真紅のダリアは闇夜に開く 〜本能のまま好きに生きてたら奇跡が起きた〜

琴音

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24 本土のお城

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 俺はメイドさんに引きずられ、城の二階の客間に入れられると食事があった。

「お昼を召し上がっていただき、その後磨き上げます」
「磨き上げる?」
「ええ。王のお召しですから」
「ふーん」

 とにかく飯食えと言われて美味しくいただく。そして採寸。なんで?

「衣服がなにもないのでしょう?ご用意いたしますので」
「そっか」

 そしてお茶をいただいている間に衣服が用意され、風呂にぶち込まれた。メイドさんは女性で何もなかったように俺をワシャワシャと洗う。

「自分で出来ますし、あなたはその……」
「フフッお気になさらずに」
「気になりますよ。俺あんまり女性と関わらないから恥ずかしいし。それに男の体嫌でしょ?」
「慣れました」
「いやいや……」

 いいからじっとしてと丁寧に洗われた。そして股間に手が伸びてさすがに手首を掴んだ。

「自分でします」
「なんで?いつもしておりますが。お嫌ですか?」
「まあ……そのなんだ。俺は風俗の仕事してるけど、女性になにかしてもらうのって馴染みがなくてですね」

 そうですかと手の力が緩んだ。諦めたかと安心したら脚の間に入りしゃがみ見上げる。はい?

「ここにいる間、メイドに体を触られる。股間やお尻の穴に触られることを我慢なさいませ。いくら風俗のお仕事をされていても嫌な行為でしょうが、貴族には体の異変を見つける大事な行為なのです」
「そうなの?」

 見つめるメイドさんは真剣な眼差しで、お仕事の顔をしている。

「ええ。島のような丈夫な体はございませんから、女性なら秘部の炎症やむくみなどの確認、体に狼藉をされてないか、お怪我はないかの確認になります。男性なら遊んで股間に異常がないか、怪我を黙ってないかとかですね。普通の男性はちょっとの熱や咳で大騒ぎですから」
「ふーん。俺たちはひたすら丈夫で医者いらずです。怪我もあんまり気にしませんね」

 だから気にすんなと股間を洗い出した。ビクッとした。

「島の人は立派ですね。あなたはオメガですか?」
「うん」
「そっか……みんなこんななのですね」
「そうですね」

 俺は諦めてされるがまま。女性の繊細な手つきにムクムクと……ごめんなさい。

「お気になさらず。触れば反応するのは当たり前ですから」
「……はい」

 奉仕することはあってもされる側は初めての経験。額に汗をかきながらメイドさんは頑張る。大変だよねお風呂の世話はさ。服着たまんまは暑いし。そう言うと微笑みながら、

「あなたは女性の裸は見慣れておりませんでしょ?気を使いました」
「ご、こめんなさい!あなたがよければ服は脱いで構いません。俺は女性は対象外なので襲ったりしませんよ」
「フフッありがとう存じます。次回はそうさせてもらいます」

 でも素敵ですね。まるで少年のような滑らかさ。腰のラインは女のようです。なんとまあと。

「本当にたまに見かけるエルフに似てますね」
「そう?ありがとうございます。最高の褒め言葉です」
「ええ。島の人はアルファもオメガも美しいですものね。他は女が好きそうな細マッチョでイケメン揃い。結婚の対象にならないイケメンは罪です」
「あはは……」

 女は目ざとく見つける。でも島の人と分かると絶望。最近は眺めるのを楽しみにするメイドも多く、妻になれなくても誘う人もいる。

「島の人は乗ってくれる人もいますから」
「うん。自分を好いてくれた人を好ましく思うのです。期待に応えたくなるというか」
「ええ。ふしだらと言われればそうなのでしょうが、今どき妻は処女がいいなんて人は変態と思われてますから」
「へえ」

 まあなあ。商売人でなくてもみんなエッチは大好き。誘われればベータの人にでもちんこは勃つ人も多い。おっぱいが柔らかいのを好む人すらいるから。

「私は……フフッ」

 少し照れたように笑い、どこもおかしくはない。きれいでしたとちんこも尻の穴も確認して満足そうにしている。

「俺たちいいでしょう?人と触れ合うのが大好きでエッチの快感も好き。だから民は大昔の頃から大して減りもせず今も生きる。ベータの人から見ればおかしな人だろうけど、俺たちはこれでいいのです」
「ええ。繁栄とは種族によるもの。ヘリット族は繁殖の民。それで安定しているのですから恥じることはありません。いにしえの血を残すことは並大抵ではありませんから」

 ベータと呼ばれる男女で子孫を残す種族は、大きく見れば穏やかさはなく攻撃的。ヘリット族に比べれば他者への思いやりも少ない。でもどんな環境にも耐えようとする創意工夫する知能があった。だから急激に増えたそうだ。

「北の寒い地域でも、南の砂漠の中であろうとも子孫繁栄して国にまで発展させる。それがベータの強みです。特に何かある訳じゃないですが、助け合う精神はあるのです」
「フフッそうですね」

 小さな村の時は島の人と変わらない。なのに人が増えると権力と地位に固執し出して……フフッとメイドさんは微笑む。

「ベータは沢山いますが種族の入れ替わりも多い。戦は敵を根絶やしにする戦い方が一般的で、併合や植民地化は少ないんですよ。我が国はよほどのことがない限り、併合の道を模索するようにはなってます」
「そっか……」
「ええ。ヘリット族はこの付近では奇跡的に生き延びた種族ですね」
「うん」

 体を流してくれて浴槽にどうぞって。俺は入ったけど、俺はお風呂あんまり好きじゃない。風呂だとすぐのぼせるだろ?それでね。

「そうなの?」
「うん。本土と違って暑い国でさ。冬くらいなんだ俺が浴槽に入るのは」
「へえ」

 夏は入ってもすぐ出る。入るなら湖がいい。王都のはずれに大きな湖があって観光地化しててな。仲間やお客さんと遊んだりもする。楽しいんだと話した。

「冬でも入れます?」
「冬は少し水の温度が低いから、真冬のひと月からふた月は無理かな」
「そっか。こちらの避暑地は夏だけですね」

 そんな話をしながらお風呂を出て、全身をオイルやなんかをぬりぬり。

「いらないかも。でも一応」
「丈夫なんです。肌荒れも起こしにくくてね」
「ふーん。いいなあ」

 後はお召しが掛かるまでお好きに。夕食もここにお持ちしますから、城の中でも見ますか?と聞かれた。なら、図書館行きたい。この城大きそうで迷子は確定してる。なら行っていいお庭と図書館がいいとお願いした。

「かしこまりました」

 そして城を歩く。うわッエルフ?来る予定あったっけ?とか。エルヴィーレだ!俺知ってるとか聞こえた。大半の人が立ち止まって俺を見つめた。

「美しいから仕方ありません」
「うん。島でも似たようなものなんです。気にしません」

 誘拐後髪も切ってなくて肩につくくらいになってて、女みてえなどとも聞こえた。違いますぅ。

「きゃあ。エルヴィーレ様だ!私……うっ」

 などと倒れ込む人まで。いやいや大げさだろそれはと思ったけど、女性の目が痛い。

「うわッちんこでけえ。休暇は島かな」
「ええ。行きましょうよ」

 などとヒソヒソ聞こえる。どこで判断してんだよ。服の上からじゃ分からんだろ萎えてるのに。そんなことを思いながら図書館へ。

「夕食の頃お迎えに来ましょうか?」
「ええ。それでお願いします」

 俺は圧巻の図書館に息を飲んだ。島の城とは規模が違う。嬉しくてウロウロと背表紙を眺めた。

「この辺は歴史か。隣は魔術書関連……見ても出来ないからパス」

 たくさんの本棚の間を歩く。娯楽書を探してんのよ。恋愛物とか冒険物なんかをな。広くて中々見つからない。あまりにうろついていたからか司書さんだろうか。なにをお探し?と声を掛けてくれた。

「娯楽の本かなんかないかなあって思いまして」
「でしたらこちらです」

 真面目を絵に描いたような男性だったけど、丁寧に案内してくれた。

「この棚からあちらまでがそうです」
「ありがとう存じます」
「いいえ。覚えてはおりませんでしょうが、私はあなたを抱いたことがございます。お店に復帰は?」
「今のところ予定はございません。申し訳ありません」

 誠実そうな方だ。覚えてはいないが優しかったんだろう。人とはおかしな人のみが記憶に残るもの。いい人は忘れがちなんだよ。

「そうか……それは残念。セレンたちがダメとは言わないのですが、どうにもあなたを忘れられず。復帰の時は宣伝して下さいませ」
「はい」

 ではと彼は下がった。客はどこにでもいるもんだな。そして本を決めて椅子に座り読み始めると、さっきの彼と同じような方が話しかけてくる。復帰はしませんと何度も話した。

「こんなに待たれてたのか。知らんかった」

 店に来んなと旦那様たちに言われてて、開店すると閉店まで絶対に行かなかったんだ。

「危険だから」

 なにが?とは思ってたけど、多少ごねる程度と考えてたんだ。俺高くて、基本客は貴族か大店の家の人たちが多かったから。綺麗な遊び方をする人ばかりだったんだ。

「あー……親や兄貴が厳選してたのかも」

 話しかけてくる人の中にはちょっと下品な感じの人もいた。それでかな。なんて考えながら読書を楽しみ、メイドさんが迎えに来て夕食。そしてすぐにお召しは掛かった。

「この城はそういった夜の遊びをする部屋が三階にございます。そちらへ」
「はい」

 俺がいる客間は王族の関係者の客間。三階は王族の趣味の部屋がある場所らしく、三階は王族の遊び場?という空間だそう。西の塔は全部王族の私的エリアとも言うそうだ。ふーん。

「個人的なお部屋はこの西の塔に渡り廊下で別棟です。警護も完璧な本当の私的な場所ですね」
「ふーん」

 こちらの部屋です。中でお待ちをとメイドさんはくるりと振り返りテクテク。え?行っちゃうの?

「私は入れません。担当のメイドがおりますが、その者も下がってますね」
「そう……来るまで一緒かと」
「すみません。お一人ですがお酒などはありますから、勝手に召し上がって下さいませ」
「うん」

 では明日ねと彼女はスタスタ歩いて階段を降りる。そして見えなくなった。

「嘘でしょ。王様の相手するのにこの対応はねえ。島の城でも相手が来るまでメイドさんがお部屋にいてくれたのに」

 嘆いても仕方ないから部屋に入った。


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