でもそうだったとしたら、事件現場の痕跡や被害者の情報から該当する人物を特定することができたりするんじゃないですか?」
新米探索者である和昌だが、ゲームなどで培った知識から分析する。
『素晴らしい考察力ではありますが、割り出すのはなかなかに厳しい状況になっております』
「え……?」
『まず、葭谷様の装備を思い出してください』
「あぁ……なるほど」
『基本的に、瓜二つの装備はありません。中にはありますが、葭谷様の装備が既出済みという報告はありません。ですが、似ている能力を有している装備は珍しくありません』
「そんなことは初めて聞きましたが?」という疑問をぶつけたい和昌であったが、話を遮ってしまわないよう心の中に収めておく。
『ですので、未だ断定できないのです。そして、確定している悲報もあります』
「え、かなり急ですね。オブラートに包むとかないんですか」
『回りくどい説明は、無駄に時間を費やすだけですので』
「それはそうですけれども」
『ではさっそく。現在、モータル・インデックスに登録されているメンバーでこの区域に居る人間は葭谷様だけです』
「え」
『ですので、もしも今回の事件が緊急を要するような内容であった場合、葭谷様に対応してもらうことが確定しております』
「えぇええええええええええ」
『一応ですが、もう一度だけ説明しておきます。この指輪で連絡を取っている内容は、緊急を要するものです。当然、地上では通常の探索者はあてにすることができません』
それはつまり、誰にも頼ることができないということ。加えて、もしも誰かに頼ってしまえば、その人間は必ず危険な状況に晒される可能性が出てしまう。
そして、現状況で『逃げる』選択をすれば、間違いなく犠牲者が増えるということでもある。
『厳しい条件ではありますが、忘れないでください。葭谷様の装備は、他の装備所有者より圧倒的に強力です。それはもう、ご自身が想像している以上に』
「でも、相手は人間なんですよね……」
『はい。それだけは確実です』
逆に、このオブラートに包まず直球ストレートで言ってくれることに感謝の念を抱き始めている和昌。
『情報は追って連絡しますので、気構えだけはしておいてください』
「……わかりました。あ」
『何かありましたか?』
「確認なんですけど、今回のような件に普通の探索者へ協力を仰ぐことは避けた方がいいですよね?」
『いえ、そこは問題ありません。ですがお薦めはできません。言ってしまえば、装備所有者からすれば、いくら探索者といえど一般人と大差ありませんから。協力者を危機的状況に晒す覚悟があるのなら、私は止めませんし、こちら側からお咎めすることもありません』
「……ですよね」
『1から10まで説明しなければ、監視対象になることもありませんので、そこら辺は安心してください』
「わかりました」
『偶然にもその場所に遭遇してしまった、という場合でも変わりないです』
直球ストレートでも、不安要素がなくなる程度に事細かい説明を加えてくれる受付嬢へ感謝する。
「わかりました。いろいろとありがとうございました」
『いえ、質問したいことがあれば直接起こしになってもらって構いませんので。後、この連絡方法はダンジョン内でも可能ですのでお忘れなきようお願いします』
「ちなみに、この声は外部に聴こえているんですか?」
『いえ、こちらからの声は葭谷様以外には聴こえておりません。ですが、葭谷様の声は周りに筒抜けです』
「な、なるほど」
『それでは以上になりますので、失礼します』
「ありがとうございました」
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「はぁ……ちょっとだけ寝よ」
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