7 / 86
七、キサラの治療
しおりを挟む
「昨日から驚きの連続です……」
ナツヒの部屋から出たところで、坂城が息も絶え絶えにキサラに言った。
坂城の驚いた声に、ナツヒは機嫌を悪くしたのか、毛布をかぶってしまった。
用事が済んだので、二人は部屋を後にしたのだ。
「屋敷以外の人間に、あんなに話したり、笑ったり……なにより、病気になってからのナツヒ様は笑うことはありませんでしたから、久しぶりにナツヒ様の笑顔をみました」
「薬が効いているかもしれないですね」
キサラは作り笑いを浮かべてそう伝えた。
坂城は分厚い紙束をめくっていく。
「今まで勧められた薬は何一つ効かなかったのに」
「まぁ、そんなこともあります」
キサラは今の国内で最もよく使われている治療の知識を持っているが、生業ではない。
多くの医者が行う治療からこぼれた妖怪だけを相手にしていた。
最近の医学は、人間にも妖怪にも同等の効果がある異国の治療が主流になりつつある。
一方、キサラが生業にしている昔ながらの治療法は、人間と妖怪で異なるため、敬遠されている。
キサラもそれで多くの同僚達に嫌がらせをされたものだ。
「ああ、もうすこし早くあなたの沼に伺えばよかった」
坂城がそうこぼす。
「こんな診断が早くつくなんて」
「まだ診断はついてないですよ」
「え?」
キサラがそう言うと、坂城が動きを止めた。
「でも、あの薬は………?」
「私が今の体の状態に合うように調合しただけです。この薬が効けば、診断、ですかね」
「し、診断したから薬をだしたのでは?」
「私の仕事は診断じゃないですから」
坂城は流行の医者そのものだ。
一方で、まざまざと自分が少数派であることを見せつけられた。
「私は、目の前の人や妖怪をよくする、それだけですから」
「なるほど……」
キサラは逃げるように廊下の装飾に目をうつした。
「ところで、円弧先生は以前ナツヒ様とお会いしたことがあるのですか?」
「さぁ」
それについては、本当によくわからない。
思い出そうとしても記憶が無い。
「ふむ…先生の人柄でしょうか。私たち人間には感じない、妖怪だからこそ、感じる何かがあるのかもしれませんね」
「………そうですね」
キサラは簡単に返し、自室へと足早に向かった。
ナツヒの部屋から出たところで、坂城が息も絶え絶えにキサラに言った。
坂城の驚いた声に、ナツヒは機嫌を悪くしたのか、毛布をかぶってしまった。
用事が済んだので、二人は部屋を後にしたのだ。
「屋敷以外の人間に、あんなに話したり、笑ったり……なにより、病気になってからのナツヒ様は笑うことはありませんでしたから、久しぶりにナツヒ様の笑顔をみました」
「薬が効いているかもしれないですね」
キサラは作り笑いを浮かべてそう伝えた。
坂城は分厚い紙束をめくっていく。
「今まで勧められた薬は何一つ効かなかったのに」
「まぁ、そんなこともあります」
キサラは今の国内で最もよく使われている治療の知識を持っているが、生業ではない。
多くの医者が行う治療からこぼれた妖怪だけを相手にしていた。
最近の医学は、人間にも妖怪にも同等の効果がある異国の治療が主流になりつつある。
一方、キサラが生業にしている昔ながらの治療法は、人間と妖怪で異なるため、敬遠されている。
キサラもそれで多くの同僚達に嫌がらせをされたものだ。
「ああ、もうすこし早くあなたの沼に伺えばよかった」
坂城がそうこぼす。
「こんな診断が早くつくなんて」
「まだ診断はついてないですよ」
「え?」
キサラがそう言うと、坂城が動きを止めた。
「でも、あの薬は………?」
「私が今の体の状態に合うように調合しただけです。この薬が効けば、診断、ですかね」
「し、診断したから薬をだしたのでは?」
「私の仕事は診断じゃないですから」
坂城は流行の医者そのものだ。
一方で、まざまざと自分が少数派であることを見せつけられた。
「私は、目の前の人や妖怪をよくする、それだけですから」
「なるほど……」
キサラは逃げるように廊下の装飾に目をうつした。
「ところで、円弧先生は以前ナツヒ様とお会いしたことがあるのですか?」
「さぁ」
それについては、本当によくわからない。
思い出そうとしても記憶が無い。
「ふむ…先生の人柄でしょうか。私たち人間には感じない、妖怪だからこそ、感じる何かがあるのかもしれませんね」
「………そうですね」
キサラは簡単に返し、自室へと足早に向かった。
1
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
白衣の下 I 悪魔的破天荒な天才外科医と惨めな過去を引きずる女子大生の愛情物語。先生っひどすぎるぅ〜涙
高野マキ
キャラ文芸
弟の主治医と女子大生の甘くて切ない愛情物語り。こんなに溺愛する相手にめぐり会う事は二度と無い。
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
一条さん結婚したんですか⁉︎
あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎
嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡
((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜
⭐︎本編は完結しております⭐︎
⭐︎番外編更新中⭐︎
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる