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黒豹の腹の毛は2
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各々避難計画を心中で画策しながら昼食を食べに施設内に有る食堂に入った所で、ばったり出くわした。
先に気づいたのはガルゴだった。
発情期が近くて匂いに敏感になっているのか、最早嗅ぎ慣れたサナリアの香りにも瞬時に反応した。
「・・おう。アルテミナお前も昼か」
名前を呼ばれてゴーグルを掛けっぱなしの顔が首だけで振り向き一応答えた。
「どうも、呼び捨てはご遠慮願いたいですね」
「・・・あー。スマン。アルテミナ研究員」
「私は貴方のファンの恋愛ごっこの一興に巻き込まれるのは断固お断りです。では失礼する」
以前、ガルゴが未だ隊長だった頃、その隊に女性騎士が入った事が有る。
彼女は優秀だったがそれが面白くなかった当時のガルゴの取り巻きが、その女性騎士を付け回し、嫌がらせを繰り返して大きな問題になった事が有る。その事を指しているのだ。
不愛想に挨拶すると、自分の分の昼食を持ってさっさと席に向かった。
いつも使用している掻き込んでさっさと席を立つ者達がシェアするテーブルの方だから今日もそのテーブルを使うつもりなのだろう。
今日の上着は、表と裏に両手を広げて並べた程の大きさで、幼児が好みそうな可愛いクマのアップリケがドンと縫い付けて有り、さらにその背景ははピンクと緑に金色の縁取りのフラッシュが走っている。
そのショッキングな色とデザインに驚き、人垣がまるで船が水を切って進むがごとくアルテミナのいつも使用しているあたりまで割れた。
相変わらず凄い趣味だな、とガルゴがくすりと小さく笑いながら遠ざかる背中を見つめていると。
「何すか?アレ冷たすぎませんか?ムカつくな」
会議の後そのまま昼食にに向かって来た為、一緒になった水行第一隊書記長ライジが不服そうに言った。
「失礼を働いたのは俺だ。アルテミナ研究員の態度に非礼は無いぞ?」
「失礼ですよ、戦場で命張って戦っている戦闘部門の実行部隊最高位のガルゴ団長に向かって何スカあの態度。だれのお陰で自分たちが安全に研究なんか出来ていると思ってんだ!」
血気盛んなライジがプリプリと怒っている。どうやら本気でそう思っているらしい。
「魔道部門に戦闘部門の常識を押し付けるな。そもそもお前、アレにチヤホヤして欲しかったのか?」
「別に・・・そういうわけじゃねぇけど・・・」
「先に、何か難しい難問を抱えて悩んでいるのかもとか、机仕事特融の腰痛に苦しんでいて早く話を切り上げて座りたがっているとかそんな心配はしないんですか?」
よこから飛行第二隊隊長のイスタが不思議そうに聞いて来た。
「何であんな奴の心配なんかしないといけないんですか!?。別に仲間でも無いのに!」
「仲間でも無い人間にちょっと不愛想にされたからってお前怒っているのか?」
今度はガルゴがかるく突っ込んだ。
「いや、だって」
「ライジ、お前がこの前命をたすけられたサバイバルキット、考案したのはアルテミナ研究員だ」
「え?」
「あいつは十も行かない時分にたった一人で戦火を潜り抜けて亡命したって話はウロボロスのベテランでは有名な話だったな。その時必要だった物を揃えたんだろうな。それからな、蛇族の脱皮した後の抜け殻を使用した速乾性の丈夫なインナーを考案したのもアルテミナ研究員だったはずだ」
ガルゴとイスタに重ねて言われてライジは黙ってしまった。
難しいな、とガルゴは心中で苦笑する。自己肯定は大事だが選民意識は危険だ。
身を亡ぼす危険が有る。
かといって、こういう事は叱っても子供のライジには教えたい事は伝わり辛いだろう。
「ライジ、あらゆる可能性を考えろ。他人の失礼より己の礼儀に気を着けろ。難しいがな」
「・・・・はい。有難うございます」
腑に落ちないとは顔に書いてあるものの、何か感ずる物は有ったのか、ライジは大人しくなった。
さて・・・とガルゴは人垣で見えなくなったサナリアのいる方向に踵を返し。後ろに連なった二人に昼飯は別行動でと言った。
先に気づいたのはガルゴだった。
発情期が近くて匂いに敏感になっているのか、最早嗅ぎ慣れたサナリアの香りにも瞬時に反応した。
「・・おう。アルテミナお前も昼か」
名前を呼ばれてゴーグルを掛けっぱなしの顔が首だけで振り向き一応答えた。
「どうも、呼び捨てはご遠慮願いたいですね」
「・・・あー。スマン。アルテミナ研究員」
「私は貴方のファンの恋愛ごっこの一興に巻き込まれるのは断固お断りです。では失礼する」
以前、ガルゴが未だ隊長だった頃、その隊に女性騎士が入った事が有る。
彼女は優秀だったがそれが面白くなかった当時のガルゴの取り巻きが、その女性騎士を付け回し、嫌がらせを繰り返して大きな問題になった事が有る。その事を指しているのだ。
不愛想に挨拶すると、自分の分の昼食を持ってさっさと席に向かった。
いつも使用している掻き込んでさっさと席を立つ者達がシェアするテーブルの方だから今日もそのテーブルを使うつもりなのだろう。
今日の上着は、表と裏に両手を広げて並べた程の大きさで、幼児が好みそうな可愛いクマのアップリケがドンと縫い付けて有り、さらにその背景ははピンクと緑に金色の縁取りのフラッシュが走っている。
そのショッキングな色とデザインに驚き、人垣がまるで船が水を切って進むがごとくアルテミナのいつも使用しているあたりまで割れた。
相変わらず凄い趣味だな、とガルゴがくすりと小さく笑いながら遠ざかる背中を見つめていると。
「何すか?アレ冷たすぎませんか?ムカつくな」
会議の後そのまま昼食にに向かって来た為、一緒になった水行第一隊書記長ライジが不服そうに言った。
「失礼を働いたのは俺だ。アルテミナ研究員の態度に非礼は無いぞ?」
「失礼ですよ、戦場で命張って戦っている戦闘部門の実行部隊最高位のガルゴ団長に向かって何スカあの態度。だれのお陰で自分たちが安全に研究なんか出来ていると思ってんだ!」
血気盛んなライジがプリプリと怒っている。どうやら本気でそう思っているらしい。
「魔道部門に戦闘部門の常識を押し付けるな。そもそもお前、アレにチヤホヤして欲しかったのか?」
「別に・・・そういうわけじゃねぇけど・・・」
「先に、何か難しい難問を抱えて悩んでいるのかもとか、机仕事特融の腰痛に苦しんでいて早く話を切り上げて座りたがっているとかそんな心配はしないんですか?」
よこから飛行第二隊隊長のイスタが不思議そうに聞いて来た。
「何であんな奴の心配なんかしないといけないんですか!?。別に仲間でも無いのに!」
「仲間でも無い人間にちょっと不愛想にされたからってお前怒っているのか?」
今度はガルゴがかるく突っ込んだ。
「いや、だって」
「ライジ、お前がこの前命をたすけられたサバイバルキット、考案したのはアルテミナ研究員だ」
「え?」
「あいつは十も行かない時分にたった一人で戦火を潜り抜けて亡命したって話はウロボロスのベテランでは有名な話だったな。その時必要だった物を揃えたんだろうな。それからな、蛇族の脱皮した後の抜け殻を使用した速乾性の丈夫なインナーを考案したのもアルテミナ研究員だったはずだ」
ガルゴとイスタに重ねて言われてライジは黙ってしまった。
難しいな、とガルゴは心中で苦笑する。自己肯定は大事だが選民意識は危険だ。
身を亡ぼす危険が有る。
かといって、こういう事は叱っても子供のライジには教えたい事は伝わり辛いだろう。
「ライジ、あらゆる可能性を考えろ。他人の失礼より己の礼儀に気を着けろ。難しいがな」
「・・・・はい。有難うございます」
腑に落ちないとは顔に書いてあるものの、何か感ずる物は有ったのか、ライジは大人しくなった。
さて・・・とガルゴは人垣で見えなくなったサナリアのいる方向に踵を返し。後ろに連なった二人に昼飯は別行動でと言った。
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