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第六部 ハーレム勇者認定試験-前期編-
第六部 第11話 熱気道場と白魔法
しおりを挟む真夏と錯覚するかのような暑さが続く、衣替えのシーズン。
午後の熱気に包まれているのは、屋外だけではない。
異世界の人気スポット『湖が見える公園』と隣接する修練道場。
剣の道を志す者のために設立された道場だが、今日はハーレム勇者認定試験のバトルテストの会場として使用されている。現在、戦っているのは勇者イクト・マリアのコンビ対試験官の魔法戦士部隊。
試験官3人とイクト・マリアコンビのステータス比較表が参考資料として観戦者達に配られる。
試験官の各ステータスは、以下の通り。
【試験官リーダー】
HP 1320
MP110
装備武器:試験用魔法剣
装備防具:試験官の胸当て・試験官のズボン
装飾品:試験官バッジ・リーダーの印
呪文:魔法剣用補助呪文
【試験官助手】
HP 1300
MP130
装備武器:試験用魔法剣
装備防具:試験官の胸当て・試験官のズボン
装飾品:試験官バッジ・助手の印
呪文:魔法剣用補助呪文
【試験官見習い】
HP 1200
MP150
装備武器:試験用杖
装備防具:試験官の胸当て・試験官のズボン
装飾品:試験官バッジ・見習いの印
呪文:回復魔法小
対するイクト・マリアコンビのステータス。
【メンバー:1】
勇者イクト 職業:学園勇者(ランク星3)
レベル:50(ランク星3の限界値、ランクアップ後はレベル1に戻りさらなるパワーアップが可能)
HP:1320
MP:100
攻撃武器種:棍・剣・槍
装備武器:ロングソード・改
装備防具:ダーツ魔法学園勇者装備中級・アクティブベルト・なめらかブーツ
装飾品:携帯用バッグ・呪いよけのペンダント
呪文:回復魔法小、攻撃魔法
【メンバー:2】
白魔法使いマリア 職業:ギルド白魔法使い
レベル:49(あと1レベルで最大レベル、上級職に転職が可能)
HP:1250
MP:230
攻撃武器種:杖・鞭
装備武器:魔法力の杖
装備防具:白魔法ローブ・マジカルシューズ
装飾品:琥珀の髪飾り・風水の馬蹄チャーム(幸運度アップ効果)
呪文:回復魔法中、攻撃・補助魔法
【備考】
人数構成ではイクト・マリアコンビが不利だが、攻撃スタイルの多彩さで差をつける事が可能。工夫して試験合格を目指せ!
* * *
「試験官は三人組かぁ。二人組の勇者イクト・マリアコンビの方が人数ではちょっと不利だね」
「マリアさんって白魔法の使い手なんだろ? 補助呪文を駆使すれば大丈夫なんじゃない?」
バトルテスト見学中の道場生徒達が、今回のバトルテスト内容についてあれこれ話している。どうやら、実戦慣れしているイクト達の戦い方に興味津々の様子。
「まるで本当の決闘みたいだ……」と生徒の一人が呟いた。道場に通う生徒達や、イクトのギルドメンバー達が見守る中、剣と剣の激しくぶつかる音が響く。
ザシュッ!
バトル試験官である剣士に凪払われ、左腕を浅く斬られる。いつもの武器種だったら瞬間的にガードできるのに……。これまで、もっぱら棍で戦っていたので、いざという時の対応が若干鈍くなる。この剣自体はとても良い剣なのだけど……。
「おや、成績優秀な勇者だという報告だったが、前回のバトル結果はまぐれかな?」
斬られた方の腕をかばうように、一歩下がり間合いを置く、やや押され気味といった雰囲気だ。
「うっやっぱり慣れない武器だとガードが甘くなるな……」
後方で支援に廻っていたマリアが、
「イクトさん、すぐに回復魔法を……白の精霊よ、我に癒しのチカラを!」
と、白魔法で傷を治癒してもらい再び攻撃態勢へ。
だが、試験官サイドにも白魔法の使い手がいるようで、同じタイミングで治癒してもらったようだ。
さらに、前回のテストよりも試験官のレベルが高い。このまま、相手と同じように攻撃と回復を繰り返していては埒があかない。一気に片づけるしかない。
「マリア、このまま回復に徹していても勝つことは出来ない。お前も攻撃に参加してくれ。一気にたたみかける……いくぞっ!」
ザッ! ガキィイイン!
「くそっ……さすが勇者殿、やるな」
剣を握り直し、リーダー格の魔法戦士めがけて一撃を見舞わせる。
「風を司る精霊よ……! 吹き荒れるチカラを与えたまえ」
ビュッ!
「ぐわぁっ」
激しい風の渦がサポート役の魔法戦士を襲う。白魔法の中では珍しい攻撃系の呪文だ。
「そこまで! 勇者イクト・マリアコンビの勝利となります」
道場の師範である老剣士からテスト終了の合図。
「わぁ!」と、見学者達からの歓声。
「おめでとうございます。イクトさん、マリアさん、第二テスト合格ですよ」
ふわふわっと宙に浮いた状態でリス型精霊のククリからテスト合格を告げられる。今回はちょっと苦戦したが、勝つことが出来てひと安心だ。
「良かった……マリア、ありがとう。魔法たくさん使って疲れただろう? 早く休もう」
「イクトさん……合格できて、安心しました……」
さすがのマリアもマジックパワーぎりぎりまで戦ったせいか、疲れ気味のようだ。消耗しているマリアを労(ねぎら)いながら、休憩スペースへと戻る。
「イクト君、マリアさん、お疲れさま。なんだか、前回の試験官より強かったみたいだね」
道場の生徒達と共にテストの様子を見学していたギルドメンバー達の元へ。ミンティアから、タオルとスポーツドリンクを手渡される。
「サンキュー、ミンティア。まさか向こうまで回復呪文を使ってくるとは思わなかったよ。こちらのデータに合わせたメンバー編成をしてくるのかもな」
タオルで汗を拭い、ごくごくとスポーツドリンクを喉に流し込む。よっぽど消耗していたのか、水分が身体に染み込むようだ。
「次のテストはアタシとイクトか……。今回のバトルを参考に対策練らないとな」
エルフ剣士のアズサがさっきのテストに感化されたのか、愛用の妖精用ソードを握りしめる。
「第三テストのパートナーはアズサか、よろしく」
「よろしくな、イクト」
「アズサ……次はアズサがテスト受けるんですね。頑張って」
マリアからアズサへパートナーがバトンタッチされる。オレとアズサの二人か……攻撃中心のコンビになるな。
「任せとけって! ところでマリア、結構強い攻撃呪文が使えたんだな。普段は後方に廻っているからあんまり使わないけど……」
そういえば、マリアはマジックパワー温存のために普段はあまり攻撃呪文は使わない。ほどほど、武器での戦いがこなせることも影響しているだろう。
「マジックパワーがぎりぎりになるんで、普段は使わないようにしていたんです。ふう……なんだか疲れました。結局、攻撃呪文に頼っちゃいましたね。私、回復系の白魔法使いなのに……そろそろ、転職を考える時期なのかも」
「えっ転職?」
マリアは、白魔法の使い手として、ずっとやっていくと思いこんでいたので転職話に思わず声をあげてしまった。でも、よく考えてみれば、マリアは前世でも一度、転職しているんだよな。
「もしかして、賢者……とか?」
前世の記憶を頼りに何となくそれっぽい職業を考えるが……。
「まだ、分からないです。最近は、いろんな魔法系の職業があるみたいなので少し検討します。イクトさんのテスト期間中に転職できるように……」
すると、オレたちの会話を一通り聞いていたククリが、「なるほど、転職ですか。念には念を、良い心がけですね、マリアさん。もし転職が完了しましたら、マリアさんのデータを更新しますのでお知らせ下さい」と、今後もバトル要素の高いテストがあるかのような台詞を残して、協会へと報告に戻ってしまった。
* * *
次のデート試験についても考えないとな。アズサと二人か。どこへ行こう?
今日は晴れているけど、天気予報によると今後梅雨っぽくなるっていうし、屋外でのデートは難しいだろうか? などと考えていると、「じゃあ、帰ろうイクト君」「えっああ」と、ミンティアに促され、みんなで拠点となるギルドへ帰還。
ギルドに今回のクエスト達成を報告するためカウンターへ。
「クエスト達成受理しました。次のパートナーはエルフ族の方なんですね。妖精族のエルフさんとデートなんて、きっとロマンティックなんでしょうね……第三テストも頑張って下さい。報告楽しみにしています」
今日のカウンター受付嬢は夢見がちなタイプのようで、エルフ族との交流は素敵なものと思いこんでいるようだ。
「あっはい。ガンバリマス」
アズサのおてんばぶりを把握しているため、曖昧な返事で誤魔化すオレ。
報告が終わり、仲間達の元へ戻るとアズサが、「イクト、このエルフ耳でさっきの会話ばっちり聞いてたぜ。受付嬢の期待に応えるためにもバリバリ、ロマンティックなデートにしようなっ。今からプラン練っておくからな!」と、ロマンティックかどうかはさておき、超がつくほどの美人のアズサに明るく笑顔でウィンクされて、楽しいデートにしようと心に決めるのであった。
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