84 / 86
八十四、角ありたちの悪巧み
しおりを挟む
「ところで」
思い出したようにカゲツが手をたたく。
「ナツヒの元許嫁はどうするかな」
「ああ。今紅家所属の鬼の中で一番強い妖力をもつ、彼女ですね」
ナツヒはわざとらしく、答える。
キサラがちらり、とエンを見るが、無表情のままだ。
しかし、その無表情はわざと無表情を保っているように見える。
「さぁどうするか。彼女には申し訳ないことをした。紅家に仕えるつもりでいろいろ考えていたようだし……」
「父上、私にいい考えがあります」
ナツヒがさも今思いついたように明るい声で言った。
その視線がエンに向かう。
「私が知る限り、その彼女と同じぐらい紅家として護国の努めを真面目に考えているのは、兄上だと思うのです。そして、兄上も十分紅家の中では強い妖力を持つ方です。私からみると、お似合いの二人だと思うのですが」
「え、な、ナツヒ⁈」
「ああ、いい考えだ。そういえば、エン。お前には特に見初めているものはいなかったな?」
「えっと、いませんけど?」
「決まりだな」
キサラはエンと話をしたのは、紅家を去るあの一瞬だけ。
それに取り乱すことはなかった。
しかし、今は慌てふためいている。
「…ご冗談でしょう?」
「ナツヒはこのとおり強情だし、キサラさんに惚れ込んでしまっている。それをキサラさんも受けいれてしまっている以上、二人の気持ちを無下にはできない。だが、エンとともになら、きっと彼女もナツヒたちを支えてくれるだろ?」
「あ……」
「俺も、エン兄なら力になってくれると思うし、彼女の力も借りれるから、頼もしいと思う」
「よ、よろこんで、は、拝命します……」
そう言って頭を下げたエン。
黒い髪の間から顔を出している耳はほんのり赤い。
キサラにしかわからない程度の小さな音で、ナツヒは笑った。
「そうだ、エン。こういうことは早めに伝えたほうがいいだろう。相手方に早めに伝えていってはどうか?」
カゲツの目は完全に笑っていた。
楽しくてしょうがない、という顔だ。
そんなカゲツとナツヒに気付いていないのか、エンははっと顔を上げる。
「は、早めに伝えたほうが、いいですか、ね?」
「ああ、今から行ってくるといい」
「わかりました……!」
「失礼します」と足早に応接間を出て行くエン。
その気配が去ったあと、ナツヒとカゲツが笑う。
「うまくいったなぁ!ナツヒ!」
「父上、お上手でした!」
「いやぁ、あの顔、あの妖気!お前わかったか⁈」
「もちろんですよ」
そう言って笑う二人を、冷たい目でリンが見ている。
どんな顔をしていいかわからないキサラはリンと目が会う。
「はぁ、まぁエンが元気になったようでよかったです。キサラさん。うちの夫とナツヒはこういう二人なんですよ」
「そ、そうなんですね……」
二人はひとしきり笑っていた。
思い出したようにカゲツが手をたたく。
「ナツヒの元許嫁はどうするかな」
「ああ。今紅家所属の鬼の中で一番強い妖力をもつ、彼女ですね」
ナツヒはわざとらしく、答える。
キサラがちらり、とエンを見るが、無表情のままだ。
しかし、その無表情はわざと無表情を保っているように見える。
「さぁどうするか。彼女には申し訳ないことをした。紅家に仕えるつもりでいろいろ考えていたようだし……」
「父上、私にいい考えがあります」
ナツヒがさも今思いついたように明るい声で言った。
その視線がエンに向かう。
「私が知る限り、その彼女と同じぐらい紅家として護国の努めを真面目に考えているのは、兄上だと思うのです。そして、兄上も十分紅家の中では強い妖力を持つ方です。私からみると、お似合いの二人だと思うのですが」
「え、な、ナツヒ⁈」
「ああ、いい考えだ。そういえば、エン。お前には特に見初めているものはいなかったな?」
「えっと、いませんけど?」
「決まりだな」
キサラはエンと話をしたのは、紅家を去るあの一瞬だけ。
それに取り乱すことはなかった。
しかし、今は慌てふためいている。
「…ご冗談でしょう?」
「ナツヒはこのとおり強情だし、キサラさんに惚れ込んでしまっている。それをキサラさんも受けいれてしまっている以上、二人の気持ちを無下にはできない。だが、エンとともになら、きっと彼女もナツヒたちを支えてくれるだろ?」
「あ……」
「俺も、エン兄なら力になってくれると思うし、彼女の力も借りれるから、頼もしいと思う」
「よ、よろこんで、は、拝命します……」
そう言って頭を下げたエン。
黒い髪の間から顔を出している耳はほんのり赤い。
キサラにしかわからない程度の小さな音で、ナツヒは笑った。
「そうだ、エン。こういうことは早めに伝えたほうがいいだろう。相手方に早めに伝えていってはどうか?」
カゲツの目は完全に笑っていた。
楽しくてしょうがない、という顔だ。
そんなカゲツとナツヒに気付いていないのか、エンははっと顔を上げる。
「は、早めに伝えたほうが、いいですか、ね?」
「ああ、今から行ってくるといい」
「わかりました……!」
「失礼します」と足早に応接間を出て行くエン。
その気配が去ったあと、ナツヒとカゲツが笑う。
「うまくいったなぁ!ナツヒ!」
「父上、お上手でした!」
「いやぁ、あの顔、あの妖気!お前わかったか⁈」
「もちろんですよ」
そう言って笑う二人を、冷たい目でリンが見ている。
どんな顔をしていいかわからないキサラはリンと目が会う。
「はぁ、まぁエンが元気になったようでよかったです。キサラさん。うちの夫とナツヒはこういう二人なんですよ」
「そ、そうなんですね……」
二人はひとしきり笑っていた。
1
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
白衣の下 I 悪魔的破天荒な天才外科医と惨めな過去を引きずる女子大生の愛情物語。先生っひどすぎるぅ〜涙
高野マキ
キャラ文芸
弟の主治医と女子大生の甘くて切ない愛情物語り。こんなに溺愛する相手にめぐり会う事は二度と無い。
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
一条さん結婚したんですか⁉︎
あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎
嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡
((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜
⭐︎本編は完結しております⭐︎
⭐︎番外編更新中⭐︎
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる