38 / 255
14-1 二人きりの夜
しおりを挟む父はいつも遅い、遅いは遅いが毎日帰っては来る。
まあ疲れているのか土日は、一日寝ているみたいなんだけど。
母は看護士の為、夜は居たり居なかったり
夜勤の日は当然居ない。
いつものリビングでの放課後ティータイム、このフレーズいい加減やばいかな?
妹がウキウキしながら話し始める。
「お兄ちゃん、今晩二人きりだねー」
「え? そうなの? 父さん帰って来ないんだ、そういえば母さん夜勤だろ? なんで今いないんだと思ったんだけど、なにかあったの?」
「うん、お父さん出張だって、で、お母さんがなんか泣いてた」
「な、泣いてた?!」
父さんが出張で母が泣く? 泣くかあの母が?
「なんかこないだ しおりいい、お母さんの病院3交代制から2交代制になるのおおおたすけてえええって」
いきなり母親の物まねを身振り手振りも加えてやりだす、妹……上手すぎる。
「はは、似てる、ところで、2交代制って何?」
「え、お兄ちゃん聞いてないの」
「ないね、相変わらず俺には何も言わない、おれは家でもぼっちか…」
学校と家でぼっちとか何?俺もう生きていけない…
「私がいるからボッチじゃないよ~~、2交代制ってなんか仮眠が入って12時間以上働くとかなんとか」
「12時間以上?、へーー労働基準とか平気なのかな?」
「仮眠があるから平気なんじゃない?」
「軽いな、で今日は夜勤なのか」
「そう、つまり、お兄ちゃんと私の二人きりの夜、えへへへへへへ」
また違う世界に行ってしまった……
「またか……、おーーーいなんにもしないぞーー別に」
「えーーー、しないのーーー」
一瞬で戻って来て手をグーにし、がんばるぞいポーズをしながらの抗議、なんだそれ、可愛いぞ……
「何をするんだよ!」
「えーー、ゲームとか、トランプとか、夜明けのコーヒーを二人で飲むとか?」
「最後のは俺たち兄妹だと、ただの朝食って意味だけどな、ていうか今さらだろ、父さんが出張で母さん夜勤って前にもあっただろ」
昔から二人でご飯を食べてたし。
「でもぉーー私たちぃ今は付き合ってるしぃーー」
体をもじもじさせながら、口に人差し指を当て上目づかいで俺を見る、あざといぞ、まあ可愛いけど。
「元カノで、今は兄妹としてだけどな」
「元鞘って言葉知ってる? お兄ちゃん」
「本ばっかり読んでる俺に聞くな、本来あるべき姿に戻るって意味では、今の状態が元鞘だ」
「ぶうううううう」
口を尖らせて横を向いてすねる、ああ、あのほっぺた押してえ。
「来週から中間だろ、遊んでる暇なんてないだろ」
正確には土日挟んであと5日……ヤバいかな?
「お兄ちゃん勉強できるじゃない、中学の時のテストだって、いつも結構いい点取ってるし」
「なぜ栞が俺の点を知っている?」
「私はお兄ちゃんの事は何でも知っています! そういう能力の持ち主です!」
「はいはい、部屋に忍び込むのは止めような」
「ううう」
泣きまねしても駄目、そういえば告白の時に例の本ばれてた、場所変えないと。
「栞は試験勉強しないのか?」
「え? お兄ちゃんは試験勉強ってするの?」
「は?」
「栞、勉強しないの?」
「うーーん、試験勉強って意味ではしないかなー?」
「日頃から家でしていると…」
さすが優等生は違うな……
「え?、学校で勉強してるよ」
「……図書館とかで?」
俺と一緒に帰っているからいつ図書館で勉強しているのか? 分からないので聞いてみた。
「ううん授業で」
「……家では?」
「学校の勉強って意味ではしてないかな? 学校の勉強は授業聞いて教科書読んでるだけだよ」
は? あのコミュ力といい勉強といい、うちの妹ってチートなの?。
俺は妹をまだまだ侮っていたのかもしれない……
「はあ、そうですか…、じゃあ部屋でいつも何してるんだ?」
お互いの部屋にはほとんど行き来した事がない、今もリビングだし。
「お兄ちゃんの事考えてる!」
「……俺の事以外は?」
「うーーーん友達にライン送ったり、メール送ったり、友達の頼まれ事とかしてたり?」
「さすが友達多いだけあるなー、趣味とかしてないのか?」
「本とかは読むけどー、あ!お兄ちゃんの為に何かを作ったりしてるー」
「……」
妹の愛が重いというか、心配になってきた。
「よし分かった遊びに行くぞ!」
「え、朝まで、やったえへへへへへ」
「補導されるから夜中は駄目だよ、今からだと近場だなーカラオケかなー?ボーリングでもいいか?」
18歳未満は23時以降外出してはいけません@県条例。
「その代わり帰ってきてから数学見てくれよ、高校になってからちょっとやばいんだよ」
「うん、えへへへお兄ちゃんと、夜デートに夜のお部屋でお勉強」
まあ、栞に勉強見てもらう口実にはなったかな?
こうでもしないとプライドが邪魔して言えないからな……
さてどっちに行こうか、どっちの方が文字数かせ、あ、いや楽しめるかだな。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
250
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる