51 / 59
眼球。
しおりを挟む月見には季節が早いだろうと美奈さんが言った。
「今夜はマルドゥク座にもうひとつ赤い月が左側に見えるんだよ」
前髪を夏夜に揺らした影に、 “ それ ” を見てみたいモノだと美奈さんは右手を私に重ねる。
“ 人 ” ってね、宿る時は双子なんだって。片方は現世に、もう片方は隠り世に生まれるらしいよ。
だからきっと " 足りない ” んだ。……って水月は三つ子だったのかもね。
『自分と藍香さんまでもだと五つ子だ』と雪夜の如く澄んだ声に風鈴がチリリと奏でる。
暑気払いと店の客にお裾分けされた獺祭に左眼を運ぶとお猪口に揺れる波紋は
『知っている? カワウソが獲物の魚を並べる様も獺祭って言うし、書物で調べモノをするのも獺祭って言うんだ』
と波を繋いでいた。
……まったく、やっぱりめんどくさい人だ。
ーー
雪乃さんは最新の義手は一手先を学習できるのだからと、古い知人の医師を口説いていたようだ。
「だって利き腕が肩から欠損していたらさ、たくさん年金もらえるじゃない」
屁理屈にもほどがあるとそうめんに箸を伸ばした時の僅かな違和感は、なるほど “ 天才医師 ” だったのだろう。
……
いつからだ? 彼女は結末を知っていた? ……あの時は? 私は一体いつ食べたのだろう、この赤い世界を。
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる