魔獣の姫に黒の騎士

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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パレード13

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小さなサナリアは楽しそうに話し続ける。
「驚いたかい?昔のままの姿で、これは映像だからね、君と出会った時そのままの僕の姿なのさ、流石に自分の将来の姿は作れないよ、でも中々の出来だろう?実は僕が一番得意なのは映像魔法なんだよ。だって沢山練習したから。・・・とか言ってもこんな話、君には分からないよね。良いんだ、君が言葉が分からなくても。このパターンの映像魔法が流れているという事は今そんなに危険じゃ無いという事だからね。嬉しい限りだよ。この映像魔法が流れる条件は二種類、一つ、命を脅かす危険に迫られたけど、僕が君に刻んだ攻撃魔法で吹き飛んじゃって今は大丈夫な時、二つ、君の命の灯が寿命で今まさに消えようとしている時、後者じゃ無い事を祈るよ。君が独りぼっちで孤独に死なない様に、今の僕が出来る精いっぱいの事がコレさ。ごめんね、最後まで一緒に居られなくて・・・・。でもきっと大人になったら探し出すから、きっと迎えに行くよ。だって、生きて・・・生きて又会いたい。」
子供のサナリアはクルクルと表情を変えながら、よく喋った。
「サナリア。」
横からそっとウロボロスの誰かが来て、ガルゴの抱えている子供を保護していったが、ガルゴはその視線を小さなサナリアから離す事は出来ない。
「ねぇリリィ。僕のリリィ。大好きだよ。今君は幸せだろうか?あのクイブ師匠が探した預け先だ、悪い所では無いハズだ。あの人性格悪いけど仕事はちゃんとするから。」
サナリアがガルゴの鼻先まで駆け寄って来た。
ガルゴの鼻先を包み込む様に華奢な両手を伸ばす。泣きたいような、笑いたい様なワケの分からない気持ちが溢れて震える唇の両端を上げて、ガルゴは無理やり笑ったみたいな不細工な笑顔を作った。
魔術には術を行使した者の気配の様な物が宿る。小さなサナリアの映像は、間違いなくサナリアの気配がした。
「サナリア」
「サナリア!」
ガルゴと小さなサナリアの声が被る。
ガルゴはドキリとして止まり。
小さなサナリアは悪戯を思いついた子供の笑顔になった。
「サナリア、僕の名前だよ。サナリア・アルテミナ・・・・」
そして更に近くに寄り、顔を近づけ、小さなサナリアの唇は、ガルゴの鼻先スレスレ、人差し指一本分位の距離の所に来た。
小さなサナリアはガルゴ以外聞こえない様な小さな小さな声で言った。クスクスと笑いながら、誰にも明かした事が無いだろう秘め事を口にした。
「アルテミナ・ラメシャン・ブラックリリィ。僕の本当の名前はサナリア・アルテミナ・ラメシャン・ブラックリリィ。秘密だよ。実は僕、王子なんだ。」
ちょっと誇らしいような、照れている様な顔で小さなサナリアは笑う。
小さくても、本物の王子様の笑顔は格別だ。
「可愛い熊さん。僕の小さなお姫様。貴方の王子が、きっと迎えに行くからね。」
ガルゴの視界が涙で曇りそうになって慌てて拭う。
「リリィ。リリィ・ブラック。僕の大事な一輪黒百合。」
もう何年も呼ばれなかった、自分の本当の名前を呼ばれて、瞬きも忘れて呼ばれた先を見つめた。
紅のキラキラと輝く髪の深緑の瞳の小さな王子様が、優しく笑ってこちらを見つめている。
花が綻び咲く瞬間の様な綺麗な笑顔だった。
「大好き!」
そう言って、小さなサナリアは光の粒子に変わり、音も無くパッっと散って映像は終わった。




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