魔獣の姫に黒の騎士

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

文字の大きさ
60 / 124

王子と騎士3

しおりを挟む
「俺の入隊理由を聞いた先輩達は声を上げて笑ったさ。『顔も年齢も性別も種族さえも判らない、たった一人の人間を探し出すなんて無理に決まっている。親でも恋人でもない奴を探し出す為だけに命がけになるなんて、何て馬鹿なんだ。』ってな。『諦めろ、そして恋人を作れ。』よく言われたよ。恋人は何回か出来たが件の魔道士を探すのとは別の話しだった。会いたい気持ちは消えなかった。」
左右の手を揃えて持ち、指先に口づける。大切な物にするキスだった。
幼い頃から殺伐とした世界で生きて来た男のやる事なのに、やたらと美しい動作に見えた。
「大人になって、部下を持つようになったら戦場はもっと恐ろしい所になった。俺を信じて着いて来た部下が何度も死にそうになった。その度これに助けられた。」
今度はの首飾りにを少し右手で持ち上げ、その飾りにキスをした。
「うわ言みたいに言っていたよ。『大丈夫だ、アルテミナの首飾りがきっと今度も助けてくれる。』その言葉はまるで奇跡みたいに本当になった。」
「当たり前でしょう、それはそういうモノなんですから、助かって当然です。」
サナリアは奇跡なんて失敬な、と言い返す。少しいつもの調子が戻っていた。
きっとマスクの下には、いつものあの憮然とした顔のサナリアが、気の強そうな、キラキラと光る深緑の瞳でこちらを睨みつけているに違いない。ガルゴの口元が思わず緩んだ。
だって、目の前に愛しい人はちゃんと要るのに、素顔が見れないだけでもこんなに寂しい。
「戦場の、切羽詰まった空気の中で起きるアンタの魔法は、俺には奇跡みたいに見えたのさ。キラキラして、優しい匂いがして、冷たくて無愛想で守銭奴のアンタとは裏腹で、本当は凄く優しいヤツなんだと思った。いつの間にか好惚れていた。魔道士もそうだが、アンタが世界の平和を望むなら、その為に命をかけて戦うのも何だか誇らしい気持ちになれた。やっと件の魔道士から気を逸らせる奴に出会ったと思った。いつまでも見付からない魔道士を諦めて、自分のよく分からねぇ気持ちに見切りを着けて、前へ進める、そう思った。」
サナリアはマスクの中で困った顔をし、ガルゴはサナリアの両手を握る手に少し力を込めた。
「ソレがお前、何の事ァネェ。同一人物じゃねぇか!・・・・ふざけやがって・・・」
額をサナリアの手の甲に額をグリグリと押し付ける。
「ふざけやがって。・・・・蓋を開けて見てみたら、俺の人生お前一色じゃねぇか!」
『ふざけやがって』という割に、ガルゴの声に怒りは混ざっていない。
ただ、必死だった。
「俺の、戦う理由に位、なりやがれ。責任とれよ。」
何年も戦場を駆け抜けて来た百戦錬磨の男は、やっと探し出した温もりに、もう見失うものかとしがみ付いた。
助けた責任を、温もりを教えた責任を取れと、もう寂しい思いは嫌だとなりふり構わず縋った。
「あの・・・」
宥めようとするっサナリアの声にもぐずって耳も貸さない。
「もう、探すのは嫌だ。」
「ガルゴ」
「お前が呼ぶべき俺の名前はソレじゃねぇだろ!」
こんな時に『ガルゴ』と呼んだサナリアの声に癇癪を起した。
「お前が与えた名だろうが、お前が呼ばねぇで誰が呼ぶんだよ。!『大好き』って言ってたじゃねぇか!それが恋じゃ無いのはともかくとして、嘘とは言わせねぇからな!。」
「だからですね。」
「迎えにもこなかったじゃねぇか!、お、俺ぁ、アンタを探していたが、いつか会いに来てくれるかもと、待ってもいたんだ!。」
「人の話を・・」
「それとも何か、で・・・かくなり過ぎた姫は嫌か?もう、俺は、お前のリリィじゃねぇのかよ。」
二メートルは軽く超す巨漢の獣人のしょぼんとした態度に、サ ナリアは頭を抱えた。
サナリアにも言いたいことは山ほどあるのだが、目の前のサナリアの『お姫様』は強情に迫って来てて一歩も引く気が無いらしい、駄々をこねるのに一生懸命でこっちの話し等聞きやしない。おまけに迎えに来なかったと駄々をこね始めている。周囲を見ると、二人でゴチャゴチャと揉めている間に、片づけが粗方終わり始めてギャラリーが増えてしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

処理中です...