38 / 40
第38話 リンvsカルロ
しおりを挟む
リン視点
仁が一人の騎士を相手にしているとき、こちらももう一人の騎士と向かい合っていた。
目の前の男はカルロと名乗った。このカルロという男は余裕そうな目をしている。儂が見た限りでは、茶髪の男よりも強いように見える。それゆえ儂とフィリアという娘騎士で対処することに決めた。
そして茶髪の男は仁に任せた。仁も消耗していたが、儂は仁を信じている。仁ならやってくれるだろう。それに最悪、耐えるだけでもいい。儂らがこのカルロという男を下せば、三対一の構図になるからだ。それに時間はこちらの味方である。セネクスという騎士やフィンという聖騎士も時間稼ぎをすれば援軍に来るだろう。
だが安心や慢心は出来ない。儂らがこやつを倒せなければ、こやつの剣が仁に向く。そうなればこの戦いに敗れる。
だがこちらの方が人数的には有利である。儂は片腕を飛ばされたが、娘騎士がいる。この娘騎士の実力は知らぬが、あの聖騎士のお供である。ならばやってもらわなければ困るというものだ。
「フィリアとやら、そなた騎士として当然まだやれるであろうな?」
「…当たり前よ!こいつを叩きのめしてやるわ」
やる気はあるようで、剣を構えている。だがこちらは仁よりもかなり消耗しているように見えた。最初に見たときより、力強さがないように感じる。
「…そなた、本当にやれるのであろうな?儂らはそなたを守るために戦っておるのじゃぞ」
「わかってるわ!ただ仁と戦っているとき、すぐに終わらせようと思ったのに出来なかったの!仁が思ったよりもやるから、神性力を使い過ぎてしまったのよ」
どうやらこの娘騎士は仁に短期決戦を仕掛けようとして、出来なかったらしい。おそらく仁が加護持ちというのを知らなかったからだろう。
「…このバカ者。それじゃあ、そなたは見た目通りの小娘同然ではないか!」
「うっさいわね!あなたみたいな少女に小娘なんて言われたくないのよ!それと人に向かってバカっていうのもどうなのよ!」
少女は金髪を揺らし、堂々と言った。もしここに仁がいたなら、『それこそお前が言うな』と間違いなくツッコミが来ただろう。
「…まぁ、良い。とにかくこれで二対一じゃ。一応カルロとやらに言っておく。そなた降参する気はないか?人数的にそなたは不利じゃ!なんなら逃がしてやっても良いぞ?」
「…必要ない」
男の態度は変わらない。
「バカね!あなたは一人なのよ。それにもうすぐ、きっとセネクスが来てくれるわ。そうなったらあなたは間違いなく終わりよ!今のうちに降参したら、少しはフィン姉様に取り合ってあげるわ」
それに対し娘騎士が吠えた。この男は元々娘騎士を騙し討ちし、有利な二対一という状況でセネクスという騎士を仕留める計画をしていたはずである。
こちらも消耗しているとはいえ、この男一人では分が悪いと思う。だから現状では諦めて逃げてもいいし、降参してもいい。まあこれだけの騒動を起こしたということは降参しても免職では済まないだろうが。
だがカルロは剣を納めない。この男も降参など意味がないことを理解している。諦めるつもりがないことがわかった。代わりに懐からあるもの出す。
「フッ…」
それは銀色の笛だった。カルロは少し先の未来を想像してか、楽しむように笛を吹く。辺りにきれいな音色が響いた。
儂はその音色が耳に入ってきた瞬間、僅かに意識が持っていかれそうになる。それは一瞬のことであった。そしてバタッと人が倒れた。それは娘騎士であった。
「…これはいったいどういうことじゃ?」
儂は動揺を隠せない。その音色を聞いた娘騎士が突然意識を失ったのである。
「フッ…、フハ、フハハハハハハ!」
男は笑い始めた。まるでここからが自分のターンであるように。不利な状況におかれた自分の逆転劇が幕を開けたかのように。
「なぜそいつが倒れているのか、理解できないのだろう?当然だ。この笛は特別だからな」
「特別じゃと?」
「そうだ。お前も薄々わかっているのではないか?この世界で理不尽なことや常識で計れないことには大体神性力が関わっている。お前も聞いたことくらいあるのではないか?」
