蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-

星井ゆの花

文字の大きさ
283 / 355
イベントクエスト-spring-

ホワイトデー編2:妹の応援

しおりを挟む

「ねぇバカ兄貴、そこどいてくれない? 無茶苦茶邪魔なんだけど?」
「うぅん……あれっオレっていつの間にか眠っちゃてたんだ。今何時?」
「夜の9時半よ……まったく、久し振りに日本に帰ってきたのに、兄貴の馬鹿面を拝むなんて。とんだ罰ゲームだわ」

 ソファで爆睡するオレを、家族の誰かが足蹴りする。黒髪サラサラストレートロング、大きなつり目がちの瞳、そして勝気な性格。オレの実の妹である女子高生の丸須灯吏(まるすあかり)だ。
 ミニスカートから覗く美脚で足蹴にされる描写は、ラブコメ系ラノベの一幕と言った雰囲気。だが、あいにくオレと妹は血の繋がりのある健全な兄妹である。

 ツカサとの昼食が終わり、モヤモヤした気分で帰宅したオレ。どうやら、ソファでウトウトと眠っていたらしい。ミニスカ足蹴で目覚めて、ふと我に帰る。

「はぁ……お前、実家に帰って来たばかりなのに本当に感じ悪いな。一体、何様?」
「ふんっ! 兄貴が悪いのよ、男にばっかモテモテで彼女の1人も作れなくて……。私が、居づらくなって海外留学したのだって兄貴のBL説が激しくなったからで……」

 痛いところをツツいてきやがる。そうだ、この小生意気な妹がわざわざ海外に留学するようになった理由はオレにある。正確には、オレが友人の男の娘ツカサと交際説が出たせいで妹がからかいの対象になってしまい、止むを得ず海外に行くことになってしまったのだ。
 現在ではだいぶほとぼりが冷めてきたため、日本に帰国したが。貴重な青春時代を台無しにしてしまったのは分かっている。

「あー! 悪かったなっ。男にばっかモテモテでよっ。オレだって、人並みに好きな女の子くらい、いるっつーのっ。ただ、あんまり上手くいってないだけで……」
「えっ……好きな女がいる? 兄貴が、マジで?」

 心底意外そうな、灯吏の表情……見開いた大きな瞳がさらにデカくなる。まさか、本気でオレとツカサの仲を疑っていたのだろうか。
 もし万が一、オレとツカサがそういう関係だったら、BLと噂されてもコソコソ友達のフリなんかしないで堂々と交際宣言しているはずだ。オレもツカサも、そういうハッキリとした性格なのだから。

「あぁマジだよ、大マジだ! 異世界スマホRPGで一緒になった可愛い子で、ゲームの中じゃ婚約まで行ったんだぞ。やり直したいけどキッカケが掴めなくて」
「二次元の架空の存在とかじゃなくて。リアルな女の子なの? 兄貴騙されているんじゃない。実在してる? その人……」

 よっぽど疑っているのか、相手の女の子に対して架空の存在説まで持ち出し始めた。仕方なく、スマホから写真を呼び出してオフ会の時の画像を見せる。

「証拠もあるぞ! これ、このあいだ行ったオフ会の様子。こっちの栗色の髪の女の子が萌子ちゃん。隣が双子の弟のイクト……先にイクトの方と友達になったから、自然と萌子ちゃんとも仲良くなれたんだ」
「嘘! 無茶苦茶可愛いじゃん! 信じられない、呪われているかのごとく男にしかモテない兄貴が、ゲーム上とはいえこんな可愛い女の子とフラグを立ててたなんて」

 すごい言われようだな、オイ。確かに中学から高校までを男子校で過ごした影響で、男からモテモテに見えていたかもしれないが。
 別に、性別不明キャラのツカサと仲良くしていることだけが、原因ではない。
 不思議と恐ろしいくらい、女の子とのフラグが立ちそうになると、アクシデントの数々に見舞われるのだ。

「今日も、ツカサに再アタックするように勧められたんだよ。ほら、もうすぐホワイトデーじゃん?」
「ふぅん……ゲーム内で贈り物したり、何か考えてたの? 早いとこ再アタックするならして欲しいんだけど……」

 煮え切らない様子に、再びイライラし始める灯吏。オレが早く女の子の恋人を作っていれば、妹の人生も違っていただろう。イラつくのも、無理ないか。

「向こうはログイン勢だからスマホRPGの中でなら、時間帯さえ合えばアタック可能なわけで……。けど、以前はイクトとのダブルデートがキッカケで付き合い始めたからなぁ。今回はそういうのもないし……」

 振り返ると、オレと萌子ちゃんの交際のきっかけはイクトのデートに付き合ったことから始まっていた。魔族の姫君アオイさんとイクトのデートを盛り上げるための、ダブルデート要員だったオレ。

 まさか、ここまで本気で萌子ちゃんに惚れてしまうなんて、あの頃は想像もしていなかった。
 だからこそ、悩んでいるのだけれど。それに、行柄(ゆきえ)社長と萌子ちゃんが用事で会っているという噂も気がかりだ。

「ダブルデート……か。いいよ、協力してあげる! 私が弟君のダブルデートの相手になるから、デートを申し込んでみよう! よしっ善は急げっ。レッツ異世界ッ」
「お、おい! 何すんだよ、灯吏……やめろって……う、うわぁぁああっ」

 ノリノリでアプリを起動し、異世界への移動ボタンをタッチする妹。気がつけば、オレと妹は異世界スマホRPG【蒼穹のエターナルブレイクシリーズ】の所属ギルドの自室へとワープしていたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

処理中です...