真紅のダリアは闇夜に開く 〜本能のまま好きに生きてたら奇跡が起きた〜

琴音

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29 正式な「寵姫」になる

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 俺は心が繋がったエルフィン様ととても幸せな二週間を過ごし島に帰宅。そして王様からのお手紙を旦那様に渡した。

「なにこれ。王様の蝋封があるけど」
「読んでくれ」
「うん」

 ふたりは封を切り中の手紙を出す。そして読み進めてなに!って大声を上げた。

「お前夜伽ではなく、王様の正式な愛人になったの?そんでうちの後ろ盾?」
「うん。たぶんだけど、王様には古いうちの種族みたいな血があると俺は思う。エルフィン様もそうかもなあって言ってた」
「なにそれ」

 俺は初めて肌を合わせた時から今まで感じたこと、エルフィン様の研究の話しをした。おかしいんだよって。

「あー……あり得そうだな」
「うん。ベータがいる夫婦はそんなこと言うね」
「だろ?仮説の域は出ないけど、エルフィン様もこちらで調べてみるって言ってたよ」
「ふーん。庶民が王様の愛人ね。すごい出世だな」

 アレッシオは呆れたように言うが、いいことかもなって。王様が後ろ盾ならばおかしな客は一掃出来るし、たとえ王様の死後でも一度お手つきになったんだ。この店は箔が付くだろって。

「うん。元々の公爵家と本土の王様。そしてユリシーズ様は俺の味方で、俺は彼の夜伽でもあるから」
「どれだけ王侯貴族をたらしこんでるんだか」
「エルヴィーレは天性の人たらしだな。でも分かるよ。僕は誰を抱いても君以上に素敵な人はいないといつも思ってるから」

 ふたりは呆れたようになったが、王様の気持ちは分かる。夫だから余計にって。島の顔だからじゃない。エルはなんか……なんだろ?と唸る。

「なんだよ」
「綺麗とかそんなんじゃないんだ。例え美しくなくてもその性格……?」
「僕も分かんないけど、なんか惹かれるんだよ。番だからだけじゃないなにか。分かんないけど」

 理由は分からない。でもなにか引きつけるものがある。エッチが好きでいつもニコニコしてて、母親もきちんとする。う~んとふたりは唸り、

「嫌味がないんだなきっと」
「そうか?俺人の悪口も言うよ?いつもニコニコなんかしてないし」
「う~ん……アッそうだ。エルは自分が信頼してる人に信頼してますって伝えるからだ」
「え?それ普通じゃ?」
「違うんだよ」

 ベルベルトは信頼してますって全身でなつくように……なんだろそんな感じ。そのせいだろって。他も当然あるけど、これが一番な気がするって。

「いやいや、俺はその……そうなのか?」
「ああ。人当たりの良さは性格だろう。だが愛してますとか、家族のように大切ですよって言われると、お前必死にその人のために動くだろ?だからかもな」
「そりゃあ自分ために動いてくれるなら気持ちだけでもとか、行動でとかお返ししたくなるでしょ」
「お前のは嘘くさくないんだよ。たぶんな」

 納得はいかないけど、他人がそう思うのならばそれでいい。変われないから。そうそうそれでね?と俺はもう一つ言われていたことを伝えなきゃとふたりに向き直した。

「でな。王様がこちらに来た時とか、本土の催しには出席しなくちゃならなくなりました」
「え?それお前だけだろ?」
「いえ。旦那様もです」
「なにそれ?」

 俺の立ち位置は「寵姫」となる。それは身分など関係なく、王族の末席にいることになるらしい。俺もこれは意味不明だがな。ふたりは呆気に取られていた。そしてもう一度「なにそれ?」と呟いた。

「なんだろうな。女性なら子を産む役割もあるらしい」
「ほえ……なら側室みたいなものか?」
「わからん。俺は子を産めないからなんだろうね?」

 貴族や王族のしきたりなど分からない。でも慣例的に島のオメガを傍に置く時はこういう身分にして城に住まわすそうだ。俺は通うけどさ。旦那様たちが愛しくて無理って断ったんだ。それに店もあるしさ。

「本当は三人で城に来て欲しかったらしいんだ」
「それ無理だろ。兄貴はこの店やってくんないだろ」
「うん。血の保存なのは兄貴知ってたんだ。それで逃げた。自由が利かないから嫌だってさ」
「だろうな。そういうアルファだよアレはな」

 ジルベールにも聞いたら、そのことを知らない兄弟に押し付けるのはどの家も同じ。俺もだよって。俺は末の子で、兄貴らはとっくに逃げてたそうだ。でも任されたからには発展させるのが俺の信条。島一番だろうと盛大に笑ってたんだよなあ。

「店は潰すことは出来ないから、説明したらエルフィン様は引いたよ」
「そっか。そうだよな」
「ということで、ふたりを大公のところにぶっこむ予定です」

 そう言うとなんで?と不思議そう。

「王族の末席が与えられたの。王族としてのマナーや振る舞い、ダンスにもろもろだな。覚えろってさ」
「なにそれ。面倒くさいんですけど」

 ベルベルトは呆気に取られるアレッシオの隣でフフンと不敵に鼻を鳴らす。

「僕は身についてるもんね。騎士だったからさ」
「ああ?マジなの?」
「当然だろ。近衛騎士の騎士とは貴族の称号でもあるんだよ。城の催しにも普通に出るんだ」
「うそ……」

 ベルベルトは高笑い。アレッシオはさらに呆然。

「大公様には話を通してるから、そのうち呼び出しが掛かるからよろしくってさ」
「早いな動きが」
「エルフィン様の特徴らしい。頭の回転がものすごく早くて間違いはない。実務能力はバケモンよ」
「ほほう。すげえな」

 城の催しは、エルフィン様が関わるものだけでいいらしい。だから厳選して呼び出すから数は多くない。無理のない範囲で呼び出すからと言われている。それ以外に愛人としての役割で呼び出しもする。

「そこはいいんだが、城の催しは……」

 アレッシオは華やかなことは好き。でもそれは庶民の華やかさが好きなだけなんだ。自分が貴族の愛人とかになりたいとも考えたこともないし嫌だそうだ。

「貴族を抱けと言われれば訓練もして店の子並みに腕を磨くけど……舞踏会とか晩餐会とか……行きたくない」
「なら構わないよ。僕が出るから」
「ダメなものあるの!」

 嫌そうになるアレッシオ。後ろ盾は欲しいし金も寵姫に変更になれば多くなる。いいことだけど俺も?とかブツブツ。

「支度金も二人の分も出るんだよ。ベルも仕立てに何度かお城に行ってね」
「ああ、構わんよ」
「ふーん。なら俺とエルが行儀見習いに行くの?」
「いや?お前だけ」
「なんで!」

 なんで俺まで行くと思うかね。俺ね二年も王様の夜伽してたのよ。つーことはだ。身についてると考えるのが当然だろ。そう言うと愕然としていた。バカめ。

「俺は城にも貴族の屋敷でも生活してんのよ。暇だろって遊びのように教わったんだ」
「そ、そうなの?」

 アレッシオはさらにおののいた。当たり前だろ。俺の客は元々貴族ばっかでさ。言葉遣いは親にも躾けられた。ダンスも暇な時間メイドさんが教えてくれたし、伯爵家では小さな楽団を呼んで夜は楽しんでたのよ。

「なんだよ。みんな身につけてんのかよ」
「騎士は当然だ。街の衛兵も募集がある時にチャレンジするから、いつまでも衛兵でいるつもりはない。みーんな努力するんだよ」
「ふーん」

 面倒くさそうに頭の後ろで手を組み、ソファの背もたれにのけぞる。仕方ないかあと諦めたようだ。

「まあ、アレッシオは頑張ってくれ。愛する俺のために」
「まあ……メリットもあるから頑張るさ」
「ありがと。今日は優先的にアレッシオだけに抱かれます。ベルは明日からな」
「うん。いいよ」

 なんて話し合いが出来てアレッシオは怒ってたんだろう。激しく抱かれ俺はぐったり。

「まだ足んねえ」
「いえ。少し休憩を。喉が乾いた」
「そうか。それもそうだな」

 そして少し休憩するとズブリ。アレッシオの責めは続き、足腰立たないくらいになり終わり。

「アレッシオ立てない」
「俺も。ごめん」
「いいよ」

 こうなるかと思って店からかっぱらってきたピンクの小瓶を渡された。俺は受け取りすぐに飲んだ。ふう。何とか動けるな。

「俺がさつなんだよ。城に行ったら帰って来れないんじゃ。通いじゃダメなのか?」
「ダメ。生活全般を知らないとだから。アレッシオなら出来るさ。家のお仕事もしてたんだから」
「甘いな。うちは問屋だ。がさつの集まりだよ」
「い、いやいや、出来ます。俺の愛しい旦那様だから」

 俺はかわいくウルウルとした目で見つめた。俺のために、店のために出来るよねアレッシオ?と猫なで声も出す。

「ったくエルは。その甘い声に弱いんだよなあ俺はさ」
「んフフッ大好き」

 まあいいや。夫が三人になろうが構わん。愛しさは変わらないし、生活も変わらないだろ?ならいいって。

「慣例的に催しに出ないってことは出来ないんだよ。それだけなんだ。ノリ的には家族の一員?妻(仮)のような立ち位置だそうだ。夫たちも伴うのは島の人だからだそうだよ」
「ふーん。なら何とかなるかな」
「うん。形だけは整えろってことだから。王様の家族としてお傍にいて恥ずかしくないようにってことなんだ。でも警備はつかない。本土では付く」
「面倒くせえが、分かった」

 そして祭りの三か月前。エルフィン様がこちらに来ることが決まって、アレッシオにお城から行儀見習いの招集の手紙が来た。

「がんばれぇー」
「うるせえよ!」

 アレッシオは叫びながら迎えの馬車に乗った。窓をスパンッと激しく開けて、

「すぐに帰ってくるからな!」
「期待してまーす。愛しの旦那様」

 嫌だって顔に書いてあるけど、俺とベルベルトはにこやかに見送った。









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