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28 殿下との語らい
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昼食を挟んでお茶会。見た目はな。
「まずは、お前の知識不足を補おう」
「はい」
この国の王位継承権は、王の子種の子ども全部にある。男女関係なく誰が一位とか本来ないが、他国の文化の呼び名が定着し、長男が暫定ってことで「王太子」と呼ばれる。
「それを踏まえだ」
「はい」
まだ発表にはなってないが、今城に残る四人いる正妻の姫は嫁入りが決まっている。だから除外。やりたい人もいなかったそうだ。うんうん。すると男は俺と兄と弟。うんうん。
「側室の王子どもは俺たちが全滅しないと権利はない」
「はい」
「ということは三人が候補だ」
そうね。そうなるよね。ここまで話すと殿下は盛大なため息。
「姉や妹が王になりたいなんて言うことは、めったにないのは歴史が証明している」
「はい」
「それでだ。俺たちは幼いころから変な貴族が纏わりつく。自分の家を有利にしたくて王子を選定。そして王に押し上げる」
「ほほう。すごい」
「すごいじゃねえよ。迷惑なんだよ」
そりゃそうか。ふんふん。
「でな。俺たち三人はそれに乗っかったように演技することにしてんだ」
「ほえ……」
兄の才能はすごい。お前に厳しいことを言ったのも、態度に出すのも土地持ち貴族がふわふわしてんじゃねえよってこと。俺たち支える大切な臣下だろ?ちゃんとしろってことだ。分かれよって。あら、俺ダメダメじゃん。
「お前の家を大切に思ってるよ。側近に戻らないかと聞いたのもそれ」
「あー……すみません」
宮中に関われば国の内情を感じられる。それは臣下にとって大切な情報だ。だからだよって。お前子爵だから余計だぞって。そうね。
「親戚やリリアナの親父からだけじゃダメだ。親父も自分の気持ちを練り込んでお前に話すだろ?それじゃあダメなんだよ。本来はな」
「はい」
それは親父の忖度や希望的観測が混じる。それを元に考えると、お前自身の考えが偏るだろ?いいことはない。ならば味方というか、友からの情報を手に入れるネットワークを構築せよって。いろいろ聞いて総合的に判断できるはずだから。そう殿下は言う。
「国に関わりたくないのならば、それなりのことをしろ」
「はい」
ごもっともでなにも言えん。
「それでだ。俺は王になる気はない。弟は分からんがな」
「え?」
「完全に腹の中なんで兄弟でも分からんのよ。途中で気持ちが変わるかもしれないだろ」
「そうですね」
兄上は王になるべく努力している。お前に冷たいのも親父のようによい臣下になって欲しいから。お前の親父はいるかいないか分からん顔して腹黒かった。きれいな顔してニコニコ。あの犯人の伯爵の兄と暗躍してたぞとニヤリとした。あー……
「城には参内しないくせによく物を知ってたしな。侮れんおっさんだったよ」
「そうですか」
さすが俺の親父。優秀の誉れはこんなところにもあったのか。それにしても俺のこのザマよ。
「お前友は多いと聞く。味方につけろ」
「はい」
殿下……俺の知ってる情報の方とは違うな。ほわほわしてニコニコ。人当たりがよく、政治に関心ないような雰囲気って話だったのに。ありありじゃねえか。それをやんわりと伝えると、
「バーカ。俺は王位を狙ってまーす。ホレホレなんてするはずないだろ」
「ごもっとも」
俺はふわふわとソフィアを愛し、兄を助けてのんびり王族ライフを送る。それが目的だ。あくせく働く気はない。だが、それを実現するためにやることはやる。それが俺って胸を張る。面倒くさがりは、楽するための努力は惜しまんのよって笑った。
「怠けるためには根回しは必要だ」
「あはは。確かに」
「戦の備えは当然するし、なにかあれば俺は大将として出陣もする。それが王族だ」
「その覚悟はおありと」
「当然だろ。優雅な生活は守りたいし、家族も民も大切だからな」
ふーん。面白いな殿下。辺境の俺たち貴族とは違うもんだな。土地からの金が少なく公共事業もままならなかった祖父の子供時代。それが嫌で始めた茶の販売。今は浸透させるための時期である。でもハーブのお茶は根強く、たぶんなくならないはず。だからハーブの伯爵家と二分した大店になるのが目標だ。いや、そうならなくちゃならないんだ。領地のためにもな。
「そうだなあ。お前の親父はお前と同じ、どこか性善説で生きてる部分があった。そこを狙われたんだろうな」
「……はい」
殿下の見立てというか、王族の人の見解らしいが、腹黒いくせに手を差し伸べる優しさがあった。人の悪口に鈍感で言えばいいだろって放置し気にしなかった。その悪口の中に本気で悪意を向ける人を見落とした。そこだよって。
「今言われれば納得しますが、そこにこそ家臣が慕う理由でもあったのですよ」
「だろうな。お前もだぞ。学生時代はこうだったからとか甘く考えるな。人は変わるんだよ」
「はい」
変わる理由は様々だ。上からの圧力で仕方なくも含まれる。足元見られたりもあるだろう。商人としても貴族としてもそこは怠るなって。うん。
「俺は明後日以降は夜しか相手できない。この期間にあちこちの友だちの臣下と話せばいい。時間の取れるやつはいるはずだから。俺が許可する」
「ありがとう存じます」
新参の子爵で経験が浅い。みんな手を貸せって言っとくからなって。
「んふふっ」
「なんですか?」
不敵に笑う殿下は、根回しは一番近くの人を忘れがちだそって。言わなくても分かるだろはダメだぞと俺にくぎを刺す。
「リリアナの親父にはきちんと言っとけよ。あそこんちは兄上大好きな家だから」
「ああ。かしこまりました」
「そうよ。言っとかないとイリアスは第二王子に寝返ったとか言われちゃうから」
「あはは。そうですね」
まあ、この訪問の理由は送っているからな。理解はしてるだろ。いいんだ世間はさ。俺はねって考えてるけど、義父上はそうはいかない。
「俺は何があっても兄上に王になってもらわねば困る。働きたくない」
「アハハッ」
そこから言える範囲でと王族の内情などを教えてくれた。ソフィアも女性の横繋がりは分かりにくいでしょ?リリアナも網羅しきれてないはずだから、伝えてあげてちょうだいと。もちろん。
夜も一緒に食事をし、サロンでお酒を酌み交わす。殿下は面白かったんだ。噂の半分は本当でさ。
「俺ね。昔から馬乗ったり外遊したりが好きでさ。見聞を広げるっての?好きなんだよね」
「へえ」
書物の実況見分っての?それを確かめるような行動が好き。文章の通りの世界が目の前に広がるのに感動するそうだ。それは俺もだな。ジジイどもの話の通りのものがあったりすると嬉しいもん。
「だろ?クリシュナ王国は見るものが多い。近代的な機械やそれをいとも簡単に使う民たち。驚きだよな」
「あそこは変な国ですね」
「あの変さ具合がいいんだよ。別の世界に紛れ込んだような錯覚を起こすくらいでさ。なのに伝統文化が残り、王族や貴族がそのまま政治をする。あんななら内戦が起こって民に代表が代わってもおかしくないのにそれがない。なんだろな」
「なんでしょうね」
みんな思い当たることがあって三人で笑った。あそこまでの発展は貴族や王族だけじゃ出来ない。民を巻き込みやったはず。
「分かることはただ一つ」
「ええ。民を苦しめないことですね」
あの国は摩訶不思議な事象が頻繁に起こる。魔力のせいだそうだ。それの対策は国の困りごとで、民には大迷惑。魔物がいきなり森に溢れたり、人家を襲う。自然発生的に魔法使いの護衛集団が出来て、それがいつしかギルドができて魔法使いたちを管理するようになる。そして、その者たちを冒険者と呼ぶようになった。
「最近は能力で護衛ばかりじゃなく、討伐や魔物の山に植物や獣の採集とかの業務もするんだってな」
「ええ。時空が歪む?なにそれですが、そこから宝物を持ち帰るとか」
「俺も聞いた。バカみたいにデカい魔石とか持ち帰るんだってな。後は変な物」
その変な物が発展の鍵らしい。開示はしてないから俺たちの知る由もないが、それを元に竜で空飛ぶとかのアイディアが出てるらしいんだ。自動車もそう。そこで何見てるんだろうな。
「冒険者が持ち帰ったのを魔法省が買い取り解析、実用できる開発をする。実用化の暁には買い取り価格に見合わなかった分をマージンとして払う。よく出来てるよ」
「ええ。魔力の多い民はこぞって冒険者になると聞きます」
「わが国は何もない代わりに、魔物にも変な時空の裂け目?とかに脅かされない。のんびり生きるのもいいもんだよ。たまに遊びに行くから楽しい」
本当にそう思う。便利なものはあの国から入って来て、生活の向上はあるがいかんせん高い。民に広がってるかと言えばそうでもない。蛇口から水は俺たち貴族がその水路を作らねばならん。ねえよそんな金は。それが正直なところ。魔法使いとは違うんだ。
「実は城にはあるんだ。蛇口」
「え!どこに?」
俺の質問にソフィアが答える。
「フフッ私的エリアに試験的にね。裏山の湧き水を引いてるのよ」
「へえ。便利?」
「便利よ。メイドが喜んでるわね。お風呂とか料理するとかはね」
「そうか」
ただなあって殿下。金めっちゃかかる。あれ全世帯は厳しいなあって。そんなのが出来る魔法使いは法外な金額を請求してくる。ムリだよって。だろうね。
「早いんだよ。何もないところからレンガみたいなのを作りブワって組み立ててさ。城の中も魔力で改造するし、怖いわあれ」
「へえ。俺見たことはないですね」
「不気味よ。見えない何かが作ってるみたいでさ」
ほほう。まじめに手作業ならどのくらいかかりますかね?と聞けば、
「直轄地領内だけでも何十年もかかるだろうよ。金も人足もたくさん必要だ。井戸が楽かな。もしくは井戸から引くだよ」
「そっか。それならすぐに」
「バーカ。それでも時間はかかるし、水は高いところから低いところに流れるんだ。その設計に金がかかる」
「うっ」
簡単に作れる方法はあるが現実的じゃない。我が国にバカみたいな金鉱が見つかるとか、宝石の鉱脈がザックザクとかなら考えるけどなって。ごもっとも。
「地方に水道橋があるだろ。あれも何十年も掛かってるんだ。砂漠に近い民の水確保にな」
「そうでしたね」
「今なら簡単にやれそうだが、それができる魔法使いは宮廷魔法師団に所属できる能力者。そんな金はない」
「はい」
現実は厳しい。穏やかで魔物に怯えず暮らせるってことは、何もないってこと。世の中楽に何とかなどないもんだよ。そう言って殿下は盛大に笑った。
「まずは、お前の知識不足を補おう」
「はい」
この国の王位継承権は、王の子種の子ども全部にある。男女関係なく誰が一位とか本来ないが、他国の文化の呼び名が定着し、長男が暫定ってことで「王太子」と呼ばれる。
「それを踏まえだ」
「はい」
まだ発表にはなってないが、今城に残る四人いる正妻の姫は嫁入りが決まっている。だから除外。やりたい人もいなかったそうだ。うんうん。すると男は俺と兄と弟。うんうん。
「側室の王子どもは俺たちが全滅しないと権利はない」
「はい」
「ということは三人が候補だ」
そうね。そうなるよね。ここまで話すと殿下は盛大なため息。
「姉や妹が王になりたいなんて言うことは、めったにないのは歴史が証明している」
「はい」
「それでだ。俺たちは幼いころから変な貴族が纏わりつく。自分の家を有利にしたくて王子を選定。そして王に押し上げる」
「ほほう。すごい」
「すごいじゃねえよ。迷惑なんだよ」
そりゃそうか。ふんふん。
「でな。俺たち三人はそれに乗っかったように演技することにしてんだ」
「ほえ……」
兄の才能はすごい。お前に厳しいことを言ったのも、態度に出すのも土地持ち貴族がふわふわしてんじゃねえよってこと。俺たち支える大切な臣下だろ?ちゃんとしろってことだ。分かれよって。あら、俺ダメダメじゃん。
「お前の家を大切に思ってるよ。側近に戻らないかと聞いたのもそれ」
「あー……すみません」
宮中に関われば国の内情を感じられる。それは臣下にとって大切な情報だ。だからだよって。お前子爵だから余計だぞって。そうね。
「親戚やリリアナの親父からだけじゃダメだ。親父も自分の気持ちを練り込んでお前に話すだろ?それじゃあダメなんだよ。本来はな」
「はい」
それは親父の忖度や希望的観測が混じる。それを元に考えると、お前自身の考えが偏るだろ?いいことはない。ならば味方というか、友からの情報を手に入れるネットワークを構築せよって。いろいろ聞いて総合的に判断できるはずだから。そう殿下は言う。
「国に関わりたくないのならば、それなりのことをしろ」
「はい」
ごもっともでなにも言えん。
「それでだ。俺は王になる気はない。弟は分からんがな」
「え?」
「完全に腹の中なんで兄弟でも分からんのよ。途中で気持ちが変わるかもしれないだろ」
「そうですね」
兄上は王になるべく努力している。お前に冷たいのも親父のようによい臣下になって欲しいから。お前の親父はいるかいないか分からん顔して腹黒かった。きれいな顔してニコニコ。あの犯人の伯爵の兄と暗躍してたぞとニヤリとした。あー……
「城には参内しないくせによく物を知ってたしな。侮れんおっさんだったよ」
「そうですか」
さすが俺の親父。優秀の誉れはこんなところにもあったのか。それにしても俺のこのザマよ。
「お前友は多いと聞く。味方につけろ」
「はい」
殿下……俺の知ってる情報の方とは違うな。ほわほわしてニコニコ。人当たりがよく、政治に関心ないような雰囲気って話だったのに。ありありじゃねえか。それをやんわりと伝えると、
「バーカ。俺は王位を狙ってまーす。ホレホレなんてするはずないだろ」
「ごもっとも」
俺はふわふわとソフィアを愛し、兄を助けてのんびり王族ライフを送る。それが目的だ。あくせく働く気はない。だが、それを実現するためにやることはやる。それが俺って胸を張る。面倒くさがりは、楽するための努力は惜しまんのよって笑った。
「怠けるためには根回しは必要だ」
「あはは。確かに」
「戦の備えは当然するし、なにかあれば俺は大将として出陣もする。それが王族だ」
「その覚悟はおありと」
「当然だろ。優雅な生活は守りたいし、家族も民も大切だからな」
ふーん。面白いな殿下。辺境の俺たち貴族とは違うもんだな。土地からの金が少なく公共事業もままならなかった祖父の子供時代。それが嫌で始めた茶の販売。今は浸透させるための時期である。でもハーブのお茶は根強く、たぶんなくならないはず。だからハーブの伯爵家と二分した大店になるのが目標だ。いや、そうならなくちゃならないんだ。領地のためにもな。
「そうだなあ。お前の親父はお前と同じ、どこか性善説で生きてる部分があった。そこを狙われたんだろうな」
「……はい」
殿下の見立てというか、王族の人の見解らしいが、腹黒いくせに手を差し伸べる優しさがあった。人の悪口に鈍感で言えばいいだろって放置し気にしなかった。その悪口の中に本気で悪意を向ける人を見落とした。そこだよって。
「今言われれば納得しますが、そこにこそ家臣が慕う理由でもあったのですよ」
「だろうな。お前もだぞ。学生時代はこうだったからとか甘く考えるな。人は変わるんだよ」
「はい」
変わる理由は様々だ。上からの圧力で仕方なくも含まれる。足元見られたりもあるだろう。商人としても貴族としてもそこは怠るなって。うん。
「俺は明後日以降は夜しか相手できない。この期間にあちこちの友だちの臣下と話せばいい。時間の取れるやつはいるはずだから。俺が許可する」
「ありがとう存じます」
新参の子爵で経験が浅い。みんな手を貸せって言っとくからなって。
「んふふっ」
「なんですか?」
不敵に笑う殿下は、根回しは一番近くの人を忘れがちだそって。言わなくても分かるだろはダメだぞと俺にくぎを刺す。
「リリアナの親父にはきちんと言っとけよ。あそこんちは兄上大好きな家だから」
「ああ。かしこまりました」
「そうよ。言っとかないとイリアスは第二王子に寝返ったとか言われちゃうから」
「あはは。そうですね」
まあ、この訪問の理由は送っているからな。理解はしてるだろ。いいんだ世間はさ。俺はねって考えてるけど、義父上はそうはいかない。
「俺は何があっても兄上に王になってもらわねば困る。働きたくない」
「アハハッ」
そこから言える範囲でと王族の内情などを教えてくれた。ソフィアも女性の横繋がりは分かりにくいでしょ?リリアナも網羅しきれてないはずだから、伝えてあげてちょうだいと。もちろん。
夜も一緒に食事をし、サロンでお酒を酌み交わす。殿下は面白かったんだ。噂の半分は本当でさ。
「俺ね。昔から馬乗ったり外遊したりが好きでさ。見聞を広げるっての?好きなんだよね」
「へえ」
書物の実況見分っての?それを確かめるような行動が好き。文章の通りの世界が目の前に広がるのに感動するそうだ。それは俺もだな。ジジイどもの話の通りのものがあったりすると嬉しいもん。
「だろ?クリシュナ王国は見るものが多い。近代的な機械やそれをいとも簡単に使う民たち。驚きだよな」
「あそこは変な国ですね」
「あの変さ具合がいいんだよ。別の世界に紛れ込んだような錯覚を起こすくらいでさ。なのに伝統文化が残り、王族や貴族がそのまま政治をする。あんななら内戦が起こって民に代表が代わってもおかしくないのにそれがない。なんだろな」
「なんでしょうね」
みんな思い当たることがあって三人で笑った。あそこまでの発展は貴族や王族だけじゃ出来ない。民を巻き込みやったはず。
「分かることはただ一つ」
「ええ。民を苦しめないことですね」
あの国は摩訶不思議な事象が頻繁に起こる。魔力のせいだそうだ。それの対策は国の困りごとで、民には大迷惑。魔物がいきなり森に溢れたり、人家を襲う。自然発生的に魔法使いの護衛集団が出来て、それがいつしかギルドができて魔法使いたちを管理するようになる。そして、その者たちを冒険者と呼ぶようになった。
「最近は能力で護衛ばかりじゃなく、討伐や魔物の山に植物や獣の採集とかの業務もするんだってな」
「ええ。時空が歪む?なにそれですが、そこから宝物を持ち帰るとか」
「俺も聞いた。バカみたいにデカい魔石とか持ち帰るんだってな。後は変な物」
その変な物が発展の鍵らしい。開示はしてないから俺たちの知る由もないが、それを元に竜で空飛ぶとかのアイディアが出てるらしいんだ。自動車もそう。そこで何見てるんだろうな。
「冒険者が持ち帰ったのを魔法省が買い取り解析、実用できる開発をする。実用化の暁には買い取り価格に見合わなかった分をマージンとして払う。よく出来てるよ」
「ええ。魔力の多い民はこぞって冒険者になると聞きます」
「わが国は何もない代わりに、魔物にも変な時空の裂け目?とかに脅かされない。のんびり生きるのもいいもんだよ。たまに遊びに行くから楽しい」
本当にそう思う。便利なものはあの国から入って来て、生活の向上はあるがいかんせん高い。民に広がってるかと言えばそうでもない。蛇口から水は俺たち貴族がその水路を作らねばならん。ねえよそんな金は。それが正直なところ。魔法使いとは違うんだ。
「実は城にはあるんだ。蛇口」
「え!どこに?」
俺の質問にソフィアが答える。
「フフッ私的エリアに試験的にね。裏山の湧き水を引いてるのよ」
「へえ。便利?」
「便利よ。メイドが喜んでるわね。お風呂とか料理するとかはね」
「そうか」
ただなあって殿下。金めっちゃかかる。あれ全世帯は厳しいなあって。そんなのが出来る魔法使いは法外な金額を請求してくる。ムリだよって。だろうね。
「早いんだよ。何もないところからレンガみたいなのを作りブワって組み立ててさ。城の中も魔力で改造するし、怖いわあれ」
「へえ。俺見たことはないですね」
「不気味よ。見えない何かが作ってるみたいでさ」
ほほう。まじめに手作業ならどのくらいかかりますかね?と聞けば、
「直轄地領内だけでも何十年もかかるだろうよ。金も人足もたくさん必要だ。井戸が楽かな。もしくは井戸から引くだよ」
「そっか。それならすぐに」
「バーカ。それでも時間はかかるし、水は高いところから低いところに流れるんだ。その設計に金がかかる」
「うっ」
簡単に作れる方法はあるが現実的じゃない。我が国にバカみたいな金鉱が見つかるとか、宝石の鉱脈がザックザクとかなら考えるけどなって。ごもっとも。
「地方に水道橋があるだろ。あれも何十年も掛かってるんだ。砂漠に近い民の水確保にな」
「そうでしたね」
「今なら簡単にやれそうだが、それができる魔法使いは宮廷魔法師団に所属できる能力者。そんな金はない」
「はい」
現実は厳しい。穏やかで魔物に怯えず暮らせるってことは、何もないってこと。世の中楽に何とかなどないもんだよ。そう言って殿下は盛大に笑った。
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