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三章 自分を知ること
4.騎獣の訓練とライリー
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僕らしかいない図書室。とても静かだ。
図書室と言っても少し小さいだけの城の図書館のようだった。この国の歴史、魔法、野菜、家畜、他国の歴史や地理。あらゆる本があった。当然この公爵家の歴史も。
「タカ……ぐぬぬ。タカ!ぼくの脳みそ働けぇ!羽はこんなで足は鱗っぽくて……くちばしは……」
黙って睨めよ。
カミーユは図鑑を広げ、ブツブツと頭に叩き込んでいる。僕は何にしようかとペラペラとページをめくる。
「この……ぐぬう……絵心も楽器も才能のないぼくの頭、は~た~ら~けぇ~」
「うるせえぞカミーユ」
ハッとしてこちらを向いた。
「だって。頭に入ったかどうか分かんないんだもん。明日もニワトリもどきだったらと思うと気が滅入るんだ」
「気持ちは分かるけど、黙ってやって」
「うん。ごめん」
僕らは昼食後に図書室で図鑑とにらめっこ。僕は決めかねてるけど、カミーユはタカに初めからだからね。
何にしようかなぁ。この屋敷の人にどんなのにしてるか聞いたら獅子が多かった。後は馬、タカ、ワシ、クマ、鹿とかトナカイ。少ないけど、うさぎ、猫、犬とか身近なペットを乗り物にって感じ。
「決まらないなあ……」
隣は変な唸り声上げて、呪いの呪文のようだよ。取っ掛かりが苦手って言ってたから、初めが肝心だって真剣。
「僕はハリーのままでいいかな。ノルンの猫だったからガッシリしてたし」
猫のベージをめくり、体の作りを頭に叩き込んで行った。そして翌日。
「ではまずキャル様から出して下さい」
「うん」
騎獣用の魔石を首から取って投げた。ふよふよと形を取って、よし!
「おお。ノルンの猫ですね。勇ましい顔つきでいいです」
そうだろうとも。美猫で品もあったんだ。学友の家で生まれたからいる?って言われて三匹の中から僕が選んだんだから。
「ハリーは僕の家にいた猫なんだ。もう死んじゃったけど、よく懐いててね。イメージし易かったんだよ」
うんとラミロは頷いて、そう言う発想もこの国では多いですねって。
「次はカミーユ様。お願いします」
「ひゃい!」
緊張で声が裏返って……大丈夫かなあ。カミーユは首から魔石を取り投げた。ふよふよ……
「あ~昨日よりいいですね。全体に丸みがありますが、タカです」
「あ~あ、やっぱり。あんなに頑張ったのに。自分が嫌いだよもう」
「あはは……」
出て来た鳥は確かにタカ。だけどふんわり丸くて、そう、おもちゃ屋のぬいぐるみ。とてもかわいい。これ売ったら子供に人気になりそうって感じだね。ラミロが言う通り、イメージがゆるいとこうなるんだなあ。
「では、今日も乗って歩きましょう。意識しなくても、前後左右動けるようになるのが目標です」
「うん」
ふたりで広い庭を歩いた。昨日は意識が歩くのに強く働いてて周りが見えていなかった。
「よく見るとこの庭ステキだよね。ガゼボも噴水も。ねえカミーユ」
「歩く!前に歩く!まっすぐ!」
「……カミーユ」
あ~あ、余裕はなさそうだ。
花壇もよく整備されてて美しい秋のバラが咲いていて庭師もいるね。いるってなに?彼は昨日見てたのか!ヤダ恥……
「兄様~僕も混じる!」
「あ?」
上を見上げるとライリーがスーッと飛んで来て僕らの横に降り立ち、並走してきた。
「おお。ちゃんとした猫の騎獣だね。父様の話しと違うなあ」
そりゃあ頭フル稼働で覚えたもん。ハリーをしっかり思い出してね。
「昨日の昼から頑張ったんだよ。カミーユもちゃんとタカになってるでしょう」
「うん。丸いけどね」
「ウグっ」
カミーユの息を飲む音がした。
「明日にはなんとか……あは…は……」
ライリーはふたりともすごいねって褒めてくれた。騎獣の文化がない国の人なのに、二日目でちゃんと歩いてるものって。そうなのかな。それはよく分かんないけど。
「まあ、兄様は魔力量が多いし、大体僕の兄様だからまあ分かる。でも、カミーユ様は運動のセンスがあるんだね」
ふえぇってカミーユは驚いている。
「ぼく覚えるの遅いんです。だから、今もものすごく考えながら動かしてて」
真剣な顔を崩してはいなくて、必死なのは見て取れる。
「でもすごいよ。大人になってやり始めてこれだけ出来れば上出来だよ。僕の知り合いはひと月かかってる人もいたからね」
「へえ」
他国の貴族、騎獣に乗りたいって始めたんだけど、まず出す所から化け物で、今度は歩けずフラフラ。相当苦労して乗れるようになったそうだ。でも……その人の運動神経がとても悪かっただけじゃないのかな。それと比べるのは違う気もする。
「だからすこいよ」
「ありがとう。カミーユすごいって」
「あ、ありがとう」
ライリーは歩きながらニコニコ僕らを見ていた。嬉しいって感情しか僕は見て取れなかったけどずっと嬉しそうだ。
「なに?」
あんまり嬉しそうに僕らを見るから聞いてみた。
「あ、ごめん。兄様がいる、僕に兄弟いたんだって感動してるの」
「ああ」
彼は一人っ子として生きて来たんだった。僕には途中まではいい兄様いたからね。あのままいい兄様でいてくれたら、僕ここにはいなかったんだな。あ、でも、カミーユとは結婚してたか。
「でも、本当に父様に似てるね」
「そう?」
「うん。髪色がブラウンなだけで他は瓜二つ。まあ、あなたのお母様も遠いけど身内だから、当たり前といえばそうだけどさ。それでもね」
「僕も父上にあった時思ったんだ。母親似だと思ってたからね」
サクサクと軽快に歩きながら話していた。彼は……少し浮いてたけど。僕の話聞いてよって話し出した。
「僕は母様がいなくても大切にされてて、寂しくないと言えば嘘だけど幸せだったんだ。成人後、城の舞踏会とか祝賀会に参加するようになって、今の旦那様と出会ったの」
「ほうほう」
んふっと照れくさそうにした。笑うと目元が父上によく似ているなあ。
「彼ね。僕に一目惚れなんだって。ダンスの時に付き合ってくれって言われてね。驚いたけど、僕の好みだったしとお付き合いが始まった」
「ふーん」
彼は生涯結婚する気はなかったんだ。一人が快適ってタイプで、回りが何を言おうと気にせず。後継ぎなんて身内から養子に貰えはいいくらいに思っていた。なのにライリーに出会って衝撃が貫いたそう。どうしてもライリーを手に入れたいと考えたんだって。なんと情熱的な。
「今はすごく優しくて大切にしてくれる。ずっと年上だからたけじゃなくてね」
「ふーん」
彼は十歳年上。婚約するまで手も出さなかったそうだ。おお……僕にはムリだな。自分の匂いを付けたくなるから。僕のだって実感したくなったんだよねぇ。
「でね。僕の方が身分が高いからあちらの両親が少し引いてしまってさ」
「あ~……」
この家は国の始まりの頃の家だから特別なんだよね。他家には敷居が高い家なんだ。こちらから声掛けるならともかく、逆はねえ。
「でも彼は親を説得して、父様にも土下座して下さいって。僕は成人したばかりでひとりっ子。お嫁とかまだ考えてなくてね。でもそんな真剣な彼にゾクッとして……ふふっ」
「ほほう」
日差しが眩しい中、三人で騎獣で庭を歩く。これなに?他の人から見たら変じゃないのかな?まあ、自分の屋敷みたいなものだからいいのか。飛んでない騎獣……うーん。
ひとりっ子を嫁にか。婿に来るではなくて。どちらも跡継ぎで……よく父上許したな。
「そんな自分にも驚いたけど嬉しくてね。家族以外でそれも番の本能前だよ?こんなに愛してもらえるって素敵じゃない?」
「うん。素敵だね」
何なのその男。性格までいいとか。世の中の男に喧嘩売ってるのか?いやいや、僕がクソしか見てこなかっただけか。後ろからカミーユの抗議の声。
「ぼくもがんばったもん。キャルをしあわせにするもん。負けないもん……」
僕らの後ろからブツブツ。フフッかわいい。僕のカミーユはなんて愛らしいんだろう。
「カミーユ。僕は幸せだよ。あなたといっしょにいられてね」
振り向いて声を掛けた。カミーユはふわあって笑顔になって目じりを下げて……僕この笑顔大好きなんだ。とても胸が暖かくなる。
「ホントにそう思ってる?」
「思ってるさ」
「そう。うふふっ」
嬉しさで騎獣はふらついたけど、僕の大好きな笑顔、見飽きない。
「カミーユ様やばいね。何なのあの笑顔は」
「え?」
によによとした嫌な。なんだよ。
「あれはマズい。兄様カミーユ様見張ってた方がいいよ」
「はあ?」
少し早く飛ぶから着いていくとカミーユは少し遅れた。すると彼は、
「あれ隙見せると誰かに取られるよ。結婚とか関係なくね。あんな美人はヤバい。この国は落ち着いてはいるけど、そういった問題は多いんだ。お金あるから余計ね」
「そういった問題?」
眉間にシワ寄せて話してくれた。
この国は一見穏やかな、農業と鉱山の採掘と加工の一次産業中心に見える。だけど実情は派手に稼いでいる貴族と商人の国。目新しいものを開発し、流行らせて売りさばく強かな者が多い。
「努力する人はなぜか下半身も強い人が多くてね」
「ああ……」
僕のため息に似たああ……で察したようだ。
「兄様はそんな人をたくさん見てたはずたよね」
「うん」
英雄色を好むを実践している人は多い。家にも外にも愛人、妾もろもろ。その一つに僕らのような娼館も入っている。高級な所に足を踏み入れることが出来る自分が自慢になるから。見受けするなんて、ある意味ステイタスになっていたんだ。
「さすがに庶民が貴族をなんとかするなんてのはないけど、貴族同士だとある。少し商売がうまく行ってないとかの家に、美しい奥様がいたりとかだとね。第二、第三婦人としてとか」
「あ~……」
援助の名目でよその奥様を奪うなんてのがあるそうだ。
「まあ、兄様の動向次第だけどさ。この国に関わるなら気をつけてね。襲ってからお金で解決しようとするからね」
「うん」
カミーユが追いついて来て、
「なんの話してたの?」
「なんでもないよ。ライリーの旦那様の話をしてたんだ」
「そう」
不審げだけど引き下がった。そこは王族、察する能力は高い。
「これだけ出来れば午後は浮く練習だね」
「うっ……怖い。落ちるかも」
ふたりで不安になった。歩くのと浮くのでは違うでしょうよ。
「いやあ?浮きながら今やってる事するだけだよ。何にも変わんないから」
「そうかな……」
「そうだよ。いま週の初めだから週末にはお出かけしようね!兄様」
うっ!僕らに出来るのか?カミーユと見合って無理っぽくない?と確認。でも横ではキラキラと輝く目で僕らを見るライリー。
「カミーユ頑張ろう」
「うん……」
こんな馬に乗ってるみたいな気分で空飛べるのかな。想像も付かない。だけどやるしかないんだろうなあ。はあ。
図書室と言っても少し小さいだけの城の図書館のようだった。この国の歴史、魔法、野菜、家畜、他国の歴史や地理。あらゆる本があった。当然この公爵家の歴史も。
「タカ……ぐぬぬ。タカ!ぼくの脳みそ働けぇ!羽はこんなで足は鱗っぽくて……くちばしは……」
黙って睨めよ。
カミーユは図鑑を広げ、ブツブツと頭に叩き込んでいる。僕は何にしようかとペラペラとページをめくる。
「この……ぐぬう……絵心も楽器も才能のないぼくの頭、は~た~ら~けぇ~」
「うるせえぞカミーユ」
ハッとしてこちらを向いた。
「だって。頭に入ったかどうか分かんないんだもん。明日もニワトリもどきだったらと思うと気が滅入るんだ」
「気持ちは分かるけど、黙ってやって」
「うん。ごめん」
僕らは昼食後に図書室で図鑑とにらめっこ。僕は決めかねてるけど、カミーユはタカに初めからだからね。
何にしようかなぁ。この屋敷の人にどんなのにしてるか聞いたら獅子が多かった。後は馬、タカ、ワシ、クマ、鹿とかトナカイ。少ないけど、うさぎ、猫、犬とか身近なペットを乗り物にって感じ。
「決まらないなあ……」
隣は変な唸り声上げて、呪いの呪文のようだよ。取っ掛かりが苦手って言ってたから、初めが肝心だって真剣。
「僕はハリーのままでいいかな。ノルンの猫だったからガッシリしてたし」
猫のベージをめくり、体の作りを頭に叩き込んで行った。そして翌日。
「ではまずキャル様から出して下さい」
「うん」
騎獣用の魔石を首から取って投げた。ふよふよと形を取って、よし!
「おお。ノルンの猫ですね。勇ましい顔つきでいいです」
そうだろうとも。美猫で品もあったんだ。学友の家で生まれたからいる?って言われて三匹の中から僕が選んだんだから。
「ハリーは僕の家にいた猫なんだ。もう死んじゃったけど、よく懐いててね。イメージし易かったんだよ」
うんとラミロは頷いて、そう言う発想もこの国では多いですねって。
「次はカミーユ様。お願いします」
「ひゃい!」
緊張で声が裏返って……大丈夫かなあ。カミーユは首から魔石を取り投げた。ふよふよ……
「あ~昨日よりいいですね。全体に丸みがありますが、タカです」
「あ~あ、やっぱり。あんなに頑張ったのに。自分が嫌いだよもう」
「あはは……」
出て来た鳥は確かにタカ。だけどふんわり丸くて、そう、おもちゃ屋のぬいぐるみ。とてもかわいい。これ売ったら子供に人気になりそうって感じだね。ラミロが言う通り、イメージがゆるいとこうなるんだなあ。
「では、今日も乗って歩きましょう。意識しなくても、前後左右動けるようになるのが目標です」
「うん」
ふたりで広い庭を歩いた。昨日は意識が歩くのに強く働いてて周りが見えていなかった。
「よく見るとこの庭ステキだよね。ガゼボも噴水も。ねえカミーユ」
「歩く!前に歩く!まっすぐ!」
「……カミーユ」
あ~あ、余裕はなさそうだ。
花壇もよく整備されてて美しい秋のバラが咲いていて庭師もいるね。いるってなに?彼は昨日見てたのか!ヤダ恥……
「兄様~僕も混じる!」
「あ?」
上を見上げるとライリーがスーッと飛んで来て僕らの横に降り立ち、並走してきた。
「おお。ちゃんとした猫の騎獣だね。父様の話しと違うなあ」
そりゃあ頭フル稼働で覚えたもん。ハリーをしっかり思い出してね。
「昨日の昼から頑張ったんだよ。カミーユもちゃんとタカになってるでしょう」
「うん。丸いけどね」
「ウグっ」
カミーユの息を飲む音がした。
「明日にはなんとか……あは…は……」
ライリーはふたりともすごいねって褒めてくれた。騎獣の文化がない国の人なのに、二日目でちゃんと歩いてるものって。そうなのかな。それはよく分かんないけど。
「まあ、兄様は魔力量が多いし、大体僕の兄様だからまあ分かる。でも、カミーユ様は運動のセンスがあるんだね」
ふえぇってカミーユは驚いている。
「ぼく覚えるの遅いんです。だから、今もものすごく考えながら動かしてて」
真剣な顔を崩してはいなくて、必死なのは見て取れる。
「でもすごいよ。大人になってやり始めてこれだけ出来れば上出来だよ。僕の知り合いはひと月かかってる人もいたからね」
「へえ」
他国の貴族、騎獣に乗りたいって始めたんだけど、まず出す所から化け物で、今度は歩けずフラフラ。相当苦労して乗れるようになったそうだ。でも……その人の運動神経がとても悪かっただけじゃないのかな。それと比べるのは違う気もする。
「だからすこいよ」
「ありがとう。カミーユすごいって」
「あ、ありがとう」
ライリーは歩きながらニコニコ僕らを見ていた。嬉しいって感情しか僕は見て取れなかったけどずっと嬉しそうだ。
「なに?」
あんまり嬉しそうに僕らを見るから聞いてみた。
「あ、ごめん。兄様がいる、僕に兄弟いたんだって感動してるの」
「ああ」
彼は一人っ子として生きて来たんだった。僕には途中まではいい兄様いたからね。あのままいい兄様でいてくれたら、僕ここにはいなかったんだな。あ、でも、カミーユとは結婚してたか。
「でも、本当に父様に似てるね」
「そう?」
「うん。髪色がブラウンなだけで他は瓜二つ。まあ、あなたのお母様も遠いけど身内だから、当たり前といえばそうだけどさ。それでもね」
「僕も父上にあった時思ったんだ。母親似だと思ってたからね」
サクサクと軽快に歩きながら話していた。彼は……少し浮いてたけど。僕の話聞いてよって話し出した。
「僕は母様がいなくても大切にされてて、寂しくないと言えば嘘だけど幸せだったんだ。成人後、城の舞踏会とか祝賀会に参加するようになって、今の旦那様と出会ったの」
「ほうほう」
んふっと照れくさそうにした。笑うと目元が父上によく似ているなあ。
「彼ね。僕に一目惚れなんだって。ダンスの時に付き合ってくれって言われてね。驚いたけど、僕の好みだったしとお付き合いが始まった」
「ふーん」
彼は生涯結婚する気はなかったんだ。一人が快適ってタイプで、回りが何を言おうと気にせず。後継ぎなんて身内から養子に貰えはいいくらいに思っていた。なのにライリーに出会って衝撃が貫いたそう。どうしてもライリーを手に入れたいと考えたんだって。なんと情熱的な。
「今はすごく優しくて大切にしてくれる。ずっと年上だからたけじゃなくてね」
「ふーん」
彼は十歳年上。婚約するまで手も出さなかったそうだ。おお……僕にはムリだな。自分の匂いを付けたくなるから。僕のだって実感したくなったんだよねぇ。
「でね。僕の方が身分が高いからあちらの両親が少し引いてしまってさ」
「あ~……」
この家は国の始まりの頃の家だから特別なんだよね。他家には敷居が高い家なんだ。こちらから声掛けるならともかく、逆はねえ。
「でも彼は親を説得して、父様にも土下座して下さいって。僕は成人したばかりでひとりっ子。お嫁とかまだ考えてなくてね。でもそんな真剣な彼にゾクッとして……ふふっ」
「ほほう」
日差しが眩しい中、三人で騎獣で庭を歩く。これなに?他の人から見たら変じゃないのかな?まあ、自分の屋敷みたいなものだからいいのか。飛んでない騎獣……うーん。
ひとりっ子を嫁にか。婿に来るではなくて。どちらも跡継ぎで……よく父上許したな。
「そんな自分にも驚いたけど嬉しくてね。家族以外でそれも番の本能前だよ?こんなに愛してもらえるって素敵じゃない?」
「うん。素敵だね」
何なのその男。性格までいいとか。世の中の男に喧嘩売ってるのか?いやいや、僕がクソしか見てこなかっただけか。後ろからカミーユの抗議の声。
「ぼくもがんばったもん。キャルをしあわせにするもん。負けないもん……」
僕らの後ろからブツブツ。フフッかわいい。僕のカミーユはなんて愛らしいんだろう。
「カミーユ。僕は幸せだよ。あなたといっしょにいられてね」
振り向いて声を掛けた。カミーユはふわあって笑顔になって目じりを下げて……僕この笑顔大好きなんだ。とても胸が暖かくなる。
「ホントにそう思ってる?」
「思ってるさ」
「そう。うふふっ」
嬉しさで騎獣はふらついたけど、僕の大好きな笑顔、見飽きない。
「カミーユ様やばいね。何なのあの笑顔は」
「え?」
によによとした嫌な。なんだよ。
「あれはマズい。兄様カミーユ様見張ってた方がいいよ」
「はあ?」
少し早く飛ぶから着いていくとカミーユは少し遅れた。すると彼は、
「あれ隙見せると誰かに取られるよ。結婚とか関係なくね。あんな美人はヤバい。この国は落ち着いてはいるけど、そういった問題は多いんだ。お金あるから余計ね」
「そういった問題?」
眉間にシワ寄せて話してくれた。
この国は一見穏やかな、農業と鉱山の採掘と加工の一次産業中心に見える。だけど実情は派手に稼いでいる貴族と商人の国。目新しいものを開発し、流行らせて売りさばく強かな者が多い。
「努力する人はなぜか下半身も強い人が多くてね」
「ああ……」
僕のため息に似たああ……で察したようだ。
「兄様はそんな人をたくさん見てたはずたよね」
「うん」
英雄色を好むを実践している人は多い。家にも外にも愛人、妾もろもろ。その一つに僕らのような娼館も入っている。高級な所に足を踏み入れることが出来る自分が自慢になるから。見受けするなんて、ある意味ステイタスになっていたんだ。
「さすがに庶民が貴族をなんとかするなんてのはないけど、貴族同士だとある。少し商売がうまく行ってないとかの家に、美しい奥様がいたりとかだとね。第二、第三婦人としてとか」
「あ~……」
援助の名目でよその奥様を奪うなんてのがあるそうだ。
「まあ、兄様の動向次第だけどさ。この国に関わるなら気をつけてね。襲ってからお金で解決しようとするからね」
「うん」
カミーユが追いついて来て、
「なんの話してたの?」
「なんでもないよ。ライリーの旦那様の話をしてたんだ」
「そう」
不審げだけど引き下がった。そこは王族、察する能力は高い。
「これだけ出来れば午後は浮く練習だね」
「うっ……怖い。落ちるかも」
ふたりで不安になった。歩くのと浮くのでは違うでしょうよ。
「いやあ?浮きながら今やってる事するだけだよ。何にも変わんないから」
「そうかな……」
「そうだよ。いま週の初めだから週末にはお出かけしようね!兄様」
うっ!僕らに出来るのか?カミーユと見合って無理っぽくない?と確認。でも横ではキラキラと輝く目で僕らを見るライリー。
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