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旅行記1 指輪が見せる記憶の旅
04 記憶の断片
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左手の薬指に嵌められた指輪は、驚くほどティアラの白い手に似合っていて、彼女の為に誂えられた一品であることが伝わってきた。そして、魔力を失った者を一時的に回復するとされる魔石のチカラが、ティアラの記憶の断片を蘇らせた。
(何かしら、急に頭の中に映像が駆け巡ってきて。これはもしかすると、消去されたはずの記憶のカケラ?)
* * *
まだ、ティアラが辛うじて聖女の魔力を維持していた頃、彼女はマゼランス王太子の表向きのパートナーだった。マゼランスの心は既に、伝説の聖女クロエの虜になっていたが、要人をもてなすパーティーに同行するのはティアラの役目。
「ティアラ、これから南の王国の幹部と大切な話があってな。流石にトップ聖女とはいえ、混み入った話の場に同席させられぬ。少し席を外してくれないか? 」
「分かりましたわ、マゼランス王太子。いつもの中庭で、夜風にでも当たってきましょう」
「うむ。すまんがそうしてくれ」
表向きは友好的なパーティーだが、時折マゼランス王太子へ内密な話が持ちかけられることもある。席を外すように促されて、ティアラは涼しげな噴水のある中庭へと移動することに。
そこで、ティアラとジルは運命的な出会いを果たしてしまう。
煌びやかな宴の席に似つかわしくない、錆びた鉄のような血の匂い。王宮の中庭では、暗殺者部隊がゲストであるはずのジル・ハルトリア公を亡き者にしようと躍起になっていた。
「ジル・ハルトリア大公、お噂ではこの大陸に連合を作り新たな勢力を作ろうとしているそうですね。残念ながら、その計画は我々アサシンが阻止させて頂きます」
「ふん。見たところ第三勢力のお抱えみたいだが、随分とお喋りなアサシンだぜ。公爵だからって、この魔法銃が飾りだとでも思ったのか?」
「チッ……ハルトリア公は、幼い頃市井暮らしをしていたと聞いていたが。まさか、ギルド崩れだとは……」
ジルとお付きの魔導師は何とか暗殺部隊を追い払ったが、腕に深い傷を負わされてしまう。拳銃さえ塞げば勝てると思われがちなガンナーは、とかく腕を狙われやすい。
「はぁ……参ったな。あの苦無、毒魔法が仕込まれていたのか。このままじゃオレの腕は……」
「一体、どなたですか? やだ、怪我をされているの。早く手当てを、私の回復魔法でよければ」
気を失っている魔導師を休ませながら、ジルは自分で応急処置を施すことに。腕の血は止血しても止まらず、夜の噴水で座り込むジルを見つけたのがティアラである。
数奇な運命の輪が、2人を結びつけようとしていた。
(何かしら、急に頭の中に映像が駆け巡ってきて。これはもしかすると、消去されたはずの記憶のカケラ?)
* * *
まだ、ティアラが辛うじて聖女の魔力を維持していた頃、彼女はマゼランス王太子の表向きのパートナーだった。マゼランスの心は既に、伝説の聖女クロエの虜になっていたが、要人をもてなすパーティーに同行するのはティアラの役目。
「ティアラ、これから南の王国の幹部と大切な話があってな。流石にトップ聖女とはいえ、混み入った話の場に同席させられぬ。少し席を外してくれないか? 」
「分かりましたわ、マゼランス王太子。いつもの中庭で、夜風にでも当たってきましょう」
「うむ。すまんがそうしてくれ」
表向きは友好的なパーティーだが、時折マゼランス王太子へ内密な話が持ちかけられることもある。席を外すように促されて、ティアラは涼しげな噴水のある中庭へと移動することに。
そこで、ティアラとジルは運命的な出会いを果たしてしまう。
煌びやかな宴の席に似つかわしくない、錆びた鉄のような血の匂い。王宮の中庭では、暗殺者部隊がゲストであるはずのジル・ハルトリア公を亡き者にしようと躍起になっていた。
「ジル・ハルトリア大公、お噂ではこの大陸に連合を作り新たな勢力を作ろうとしているそうですね。残念ながら、その計画は我々アサシンが阻止させて頂きます」
「ふん。見たところ第三勢力のお抱えみたいだが、随分とお喋りなアサシンだぜ。公爵だからって、この魔法銃が飾りだとでも思ったのか?」
「チッ……ハルトリア公は、幼い頃市井暮らしをしていたと聞いていたが。まさか、ギルド崩れだとは……」
ジルとお付きの魔導師は何とか暗殺部隊を追い払ったが、腕に深い傷を負わされてしまう。拳銃さえ塞げば勝てると思われがちなガンナーは、とかく腕を狙われやすい。
「はぁ……参ったな。あの苦無、毒魔法が仕込まれていたのか。このままじゃオレの腕は……」
「一体、どなたですか? やだ、怪我をされているの。早く手当てを、私の回復魔法でよければ」
気を失っている魔導師を休ませながら、ジルは自分で応急処置を施すことに。腕の血は止血しても止まらず、夜の噴水で座り込むジルを見つけたのがティアラである。
数奇な運命の輪が、2人を結びつけようとしていた。
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