聞いたことはあるし、知っている。なんせ儂は神だ。そしてこの現象に神性力が関わっているのであれば、可能性は二つ。
一つはこやつの持つ笛に神が宿っている可能性。だがそれは否定してもいいと思える。儂のように宿る神は滅多に生まれない。こやつのような騎士が神の宿る笛を持っているとは考えにくい。
そしてそうであればもう一つの可能性が答えである。
「…それは聖遺物なのじゃな」
「…正解だ!この笛は聴いた対象の意識を封印する。『眠りの笛』と呼ばれている聖遺物。この笛は扱うのに神性力が必要だが、その分効果は強い。この笛の音色を聴いた全てのものを眠らせることが出来るのだからな。横にパブロがいたときは奴も眠ってしまうため、使えなかった。だが今は違う。有効な範囲には俺とお前たちしかいない」
それは実に強力な聖遺物である。こやつが特別だと言うことが理解出来た。
「どうだ?これで人数差はなくなったぞ?降参するか?逃げてもいいぞ?そいつを置いていくのであればな」
「この娘騎士をそなたのようなクズにやるつもりはない!」
「…そうか。だがまさかお前がこの笛の眠りに耐えるとはな」
カルロは意外そうにした。確かに儂は眠っていない。
「全てのものを眠らせると言っておったな?…何で儂とそなたは眠っておらんのじゃ?」
矛盾を指摘した。全てのものを眠らせる。ならば儂とこの笛を吹き、音色を聴いた本人が眠っていないのはおかしいことだ。
「フッ…、それはな。神性力で発動しているからだ。この笛の音色には神性力が混じっている。だが加護持ちは神性力を体内に持っている。ゆえに加護持ちはこの音色に乘った神性力だけ弾くことが出来る」
「…」
それはつまりこやつも加護を受け、神性力を持っているということを表している。この国の騎士であれば、おそらく太陽神の加護であろう。
だか同じ加護を持つ娘騎士が気を失っている。それはなぜか。
「…ふむ。ちなみにそこの娘騎士も加護持ちのはずじゃが?」
「ああ。そいつは加護持ちでも消耗していた。もう既に神性力を使い切っている。だからこの笛の音色に耐えられなかったのだろう」
「…なるほど。ちなみに起こす方法は?」
「簡単だ。そいつの神性力が回復するまで待つか、この笛を破壊すればいい」
つまり時間を稼ぐ。もしくはこやつを倒せば良いということである。
「…それでそなたはそんなにペラペラと答えて良いのか?儂がその笛を破壊すれば、状況は元に戻るのじゃぞ?」
「フッ…、お前にそれが出来るのであればな。この聖遺物は神性力による攻撃じゃないと壊すことは不可能だ。お前はこの音色に耐えた。だからお前が神性力を持っているのは間違いない。だが果たしてお前の加護で武器に神性力を通せるのか?無理だろう」
「…」
「なぜなら、それが出来るならとっくに使っていたはずだ!セネクスとの戦いでな」
この男はこの状況に酔っぱらっているかのように言ったが、それは事実だった。儂は理由があって武器に神性力を通さずに今まで戦っていた。聖遺物のことは良く知らなかったが、そのような性質があったとは…。神性力をぶつけないと壊せないというのは厄介である。
だがこやつは儂が神性力を武器に通していないのを加護が弱いからだと思っているようだ。しかし実際は違う。
武器に神性力を通せないのは、武器に問題があるからだ。儂が持つ槍は安物。神性力に対する耐性がない。この槍では神性力を通し続けると長時間持たない。それに儂は加護持ちでなく、神である。
「お前は武器を神性力で染めることは出来ない。俺はお前らを監視していたが、その様子はなかった。つまり、お前にこの笛は壊せないということだ」
カルロは口角を上げたまま続けた。
「…そうか。じゃが、儂がその笛を壊せないからといって、そなたを倒すことが出来ないというわけではないと思うがのう」
「いいや、不可能だ。俺はな、加護は受けてたが弱い神性力しか得られなかった。だがその分技術を、経験を積んだ。俺が超えられなかったのは聖騎士どもだけだ。あいつらは俺とは違う特別な加護を持っていたからな」
「…つまり、武器に神性力を通すこともできない儂。そして神性力の弱いそなた。共に加護の厚さは同じくらい。じゃから儂は技術と経験で劣るそなたに負けると言いたいのじゃな?」
「その通りだ」
カルロは理屈っぽくそう言った。確かに儂の見た目は少女だから、こやつがそう思うのも当然であった。
「さあ、来るがいい」
カルロはそういって構えた。剣を右手に、笛を左手に持って。
どうやら儂が右腕しかないことを利用して、笛を盾に使おうとしているようだ。確かに笛が壊せない者には効果的である。
儂そこに突っ込んだ。儂の槍はこやつに笛で弾かれる。当てつけのように。それを繰り返す。
「どうだ?壊せないだろう?」
「…」
言葉を無視して、槍を払い続ける。
「フッ…。片腕でしか攻撃できないのであれば、それを弾くのも片腕で足りる」
「…」
防がれても槍は止めない。まずこやつの言っていることが本当とは限らないからだ。だが笛は壊せないし、歪まないこともわかった。
「これで笛が壊せないことが理解できただろう。そろそろ俺もいくぞ」
カルロはそう言うと、右手に持つ剣を振るために踏み込む。そして儂はここで少し戦いのリズムを加速させる。カルロは片腕で剣を持っているため、両手持ちより剣の動きが遅くなる。そこを狙うのだ。
カルロに守りに入らせる。そのために突きを混ぜたり、細かい攻撃を繰り返した。しかし全て笛で受け止められ、防がれる。
「フハハ、無駄だとわかっていても足掻くか。やはりお前もガキだな」
槍はカルロに届かない。
儂は神性力を使って身体能力を上げているが、それはこやつも同じようだ。儂の速さについてくる。速さゆえの重さに耐えている。
こやつの言う通り、神性力の量で聖騎士に及ばないのはお互い事実のようだ。今の儂もあのセネクスという騎士と刃を交え、神性力を多少使っている。消耗しているのだ。
ふと仁の様子が気になり、後方をちらりと見る。どうやら仁も苦戦しているようだ。少しふらついている仁が視認できた。儂は自分のことを一度棚に上げて叫ぶ。
自分にも活を入れるように。この状況を覆すために。不可能を貫くために。
仁が一人の騎士を相手にしているとき、こちらももう一人の騎士と向かい合っていた。
目の前の男はカルロと名乗った。このカルロという男は余裕そうな目をしている。儂が見た限りでは、茶髪の男よりも強いように見える。それゆえ儂とフィリアという娘騎士で対処することに決めた。
そして茶髪の男は仁に任せた。仁も消耗していたが、儂は仁を信じている。仁ならやってくれるだろう。それに最悪、耐えるだけでもいい。儂らがこのカルロという男を下せば、三対一の構図になるからだ。それに時間はこちらの味方である。セネクスという騎士やフィンという聖騎士も時間稼ぎをすれば援軍に来るだろう。
だが安心や慢心は出来ない。儂らがこやつを倒せなければ、こやつの剣が仁に向く。そうなればこの戦いに敗れる。
だがこちらの方が人数的には有利である。儂は片腕を飛ばされたが、娘騎士がいる。この娘騎士の実力は知らぬが、あの聖騎士のお供である。ならばやってもらわなければ困るというものだ。
「フィリアとやら、そなた騎士として当然まだやれるであろうな?」
「…当たり前よ!こいつを叩きのめしてやるわ」
やる気はあるようで、剣を構えている。だがこちらは仁よりもかなり消耗しているように見えた。最初に見たときより、力強さがないように感じる。
「…そなた、本当にやれるのであろうな?儂らはそなたを守るために戦っておるのじゃぞ」
「わかってるわ!ただ仁と戦っているとき、すぐに終わらせようと思ったのに出来なかったの!仁が思ったよりもやるから、神性力を使い過ぎてしまったのよ」
どうやらこの娘騎士は仁に短期決戦を仕掛けようとして、出来なかったらしい。おそらく仁が加護持ちというのを知らなかったからだろう。
「…このバカ者。それじゃあ、そなたは見た目通りの小娘同然ではないか!」
「うっさいわね!あなたみたいな少女に小娘なんて言われたくないのよ!それと人に向かってバカっていうのもどうなのよ!」
少女は金髪を揺らし、堂々と言った。もしここに仁がいたなら、『それこそお前が言うな』と間違いなくツッコミが来ただろう。
「…まぁ、良い。とにかくこれで二対一じゃ。一応カルロとやらに言っておく。そなた降参する気はないか?人数的にそなたは不利じゃ!なんなら逃がしてやっても良いぞ?」
「…必要ない」
男の態度は変わらない。
「バカね!あなたは一人なのよ。それにもうすぐ、きっとセネクスが来てくれるわ。そうなったらあなたは間違いなく終わりよ!今のうちに降参したら、少しはフィン姉様に取り合ってあげるわ」
それに対し娘騎士が吠えた。この男は元々娘騎士を騙し討ちし、有利な二対一という状況でセネクスという騎士を仕留める計画をしていたはずである。
こちらも消耗しているとはいえ、この男一人では分が悪いと思う。だから現状では諦めて逃げてもいいし、降参してもいい。まあこれだけの騒動を起こしたということは降参しても免職では済まないだろうが。
だがカルロは剣を納めない。この男も降参など意味がないことを理解している。諦めるつもりがないことがわかった。代わりに懐からあるもの出す。
「フッ…」
それは銀色の笛だった。カルロは少し先の未来を想像してか、楽しむように笛を吹く。辺りにきれいな音色が響いた。
儂はその音色が耳に入ってきた瞬間、僅かに意識が持っていかれそうになる。それは一瞬のことであった。そしてバタッと人が倒れた。それは娘騎士であった。
「…これはいったいどういうことじゃ?」
儂は動揺を隠せない。その音色を聞いた娘騎士が突然意識を失ったのである。
「フッ…、フハ、フハハハハハハ!」
男は笑い始めた。まるでここからが自分のターンであるように。不利な状況におかれた自分の逆転劇が幕を開けたかのように。
「なぜそいつが倒れているのか、理解できないのだろう?当然だ。この笛は特別だからな」
「特別じゃと?」
「そうだ。お前も薄々わかっているのではないか?この世界で理不尽なことや常識で計れないことには大体神性力が関わっている。お前も聞いたことくらいあるのではないか?」
聞いたことはあるし、知っている。なんせ儂は神だ。そしてこの現象に神性力が関わっているのであれば、可能性は二つ。
一つはこやつの持つ笛に神が宿っている可能性。だがそれは否定してもいいと思える。儂のように宿る神は滅多に生まれない。こやつのような騎士が神の宿る笛を持っているとは考えにくい。
そしてそうであればもう一つの可能性が答えである。
「…それは聖遺物なのじゃな」
「…正解だ!この笛は聴いた対象の意識を封印する。『眠りの笛』と呼ばれている聖遺物。この笛は扱うのに神性力が必要だが、その分効果は強い。この笛の音色を聴いた全てのものを眠らせることが出来るのだからな。横にパブロがいたときは奴も眠ってしまうため、使えなかった。だが今は違う。有効な範囲には俺とお前たちしかいない」
それは実に強力な聖遺物である。こやつが特別だと言うことが理解出来た。
「どうだ?これで人数差はなくなったぞ?降参するか?逃げてもいいぞ?そいつを置いていくのであればな」
「この娘騎士をそなたのようなクズにやるつもりはない!」
「…そうか。だがまさかお前がこの笛の眠りに耐えるとはな」
カルロは意外そうにした。確かに儂は眠っていない。
「全てのものを眠らせると言っておったな?…何で儂とそなたは眠っておらんのじゃ?」
矛盾を指摘した。全てのものを眠らせる。ならば儂とこの笛を吹き、音色を聴いた本人が眠っていないのはおかしいことだ。
「フッ…、それはな。神性力で発動しているからだ。この笛の音色には神性力が混じっている。だが加護持ちは神性力を体内に持っている。ゆえに加護持ちはこの音色に乘った神性力だけ弾くことが出来る」
「…」
それはつまりこやつも加護を受け、神性力を持っているということを表している。この国の騎士であれば、おそらく太陽神の加護であろう。
だか同じ加護を持つ娘騎士が気を失っている。それはなぜか。
「…ふむ。ちなみにそこの娘騎士も加護持ちのはずじゃが?」
「ああ。そいつは加護持ちでも消耗していた。もう既に神性力を使い切っている。だからこの笛の音色に耐えられなかったのだろう」
「…なるほど。ちなみに起こす方法は?」
「簡単だ。そいつの神性力が回復するまで待つか、この笛を破壊すればいい」
つまり時間を稼ぐ。もしくはこやつを倒せば良いということである。
「…それでそなたはそんなにペラペラと答えて良いのか?儂がその笛を破壊すれば、状況は元に戻るのじゃぞ?」
「フッ…、お前にそれが出来るのであればな。この聖遺物は神性力による攻撃じゃないと壊すことは不可能だ。お前はこの音色に耐えた。だからお前が神性力を持っているのは間違いない。だが果たしてお前の加護で武器に神性力を通せるのか?無理だろう」
「…」
「なぜなら、それが出来るならとっくに使っていたはずだ!セネクスとの戦いでな」
この男はこの状況に酔っぱらっているかのように言ったが、それは事実だった。儂は理由があって武器に神性力を通さずに今まで戦っていた。聖遺物のことは良く知らなかったが、そのような性質があったとは…。神性力をぶつけないと壊せないというのは厄介である。
だがこやつは儂が神性力を武器に通していないのを加護が弱いからだと思っているようだ。しかし実際は違う。
武器に神性力を通せないのは、武器に問題があるからだ。儂が持つ槍は安物。神性力に対する耐性がない。この槍では神性力を通し続けると長時間持たない。それに儂は加護持ちでなく、神である。
「お前は武器を神性力で染めることは出来ない。俺はお前らを監視していたが、その様子はなかった。つまり、お前にこの笛は壊せないということだ」
カルロは口角を上げたまま続けた。
「…そうか。じゃが、儂がその笛を壊せないからといって、そなたを倒すことが出来ないというわけではないと思うがのう」
「いいや、不可能だ。俺はな、加護は受けてたが弱い神性力しか得られなかった。だがその分技術を、経験を積んだ。俺が超えられなかったのは聖騎士どもだけだ。あいつらは俺とは違う特別な加護を持っていたからな」
「…つまり、武器に神性力を通すこともできない儂。そして神性力の弱いそなた。共に加護の厚さは同じくらい。じゃから儂は技術と経験で劣るそなたに負けると言いたいのじゃな?」
「その通りだ」
カルロは理屈っぽくそう言った。確かに儂の見た目は少女だから、こやつがそう思うのも当然であった。
「さあ、来るがいい」
カルロはそういって構えた。剣を右手に、笛を左手に持って。
どうやら儂が右腕しかないことを利用して、笛を盾に使おうとしているようだ。確かに笛が壊せない者には効果的である。
儂そこに突っ込んだ。儂の槍はこやつに笛で弾かれる。当てつけのように。それを繰り返す。
「どうだ?壊せないだろう?」
「…」
言葉を無視して、槍を払い続ける。
「フッ…。片腕でしか攻撃できないのであれば、それを弾くのも片腕で足りる」
「…」
防がれても槍は止めない。まずこやつの言っていることが本当とは限らないからだ。だが笛は壊せないし、歪まないこともわかった。
「これで笛が壊せないことが理解できただろう。そろそろ俺もいくぞ」
カルロはそう言うと、右手に持つ剣を振るために踏み込む。そして儂はここで少し戦いのリズムを加速させる。カルロは片腕で剣を持っているため、両手持ちより剣の動きが遅くなる。そこを狙うのだ。
カルロに守りに入らせる。そのために突きを混ぜたり、細かい攻撃を繰り返した。しかし全て笛で受け止められ、防がれる。
「フハハ、無駄だとわかっていても足掻くか。やはりお前もガキだな」
槍はカルロに届かない。
儂は神性力を使って身体能力を上げているが、それはこやつも同じようだ。儂の速さについてくる。速さゆえの重さに耐えている。
こやつの言う通り、神性力の量で聖騎士に及ばないのはお互い事実のようだ。今の儂もあのセネクスという騎士と刃を交え、神性力を多少使っている。消耗しているのだ。
ふと仁の様子が気になり、後方をちらりと見る。どうやら仁も苦戦しているようだ。少しふらついている仁が視認できた。儂は自分のことを一度棚に上げて叫ぶ。
自分にも活を入れるように。この状況を覆すために。不可能を貫くために。
0
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる