ご令嬢は年下幼馴染みに求愛される〜保護者のつもりでいたのに、立場が逆転したみたいです〜

星井ゆの花

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 私の目の前には、見目麗しい天使がいる。しかもすこぶる私に懐いていて、その愛くるしさときたら、世の中の『可愛い』をギュッと詰め込んだ宝石箱のような輝き。

「アリシアお姉ちゃん、見てみて、お花が綺麗だよっ」
「うふふっ。走っちゃダメだよ、リチャード君っ」

 お庭をかける天使は、無邪気に私へ笑顔を振りまいてくれる。掛け値なしの笑顔は、どんな大金を積んでも得られない超級の価値があるに違いない。両親同士が学生時代から親しく、俗に言う家族ぐるみの間柄。そんな美味しい設定の幼馴染みが天使だなんて、あぁ神様ありがとう!

「わわっ! うぅ転びそうになっちゃったけど……アリシアお姉ちゃんが守ってくれるから、怪我しなかったよ」
「ふふっ。私の方が一歳お姉さんだもの。大丈夫、あなたは私が守ってあげる」
「うわぁい。アリシアお姉ちゃん大好きっ」

 可愛い、可愛い、ほんと~に可愛いっ! 薄茶色のサラサラヘアにくりくりの大きな目の天使は、私の幼馴染みのリチャード君、五歳。まだ小学校に上がりたての私にとって、リチャード君は、守るべき大切な存在。

 ピンク色のお花を片手に、ニコッと微笑んで差し出す姿は、その辺の絵画も真っ青の天使ぶりで人類の宝と言えるだろう。

「はい、このお花……アリシアお姉ちゃんにあげるねっ。ボクのお嫁さんになる約束の証に」
「えっお嫁さん……うん! ありがとう、嬉しいよ。リチャード君」

 可愛い、可愛い、絶対可愛いっ! ピンク色のお花を手にしたリチャード君は、この世の美を全て内包した可愛らしさ。そんな可愛いリチャード君が、私のことをお嫁さんにしたいだなんて。あぁ神様、ほんと~にありがとう!

「えへへ、プロポーズ成功! あっ蝶々さんだっ。待ってよぉ」
「わっリチャード君、走ったら危ないよ」

 伯爵家である私の住むお屋敷の庭は、そんなに広くないものの小学生と幼稚園児が遊ぶには十分過ぎる広さ。庭の蝶を追いかけてリチャード君がとてとて走ると、思わずツルッと転んでしまう。急いでリチャード君を抱きかかえて、メイドさんの元へ。

「うぅアリシアお姉ちゃん、ごめんね。僕、アリシアお姉ちゃんを守らなきゃいけないのに。迷惑、かけて」
「いいのよ、リチャード君。あなた私が、守ってあげる」

 幼い頃に交わした約束は、ずっとずっと続けられて。リチャード君がハイスクール進学のためにこの辺境地を離れるまで、私は可愛くも内気なリチャード君を守ることに、全身全霊を捧げた。

 あの頃、私の口癖は、『あなたは私が、守ってあげる』だった。歳下の幼馴染みに向けた精一杯の愛情表現。

 ――まさか、十数年後に立場が逆転される日が来るなんて、夢にも思わずに。
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