魔獣の姫に黒の騎士

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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第八の魔獣の姫1

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世界で最も有名な公的魔導研究組織が有る。
その名も『ウロボス』。正式呼称を『独立魔導研究機関ウロボロス』という。
掲げる信念は唯一つ『世界平和への邁進』。
魔法を扱うものならば知らない者は居ない魔導の最高峰と謳われる魔導研究機関である。
魔導の研究というものは、恐ろしく金銭と時間を必要としている為、潤沢な財源が無ければ継続執行する事は不可能である。
組織が大型化するほどに必要な経費は増え、公式だろうが非公式だろうがパトロンは必要不可欠なもの、多くの魔導研究機関はパトロンを複数抱えている。最たるものが国立魔導研究機関だろう。
その他、複数の貴族が共同で所有する公立もあるが、最も研究が進んでいるのはやはり税金で悠々自適に研究ができる国立に他ならない、『ウロボロス』を除いては。
パトロンを持つと魔導の研究はパトロンの意向・嗜好に左右されてしまう。
信念を掲げ、看板に『魔導』の二文字を刻んで設立されたウロボロスにとっては、それは許容してはならない事であった。
『魔導』とは、単なる魔術に関する研究だけに留まらず、その使い方、使い道、使う理由、行使される魔術や作成された魔道具による内的外的な影響等、魔法に関する一切の事を指すモノである。
世界平和の為に魔導を研究する施設であるウロボロスが、私欲によって研究目標を捻じ曲げる事は到底飲める条件では無いのだ。
ウロボロスはこの資金源という足枷問題を、害の無い生活に便利な魔力を動力源とする道具を売る事と募金活動、それから公的機関への技術の販売、何より医療施設を作り政治に左右されない所からのマネーフローを複数確保する事によって解決し、設立された。
これによって、ウロボロスは自給自足で研究活動が出来る独立機関となり、ありとあらゆる魔導に関する最先端の技術を有する機関となった。
『世界平和への邁進』これはウロボロス設立当初よりの絶対信念として掲げられている。この信念を変えるとき、ウロボロスは解散しなければならないとの第一機関規則とともに。
所属審査、つまり就職試験は機関運営の何に関わるかに問わず難関であり、謎に包まれている。
特に花形部署である魔道研究部門となれば尚更だった。
所属する魔術師はこれまで全てベテランになる頃には第一級魔術師つまり世界的なエリート魔術師になっていった。
そんなウロボロスで、男性でありながら「姫」というあだ名をつけられているある有名な魔導士がいた。
魔導士は魔術師の上位資格になり、ウロボロスといえどもかなり人数が少ない。
『魔道第八の魔獣の姫』それが彼のあだ名で、本名をサナリア・アルテミナといい、現代においては非常に稀な、くれないの髪を持つ人間で、戦争孤児で施設育の青年だった。
―――――奴隷制度を未だ持っているギリス帝国に、十五年前、滅ぼされた小さな王国がある。
その王国はギリス帝国の都市一つ分有るか無いかの国土しかない、王国というのもはばかられる、本当に小さな国だった。
ラメシャン王国と名乗っていた。
魔力が強く、見目の麗しい国民が多い事で有名で、国民の多くがアルテミナの様な真っ赤な髪の人種だった。
噂では、ギリス帝国に完膚なきまでに殲滅された後、帝国と隣国のリンドウ王国やウルダ王国に多くのラメシャンの国民が性奴隷として狩られたと言われている。
アルテミアはその王国の生き残りだろうと噂されていた。
本当の所は分からない、なにせこのサナリア・アルテミナ、物凄い人間嫌いで、ただの一人も友人が居ない事で有名なのだから。

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