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三、叔父のこと
しおりを挟む妹を家から叩き出した後、愚兄と罵られている兄ーー降矢明光は古いアルバムを引っ張り出してきていた。
どうせあの妹のことだ。
叔父のことなどすっかり忘れてるだろう。帰ってきてからどんな人だったのか聞きにくる様が思い浮かぶ。
予め写真を用意しておこう、と思ったのだ。
叔父の写真はあまりなかった。
映るのが嫌いな人であったし、そもそも明光の家とは血の繋がりがあったとはいえ、縁がほとんどなかった。
「しっかし、似てねぇよなぁ...」
叔父は、父親の弟にあたる人だったが、明光たちの父親はどっしりとした肩幅のある厳格な人物かであるのに対し、彼は線の細い女性的な風貌をしていた。
その割に切れ長な目と筋の通った鼻の整った容姿はにこりともしない怜悧な表情を形成し、父とは違った恐怖を覚える人だった。
近づき難く、けれど強烈に人の目を惹きつける人だった。
明光が見つけた写真は、妹のお宮参りの時のもので、一家の集合した隅に立っていた。
仏頂面と言うのだろうが、それでも元がいいため美しくもある。
「......笑ってる写真ねぇーかなー」
ないだろうな、と思いながらペラペラとアルバムのページを繰っていると、電話が鳴った。家の固定電話だ。5コール放置していても鳴り続けているので、仕方なく重い腰を上げた。
「ーーはい、降矢...ああ、天宮さん。ええ、はい、ご無沙汰しています。...いいえ? 今はおりませんが...え? 彼が? ......ああ、わかりました。では、丁度いいのが暇してますから、伝えときます。はい。
ーーええ、では、またのご縁で」
ふぅ、と明光は詰めていた息を吐き出した。
しばし、沈黙。
写真を眺めながら、ひとり愚痴る。
「なんで死んじまったかなぁーー」
明光は、叔父が好きだった。それを叔父の生前、誰にも伝えられなかったことが長く生きた中で、唯一の後悔であり、忘れることのできない呪いとなって、遅効性の毒の如く身を蝕んだ。
そして、アルバムを閉じ、妹の帰りを待つことにした。叔父を知らない、羨ましい妹を。
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