俺は悲しみに堪えて前を向く 〜君の存在があれば生きていける〜

琴音

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49 破壊尽くして終戦

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 魔石争奪戦の開戦から一年。戦闘のおかげさまで魔石の山はボロボロ。魔物がそれを使い強化して向かってきて石は減りまくり。戦の意味がなくなったそうだ。

「戦死者が気の毒過ぎる戦の終結となったと報告がきた」

 お城での臨時の会議に俺は来ていた。戦の終結と、今後のことってことを国としてどうするかって会議だ。もうただの犬死以外ない。戦利品もなく、お互いに人も金も使っただけ。少し残った魔石では帳尻すら合わないらしい。出席者は呆れた顔ばかり。

「クリシュナにとっては大した被害でもなかったようだが、ソフェーネ王国は……言わなくても分かるだろう。それで援助依頼がこの遠い地域に来ている」
「農作物を少しくらいですな。売れ残りの麦だけだ」

 農地ばかりの領主がすぐに答えた。他に回す分をそちらにってくらい。人をくれってのは無理だと断言する。うん俺もそう思う。

「こちらもそう考えていて、出せる領地は協力して欲しい」

 他の品物でも売りに行けるのならば行ってくれ。ただ……と宰相は渋い顔。

「戦後復興ということで、品物は半額にしてくれって依頼なんだ」
「「うっ……」」

 寄付も募ってるらしく、こちらで集めて渡すから出せって。はい?と聞いていると、一口金貨百枚からだそう。う、嘘でしょ?と呆然としてると、当然クレームで紛糾。俺は静観していた。

「うちは夏に嵐に見舞われて領地が困ってるから無理!」
「うちもだ!冬の大雪のせいで種まきが遅れ収穫が悪いんだ!」

 物価も上がりこの一年で持ち出しは増えた。余剰の金などない。上納金を今までどおり納めるので精一杯なんだ。ふざけんな!と怒鳴るおじ様たちばかり。

「戦のせいで運搬にも護衛にも金がかかったんだ。どれだけ赤字になったると思ってんだ!」
「う、うん。そうなんだがこういったものは助け合いだろう。今後のこともあるし」
「王族で頑張って下さいませ」

 農作物や商品は仕方ない。マイナスにならない値段で売りに行ってやるがそれまでだ。後は飲めないと二十の領主の半分は憤慨していた。俺を含め、そこまで困ってない領主たちは一口なら乗ろうとなった。

「その金でまずは街道の整備をお願いしたいもんですな」
「そうそう。運送費がばかにならないのですよ」

 そこはこちらで指定はできないが、進言はすると宰相。どのみちクリシュナからの物は当分無理だろう。そこでだ。この際今以上に他国に依存しない経済を作るべく動かなくてはならない。難しい表情で語る。

「今後は農地は拡大させ、この地域のみでも生活できる基盤を持とうと近隣五カ国の王の総意だ。気候の良いこの地域。やれるはずだとなっている」

 まあねえってみんな。暴れてた人らも席に戻り宰相の話を聞く。

「この五カ国は戦をする意味すらない。土地は広大に残っているし、土地が欲しいなどと思うような場所でもないから不戦の条約も取り付けた」

 みんな無言。言葉にすると悲しい事実。特別何かある地域じゃないんだ。農地に適している場所ではあるけども、他も似たりよったり。魔物も出ないから冒険者が来るところでもない(魔法薬に必要な特別な薬草とか取りに来る人はいる)。特別な宝石も魔石もなく、竜などもいない。ある意味何にもないから平和な地域なんだ。だけど、それに意味が出る時が来るかもしれない。だからこの五カ国は手を取り合わねばならない。そうだろう?と王様。

「安心して暮らせる場所は我が地域を含め少ししかない。今は見下される地域であるが、いつその認識が変わるか分からぬ」

 みんなウンウンとうなずく。戦はこの「なんにもない」地域以外はちょこちょこある。魔石もそうだが、金銀などの鉱石、宝石なんか採れるところだな。後は起伏が少なく広大な農地が確保できる国とかは狙われやすい。山岳の国とか、夏冬厳しく作物が取れない国が襲ってくる。だからここも安心とは言い切れない。

「何もないことがいいってことになった時、我らは危機に陥る。そのため、今後は連合国のように助け合おうとなっているんだ」

 この後の説明は宰相がしてくれた。今までも仲良くしてたけど、飢饉とか起きたらすぐに助け合おうってなっているそう、それと今後のために軍事訓練も合同で始める。交流を今以上にして有事の備えをするそうだ。

「国の方針は現状この方向だ。今なにかが変わるというものではないが、隣国との交流を絶たないようにしてくれ」

 はいって全員返事はした。したけど元々揉めるようなこともないしなあ。文化こそ違えどなーんもないのは一緒。民族としても魔法が使えない人種。うーん……と考えていると、隣の人らが有事の際はここらの人は全滅かもな。軍事訓練なんて言ってるけど、実戦なんてしたことないしなあ。なんて話していた。その時が我らの時代でないことを祈るばかりだなあって苦笑い。

「まあなあ。その日まで精一杯生きるのが我らの務めさ」
「そうだな」

 似たような会話があちらこちらから。力のない我ら。どれだけ備えようとも魔法使いに勝てるものではない。時間稼ぎをして逃げるだけ。

「イリアス殿もそう思うだろう?」
「ええ。その日がこないことを願うのみですね」

 急に話を振られたが、そうしかねえだろ。今までも「なんにもない国」は魔法使いに襲われて併合、もしくは侵略されて滅ぼされている。そして別の国になってるんだ。

 魔法使いの血は強く、時とともに人々は混じり合い魔法使いばかりになる。そして、前の国の文化や矜持などなくなり、その血があることすら忘れる。完全なる、文化ごとの支配になる。

 なんだか寂しいよねそれってさ。魔法なくても楽しいのにね。そりゃあ多少あった方が便利だけど、不便も知恵で克服できるんじゃないかと俺は考える。魔法を使わなくてもなんとかする。それもいいもんだと思うがねえ。誰か賢い人が魔法がなくても冷蔵庫とか発明するのを待つしかねえけどさ。

 俺たち呼ばれた領主は晩餐会の後、領地の遠い者は城に一泊か、自分の王都の屋敷に戻った。

「寄付金ねえ。うちは困りませんがよそは大変ですね」
「うん。出せる領地のみだよ。無理なもんは無理だから」

 コリンとふたり。なんだか久しぶりな気がした。前はいつもふたりであちこち行ってたのに、今は城に来る時のみ。ふふっ

「何ですか坊っちゃん。その変な笑いは」
「いやなあ。こうしてふたりで動くのもたまの城参内くらいでさ。懐かしくなっただけだよ」
「ああ。それもそうですね」

 事件前はそれこそ探検のようにあちこちの国のお茶を探したり、店の出店場所探したりしてましたね。コリンは懐かしそうに微笑む。

「ついこの間までしてたのに、ものすごく昔の気がしますね」
「だろ?」
「でも私は今も悪くはないと思います。なぜなら食事に困らないから。アハハッ」
「お前はもう……フフッ」

 てもそれを抜けば、職人たちとワイワイしてるのも楽しかったかもなあって。荒っぽいのは苦手だったけど、離れてみると楽しかった気もする。思い出補正ですかねって。帰宅した片付けが終わるとオレの向かいに座る。こうして二人の時は酒の相手してもらうんだ。

「まあな。俺はたまに夢に見る。港で新しい茶を開ける高揚感とかな」
「そうですね。きちんと届いた感動は代えがたいものはありますね」

 あの高揚感や他国のざわめき。見たことない文化を観る楽しみや、失敗して悔しい思いをした記憶。父や兄と飲んだ不味いお茶とか。はるか彼方の思い出のようだ。

「前ここにひとりできてたろ。あの現場仕事に戻りたくておかしくなってたんだ。だから友だちに相談っていうか、みんなはどう心を切り替えたのか聞きたくてな」
「フフッ多分そんなことだろうと思ってました。リリアナ様の活躍と並行してお顔が曇ってましたから」
「そう?」

 俺は酒のつまみのチーズを取りモグモグ。うん美味い。

「坊っちゃんはふとした時、捨てられた子犬みたいになってましたからね」

 もろかよ。俺はガックリと頭を落とすと、でも気がついてたのは私くらいではないですかねえ。お傍にいるのが当然の私しか気が付きません。家臣の皆さんは最近近くにいるだけ。私ほど坊っちゃんを熟知している者はいません。リリアナ様より私の方がよく知ってますと胸を張る。

「コリンしか気が付かなかったならいい」

 コリンもこのチーズ美味しいですね。私はこのフレッシュチーズ好きなのですと食べている。

「みなさん様子がおかしいとは思ってたようですが、理由までは気がついていらっしゃらなかった」
「そうか」

 私は坊っちゃんが楽しそうにしていたのを知っている。とても前向きに突っ走っていた。やりたいことをできる喜びに満ちていたのを隣で見ていた。他の人はそこを見ていない。ワインも美味しいですねと飲みながら、そこは心配ない。隠したいんでしょ?って。俺はうんとうなずいた。

「私は坊っちゃんの生涯の側近。リリアナ様より妻をしてましたし、これからもする。うはは」
「妻じゃねえよ。相棒だろ」
「そうとも言いますね。んふふっ」

 なんとなく懐かしい話に花が咲き笑い合っていた。話が途切れたところでコリンはしみじみとした顔をする。

「まだ現場の仕事に未練はありますか?」

 俺はその言葉に、グラスのワインをユラユラ揺らしながらないと答えた。

「本当に?」
「行けるなら行きたいが、行けなくてもいい。そういう気持ちになったんだよ。領主として屋敷にいても気持ち次第で楽しめる。そう思えたんだ」
「ふーん」

 含みのある「ふーん」だったが、国内なら多少手出しはできるし、リリアナ様のお仕事も手伝えます。違う立ち位置からの関わりにやり甲斐を見つけたのですか?と。俺はうんとうなずいた。

「坊っちゃん大人になられて。嬉しゅうございますわ。アハハッ」
「ふたりの子の父親だよ。諦めも肝心よ」
「さようで。ですが現場仕事なんて貴族はしない方の方が多いのですよ。拠点でふんぞり返ってサインするだけ。屋敷も拠点も同じです」
「俺それ嫌い」
「知ってます」

 コリン調べ。よその貴族の子息の商売の仕方を話してやろうと偉そうになる。

「おうおう。聞こうじゃないか」
「アハハッ坊っちゃんとは別もんですよ」

 こんな話で夜は更けていったんだ。こんな時間も俺には必要だとつくづく思った。バカ話する友や家臣。俺にはとても大切なんだと実感するばかりの夜だったんだ。










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